コラム・観戦記

第35期最高位決定戦③

初日、大敗を喫した。
もちろん、メンツを考えればベストを尽くしたとしても100以上負けることもあるだろう。
ただ、初日はベストを尽くせなかった。それが本当に悔しかった。だから久々に髪をバッサリ切ってみた。
土田さんの観戦記にもあった通りなのだが、デジタル派のくせにと思う方もいるだろう。
別に髪を切れば配牌やツモが良くなるかも、と思ったわけではない。
二度とミスを犯さないよう、自分に喝を入れただけである。
ゲン担ぎやお参りなど、麻雀に関係ないことはいろいろやっている方だと思う。
さて、気持ちも新たに迎えた半荘5回戦、西家水巻の先制リーチに対し、白のトイツ落としから有効牌を4連続で引きこみ追いかけリーチ、水巻から8000を討ち取る。

 

 

 ドラ

決定戦初トップなるか…
だがしかし、この半荘この後自分の中ではベストを尽くしたにもかかわらず、なんと1700点持ちのラスで終了している。
飯田がツモりまくって9万点を超えるのだが、きっかけとなった西ポンもミスとは思っていない。

西家  ドラ

3巡目に親の飯田から出た一枚目のをポンしたのだが、この鳴きの4巡後に飯田がリーチ、一発で8000オールをツモった。
この結果を見て「村上のポンのせいで8000オールをツモられた」と言う人間はいまだに多い。
だがしかしよく考えてほしい。自分が西をポンした3巡目、「この鳴きで飯田が8000オールをツモる」とわかる人間はいるのだろうか?
あるいは「鳴かなければ8000オールなどツモられない」と断言できる人間はいるのだろうか?
ツモ山が変わる、ということを気にする人も多い。
しかし牌山など便宜上順番に並べられてはいるが、理論的にはどこからツモろうが起こり得る事象は同じはずだ。
山が上がって来た瞬間にどこにどの牌があるかなど絶対にわからないはずだからだ。
このような考えを「デジタル」あるいは「反オカルト」と呼ぶのだと思う。
話を元に戻そう。ようは、3巡目にを 鳴くことを「自分のアガり率を下げている」または「安全牌を減らす行為であり、得だとは思えない」と論じたいなら話はわかるのだが、「こんな不十分形から 鳴いたからあり得ない8000オールが生まれた」とか「村上のポンさえなければ8000オールなど生まれなかった」と言うのは単なる「結果論」であり、常 に良い結果を求めるなら占い師かエスパーになるしかない。
実は初日の半荘2回戦、東1局1本場にも水巻が8000は8100オールをツモアガりしているのだが、その時は誰も鳴かなかったにもかかわらず「誰も鳴かなかったせいであり得ない8000オールが生まれた」と言う人間は少ない。
どちらも同じ8000オールであるのにだ。
もちろん、山のどこからツモろうが8000オールをツモアガる確率は変わらない。
何度でも言うが、山のどこに有効牌があるか、山がランダムに積まれている以上絶対にわかるはずがないのだから。
しかし麻雀を打つ人間の多くが先ほどの2つの8000オールを見て「鳴きによってツモられた8000オール」のほうだけ印象に残りやすい。
こうして記憶の偏りが積み重なり、「不十分形から鳴くと他家が大きな手をツモる」「不調者が遠い鳴きをすると最悪な結果になる」といった「オカルト理論」が形成されるわけだ。
真実を言い換えただけのオカルト理論もたくさんあるが、このような「鳴いたから」「山をずらしたから」というオカルト理論は全て結果論から導き出された「経験則」であり、真実ではない。
いま述べている一連のことは特定の誰かを誹謗、中傷するものではない。経験則が全て間違っている、とも思っていない。
自分がプロ入りした14年前、いや本当はもっと前から主張して来たことを、最高位になった今改めて主張しているだけだ。山はランダム。
昔から自分が一発消しのチーやハイテイずらしのチーをしてリーチ者がツモると「下手くそがいると困る」だの「そんな鳴きしなけりゃツモられないのに、麻雀知ってるのか?」だの毒づいて来る人間はいっぱいいた。
その度にぐっとこらえていたのだ、「下手くそはどっちだ!」と反論するのを。
自分はツモられないように鳴いているのではない。
ツモる確率は一緒なのだから、せめてツモられた時にイーファン下げているだけだ。
この「ツモる確率は一緒」の部分に噛み付いてくる輩もいっぱいいたが、根拠に納得できるものはひとつとしてなかった。
「流れ的にあたり牌を掴まない」「体勢からして先にアガり牌がいる」全て同じだ。
牌山が見えない以上そんな理論がまかりとおるはずがない。
キツい言い方になっているかもしれないが、14年主張し続けていることなのでご容赦願いたい。
少々脱線して来たので話をもとに戻そう。
ポンで8000オールをツモられた局、決して「やっちまった」とか「鳴かなきゃ良かった」などとは思っていない。
鳴く瞬間は「少し遠いけど、ツモ次第では役役ホンイツのマンガンが見える。も一鳴きするべきだ」と考えていたのだ。
結果が悪かったから失敗だ、なんて思うくらいなら鳴くことなんて最初から考えない。
この日はこの5回戦こそダンラスだったが、続く6回戦でようやく決定戦初トップ。
7回戦は2着で内容も上出来だった。ところが8回戦、またもやミスが出てしまった…

南2局西家、18000点持ちラス目、6巡目に北家の崇が仕掛けた。

ポンで打、捨て牌は

マンズのホンイツが濃厚。
全て手出しだけにイーシャンテンにはなっていそうだ。
次巡、自分はツモ

 

 

は一枚切れ、は初牌。とても戦える手牌ではないのでオリは決定なのだが、親の水巻、南家の飯田ともにここまでほぼ手出し。
ダントツの飯田はともかく、20100点持ち3着の水巻はリーチにくる公算が高い。
三人テンパイになっても手づまりしないために二枚切れの字牌は切れない。
かといって自分と10100点差の二着目崇に簡単にアガらすわけにもいかないのでマンズも切れない。
よってピンズかソーズからの選択となり、親水巻と南家飯田に最も危険そうなソーズから切り出して行った。
ここまではミスではない。 9巡目、飯田がドラのをツモ切り。
トップ目の飯田が親にもあたる可能性があるドラのをツモ切り、7巡目の南切りではテンパイとは思わなかったが、ここでテンパイだと判断すべき。
ここまでも読み通りで良かったのだが、飯田の打点を完全に読み間違えた。
3巡目からの手出しを見ればチートイツも考えられ、はアンコからのツモ切りもじゅうぶん考えられる。
それなのに「ドラも切れて安いだろう。崇、水巻に打たない牌で飯田のヤミテンにあたるのはよしとしよう。
長引いて水巻がアガるよりはマシだろう。」と考えてしまったのだ。
その結果完全アンパイを何枚もかかえたまま親の水巻の現物を連打、二枚目のでタンヤオチートイツドラドラ放銃。

 

ドラ


見るも無惨な最終形での放銃、水巻にはテンパイが入っていないと考えているのならば、水巻の現物であるは後まわしにすべきだった。
水巻がリーチに来てで放銃したならまだ救いがあるのだが…
この半荘もまたラスで終わるのだが、オーラスの親でやっとアガりをものにした。
リーチツモチートイツ、16回目の親番でようやく初アガり…4800点持ちのダンラスとはいえかなり嬉しかった。
2日間半荘8回を終えて、マイナス180超えのダンラス。
首位の崇とは300以上の差。正直かなり落ち込んだが、落ち込んでいても全く意味はない。
残り半荘12回、悔いのないようベストを尽くすだけだ。

続く

コラム・観戦記 トップに戻る