コラム・観戦記

日本オープン⑩

第10話

最終半荘、起家から村上、鎌田、近藤、山下の並びとなった。
自分がラス親になるのが理想だったが、鎌田が南家なら文句はない。
今までタイトル戦の決勝戦、最終戦でこんなに有利なことは一度もなかった。
マスターズ、發王戦、初の最高位決定戦、いずれも最終半荘は10万点以上の大トップ条件、いわゆるほぼ目なしの状態。
2度目の最高位決定戦、最終半荘は4人がトップ条件という過去に例を見ない激戦、最後まで最高位になれる可能性はあったのだが、逆に言えば75%は最高位になれない運命だった。
ところが今回は自分がラスにならなければほぼ優勝。
自分が1万点持ちのラスになったとしても、鎌田が5万点トップでなければ良いのだ。同じ条件なら近藤は87600点必要。
山下もラス親であれば優勝の可能性は消えないので、アガれる手は普通にアガりに来るハズだ。近藤、山下もアガりに来るならば、鎌田がダントツになる可能性もさらに下がる。

とにかく、ここからミスを犯して優勝を逃したならば一生後悔するくらいだいたい優勝だ。
ミスなく打てばよい。

東1局、4巡目に西家近藤からリーチがかかる。
自分は親番、リーチを受けた時

ドラ
を切ればイーシャンテンだが形が悪い。
安全牌がなければ
くらい切るところだが、リーチ宣言牌が。素直に切りでオリに回る。
実は全ツッパしていると12巡目にリーチ、14巡目におそらく

ツモ

こんな8000オールを引きアガるのだが、牌譜を検証してもテンパイの前に無筋を6枚勝負しなくてはならない。追いかける立場であればアガりもあったが、この状況では不可能だと思われる。
この局は近藤以外三人とも受けに回り、無事流局した。

その後も自分以外に先制で仕掛けやリーチが入り、自分は鉄壁のガード。
三人がツモりまくればダンラスになる可能性はあるが、幸い南1局までアガりは鎌田の400700のみ。19800点持ち、山下と同点ラス目という状況で最大の山場、鎌田の最後の親番を迎える。

南2局2本場5巡目、27900点持ち2着目の鎌田からリーチがかかった。
白のトイツ落としでリーチ、ほぼリャンメン以上のリーチだ。ツモられないことを祈るが、12巡目にツモ。メンピンツモドラ1。この2600オールで鎌田がトップ目にたつが、まだ条件クリアまでは遠い。

焦ることはない。
苦しいのは確実に向こうなのだ。
裏ドラがなくてかなり悔しそうな鎌田の顔が印象的だった。

3本場、5巡目、自分にとうとう先制のテンパイが入る。

ドラ

ピンフドラ1で軽く流して…とはいかない。
なぜなら自分は北家だからだ。
2番手の親にだけは打ってはいけない条件、ダマテンがセオリーなのかもしれない。
しかしやはりここも自分はリーチを放った。
アガればほぼ優勝を決めるリーチだ。

リーチの瞬間、は山に6枚あった。
しかしことごとく近藤と山下の元へ流れ込む。
そしてとうとう15巡目、恐れていた鎌田の追いかけリーチがかかった。
とはいえ、現実の鎌田の追いかけリーチは二枚切れのカン
、自分が1枚使っている。
ここで自分が
を放銃していたとしても、自分は5巡目の先制リーチが間違いだとは思わない。
タイトル戦の決勝は確かに特別な場ではあるが、麻雀は毎日毎日打っている麻雀と同じはずなのだ。
そうそうドラマティックなことなど起こらないのだ。
この局も二人テンパイで流局した。
むしろ、リーチ時点で山に6枚残りのリャンメンが引けず、相手のリーチ者のところにも行かずに流局してしまったのだ。俺がホッとする必要はない。

南2局4本場、12巡目、ようやく山下がこの半荘初のリーチと来た。
鎌田は打ったらほぼ終わりだが、親が流れても優勝はかなり厳しくなる。
終盤に山下が切った牌を2つポンしてなんとか形式テンパイを組んだところで、山下がツモ牌をそっと引き寄せる。

 

ツモ

リーヅモメンチンイッツー、40008000は44008400。
鎌田は親っかぶりで29400点持ちに。
自分は単独ラスに落ちたが、あと2局で鎌田と2万点以上の差ができた。

ラス前、南家山下が10巡目にまたも先制リーチ。
次巡親の近藤が追いかけリーチ。自分にとっては悪くない展開だ。
鎌田以外のアガりは優勝に近くなる。
山下が13002600をツモアガり、理想的な形でオーラスを迎える。
と、今回の自戦記はあえてここまでにしておく。
これ以上書いているとまた泣いてしまうかもしれないので。

なかなか劇的なオーラスの模様は、日本プロ麻雀協会ホームページの観戦記を読んでいただきたい。てなわけでプロ入り14年目、とうとうビックタイトルを獲得したわけだが、このタイトルによって飛躍的に麻雀が強くなるわけではない。
死ぬまで麻雀プロとして生きて行くと決めた以上、もっともっと強くなる必要があるのだ。
いつか「日本一麻雀が強いプロは村上淳」そう言われる日まで、ひたすら鍛練あるのみである。

これからも日本一麻雀バカの麻雀プロ、村上淳をよろしくお願いしますm(__)m駄文にお付き合いいただきありがとうございました!!!

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