今期で第16期を迎えた「女流最高位決定戦」。
当該団体所属女流プロに出場資格が限定されるタイトル戦では最古の歴史を誇る。
歴代の女流最高位は以下の通り。
期 | 年 度 | 優 勝 |
---|---|---|
第 1 期 | 2001 | 渡辺 洋香 |
第 2 期 | 2002 | 山口 まや |
第 3 期 | 2003 | 山口 まや |
第 4 期 | 2004 | 山口 まや |
第 5 期 | 2005 | 根本 佳織 |
第 6 期 | 2006 | 根本 佳織 |
第 7 期 | 2007 | 根本 佳織 |
第 8 期 | 2008 | 根本 佳織 |
第 9 期 | 2009 | 根本 佳織 |
第10期 | 2010 | 石井 あや |
第11期 | 2011 | 茅森 早香 |
第12期 | 2012 | 花本 まな |
第13期 | 2013 | 小池 美穂 |
第14期 | 2014 | 大平 亜季 |
第15期 | 2015 | 大平 亜季 |
潮目と見て取れるのは第10期。それ以前は山口まやの3連覇、根本佳織の5連覇と長期政権があった。
第10期以降は石井あや、茅森早香、花本まな、小池美穂と毎年ニューヒロインが誕生した。
この頃といえば公式対局がインターネットで配信、あるいはDVDに収録され「普及」し始めた、いわば変遷期でもある。
この因果についてはここでは言及しないが、「女流最高位戦」は1人の選手の登場によって、また新たな時代に突入しようとしている。
大平亜季(第14・15期女流最高位)
第39期(2014年)に入会するとデビュー期の第14期女流最高位戦では女流Bリーグから駆け上がり決定戦に進出。初出場初戴冠という史上初の快挙を達成すると翌第15期では茅森早香、西嶋千春、日向藍子という実力派を相手に連覇を達成。プロキャリア=女流最高位在位年と表すことができる唯一の選手。あまり多くを語るタイプではなく事前のインタビューでは「みなさん三連覇を見たいと思うので、絶対勝ちます」とさらりと言ってのけた。
大平女流最高位に挑むのはこの3選手
渡辺洋香(第1期女流最高位 / 14年ぶり3度目)
初代女流最高位が決定戦の舞台に降臨。今期の準決勝では持ち味である攻撃が冴えわたり完勝。出場選手の中で一番最初に決定戦進出を確定させた。
石井あや(第10期女流最高位 / 3年ぶり5度目)
プロ2年目で女流最高位とプロクイーンを獲得。その後の第一線での活躍はご存じの通り。「前回の決定戦ではあと一歩届かずだったが、いい加減皆さんを喜ばせたい」と捲土重来を期す。
いわますみえ(6年ぶり5度目)
決定戦の常連ながらも過去4度の出場では準優勝2回、第3位2回。「銀メダル、銅メダルはもういらない。金メダルだけを狙う」とコメント。悲願達成に向け、懸ける想いは一番。
激闘必至の8回戦。訪れる結末は「三連覇」か「復冠」か「悲願達成」か。
第16期女流最高位決定戦1日目 2016年10月2日(日)
決定戦や決勝戦の雰囲気は独特である。リーグ戦やタイトル戦予選など幾多の公式戦ともそれは異なり、主役は一卓4選手のみ。以前は観戦者、採譜者がその中心で繰り広げられる展開と帯びた熱に固唾を飲み、逆に対局者もその空気に融合、あるいは背中を押されて加速していくようないわば臨場感があった。しかし放送対局ではその雰囲気やリズムはさらに異質。対局前にはオープニングの出演があり、コメントを発する機会がある。卓に着けばその空間には対局者しかおらず、非日常的な静寂に包まれる。― 如何に早く対局に入り込み、普段どおりのパフォーマンスを発揮できるか ― 最初の焦点はここである。
1回戦 (いわま―渡辺―石井―大平)
東1局0本場 ドラ
東家いわま 配牌
いきなりのこの配牌。から切り出す。いわまが聴牌を果たせばいずれの形でもリーチ宣言すると思われたがイーシャンテンはいわまだけではなかった。
西家石井 1巡目
ツモ 打
こちらは一盃口のイーシャンテンに構えつつ、チャンタや七対子も狙える手形。
東家いわまが有効牌を引けぬまま先に聴牌を果たしたのは石井。5巡目に
ツモ 打
とし、場に1枚切れのペン待ちをヤミテンに構える。いわま、渡辺であればリーチを選択しただろうか。そして「沈黙のスナイパー」としては当然の選択か。すると次巡を引き入れ打で、ツモれば三暗刻のシャンポン待ちリーチを打つ。ここに一発で飛び込んだのは南家渡辺。
南家渡辺 7巡目
ツモ 打
自分の目からが4枚見えたノーチャンスの打。現物は大きく迂回することになるの一種類のみ。結果は放銃となってしまったが、ここでを切るのは渡辺の麻雀ではないのだろう。立ち上がりの1局、7巡の間に石井らしい、渡辺らしい選択がしっかりと織り込まれている。タイトル戦決勝の配信に初出場ということで戦前には不安を口にしていた渡辺ではあったが、その心配もなさそうだ。
続く東2局 ドラ
最初に聴牌を入れたのは6巡目の北家いわま
ツモ 打
一気通貫、タンヤオ、ピンフ、一盃口などアガリ牌のと以外の萬子は全て役アリ聴牌に変化する手形でヤミテン。ここに追いついたのはドラを3枚持った11巡目の南家石井
待ちの五面張もヤミテンを選択。
いずれの牌でも満貫以上の出アガリは可能。何より当たれる牌を全員がそれぞれ切っていること(渡辺が、大平が、いわまが)も大きい。ここはさすがに石井の狙撃成功かに見えたが追いつき追い抜いたのは西家大平だった。
石井聴牌の次巡
西家大平 13巡目
ポン
上記の形で聴牌とすると同巡いわまがを掴み満貫の放銃。大平の手出しは生牌の→となっており、河も筒子一色手の典型。それにも関わらずいわまはを打った。なぜか?実はこれこそが大平の特長の一つなのである。
『大平は対局中に消えることがある。』
多くの雀士には癖がある。「聴牌以降のツモ動作が変わる」、「聴牌以降の打牌音が静かになる」「オリ始めたらテンポが上がる」など。その現れ方は千差万別であるが、対局者は程度の差こそあれ、それを自然と察知する。しかし大平にはその出現が皆無。一定のリズムを保つ摸打に加えポーカーフェイスなのである。過去の決定戦では全員の手牌を確認している解説者でさえ大平の聴牌の瞬間を見落としたことも一度や二度ではない。大平らしさも発揮されている。
まだまだ混沌とした戦況の1回戦。これを大きく動かしたのは渡辺だった。
東4局2本場 供託:2 (大平375―いわま225―渡辺273―石井307) ドラ
東家大平 8巡目リーチ
ツモ 打リーチ
河には と並んだ。
西家渡辺 同巡
ツモ
ここで微差ではあるがリスクを少しでも下げ、三色目を崩した打とすると
次巡大平の当たり牌をツモって少考。
ツモ
ここで大平の現物である打とし放銃回避。さらにはツモ→打、ツモ→打と勝負し、この聴牌を果たす。
西家渡辺 11巡目
12巡目にもツモ切って13巡目に渡辺がツモったのはドラ。
当たり牌1牌のみを止めて回り、勝負した4種の牌は全て通してアガリきることに成功。この一局は渡辺にとって得点のみならず大きな価値のあるアガリとなった。
さらに渡辺は続く南1局でも3巡目リーチ
ツモ ドラ 裏ドラ
これを13巡目にツモアガリ満貫。緒戦のトップを持ち前の攻撃力で奪取した。
1回戦スコア
渡辺+38.4p
大平+10.8p
石井▲13.0p
いわま▲39.2p
1回戦出番の少なかったいわまが若干気になる。いわまの麻雀の特徴は「押しの強さ」。そのキャラクターにも所以し自他ともに「ドスコイ麻雀」と形容する。誤解されることも多いようだが、いわまは何でもかんでも攻勢に出るわけではない。基本的には5ブロックに構え安全牌を持つ。「組めた聴牌の先に自然なアガリを求める」のではなく、「この形でアガるためにこの形で聴牌を組む」という単回帰的な方針を中盤で固めていることが多い。危険牌を先処理し、スリムに構え、意志をもった聴牌形であるからこそ局面終盤の捲り合いでは引かない。
2回戦 (大平―いわま―渡辺―石井)
例えば2回戦の東1局 ドラ 9巡目 南家いわま
ツモ 打
各者の捨て牌に偏りがなく、仕掛け・リーチも入っていないこの局面でいわまはドラのを打ち出した。いわまと同様攻撃を武器とする渡辺がこの手から切り出すのはおそらくであろう。
逆に同局 6巡目 西家渡辺
ツモ 打 ※は2枚切れ
とした選択。これが打ち手いわまであればを切り出したかもしれない。ここで触れたいのは選択の是非ではなく、フォームの違い。どちらのルート選択にも一長一短がある。だから麻雀は面白い。
東2局2本場 ドラ
ここでも東家のいわまが「らしい」選択。
ツモ
さて何を切ろう。※1枚切れ。1枚切れ。
いわまの選択は打。次巡
ツモ
いわまの選択はここで打。この1巡内で西家石井がをで鳴き、打としたことも選択に大きく影響しているが、この一連の選択を時間を掛けず繰り返せることがいわまの強さの一端でもあろう。
この2回戦の決定打は東3局に訪れた。(渡辺293―石井315―大平259―いわま333) ドラ
西家大平 5巡目
ツモ 打
でイーシャンテン。
南家石井 6巡目
ツモ 打
でこちらもイーシャンテン。
西家大平 6巡目
ツモ 打
で三色含みのくっつきのイーシャンテンに変化。
北家いわま 同6巡目
ツモ 打
でこちらもイーシャンテン。
東家渡辺 7巡目
ツモ 打
一瞬で全員がイーシャンテンに構えた。
先制したのは西家大平 同7巡目
ツモ 打リーチ
各者の捨て牌は
東家渡辺
南家石井
西家大平
北家いわま
東家渡辺が8巡目にもってきたのは。これは切りづらい・・・と私が思ったのは渡辺が逡巡なくを置いた後であった。渡辺は腹を括っている。
ドラを引かされた石井は撤退を余儀なくされるのだが、10巡目にはいわまも
ポン
この形で追いつく。
3人目の聴牌は東家渡辺の12巡目
ツモ 打リーチ
渡辺待ち 大平待ち いわま待ち で待ち牌が重なりつつも全員高打点。
山には の全てが1枚ずつ残っていた。ここを制したのは東家渡辺
リーチツモ ドラ 裏ドラ
リーチ・ツモ・發・ドラ3の6,000オール。これは力強かった。2回戦はこのリードをキープして渡辺が連勝。
2回戦スコア (2回戦終了時トータルスコア)
渡辺+52.5p (+90.9p)
いわま+18.3p (▲20.9p)
石井▲19.9p (▲32.9p)
大平▲50.9p (▲40.1p)
3回戦 (石井―いわま―渡辺―大平)
全8回戦の決定戦。「1人の選手にスタートから3連勝されることは避けたい。」これはいわま、石井、大平共通の思い。但し自己犠牲を払ってまで渡辺の連勝を無理に阻止するかと言われれば難しいところでもある。なぜなら「最初に自分が脱落することは最も避けたい。」
東1局は南家いわまがソウズの一色手。2フーロながらもソウズが余っていないところに親の石井がイーシャンテンから飛び込む。
ロン チー ポン ドラ
続く東2局もいわまが12,000を加点。
東家いわま 13巡目 ドラ
ツモ 打リーチ
ヤマにはが残っていなかったが、同巡西家大平が
ツモ 打
とし、宣言牌を捉えた格好。
巡目は深いものの河、自身の手牌からの景色は悪くない。いわまが3巡目に切っているも背中を押したか。但し東家いわまの宣言牌は2巡目に、4巡目にを切っている上での13巡目。大平自身がドラを1枚も持っておらず親リーチの一発目で見合うかと言われれば微妙なところ。スジ牌の、あるいは現物のを置く選択もあり、大平もどんなときでも放つではないはずだ。まだ2戦終了しただけとはいえ、自分がトータルラス、トータルトップ目の渡辺と130p開いている焦りでなければいいのだが。
この放銃が響いたのか次局の大平がミスを犯す。
残りツモ番1回の西家石井が16巡目に役アリ聴牌を果たす。
ツモ 打
同巡、イーシャンテンをキープするいわまがをツモ切るのだが、残りツモ番1回(ハイテイ番)となった南家大平が
ツモ 打
のツモ切りで放銃。も3枚切れであり、警戒も薄れるところではある。放銃も1,300で済み、ノーテン罰符より得をするケースもある。但しそこに思考が働いたかが何より大事。手拍子で切ってしまったのだとしたら・・・切り替えて踏みとどまらないと3連覇に黄色信号が灯りかねない段階まできていた。
局は進み南4局を迎えて東家から大平112―石井250―いわま486―渡辺352 ドラ
トータルトップ目の渡辺は浮きの2着で良しとしそうなところ。いわま目線では石井あるいは大平が渡辺を捲ってくれればベターであるが、自分の着落ち、あるいは渡辺の加点は避けたいといったところであろうか。
北家渡辺の3巡目手牌
ここで東家大平から打たれたに声を出さない。
そして4巡目
ツモ 打
場に1枚切れの打を選択し七対子本線に決める。目指すのはリーチ・ツモ・七対子・裏2の跳満ツモ、あるいは道中ドラを引き入れればリーチ・七対子・ドラ2の跳満ツモ、そして手牌を短くすることによるリスクを低減した上での七対子のみでのアガリも見たのだろう。この一連の選択は人により大きく分かれるところ。安全牌候補のを頼りに3巡目のを鳴いて手を進める打ち手もいるだろうし、4巡目の打牌は5,200放銃で捲られる石井の現物ではなく、もしくはから選ぶ打ち手もいるだろう。
方や追い込まれた東家大平。5巡目に
ツモ
でイーシャンテン取らずの打。親リーチで抑圧しやすいものの、ドラに依存する愚形残りには固執せず、もう一伸びを見る構え。他家の捨て牌が早さを示していないこともこの選択根拠の一つか。
目論見通り次巡ツモで打としの四連形くっつきと引きに備える。この時点ではまだしもやは嬉しくない。
そこから5巡が経過し、10巡目にを引き今度はリーチを選択。このあたりのバランス感覚は流石である。「可能性を拡げる」局面、「理想を追い過ぎない」局面。この判断の良さは過去の決定戦でも何度も見せつけてきた。結果は「良し」とする最低ラインの一人聴牌で流局。次局に繋げた。
南4局1本場 供託1
6巡目の東家大平の手牌がこちら。
愚形だらけの2シャンテン。ここで北家渡辺から打たれるをポン。これを鳴けるのはすごい。するとここから
8巡目
ツモ 打
で形式聴牌。
10巡目
ツモ 打
で形式聴牌その2。
そして北家渡辺から少考後に打ち出される生牌ドラ。場に緊張感が走る。その時の渡辺の手牌はこちら
数巡が経過し
12巡目 北家渡辺
ツモ 打リーチ
「リーチ?!」解説も別室の観戦席も一同感嘆。ドラはいわまが合わせ打ち2枚は見えているものの・・・リーチ棒供託により南家石井は3,900の直撃でも渡辺をかわして2着になる可能性が出た。
ただ渡辺の狙いは「決めにいくこと」。この時点ではヤマには残っていなかったが、アガりはもちろんのこと、流局して手牌を開いたときに同卓者に与えるインパクトは計り知れない。スケールが違う。
この局の結末は東家大平がとをスライドさせ役を付けた後に
ツモ ポン
となり1,000は1,100オールのアガリ。依然ラス目ながら必死につなぐ。これも6巡目の上記牌姿、仕掛けだしを振り返れば驚異的なアガリであるのだが。
その後の展開は
南4局2本場 石井→大平 タンヤオ・ドラ2 5,800は6,400
南4局3本場 大平 リーチ・一発・ツモ 2,000は2,300オール
南4局4本場 渡辺→いわま リーチ・裏ドラ 3,200は4,400
となり終局。
3回戦スコア (3回戦終了時トータルスコア)
いわま+48.6p (+27.7p)
大平+11.8p (▲28.3p)
渡辺▲14.6p (+76.3p)
石井▲45.8p (▲78.7p)
渡辺包囲網とは言わないまでも、3回戦にして早くもいわま、大平、石井の三者が渡辺を強く意識しながら進行していたことは明らかだった。渡辺も2連勝した段階で周りに対応されることを予想し準備したのかもしれない。それゆえに仕掛け頼りの2着確保への道を絶ち、門前で跳満ツモを目指したし、ここで圧倒的な差をつけるために四暗刻の確率を少しでも上げようとリーチを打った。これは8回戦という短期決戦で4人中1位を目指す闘いに対する1つの戦略であり、自己主張・自己表現でもある。しかし結果としては窮地に追い込まれていた大平が息を吹き返すことに繋がり、またこの展開を味方につけたのはいわまであった。残り5回戦という前向きの視点では「経過」に過ぎないが、全8回戦終了時に振り返ってみると「分岐」に見えるかもしれない。
4回戦 (いわま―渡辺―石井―大平)
東1局は渡辺から大平に3,200の放銃。
東2局(渡辺268―石井300―大平332―いわま300)の各選手の配牌とツモがすごい。
ドラ
東家渡辺 打
南家石井 ツモ 打
西家大平 ツモ 打
北家いわまの第一打を東家渡辺がポンすると石井のツモは、大平のツモは。加速度的に各者の手が進行する。
最初の聴牌は南家石井。3巡目に
ツモ 打リーチ
あっという間にツモリ三暗刻、役牌、ドラのリーチを打つ。続いて5巡目の西家大平
ポン ツモ 打
先制リーチ石井の中スジとなったドラを切り、ツモると倍満、出アガリ跳満の聴牌。さらには次巡を暗槓すると新ドラは。渡辺が仕掛けていたダブ東が乗り、渡辺も臨戦態勢に。数巡後渡辺がカン待ちの親満聴牌を入れるや否やツモアガったのは大平。
カン ポン ツモ
役役ホンイツ・トイトイ・三暗刻であっという間の倍満ツモアガリ。相変わらず石井の本手がアガリに結びつかない。1~3回戦では捌き手こそ成就するものの、本手となり得る材料がそろっている時はツモが利かずひたすら耐える展開。今局は3巡目リーチで今度こそはという思いもあっただろうが、あっさり追い抜かれたアガリが倍満とは信じがたい展開であろう。
しかし石井には試練が続く。南2局石井は27000点持ち3着目
南家石井 14巡目 ドラ
ツモ 打
東家渡辺がを鳴いているがは生牌。実はこの時の渡辺の手牌が
ポン
この高目役満聴牌を果たしている。さらに次巡の石井はツモで少考。一度に手がかかった。だがここで選んだのは。次巡以降オリに回る。この胆力たるや・・・トータルポイントが現状最下位、本手がアガリに結びつかない我慢の展開が続くもここでも石井は顔を上げなかった。
「決定戦の方向を決定し得る一打を劣勢・チャンス手ながら我慢した石井にこの後ものすごい牌勢が!」「ピンチの後にチャンスあり!」
などという短絡的な展開にはならなかった。そんなことが保証されているのであればいくらでも我慢する。その後報われるかどうかはわからないし、この牌が放銃となる確率は50%もないけれど、それでも客観的かつ冷静な判断の元、丁寧に自分に利する一打を選択し続ける。石井はそれをひたすら繰り返していた。
石井が3着目で迎えた南4局でも (大平518―いわま303―渡辺130―石井249)
渡辺のリーチを受けつつ、石井はこの聴牌を入れる。
ツモ 打 ドラ
追い掛けリーチを打ってアガれば1着順アップ、放銃あるいはリーチ棒を出した上で渡辺に満貫をツモられれば渡辺3着自分が4着になるという場面であり、渡辺の捨て牌は
となっていたが、安全度を重視して打とし、待ち牌のと心中は図らないヤミテンを選択。3回戦終了時トータルトップだった渡辺に利する結果にならないようここでも我慢を続ける。結果はその巡目で石井は渡辺からを出アガリ。石井3着、渡辺4着のままと着順を変えないアガリで終局させた。
4回戦スコア (4回戦終了時トータルスコア)
大平+51.8p (+23.5p)
いわま+10.3p (+38.0p)
石井▲10.9p (▲89.6p)
渡辺▲51.2p (+25.1p)
4選手がそれぞれの持ち味を如何なく発揮した1日目の対局が終了した。石井が一人マイナスを背負っているが、これは決して崩れた訳ではなく、このマイナスポイントによく抑え最終日に繋げたといったところ。プラス域のいわま、渡辺、大平もその差は1着順差に満たない僅かなもので最終日はまた横一線でのスタートとなる。上位3名が牽制を続ければ石井にも浮上のチャンスは生まれやすい。
一つのミスが命取りになりかねない大接戦特有の緊迫感も予想される最終日、どの選手がどのタイミングで勝負に打って出るかの駆け引きにも注目である。
第16期女流最高位の誕生まで残り4回戦。
文・高倉武士
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・選手紹介、インタビュー
・5回戦、6回戦(ダイジェスト映像)
・7回戦、8回戦(全編ノーカット収録)
・表彰式
・特典映像
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