コラム・観戦記

【東海Classicプロアマリーグ観戦記⑧】~震撼する11本場 東海に巻き起こった たろう無双

競技麻雀とは

例えばプロテストに

Q・「競技麻雀」は他の麻雀と何が違うのか、説明してください。

という設問があったら、あなたはなんと書き込むだろうか。

 

赤のない麻雀。
ノーレート麻雀。
作法の良い麻雀。

 

なんとなくこのようなイメージを持っている方もいるかもしれない。しかしそれでは赤文字でペケを付けられてしまう。

 

答えは

A・参加者が一定の期間のもと、一定の条件を競う麻雀

である。

 

「4人で20半荘を打ち、1位のみが勝利」
「20人で48半荘を打ち、上位4名が勝利(昇級)下位4名が敗北(降級)」

などが競技麻雀であり、赤などのルールや作法などは関係ない。(Mリーグだって競技麻雀だ)

 

「1半荘のトップ縛り」
も競技麻雀。なんなら

「1万点あたり100ccの血液を抜く」
も競技麻雀…にはならないかー。

その日だけの勝った負けただけでなく、長期に渡っての条件を競い合う麻雀というのは面白い。参加者がそれぞれの条件を抱えて戦略を練り、それを加味して選択するのもまた戦略となる。1戦の結果が他の1戦にも影響を及ぼす。1つのミスで勝利条件を逃す…など、中身が濃くなり、結果自身の成長にもつながりやすいと言えるのだ。

 

というわけでClassicプロアマリーグの最終節である。

この日、4半荘を終えた後にベスト8・12に進出した者の名前が読み上げられ、ホワイトボードに書かれていった。
長きの戦いを経て勝利条件を満たした者の発表は、いかにも「競技麻雀」という感じがして、いいなと私は思った。

そして今期最後のエキシビションマッチが始まる。

 

東家・伊藤高(最高位戦)
南家・大河内茂之(一般)
西家・府川琢磨(一般)
北家・鈴木たろう(ゲスト)

 

麻雀は自由

東1局、まずはゲストのたろうの手牌を見てほしい。

大物手の炸裂を匂わせる配牌である。を切って次にツモってきたのが…

ざわざわ…。いきなり勝負が決してしまうかもしれない。

をポン、チーで音速のテンパイ。

役満にこそならなかったが、Classicでは満貫でも十分大きい。
しかし待てど暮せどは出てこない。

たろうはこう感じたという。

 

(みんなエキシビションの東1局ということで、硬くなってるな…)

 

たしかに大河内も府川もエキシビションは初めてだ。
たろうは、開始前の挨拶でこう語っていた。

「麻雀は自由です。遠慮せず切りたい牌を切りましょう!」

「遠慮はするな」は、セオリーにとらわれず自分が良いと思った道を進もう、とたろうがいつも語っているフレーズである。

 

硬くなっている3人を見て、たろうはこう思ったという。

(エキシビジョンの直前にも、麻雀は自由!と念を押しておけばよかったぜ…)

こうして最後までは顔を見せることなく流局した。
本来、Classicでは流局したらテンパイノーテンに限らず手牌は伏せるのだが、たろうが悔しそうに手牌を開ける。

 

たろう「みんな硬すぎだよ、リラックスリラックス!」
緊張感が漂っていた場に笑いが生まれる。

しかしたろうの意に反して、場は重たいまま進んでいった。

東2局1本場、流局。
東3局2本場、流局。

 

Classicにはよくある展開ではあるのだが、全て流局で東4局まで進んでしまった。
そして、たろうの親番を迎える。

 

爆発の幕開け

東4局3本場

 

「ロン、12000は12900」

チートイツをテンパイしていた府川からの直撃。
しかし、これはたろう劇場の幕開けにすぎなかった。

 

4本場、たろうは5巡目にチートイツのみをテンパイ。

単騎だからリーチしてもいいが
(みんな硬いし、積み棒も大きいからな)
とダマテンに構え、またしても府川から2400は3600のアガリ。

 

5本場

「リーチ」

今度はリーチといったたろう。それを受けての大河内の手牌。

(捨て牌はたろうのもの)

ドラ2枚のチャンス手。
しかし、安全にイーシャンテンを維持することはできない。

 

「中途半端でしたね」
後にそう語った大河内が切ったのはだった。
たしかには押しにもオリにもなっていない選択に見える。

 

「ロン、7700は9200」

 

たろうのダメ押しともいえる手が倒された。

大河内はプロアマリーグの参加をきっかけに競技麻雀にハマった男である。
2年前だろうか、手付きすらおぼつかなかった記憶がある。
実際に全節マイナススコアで、いかにも初心者という感じだった。

 

しかし大河内は諦めなかった。
勉強会に参加し、セットを組み、団体問わずいろんな大会やリーグ戦に参加した。
たった2年で見違えるほど上手くなった。エキシビジョンにいてもなんの違和感もない。

諦めるも何も、大河内にとって麻雀が、いや「競技麻雀」が楽しかったのだ。

「真剣な雰囲気が何よりかえ難い」と「競技麻雀」の魅力を大河内は語る。

 

だから初心者の方も大河内を見習って、臆せず参加してもらいたい。
さて実戦に戻るが

 

6本場、タンピンツモ 1300は1900オール

7本場、のみ 1500は3600

8本場、ピンフのみ 1500は3900

 

とたろうは連荘を重ねていく。
ここらへんまでくると、打点上昇よりも積み棒の方が大きくてリーチしづらくなったとたろうは苦笑する。

9本場、府川のリーチにたろうがオリて流局。
果てしなく長いたろうの親番が終わった。

 

なんとここまで、たろうしかアガっていない。
伊藤と大河内の後ろで見ていた私は、どうやって観戦記を書くんだと頭を悩ましていたところで伊藤がピンフのみの1500は4500のアガリ。

11本場は大河内が「400/700は1500/1800」をスッと申告したのが幕引き。
通常Classicルールだと60分の制限時間内に終わることがほとんどだが、あまりの爆連荘にここで最終局の声がかかってしまい、最後もたろうが300/500をアガって終了となった。

 

競技麻雀は楽しい

痛恨の放銃でたろうのトップを決定付けてしまった大河内だが

「痺れる場でたろうさんと打てて本当に良かった」

と語る。またアガリのなかった府川も同様に「楽しかった」と笑顔で語った。

ちなみに府川は、裏ドラやノーテン罰符のない麻雀が大好きで、Classicルールをメインに打つ今どき珍しい打ち手である。

 

私は昨年までアマチュアとしてプロアマリーグに参加していた。
プロとアマチュアがまじり、長期間にわたって成績を競う場所はなかなか無く、普段の成果を見せる場として、とても貴重に感じていたものだ。

今もその気持は変わらないつもりでいるが、大河内や府川をはじめ、笑顔でエキシビションマッチの感想を語る姿を見て、プロアマリーグの大切さを再認識させられる。

 

そうこうしているうちに、2023年度のプロアマリーグの予定が発表された。

 

各地方本部・支部プロアマリーグ2023 参加者募集開始!

 

今でこそプロ側で迎える立場になったが、真剣に麻雀を打つこと、そして競技麻雀を楽しむ気持ちには変わりがない。

 

麻雀を楽しむ気持ち、そして真剣に打つ気持ちさえあれば現状の実力なんて関係ない。
1人でも多くの方の参加をお待ちしております。

 

文:沖中祐也

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