コラム・観戦記

最高位戦プロアマリーグ2016決勝 観戦記 品川直

今回で二期目となる最高位戦プロアマリーグ
延べ参加人数298人にも上る団体所属者・麻雀愛好家の中で決勝に進出したのは …

プロアマ2016
写真左から、
中西 龍 さん  一方井 潤 さん  阪口 悠 さん  芦田 哲也 さん (以降文中敬称略)

準決勝までにプロ団体所属者が全員敗退となり、一般参加4名による戦いとなった。
麻雀愛好家の方々の層の厚さはこの時点で身に染みた。
しかし、そんな思いをさらに上回る対局がここから始まるのであった。

 

1回戦

起家から阪口・芦田・中西・一方井

東1局 ドラ

東家阪口が4シャンテンの配牌を6巡目先制立直

開局早々の親立直に誰も向かってる人いないなぁと思っていたら12巡目に南家芦田から「リーチ」

宣言牌は1枚切れの
回っていたのではなく、はっきりと手作りがうかがえる。
結果は同巡に安全牌のない北家一方井が中スジので親に3900点の放銃。
1回戦東1局からバッチバチである。

1本場は北家一方井の立直を西家中西が400・700でかわし、立直棒込みで2800点の収入。

その後一方井が芦田から2000点、6400点とあがり、東4局 ドラ

12巡目立直の南家阪口が一発高めツモの跳満で大きく抜け出した。

 ツモ

南1局 ドラ

46100点トップ目の東家阪口に大物手が入る。

10巡目
 ツモ

このイーシャンテンで阪口が選んだのは場1のを残して生牌の
同巡北家一方井がを合わせると西家の中西が2鳴きのポン。
結果論を言うと、一方井はドラなし七対子の2シャンテンからで、生牌ならを打ち出すことはなかった。
この時、東家と北家の間で見ていた筆者は阪口のツモるはずだったと続けて流れていくのを目の当たりに …
結局この局は中西が一方井から1000点をあがり阪口の大物手を潰す格好になった。

南2局はここまでいい所のなかった芦田が親を迎えて自然な手順で値千金の4000オール。

(立直) ツモ  ドラ 裏ドラ

芦田自身この決勝初あがりで、なおかつこれで阪口以外3者がグッと近付く形になった。

が、1本場にその芦田が阪口に満貫を放銃してしまう。

 ポン ロン  ドラ

東家芦田

からの放銃であった。
もう16巡目、ドラ色ホンイツ模様の阪口はピンズを余らせている、打ったらまず満貫以上だろう。
すべて分かった上での少考後切りに、芦田のこの決勝に向ける意気込みを見た。

結局この半荘はオーラスの海底に力強く満貫をツモった中西が2着に滑り込んだ。

1回戦結果
阪 口  +48.4
中 西  +10.9
一方井  ▲18.1
芦 田  ▲41.2

1回戦を見て感じたこと

決勝戦は予選と異なり時間制限なしで行われる。
つまり、いくら長考しても問題ないのだが、4人とも摸打が速い、というより決断が速い。
確かに「考える」「悩む」という行動はそれだけで他者に情報を与えてしまう。
麻雀は一打一打で状況が変わるので、情報処理能力のスピードと正確性がプレイヤーには常に問われ続ける。
必然、考える脳はお疲れモードになるので、自然と摸打は遅くなりがちなものなのだが。

 

2回戦

起家から芦田・中西・一方井・阪口

またもや東1局からアチチ ドラ

東家芦田 立直

南家中西

 ポン ポン

西家一方井

 ポン ポン

三者とも勝負手のめくりあいは芦田がツモり裏も乗せ4000オール。
1回戦ラススタートの芦田が先制する。

1本場は芦田立直の1人聴牌流局。

2本場も芦田先制立直 ドラ

ドラ暗刻親立直だ。
しかしこの局もう1人勝負手の人間がいた。

北家阪口

ピンズは何を引いても聴牌というイーシャンテン。
芦田立直の一発目に引いたのは無筋の
そしてほぼノータイムで安牌の
1回戦トップだからではなく、きっとこれが阪口のスタイルなのだろう。
次巡また無筋を引いてオリる阪口の表情は何も変わらない。
これも芦田の1人聴牌流局。

3本場4巡目先制立直はまたもや芦田 ドラ

開局4局連続立直。
周りは堪ったものではない。
この立直ラッシュをいなしたのは南家中西。
を緊急回避両面チーして次巡タンヤオのみをツモあがる。
親立直を交わし3本場と供託3本込みの大きなあがりだ。
東場は大きな動きなく南入。

南1局 ドラ

南家中西

 ポン

僅差の2着目から高めツモで跳満の聴牌。
そこに東家芦田この半荘5回目の立直。

しかしあがったのは西家一方井。

 チー ツモ

をチーして即ツモり2人の大物手を交わす。
さすがに芦田もこれだけ立直が空振ると嫌だろうなぁと顔色を窺うが曇っているようには見えない。

南2局 ドラ

北家芦田が4巡目から仕掛ける

 ポン 打

トップ目という事もあり受けも利きやすい七対子ではなく、動いて果敢に攻める道を選ぶ。
これに対し、親の中西以外は対応していたが、中西はドラを躊躇なくツモ切る!
それを見て芦田は2副露のノーテンから敢えて聴牌に見えるようにソーズを余らす!
目まぐるしい攻め合いが見られる。
そして中西15巡目

芦田からツモ切られる
現状3着目でこの親番はとても重要、だが生牌のを引かされていて、安易に形式聴牌を取りづらい。
事実この時は芦田への満貫放銃となる。
手を止める中西 。。。
そして少考後「チー」
!堪えた!
次巡ツモで親番維持に成功。
この連荘でさらに加点とはいかなかったが、正に秀逸な攻防を見せていただいた。

南3局 ドラ

この半荘ずっと我慢している阪口に謎かけのような何切る(5巡目)

 ツモ

何かを得ようとしたら何かを失うという手牌。
阪口が選んだのは
上からな物言いになるが、ただただ素晴らしいの一言。
ドラ引き・ドラ面子にも対応、マンズが伸びた場合のタンヤオも逃さない。
との違いは三色が345でも456でもが1枚は余るからだ。
この手を時間をかけながらミスなくまとめ

(立直) ロン

この満貫を芦田からあがり全員がトップを狙える位置に。

南4局

3200点差の一方井を追う立場になった芦田は、逆転手の聴牌を入れるも親立直にオリて流局。

1本場は中西が誰の着順も変わらないが、1回戦トップの阪口がラスのままならOKというあがりで2回戦を締める。

2回戦結果 ( )内はtotal
一方井  +37.0 (+18.9)
芦 田  +12.4 (▲28.8)
中 西  ▲13.2 ( ▲2.3)
阪 口  ▲36.2 (+12.2)

 

 

3回戦

起家から阪口・一方井・中西・芦田

東3局3本場 供託2000点 ドラ

東家中西7巡目

 ツモ 打

元々789の三色が一番高打点の手牌。
ソーズの2度受け拒否しながら567も見ての手順、面白い!
しかしこの局の主役は北家の一方井だった。

 ポン ポン ツモ

ドラ暗刻で何とかものにしたいと思う道中、メンゼンでピンズを単独だけしか持っていないところに来たを手に留めて成就させた対子手役MAX手順であった。

その後大きな動きなく南2局

トップ一方井まで5600点差まで詰め寄った西家芦田がをポンしてピンズのホンイツへ。
しかし中盤に聴牌打牌のドラのが親の一方井の今聴牌七対子に当たってしまう。
致命的な9600点放銃に思える反面、単騎に受けることもできたが、点差を考えると多面待ちに受ける方がごくごく自然なのでやむなしか。

1本場は芦田が阪口から立直七対子裏2をあがって粘りを見せる。

南3局

今度は東家の中西が立直ツモ七対子で3200オール。
珍しい3局連続の七対子和了。

1本場は中西が西家阪口から1500は1800。

2本場

西家阪口の対々仕掛けに翻牌を押さえるトップ目の一方井。
しかし点棒状況を考えるとこの半荘ラス目の阪口にはむしろ頑張ってもらいたい局面。
自分の手が厳しいのなら、アドバンテージのある内に、たとえロンと言われても阪口のアシストを考えても良かったのではないだろうか。
そして一方井以外の3人聴牌で流局し3本場。
芦田の跳満が炸裂する。
これにより芦田が僅差ながらトップでオーラスの親を迎えた。

東家 芦 田  41900点
南家 阪 口   7500点
西家 一方井  39200点
北家 中 西  31400点

それぞれが目標を掲げて臨む南4局。
誰よりもここまでのスコアの載っているボードを確認していたのはこの半荘ラス目の阪口であった。
この半荘自分の着順が上がることは現実的に厳しい。
では最終戦に向けて自分のやるべきことは?
阪口の出した答えは、
①2回戦までtotalラスの芦田にこのままトップを取ってもらう。
②願わくばtotalトップの一方井の着順が下がる方が平たくなる。
といった所か。
つまり芦田からの出あがりは2600点までと設定していたと思われる(筆者主観)

コンセプトを決めた阪口はを1鳴き、そしてドラのを切った。
マンズがからドラのを敢えて切ったのだ。
「安い手で終わらせようとしてますよ?」と上家の芦田に伝える作戦だ。
順位取りの重要な最高位戦ルールでは、自身だけではなく相手の条件も肝要な情報である。
不聴罰符でも一方井にまくられかねない芦田の立場からしたら、安く流してくれるのは御の字だ。
きっと芦田は鳴かせてもくれるだろうし差し込んでもくれるだろう、そのためのドラ切りである。
しかしながら今回はこの作戦が失敗に終わる。
なぜなら東家の芦田に手が入ったからだ。

芦田 立直

こうなると叩ける時に叩くのが麻雀。
素点は正義だって誰かが言ってたなぁ。
これをあっさりツモって4000オール。

1本場は満貫で2着になれる中西が満貫確定のホンイツ仕掛けをするが、一方井の立直に逆に満貫放銃となった。

3回戦結果 ( )内はtotal
芦 田  +53.9 (+25.1)
一方井  +24.5 (+43.4)
中 西  ▲20.9 (▲23.2)
阪 口  ▲57.5 (▲45.3)

そして最終4回戦を迎える。

 

4回戦

まず各々の優勝条件の確認が行われる。
一方井・芦田はお互いの着順勝負。
中西は自身のトップと上位2人を沈めなおかつ並びを作る。
阪口は中西の条件プラス素点も必要。
いよいよ最終戦。
否が応でも各人の感情が伝わってくる。

起家から中西・一方井・阪口・芦田

開局から一番苦しい条件の阪口が魅せる。

東1局

中西からあがり8000

東2局

立直して流局。

親を迎えて東3局

この立直を17巡目に力強くツモり4000オール。
素点が絶対必要条件の中、見事なまでの三色パレード。
これで50000点を超すもまだ、並びかさらなる加点が必要、苦しい。
着順勝負の上位2人は次局不聴罰符で一方井が一歩リード。

東4局

東家芦田5巡目

このイーシャンテンにツモで聴牌。
一呼吸置いて河に置かれたのは
ドラもない5巡目。
親とはいえこの巡目この形から棒リーチは打たない、というのが芦田の競技麻雀スタイルなのだろう。
決勝戦の最終戦と、緊張感MAXな場面で平静に麻雀を打つ芦田が、筆者には大きく見え心の中で感服した。
この局は何かを感じとったか一方井がすぐに鳴いて捌いて400・700

南入して各自の持ち点
東家 中 西  20200点
南家 一方井  28300点
西家 阪 口  49300点
北家 芦 田  21900点

南1局

先制立直は阪口。
芦田が一発目に現物を切ると先に聴牌を入れていた一方井が牌を倒す。
「1300」
リードを保ったまま局を消化していく。
このあがりにより一方井と芦田の点差はちょうど10000点。
同時に最後の親が落ちた中西の優勝も現実的なものではなくなってしまった。

南2局は阪口が立直ツモの1300・2600

南3局 ドラ

1巡目から北家一方井が仕掛ける。

をポンして

 ポン

ツモ次第で1段目にあがれてもおかしくない牌姿だ。
しかしツモが利かず。
同じく連荘必須の阪口も手が重い。
中盤芦田がWを仕掛ける。
終盤11巡目中西から立直。
これを受けて一方井は対中西には安牌が厳しくストレートに手を進める。
そのまま苦しい形ながら聴牌を維持し運命の16巡目。
立直には通っているを一方井がツモ切ると、最悪な相手からこの決勝戦最後のアガリ発声が
南家芦田

 ポン

ドラ3の8000!
ロンと言われ手牌を倒されるまでの瞬間、筆者の目に一方井の「やってしまった」という表情が映ったのが印象的だった。

南4局

芦田を逆転する条件の手牌は誰にも入らず、東家芦田は牌を伏せ終局した。

4回戦結果 (最終結果)
阪 口  +54.8 ( +9.5)
芦 田   +8.3 (+33.4)
一方井  ▲20.0 (+23.4)
中 西  ▲43.1 (▲66.3)

 

第4位 中西 龍
「最終的に大差の1人負けのスコアで悔しいです。また次回頑張ります。」
中西

随所に光る打ち筋を見せてくれた。
一番摸打が速かったのも中西さん。
大きな放銃はなかったが、満貫以上のあがりがこの決勝戦で1回ではさすがに厳しい。

 

第3位 阪口 悠
「力不足です。まだまだ強くなってまた挑戦します。」
阪口

リードしている展開での守備力・競技麻雀における他者との相関性を鑑みる精度には瞠目させられた。
最終戦での手作りと追い込みは見事だった。

 

第2位 一方井 潤
「最終戦南3局まで優勝ポジションだったのに、あの満貫放銃が致命傷。あれがすべてです。」
一方井

確かにあの放銃により優勝が手を離れてしまったが、そこまでの道中の手数・局消化ともに妙妙たる技術であった。
一番最初に会場入りしたのは一方井さん。
一番落ち着いて打てているように見えたのも一方井さんに筆者は見受けられた。

 

優 勝  芦田 哲也
「決勝戦に残ることをまず目標にしていました。その目標をクリアしていたゆえ自分の中では気楽に臨めました。
決勝4人の中では自分が一番力量不足だと思っていたので、自分の麻雀を後悔しないように心掛け、そうしたら結果がついてきて良かったです。」
芦田

そう、一番攻めの姿勢を貫いていたのは芦田さんだった。
この観戦記を御覧の方も気付いているかもしれないが、芦田さんの細かいあがりは書かなかったのではなく、存在しなかったのだ。
それほどまで厚みのある麻雀をやり切った結果の優勝であった。

 

こうして幕を閉じた最高位戦プロアマリーグ2016、すでに来期の開催も決定している。
この観戦記がきっかけとなり、多くの方々に御参加いただければ幸いである。

 

( 文 : 品川 直 )

 

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