シリーズ「3冠への道」いよいよ3つめのタイトル、最高位決定戦のことについて書くことになりました。
大学2年の冬にプロテストを受けて最高位戦日本プロ麻雀協会に入り、いつのまにやら14年の月日が流れました。14年目の昨年度は初タイトル(日本オープン)、2つ目(最高位戦クラシック)と勝つことができ最高の年になりましたが、やはり「最高位」に対してはまた別格の思い入れがあります。
過去二度挑戦して跳ね返された苦い経験もありますが、なんといっても決定戦までにAリーグ12人で半荘48回を戦い、さらに上位三人と最高位で半荘20回戦う…他のタイトル戦にはない重みが加わるのは間違いないでしょう。そもそも、Aリーグの12人に入るだけでもかなり狭き門なのですから、その重みは自分の中でも相当なものです。11年目にAリーグを一年間戦ってBリーグへの降級が決まった時、もう二度とAリーグには戻れないかもしれない、最高位に挑戦できないかもしれない、そんなものすごい絶望を感じたのを覚えています。
あんな思いはもう二度としたくありませんが、自分の実力不足だから仕方ないですよね。一度も降級したことのない飯田さん、金子さんの雀力には本当に頭が下がります… さて、そんなBリーグへの降級で一皮むけたのかはわかりませんが、昨年は2つのタイトルとともにAリーグも好調、12人中2位で自身三度目の最高位挑戦となりました。戦いをふりかえる前に、ともに飯田最高位に挑戦することとなった2人を紹介します。
まずはAリーグをぶっちぎり、夏頃には早くも確定ランプが灯っていた水巻渉。麻雀は基本に忠実、完璧なバランスタイプ。決して損だと思われる選択はせず、精密な麻雀マシンといったところ。マシンとはいえ対戦相手の表情やしぐさから心理を読むことにも長けていて、手牌読みも正確。特に弱点は見当たりません。自分が同年代以下で強いと思う後輩の一人です。
そしてもう一人、佐藤崇。自分が尊敬する古久根プロの門下生で、バランスよりも読みを重視するタイプ。場読み、手牌読み、どちらももちろん正確で、読みと現実がマッチした時は我々バランス派には決してアガれないアガりを見せつけます。タイプは全く違いますが、こちらも強いと思える後輩です。
簡単に言うと、年下では間違いなく最も強い2人がともに決勝に残ったわけです。もちろん麻雀の強さなどは主観が入るため正確にはかれるものではありませんが、実績や読みの精度、手組みの正確さ、全て一流であると言えます。
もし最高位戦で「俺はこいつらより絶対強いぜ!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ僕のところまでご一報ください!!
そんな最強の三人と戦う最高位決定戦、どんな戦いになるのか始まる前からワクワクしていました。飯田永世最高位は、「今回の決定戦は、麻雀バカ決定戦である」とおっしゃっていました。言い方を変えると、「4人の中で最も麻雀を愛している奴が優勝する」という意味です。
デジタル的には打ち手がどれだけ麻雀を愛していても、配牌やツモとは全く無関係であることは言うまでもありません。ですが飯田さんが言いたかったのはきっと「お前ら俺より麻雀好きか?俺より人生かけてるか!?俺はそうでない奴には最高位は譲らん!!」こんなことだったんだと思います。深読みしすぎかもしれませんが、飯田さんは決定戦の前に大病を患い、「今回が体力的に最後の決定戦かもしれないな…」とつぶやいていました。
麻雀に対する愛情、情熱…永世最高位が大切にしていた「麻雀打ちにとって一番大事なもの」を教えてくれていたんだと思うのです。いささか感傷的になりすぎましたが、ようは「麻雀を愛している」ことに関しては最高位戦、いや麻雀界でも誰にも負けない!!と思っている自分にとって、飯田さんのコトバはかなり気合いが入るものでした。
しかも決定戦の観戦記を書いていただく事になったのは、なんと麻雀界のスーパースター、土田浩翔プロ!!素晴らしい内容で最高位になって、2代目のミスター最高位になってみせる!2人目の永世最高位は俺だ!!決定戦初日が近付くにつれて、テンションがどんどんアガって行きました。
ま、テンションがアガり過ぎるのは自分にとっては良くないことなんですけどね。デジタル派は「冷静さ」を失ったら決してベストの選択はできませんから…
そんなこんなで第35期最高位決定戦、初日をむかえることとなりました。前置きが長くなりましたが、ここからようやく自戦記に入ります。
次回へ続く
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