コラム・観戦記

「Classicプロアマリーグ2017」決勝 観戦記 猿渡 陽一郎

「Classicプロアマリーグ2017決勝」観戦記  2018/1/27 最高位戦道場

今回観戦記を書かせていただく猿渡陽一郎と申します。
最高位戦4年目で、初めて観戦記を担当させていただきます。
よろしくお願いします。

まずは決勝4名を予選順位順に紹介します。

尾澤 大河 さん 予選リーグ6位 準々決勝5位 準決勝2位
予選リーグは126名中上位18名+ワイルドカード1名が通過なのですが、これを堂々6位で通過した実力者。
準々決勝は上位5名通過のシステムで5位通過、準決勝も卓内上位2名通過のシステムで2位通過と、ギリギリの闘いには強そうなイメージですよね。
戦形はご本人のTwitterによると、自称「後手遅攻手役重視型」らしいです。

石川 由人 さん 予選リーグ8位 準々決勝1位 準決勝1位
尾澤さんとは逆に、準々決勝1位、準決勝も卓内1位と、勢いに乗っている感がある成績。
この勢いで決勝も制することができるのか?
僕の勝手なイメージですが、石川さんは魂込めて摸打する感じなんですよね。
もちろんみんな魂込めているんでしょうが、わりと外に出やすいタイプで、これを損とする人も多いと思いますが、僕は得も相当あると思っています。

石橋 伸洋 選手 予選リーグ11位 準々決勝4位 準決勝1位
言わずと知れた第36期最高位。
一番研究され、マークされるだろう存在ですが、本人はそんなの慣れたものでしょう。
今回も「黒いデジタル」は炸裂するのか?

桑原 俊之 さん 予選リーグ18位 準々決勝2位 準決勝2位
予選リーグはギリギリの通過でしたが、実は決勝進出者のなかで、予選リーグ全節プラスは桑原さんだけなんですよね。
傍で見ていても安定感ある麻雀だと思いました。

こう見ると、30代で最高位戦の若きエース・石橋に対し、人生の先輩である麻雀愛好家3名が挑む構図です。
僕は最高位戦選手ではありますが、心情的にはやっぱり年齢の近い挑戦者3名を応援しちゃいますね。

1回戦

静かな立ち上がりで、動きが出たのは東3局。
8巡目、北家の尾澤さんが

 ツモ

からドラのを切ってテンパイ。
このを対面の石橋がポンして

 ポン

と、こちらはポンテンの8000点。
10巡目にをつかんで尾澤さんの放銃となりましたが、その時の石橋の河がこんな感じ。

 (灰色はツモ切りの牌)

対局後の取材で尾澤さんに「あの放銃はしょうがないでしょう」と言いましたが、よく見ると、この捨て牌に対してのは相当危険度高いですね。
そのときは「役牌のドラ鳴かせておいて、一発目の無筋で即オリはビビり過ぎ」と思ったんですけど、この捨て牌は一向聴以上は堅そうな上に、両面候補がかなり絞られています。
を鳴かせるまではいいとしても、は押し過ぎかもしれません。
しかし、半荘4回戦の短期決戦ですから、ここぞという場面では踏み込んでいかなければいけません。
僕も状況的に見合わない押しをきっかけに優勝を勝ち取ったことがありますし、そんな闘牌をいっぱい見てきました。
この、僕はいい踏み込みだと思います。
とはいえ、これで石橋が一歩リード。

その後はこのリードを守り切って石橋のトップとなりました。

石 橋 +21.3(39300点)
桑 原   +5.3(31300点)
石 川   △6.2(27800点)
尾 澤 △20.4(21600点)

本命石橋が先制する展開となりましたが、3名の包囲網が石橋をとらえることができるのか、注目です。

2回戦

3局流局が続いての東4局。
8巡目、東家の石橋が

ドラが対子の9600をテンパイ。
9巡目、北家の石川さんが

 ツモ

この一向聴から少考してを切ります。
普通はツモ切りに見える手ですが、ドラもないし、リーチに打って出る手ではないので、1枚ずつ出ていたことから、先に引いてのを考えたのだと思います。
が、無情にも先に引いたのは
そしてツモでやむなくシャンポンの役なしダマテンとなります。

この間に両面に振り替わった石橋がツモ!

 ツモ

4000は4300オールでまたもトップに躍り出ます。
この石川さんのカンチャン選択はその後の展開を大きく変えた1手でしたね。

さて、このまま石橋に走られて連勝されては他の3名は苦しくなってしまいます。
連勝阻止に名乗りをあげたのは石川さんでした。
南3局の親番で、直撃を含めた細かい連荘でじわじわ追い上げ、逆転を果たします。
最後の石橋の親番もしのぎきり、2回戦は石川さんがトップとなりました。

石 川 +26.0(44000点)
石 橋 +12.7(38700点)
桑 原 △13.0(21000点)
尾 澤 △26.7(15300点)

2回戦まで
石 橋 +34.0
石 川 +19.8
桑 原   △7.7
尾 澤 △47.1

尾澤さんはいよいよ崖っぷち。
桑原さんもかなり苦しくなりました。

3回戦

石橋が止まりません。
東1局 1000/2000
東3局 3900は4200
東4局 400/700
と、一人舞台の様相を見せかけます。

そして南1局、南家の石橋の配牌がこれ。

ドラこそないですが、形が整っていて打点も見込める最良の配牌で、これをアガり切られると決め手になりそうです。
一方、なんとか一矢報いたい西家の尾澤さんの配牌も

と、ドラのが対子で悪くはないですが、さすがにスピード感が違い、苦しいでしょうか。
親の桑原さんが3巡目、

 ツモ

ここからドラのを手放します。
これはさすがに連荘を考えたら持っていられないですかね。
尾澤さんもここはスルーとしました。
ところが、5巡目に石橋がをツモ切ると、

この形から、今度は尾澤さんがたまらずポン!
そして8巡目、ポンポン萬子をツモ切っていた石橋、

 ツモ

ここで筒子の可能性もある尾澤さんに対してを止めます。
しかし、その瞬間

 ポン

尾澤さんがテンパイ!
そして次巡、

 ツモ

これは止まらない。
いかに石橋伸洋でも、これは止められないでしょう。
あえなくで放銃し、勝負はわからなくなりました。

石 橋 41700→33700
尾 澤 27600→35600

この後も尾澤さんが加点してリード。
そして、オーラス、石川さんが桑原さんから9600は10200をアガって2着に浮上します。
ついに石橋城陥落か?と思いきや、その3本場、
「400/700は700/1000」
の石橋の声が。
辛くも2着をまくり返して3回戦は終了しました。

尾 澤 +21.3(39300点)
石 橋   +9.4(35400点)
石 川   +0.2(34200点)
桑 原 △30.9(11100点)

3回戦まで
石 橋 +43.4
石 川 +20.0
尾 澤 △25.8
桑 原 △38.6

役満級が炸裂しない限り、ほぼマッチレースの展開となりましたが、最後の2着まくりで
「やっぱり今日は石橋の日かな…」
という雰囲気があったと思います。
しかし、勝負は下駄を履くまでわかりません。
「何としてでも優勝する!」という執念が、大差を、圧倒的な流れをくつがえす場面を幾度となく見てきました。
さあ、運命の最終4回戦です。

4回戦(最終戦)

東1局 流局
東2局 流局
東3局 1000は1600(石川さん→石橋)
東4局 流局
と、東場は大きな動きなく終了。
もちろん水面下ではいろいろあるわけですが、こんな時は南場にドラマが待っているものです。
南1局は尾澤さんのラストチャンスの親でしたが、ここも流局。
そして注目の石川さんの親が回ってきます。

南2局2本場
10巡目に西家の石橋が

 ポン ポン

からをポンしてテンパイを入れます(ドラは)。
を鳴かせた親の石川さんはこのとき、まだこの形。

この親をこれで終わらせれば石橋の優勝はもう目前!
しかし、当然ながら石川さんは粘ります。
11巡目、

 ツモ

一気通貫を見て、ここでドラのを手放します。
そして出たをすかさずポンして打

 ポン

次巡にを持ってきて

 ツモ ポン

もちろん打
そして17巡目(鳴きが入っているのであと3巡あります)

ツモ ポン

ここでまた
石川さんが苦しい長考に沈みます。
残り巡目がもうないので、変化よりはの直接の比較。
関連牌は場にが1枚、が1枚。
の方が見た目の枚数は多いですが、はポンできるのが大きい。
石川さんの選択は打でした。
これを受けて北家の尾澤さん

 ツモ

ここからもう1局石川さんにやってもらうために全力のアシスト。
まずは打!そして次巡、打
そして、このがクリティカルヒット!

 ツモ ポン ポン

海底1つ前に成就したこの700オールは、石川さん、尾澤さんの「このままじゃ終われない!」という二人の執念が成し遂げた、まさに限界ギリギリの和了でした。
これを見て、会場が静かな盛り上がりを見せたように感じたのは私だけではないでしょう。
「このままじゃ終わらない。まだ何かが起こる。」
そんな予感をひしひしと感じさせる和了でした。

南2局3本場
7巡目、今度は桑原さんが

 ツモ

から切りリーチ(ドラは)。
ただし、が場に3枚出ているので、実質ペンの7700。
広さより高さをとったのか?あるいはのほうがアガりやすいと踏んだのか?
桑原さんも親を残しているので、これをアガって親番に持ち込めば何が起こるかわかりません。
これを受けて石川さんの手がこう。

 ツモ

なんとを一発でつかむ形でテンパイ。
(最高位戦Classicルールに一発役はありませんが)
石川さん、ここで少考すると、を切って敢然と追いかけリーチ!
この時点では残り1枚。
は残り3枚。
枚数は圧倒的に石川さん不利ですが、これが流れってヤツなんでしょうか?
10巡目、桑原さんがを掴んでしまいます。
この2000は2900で、ほぼ横一線から石川さんがこの半荘のトップ目に躍り出ます。

東家 石 川 34400
南家 桑 原 25400
西家 石 橋 30900
北家 尾 澤 29300

あと11.9ポイント!石川さんの優勝が見えてきました!
桑原さんとしても、石橋の着順が下がるのは歓迎なので、この結果はそんなに悪くないはずです。

南2局4本場
ここで石川さんの清一色、4000は4400オールが炸裂します。

 ツモ チー

これで石橋を5.7ポイント逆転しました!
Classicの5.7ポイントは相当大きいです。
石橋が今度は追いかける立場になりました。

流局して南3局6本場は桑原さんのラストチャンスの親でしたが、ここも石川さんが1600は3400を桑原さんから打ち取って加点します。

そしてオーラス。
完全目無しの尾澤さん、桑原さんからは援護があるわけもなく、石橋がなんとかアガりきろうと粘りますが、流局となりました。

石 川 +34.0(52000点)
石 橋   △0.5(25500点)
尾 澤   △9.1(24900点)
桑 原 △24.4(17600点)

4回戦最終結果
石 川 +54.0
石 橋 +42.9
尾 澤 △34.9
桑 原 △63.0

全体的には終始石橋がリードしていたのですが、石川さんの執念と、石橋に楽をさせない尾澤さん、桑原さんのゲーム回しが光る、素晴らしい決勝戦だったと思います。
石川さん、優勝おめでとうございます!

最後になりますが、長時間の取材にご協力いただいた尾澤さん、桑原さん、本当にありがとうございました。
優勝した石川さんとは時間が合いませんでしたが、素晴らしい闘牌をありがとうございます。
他の選手の皆さんや運営の方々にも本当に感謝しています。
私もまたプロアマリーグに参加して、皆さんと熱い闘いをしたいと思います。

それでは皆さん、また逢う日まで。
お疲れさまでした!!!

 

(文:猿渡 陽一郎)

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