コラム・観戦記

特集:「最高位戦プロを目指すあなたへ」~先輩からのメッセージ~

全国各地で年に2回開催される最高位戦プロテスト。
プロテストに合格するために必要なこととは?最高位戦はどのような人材を求めているのか?
そもそも最高位戦という麻雀プロ団体は今どこに向かって進んでいるのか?

最高位戦プロとして最前線で活躍しつつ、団体の運営にも中心的役割をもって携わっている3名にそれぞれの視点で話を聞いた。

そして、最高位戦プロに挑戦しようとしているあなたへ贈る、先輩からのメッセージ。

インデックス

▼最高位戦日本プロ麻雀協会の方向性
▼一人のプロとして感じる最高の喜び
▼私たちが最高位戦に入会したきっかけ
▼受験したときの自分自身へ、今だから伝えたい言葉

▼最高位戦プロテストの概要
▽評価のポイント
▽近年の受験者の傾向と特徴
▽みんなが緊張する実技試験。「準備」と「失敗の捉え方」
▼あなたへ贈る、先輩からのメッセージ。

 

最高位戦日本プロ麻雀協会の方向性

–最高位戦日本プロ麻雀協会とはどんな団体なんでしょう?

 

園田:まず何よりも、麻雀という競技に対してすごく真面目なのかなとは思っています。麻雀の競技性を保つために、厳しく、そして細かい決めごとを作るなど、公平性を重視している。例えば、この「公平性」というのは最高位戦の他の部分にも表れていて、何か新たな決めごとを作るときに選手総会で決議するものもあれば、理事会で決定されるものもある。じゃあこの理事会メンバーはどのように選出されるのか?というと、それも所属会員による選挙で、入会後2年経過すると選挙権・被選挙権が与えられるので・・・

新井浅見:(顔を見合わせる)

–えっと、つまり、まとめると「開かれている」ということでしょうか?

園田:(笑)そうです。「開かれている」ということですね。そういった部分が僕は好きです。いい団体だと思います。

新井:最高位戦は何と言っても、「麻雀を真剣に取り組みたい」「とにかく競技麻雀を強くなりたい」という人に一番オススメしたい団体です。みんなすごく麻雀が好きで、麻雀の研鑽に時間を惜しまない人たちが周囲にたくさんいます。そして最高位戦リーグには最も歴史と伝統があるという価値もあったとは思うのですが、最近の最高位戦からはその伝統に縛られずに、色々と変わろうとしている動きも見えます。そういう意味では伸び代もまだ多分にある団体なのだろうなと。

浅見:現在全国に7つの拠点があり、本部・支部間の交流も盛んなので、居住エリアにとらわれず、プロ活動が行えるというのも特長の1つでしょうか。今後も拠点を増やしていく予定があると聞いていますし、より活性化していくと予想します。女性目線でいうと、最高位戦で活躍している女流選手は、家庭があったり、お子さんがいたりする方の比率が高いなと感じています。他団体と比較すると、所属女流選手数自体は多くはなく、現行の女流リーグのシステム、産休・育休制度も見直しを図りつつという段階ですが、30代、40代になっても輝ける道が示されているということで、長きに渡って活躍できる環境があるというのは良い面ではないかと思っています。

–今みなさんからは最高位戦の特長的な部分を挙げていただきました。反対に発展途上な部分、あるいは弱い部分というのはありますか?

園田:やはり「競技性」とか、「競技麻雀の追求」ということを重視するあまり、対外的にどう見えるのか? 受け入れられやすい見られ方はどういうものか?ということに対する意識が希薄であるということでしょうね。これはおそらく、飯田正人永世最高位の影響が大きくて、当時は純粋に「強さだけを追求する」という志向の選手が多かった。飯田さんもご自身の麻雀を見られることを強く嫌っていた時代があったくらいです。その延長線上に今の最高位戦があるので、どうしてもエンターテインメント、あるいは娯楽放送としてご覧いただくには不向きな一面もあった、というのが今までの最高位戦の弱点だったと思います。

浅見YouTubeの新津代表・近藤副代表の対談企画でもお二人がそのことに触れていましたよね。エンタメ、ファンサービス面でどういうことを最高位戦が提供していけるのか。うちのツートップもそこに問題意識があるわけですから。最高位戦は今まさに変革期で、従来の麻雀力を基盤に、エンタメ力もつけてどんどん発信していこうとトライしているタイミングですね。

–現状に留まらず、さらなる第一歩を踏み出した段階ということですね。

新井:去年くらいから最高位戦が急激に変わったなと感じています。ぼくは理事を抜けて、ある意味外の視点から最高位戦を見る機会が増えたのだけれど、特に映像・YouTube関連では変化、進化しているなと感じとれることがたくさんありました。

一人のプロとして感じる最高の喜び

–変革期を迎えているそんな最高位戦のトッププレイヤーとして活躍されているみなさんですが、1人のプロとして喜びを感じる瞬間というのはどんなときなのでしょうか?

新井:月並みになってしまうのですが、「麻雀というゲームを対局として打っているとき」です。結果に関しては勝った、負けたでどうのっていうのはもちろんあるんですが、その対局を一生懸命に打ち、そして打ち終わった後のお酒を飲んでいる瞬間っていうのが最高です(笑)

園田:ぼくも新井さんも必ず対局後は行きますよね(笑)対局後にみんなで飲みに行くことが多いのも最高位戦の特徴であるとは思うんですが…それは一番喜びを感じる瞬間ではないです!(笑)

 

新井:(笑)このゲームを6時間も7時間も一生懸命打ってさ、それで頭も疲れた状態で。でも対局が終わって卓を離れたら、それまでの関係性と変わってみんなとても仲良くて。終わった後に一体感を感じられる瞬間はやっぱり好きなんですよね。

浅見:対局の話を同卓選手や同リーグ選手と振り返る時間が好きってことですか?

新井:麻雀の話をあーだこーだ言ってるのが、すごく好きです。だって普通ないですよね?普通の人生でそんな時間。うーん。そう思いますね。負けた後に「悔しい!」って思いながら飲むお酒も嫌いじゃないですしね。

浅見:私はいろいろな地方に仕事で行かせていただくことがあるのですが、普段会えない方に「いつも観ています」とか「応援しています」と声をかけていただけることが、すごく嬉しいです。

新井:俺もそれが一番かもしれない!

園田:たしかに新井さんが言ったことも、浅見さんが言ったこともぼくには両方あって。お酒もいいんですよ。それまで「もうこいつぶっ倒してやる!」っていう関係性でバチバチにやっていたのが、お酒が入った瞬間にカラっと仲良くなる。あの瞬間も好きだし、やっぱりいろいろなところで「麻雀観てますよー!」と声をかけていただけるのも本当に嬉しい。
でもぼくが一番嬉しいのは、リーグ戦で麻雀を打っている最中。これはもう普通では経験できないことなんですよ。例えば色々な麻雀店で麻雀を打ったとしても、麻雀の価値やウエイトというのは打ち手に依存しますし、バラバラです。それに対して、リーグ戦の麻雀は出場している選手全員に対して価値が平等であり、そして出場選手全員の麻雀人生が懸かっている。そういうステージで麻雀が打てることっていうのはこの上ない喜びだなって感じています。これは入ってみないとわからない感覚ですよ。

新井浅見:わからないですよね。こればかりはやってみないと体感できないですよね。

私たちが最高位戦に入会したきっかけ

–みなさんが最高位戦に入会したときの動機ときっかけについて教えてください。

浅見:私が受けた時は学生を卒業するタイミングなんですけど、卒業を3月に控えた1月にプロテストがあったんです。記念受験的な感覚で挑戦したのですが、合格できまして。企業から内定をいただており、月曜日から金曜日が企業勤め、週末は麻雀プロ活動という想定をしていたのですが、最高位戦からの合格通知を手にしたら急に麻雀プロ専業でやっていきたくなり。その後、企業にはお断りとお詫びの連絡を入れさせていただきました。当時働いていた麻雀店に最高位戦の先輩女流プロがいて、業界や団体に興味があり、質問したりする中で、勧めてくれたことがきっかけです。

新井:ぼくは一言で言うと「勘違い」です。学生時代に受けたんですが、その頃オープン大会なかなりの好成績を出せていて「自分はめちゃくちゃ麻雀が強い」と思っていました。近代麻雀に掲載されていた最高位戦プロテストの過去問を解いてみても、あっさり満点近い点数を取れましたし。当時は団体数もそんなに多くなく、MONDO TV等を視聴していたら、最高位戦の所属選手が多数出演していたので、「最高位戦に入ったらモンドとかもすぐ出られるんじゃないか?どうせすぐ結果は出せるだろうし。」そんな思いで最高位戦を選び受験しました。当時は自分のプロ活動に関する展望なんかは全く持っていなかったですね。

園田:浅見さんも新井さんも学生時代ということなんですが、ぼくも同じなんですよ。学業そっちのけで、麻雀に明け暮れていた学生時代だったのですが、就職活動をするタイミングで、エントリーシートと向き合ったときに、自分の学生生活を振り返ったんですよ。すると「あれ?麻雀しか取り組んでなかったな。書くことがないな」と。そうであれば、自分が麻雀にしっかり取り組んできたことをシートに記したいと思いましたし、それを客観的に表現するためにプロになろうと決意したわけです。就職活動用ですね。どんなプロ団体があるかも知らないので、一番近い受験日の団体を受験しようと。それがたまたま最高位戦だったというだけです。今となっては最高位戦にめちゃくちゃ特別な想いが生まれていますけどね(笑)

受験したときの自分自身へ、今だから伝えたい言葉

–最近の最高位戦プロテストの受験者・合格者の傾向をみると、学生の割合はそんなに高いわけではなく、老若男女、背景も多様だという印象がありますが、奇しくもお三方は「学生時代に受験」ということが共通項だったんですね。さて、入会して新井さんは21年、園田さんは19年、浅見さんは12年が経過していて、様々な経験をなさってきたかと思います。もし入会前の受験した当時の自分にアドバイスを送るとしたらどんな言葉をかけますか?

園田:やっぱり試験なんですよ。「プロ試験」なんです。今では自分も試験官を務めたりする立場になって、より思うことでもあるのですが、「プロ試験なんだから、しっかり試験勉強をしてきなさいよ」と言いたいですね。筆記試験を中心に多少は準備と勉強をしたつもりでいたけど、場決めの仕方や正しい所作などについては会得しないまま臨んでしまった。昨今はコロナ対策として、試合観戦はしていただけないけれど、当時はできましたからね。例えば競技規定を片手に観戦をして、自身の習熟度と照合しながら対局を観るとか。プロ試験に対する向き合い方としては、そういうことはやっておくべきだったと思います。さらに、そういう姿勢で準備してきた人、準備できる人は先輩たちに顔と名前を覚えてもらえるし、スタートダッシュのアドバンテージを大きくとれると思いますよ。

新井:ぼくは22歳のときに受験したのですが、もう少し早くチャレンジできたんじゃないの?とは思っています。これを読んでいただいている方には30代、40代、あるいはそれ以上の方もいらっしゃると思いますが、「早ければ早いほどいい」「迷っているくらいならまず受けてみろ」と当時の自分には言いたいですね。最高位戦プロテストは18歳から受験できます。筆記試験ができずにはじき返されたとしても、その経験を糧にして再チャレンジすればいい。今では最高位戦に研修合格というシステムもありますから、何かが引っかかって研修生として入会し、プロ登録を目指すというルートもある。私自身19歳、20歳の頃、受験を検討しつつも、迷って挑戦しなかったんです。でもそれでは時間がもったいない。「まずは頑張って、勇気を出して一回受けてみろ!」と。

浅見:当時受験した際、志望動機欄に「麻雀の普及を~」とか書いたんです。本音、本心で書いてくれていれば別ですが、今でもこのような表現で書いてくる人は本当に多い。当時私は就職活動をしていた流れもあり、評価者に好印象をもたれようと自分なりに配慮し、そのような表現をとった。ただ自分が書類選考の評価者となったとき、その志望動機欄を見て「あ、本音じゃないな」というのがわかるようになってしまいました。もっと素直に自分の言葉で、ピュアに表現してくれた方が私は好感がもてます。なので「しょーもない嘘をつくなよ!」「本音を語りなさい!」と当時の自分には伝えたいですね。

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最高位戦プロテストの概要

–最高位戦プロテストの手続き方法、試験項目やシステム、特徴などについて教えてください。

新井:まずは試験会場によって異なる申込期限内に申し込みをしていただくところから始まります。 申し込み手続きに必要なのは、履歴書の送付と申込金の振込です。履歴書用紙は最高位戦HPのプロテスト案内のページからダウンロードできますので、そちらを使ってもらっても構わないですし、市販の履歴書A3・1枚で作成してもらっても構いません。

送っていただいた履歴書に対して書類選考がなされ、通過された方に対して筆記、面接、実技試験の会場案内を郵送いたします。この筆記、面接、実技試験の開催日程がいわゆる「最高位戦プロテストの御案内」に書いてある日程です。

まず行われるのは筆記試験ですが、その内容は2つに大別されます。1つは「点数計算」、「何待ち」、「条件計算」など、解答が予め存在するもの。もう1つは、麻雀の一つの局面を提示し、「どんなことを考え、どのような選択をしますか?」などを自由に回答してもらう論述問題です。試験期や試験会場により出題パターンが変わることもありますが、概ねこのような感じです。過去問も最高位戦HPに掲載してあるので参考にしてください。

その次のステップが面接です。「最高位戦の志望動機」や「入会後どのような活動をしたいか」など、多岐にわたり確認させていただきます。

最後のステップが実技試験です。最高位戦ルールの対局を2-3半荘打っていたただきます。勝った負けたという成績面は選考に一切関係ありません。とにかく、「最高位戦ルールあるいは競技規定という決まりに則って打てているか」、「対局時にどのようなことを考えて選択しているか」という内容面を重視しています。そのため、普段の麻雀では起こりえないのですが、局と局の間に試験官から質問されるケースがあります。「どういうことを考えてこれを切りましたか?」とか、「この捨て牌は手出しだったのか?」とかですね。

書類、筆記、面接、実技試験の全てを総合的に判断し、合否判定を出しています。

–実技試験は最高位戦ルールで行われるとのことですが、普段と違い、心がけた方がいい点などはありますか?

新井:受験者の方が普段打たれている麻雀というのは、ゲームを効率的に進行させるよう、スピード感が重視される環境が多いと思うのですが、最高位戦ルールの麻雀は競技性を非常に重んじていますので、一つ一つの所作「鳴きが入らないことを確認しツモ動作に移行する」、「他者のアガリに対して確認の応答をする」、あるいは「リーチ宣言は発声、打牌、供託の順で行う」とか、まぁ色々ありますが、競技性を損なわないようにするという観点が大きく異なります。最高位戦リーグの放送をご覧になっている方はおわかりになるかと思いますが、その辺りはとても厳格にやっているので、受験される方は意識して臨んでいただければと。

–試験科目によって重視されるものはあるのでしょうか?

新井:筆記試験は点数という客観的な指標があるので、重要項目になります。ただし、筆記試験が悪くてもその他の科目で大きく加点して合格する方もいますし、筆記試験が満点に近いからと言って合格するというものでもありません。全ての科目を通して、しっかり準備してきたという印象があるとより良いですね。

–合格率はどのくらいになるのでしょうか?

新井:合格者数や合格率を予め設定しているものではないので、期や会場によってバラつきはありますが、近年のものを平均すると20-30%くらいです。最高位戦プロテストはなかなか難易度が高いと思います。ただこの20-30%というのは「正規合格」という区分の割合で、他に「女流合格」や「研修合格」という合格区分もありますので、それらを足し上げるともう少し数字は上がります。女流合格とは、最高位戦リーグに出場する権利はないけれど、最高位戦女流リーグや自団体、他団体のタイトル戦には出場が可能であるという区分。研修合格というのはプロ登録には未達、未熟であるが、人材としては魅力があって、内部で研鑽と経験を積んでもらうために最高位戦に研修生として入会してもらうという区分ですね。

最高位戦プロテストにおける評価のポイント

–園田さん、浅見さんも試験官を務めることがあると伺っています。お二人がそれぞれ重視している点はどのようなところなのか教えていただけますか。

園田:ぼくが重視しているのは「準備をしてきたかどうか」というところです。筆記試験の準備は多くの受験者がしてくるのですが、実技試験に対しては逆に少ない。最高位戦ルールの実技に対してしっかり準備してきたかどうかというのは見たいと思っています。あとは、麻雀の基本的な部分なので、実技のときに「ポンしたときに切った牌は何ですか?」と受験者に質問することがあるのですが、その際に嘘をついてしまう人が多い。合ってる、合ってない、覚えている、覚えていないも大事ですが、覚えていないのであればそれは正直に答えてほしくて、勘で答えることはやめてほしいと思っています。

新井:それでいえば、丸山奏子さんが受験したときのエピソードが印象的ですね。

園田:そうですね。丸山の同卓者がどこかのカンチャンターツ、例えば5ソウ、7ソウみたいな感じで切っていた局があって、局間に彼女に「5ソウと7ソウはツモ切りだったか、手出しだったか覚えていますか?」と質問したんです。こういうとき「5ソウはツモ切り、7ソウは手出しでした」と当てずっぽうで答えてしまう人も多い。合っていれば全く問題ないのですが、間違えていると印象がよろしくない。そんな中、丸山は「5ソウはよく覚えていないのですが、7ソウは手出しでした」と回答したんですよ。

浅見:覚えていないということを正直に答えたんですね。

園田:そうです。まぁぶっちゃけ大事なのは5ソウのあとの7ソウが手出しであるということじゃないですか。もちろん両方覚えていることに越したことはないですが、7ソウが手出しであることを認識するだけで少なくとも「7ソウがある時点で5ソウを切った」ということは確認できますし、それが一番大事な情報なので。正直に5ソウがどちらか覚えていないと回答した姿勢と合わせて素晴らしかったですね。

浅見:私は書類審査の際、募集要項に書いてある細かい決まりを守れているかどうかも重視しています。例を挙げると「締切日」、「用紙サイズ・枚数」、「希望受験会場の表記」などですが、守れていない人がけっこういます。そういう方は、合格したとしても、最高位戦の細かい競技規定に則って対局をすることはできないのではないかと予見するんですね。最高位戦プロは決められたことをしっかり守ったうえで自己表現ができる人であるべきだなと思っているので、そこができない人は書類審査ではマイナスに評定しています。また、近年では麻雀放送の機会が増えて、色々な人に見ていただく機会が増えました。インタビュー1つをとってもそうですし、他業界の方との関わりも増えていますので、外部の方に対してもしっかりコミュニケーションを取ることができるというのは麻雀の強さと同じくらい大事なファクターだと思っています。

–合否判定はどのように行われるのでしょうか?

新井:プロテスト終了後、試験官全員が集まって合否判定会議を行います。多数決で決めるわけではないのですが、各科目で担当した試験官からのプラス評価、マイナス評価をもとに一次判定を出します。最終的には各科目の総合評価に加えて、これまでの活動履歴、例えば他プロ団体での在籍履歴やSNS発信履歴、麻雀関連の活動実績なども確認したうえで確定させています。

近年の受験者の傾向と特徴

–長年プロテストを見てこられたと思いますが、最近の受験者の傾向や特徴をどのように感じていますか?

新井:麻雀以外の活動をされている、有名な方の受験が増えましたね。

浅見:いろいろな職種、経歴の方が受験していますよね。

園田:医師、弁護士、芸能活動をされている方、有名企業の幹部職の方、実業家、元アスリート、本当にバラエティ豊かです。

浅見:業種を超えて最高位戦プロにチャレンジしてくれるというのは、我々もとても嬉しく思っています。一世代前には多かった「腕一本で麻雀プロとして成り上がってやるぜ!」というような方も今では逆に存在感が出て、頼もしく思えますけどね。

新井:もちろんそういう方も大歓迎ですね。そして、麻雀の実力という意味では、上手な人が多くなったなという印象があります。Mリーグをはじめ、対局放送がたくさんあり、知識や技術を吸収できるチャンスが増えているからではないでしょうか。

園田:ぼくは逆に受験者の麻雀の平均レベルが下がっていると感じているんですよね。麻雀店でスタッフとして働いていてプロ活動に興味がある方の多くは既にどこかの団体に所属していて、受験者に占める割合が少ない。最近は「Mリーグを観て興味をもち、麻雀プロに挑戦してみます」という経験打数の少ない受験者が相対的に増えているじゃないですか。

新井:平均レベルという意味ではそうかもしれないですね。

浅見:あとはインターネット麻雀で経験を積んだ方の受験も多いですよね。目立つのは選択の精度が高く、麻雀の内容はびっくりするほど素晴らしいのですが、それに反してリアル麻雀の経験が少なく、所作がおぼつかなかったりするタイプ。こういう方は課題が明確なので、そこが主要因で不合格になってしまうともったいないなと感じてしまいます。

新井:最高位戦は東京だけですが、アカデミーという研修会も開催しているので、特に所作に不安がある方などはそういう機会で克服してほしいですね。オススメしたいです。

園田:新型コロナの影響もあり、ここ数年は観戦して学ぶという機会がなくなってしまったのですが、それでも最高位戦の放送対局を観れば「アガリ確認の仕方」であったり、「ツモ動作に入るタイミング」であったりは、ある程度、普段自分が打っている麻雀とは違うんだなというのがわかると思うんですよね。そういったところを修正しようとしてきたかどうかというのは試験官から見ればわかりますから。やるに越したことはないですよね。

みんなが緊張する実技試験。「準備」と「失敗の捉え方」

–ただでさえ試験会場の雰囲気は独特ですし、試験ゆえに完璧なパフォーマンスを発揮しなければという思いから受験者はプレッシャーを感じると思います。その緊張によるパフォーマンスへの影響というのは加味されるのでしょうか?

園田:実際は緊張されている方もたくさんいて、ある程度しょうがないよねと思ってはいるんですけど、この3人の中では圧倒的に厳しい意見になるとは思いますが、やはり試験ですから。「最高位戦ルールではどのような麻雀を打つ必要があるのかを研究し、仲間内で練習を重ね、当日多少緊張しても普段のパフォーマンスに近いものを発揮できるように準備してくるのが試験だろ!世の中の試験というのはそういうものじゃないのかい?」って思っています。

新井:ぼくは実際に実技試験の場で過度な緊張を解くために、受験者に声をかけることはありますよ。ぼくらとしては緊張によって本来の力が出せない状態を見たいわけではない。ですので、普段のパフォーマンスをできるだけ発揮していただけるように、試験会場の環境づくりには努めているつもりです。

園田:緊張しちゃうってことは普段の修練が足りていない、とぼくは思ってしまうんですよね。そもそも試験っていうのは普段のパフォーマンスの100%は出せない。ただ、修練を積んできた人は100%に近いパフォーマンスを発揮できる可能性はある。その部分を加点評価してあげたいんです。

新井:その考えもわかります。普段に近いパフォーマンスを発揮できたということも素晴らしいことですから。でも、できれば全てを発揮してほしいです。そう思ってしまいます。

浅見:落としたいわけではないですもんね。

新井:そうですね。

園田:そうそうそう。普段通りの力を発揮してもらえるよう環境を作るというのはこちらの仕事でしょうけど、その結果、力を存分に発揮できた人っていうのをぼくは評価したいと思っています。

浅見:Classicや發王戦、新輝戦など、入会1年目で決勝の放送対局に行くパターンもあるので、そういう絶対に緊張する場でも、力を発揮できる人かどうかを見たいよねっていう観点もありますよね。

新井:仮にそういう場に残ったとしても、一年目ならやらかしてしまってもいいと思っているんですよ。大きな失敗が、本人のいい経験になって、大成することだってあるわけですから。財産にすらなりえますよ。

園田:それは新津代表と同じ方向性の考え方ですよね。

新井:ぼくは代表の影響を強く受けていますから(笑)だからプロテストにおいても、仮に一回目失敗してしまったとしても、それを克服して次回また挑戦すればいいじゃないという考えです。必ず一回目で合格しなくてはいけないってものではないですから。一回目で不合格だったとしても、実は試験官の中で、「この人ぜひもう一回挑戦してほしいよね」と話題になっている場合もあります。

あなたへ贈る、先輩からのメッセージ。

–最高位戦プロテストにこれから挑戦しようという方へメッセージをお願いします。

新井:繰り返しになりますが、迷っているなら最高位戦に挑戦してほしいということです。時間がもったいないです。個人的な考えですが、最高位戦プロテストを受ける、あるいは合格後入会するときに「最高位戦プロとして10年続けるぞ」とか「何年後こうありたい」とかっていうのは、思ってくれていてもいいですけど、大した問題じゃないと思っているんですよ。ただその瞬間の熱はほしいです。熱意をもって入ってきてほしい。いざ入ってみて、麻雀業界、あるいは最高位戦に対して「なんか違うな」ってなって1年や2年で辞めることになることもあるでしょう。ただ、1年、2年でも麻雀と必死に向き合った経験というのは、麻雀業界を離れたとしても経験として生き続けますから。

浅見:今入ることになった選手たちは、最高位戦が進化する一番楽しいであろう時期を内側で経験することができると思います。新しい事業だったり、新しい環境だったり、この先5年でどんどん増えてくると思うので、それを1年目、2年目から体感できるのが私からみてもうらやましく感じます。これまでの最高位戦より絶対に面白い団体になっていきますので、ぜひ早く挑戦してほしいなと思っています。大人になってから出会える最高の仲間と出会えます。

園田:やはりリーグ戦の楽しさを早く味わってほしいという気持ちです。全員が真剣に、全身全霊を懸けて競うゲームの体験というのはなかなかできるものではない。これはとても希少な体験になるでしょう。この楽しさっていうのは、最高の生きがいにすらなりうる。この楽しさをぜひ知ってほしいです。志を共にする仲間は最高の仲間です。

<< 完 >>
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新井 啓文 Keibun Arai

1979年7月20日生まれ、埼玉県出身。第26期(2001年)入会。A1リーグ所属。
元当協会理事で、各種事業のリーダーを歴任。現在は最高位戦プロテストの責任者を務める。

 

園田 賢 Ken Sonoda

1980年11月25日生まれ、兵庫県出身。第28期(2003年)入会。A1リーグ、Mリーグ・赤坂ドリブンズ所属。
「新規事業創出」、「経営企画」から「ルール改訂」、「人事」に至るまで幅広い領域で当協会をリードする。現理事。

浅見 真紀 Maki Asami

1985年8月30日生まれ、埼玉県出身。第35期(2010年)入会。女流Aリーグ、C3リーグ所属。
実況、最高位戦YouTubeディレクター、デザイナー、広報、1児の母、と数多の顔を併せ持つマルチプレイヤー。

 

<スタッフ>
インタビュアー:華村実代子(最高位戦)
スチール:SUNAO HONDA
ヘアメイク:島田文子
企画:最高位戦事務局

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