コラム・観戦記

【第24期發王戦決勝戦観戦記 ~1回戦~ 】玉利一

第24期發王戦 決勝戦 観戦記

 

1回戦

 

 

今年度より対局時間短縮の為、自動配牌を採用・・・というわけではなく、ちょっとしたハプニング発生w

対局者の顔に笑みもこぼれ、緊張をほぐす手助けにはなったかな?w

 

東1局 ドラ:

 

中嶋30000  設楽30000  夏目30000  石田30000

 

オヤの中嶋の配牌

 


 

まだブロックが不足しているものの、ドラの暗刻がある3シャンテン。いきなりチャンス手到来。

しかしこの局、まず動きを見せたのは夏目。1枚目のはスルーし、雀頭候補が他で出来てから出た2枚目のを仕掛けていく。

 

 

ポン 打  受けのイーシャンテン。

設楽も負けじと石田の切ったを仕掛け、イーシャンテン。

 

 

ポン 打

普段からブラフのないという設楽の仕掛け。そして鳴いた牌が ドラ暗刻のチャンス手とはいえ、上家に位置する中嶋はこれで随分戦い難くなってしまったか。

最初にテンパイを入れたのは夏目。

 

 ポン  ツモ 打

 

入り目でちょっと哀しい安めビキだが、最初にテンパイを入れられたのは大きいか?!は中嶋の手に暗刻だが、まだ1枚山に残っている!

が、夏目のアガリ牌、設楽も欲しい最後のは、唯一「いらねぇ~よ(怒)」という石田の下へ。

 

  ツモ 打

 

もう三段目。場に超高いソウズ。このノミ手イーシャンテンでは場に打ちだせる牌ではないか。

ド終盤、設楽にもテンパイが入る。

 

 ポン  ツモ 打

 

清一色テンパイ。このを河に放つ弾むような手つきで、テンパイか、或いは相当良いイーシャンテンになったかと相手にも伝わったか?

 

 

 

(捨て牌で薄暗くなっているのはツモ切り、明るくなっているのが手出し。)

 

しかしこの局面。オヤの中嶋はまだ前進を続ける。

もう終盤。自分の手は、さすがにアガリまでは厳しいなというイーシャンテン形。ここから中嶋は打と自分の手でめいいっぱいに受ける。

確かに、は場にニ枚飛んでいるが四枚目のは誰からでもツモ切られる期待が持てる牌。形テン(形式テンパイ)も辞さずというこの力強い踏み込みに、中嶋のこの決勝戦へ向けた覚悟が見えたように思う。

これが普段打っている麻雀とはまた一味違う、“半荘5回戦の中で一番を獲りに行く麻雀”ということだ。

 

 

 

 

この中嶋の踏み込みに、負けじと切り込んできた男がいた。

入会7年目。システムエンジニアの職に就きながら競技麻雀で高みを目指す石田時敬、38歳。

確かにメンゼンでテンパイを入れたところで・・・といった手なだけに、このを仕掛ける打ち手は少なくないだろう。しかしそれは「が四枚見えていることだし、打とした後、にくっついてテンパイ取れればラッキー♪」ぐらいのテンションでのこと。

だが、この舞台へしっかりと覚悟を据えて臨んできた石田の選択は、ドラのを切ってのテンパイ取り。

結果は夏目に2000点の放銃と軽傷で済んだものの、夏目の入り目がならば3900点の失点、設楽の入り目がならば12000点の放銃もあった牌を叩き切ってのこの形テン取り。損とか得とかいった話は知らないが、石田の気合いを感じずにはいられない。

 

東2局 ドラ:

 

中嶋30000  設楽30000  夏目32000  石田28000

 

最初にテンパイを入れたのはオヤの設楽。

 

 

 

 

一盃口という手の中に1ハン役の付いたカン待ち。ダブが雀頭と少し勿体無さも残るが、ダブを鳴いての2ハンよりは、リーチ・イーペーコーの2ハンの方が一発や裏ドラの抽選も受けられる分、お得。それに即リーチと打って相手にはご退場頂き、残り14回のツモアガリ抽選を最後まで受けるという選択肢も、割と昨今ではポピュラーな戦術。上手く当選し、裏ドラ抽選にもヒットすれば4000オール。裏ドラは乗らずとも、2000オールならば各プレイヤーと8000点差ずつ付けられる大きなアガリとなる。

また、まだ巡目が早いだけにテンパイ取ってダマ、“取りダマ”を選択するプレイヤーも少なくないだろう。リャンメン待ちへ変化し、好形になったところでリーチ!シャンポン待ちに変化し、ダブが受けとなって高打点が見込める手になったところでリーチ!もしくはダブでの出アガリ率を下げぬ為にシャンポン変化させてのダマ。私個人の好みではこっち寄りかな。

しかし設楽の選択はそのどちらでもない、打

ひいての端に掛かったリャンメン待ち変化は勿論のこと、をひいてのカン待ちも宣言牌での筋待ちに比べ魅力的な待ちとなる。そしてマンズに手を掛けずにおくと、ツモり三暗刻もついての6000オールという決定打の目が残る。打点意識の高い設楽遙斗というプレイヤーによるオシャンティーな一打が早くも炸裂した。

が、次巡ツモでリャンメン変化を逃すと、7巡目ツモで三暗刻だけでなく二盃口の目も出てきたところで打とすると、次巡ツモ。構想とツモが噛み合わぬ歯痒い展開。

この局、もう一つ目をひいたのが夏目の選択。

 

 

 

 

5巡目、西家から切られた字風の。アガリ率で言えば鳴いた方が俄然高そうだが、夏目はこのをスルー。

確かに鳴くと手は進み、残った形も悪くはないかもしれないが、打点的魅力はなく、しかも親の河を見ると、というシンプルな切り出しからと早くも濃いところを2色余らしていて相当手が整っていそう。親リーチに押し返すほどの手でもないならば、受け駒を減らす鳴きは自重した方が優秀そうである。

 

 

 

 

しかし次巡これまた下家から切られたこれはどうだろうか?

イーシャンテンを2シャンテンに戻す仕掛けとなるが、役役トイトイの満貫まで打点が見込め、且つは早そうなオヤの筋、は場1で単騎待ちにしか放銃しない牌、受け駒に困る心配もなさそうである。

こちらは鳴いても良さそうな牌にも思えるが、夏目の選択はスルーしてのチートイツイーシャンテンを維持。

どうも「ネット麻雀の東風戦予選を勝ち上がってきた」と聞くと副露率の高そうなイメージを抱いてしまうが、東1局の1枚目スルーも含め、考えを改めなければいけないようだ。

 

 

 

 

この局の結末は、タンヤオのチーテンを入れた石田に中嶋が即放銃となり、1000点の移動。

リャンメン落とし、チー出しが自身で一枚切っている、石田は相当テンパイしてそうで、は結構放銃抽選にヒットしそうな牌ではあるが、中嶋はまだ自身のアガリを諦めていなかったということか。

もしくは余剰牌にを抱えていたところから、ドラ2は無いだろうという読みも入れて「放銃しても構わん!」といった切りか。

 

東3局は7巡目に石田が絶好のペンを引き入れ、待ちで先制リーチ!11巡目にツモアガり、立直・門前清自摸和・ドラ1の1000/2000。

 

東4局、オヤの石田が16巡目にリーチを放つも、中嶋との二人テンパイで流局。

 

東4局1本場 供託:1 ドラ:

 

中嶋29500  設楽27500  夏目28500  石田33500

 

8巡目、中嶋

 

  ツモ

 

自身でを切っていて、下家もを切っている。宣言牌をにするのかにするのかみたいな微差トークを展開させる間もなく、ノータイムでを横に曲げる中嶋。この待ちが、なんと山に五枚残りのマウンテンファイブ!!!!!

9巡目、オヤの石田もテンパイ。

 

  ツモ

 

役無しドラ無しのテンパイながら、相手の待ちを1枚吸収してのリャンメン待ち。を横に曲げ、追いかけリーチ。このもなんと山5!?相手の待ちは1枚減らしているだけに、微差ながら石田優位か・・・と思われた矢先、次巡ひいてきた牌は再び

立直・断么九・平和・懸賞牌1枚、8000は8300の放銃と手痛い失点。

一方、アガった中嶋としてはここまでドラ3とかドラ2とかアガりたい手がぼちぼち入っていたわりにあと一歩伸び切らない展開でフラストレーションが溜まってきたところでの、この気持ち良い一撃!気分よく、次局オヤ番へと入っていけることだろう。

 

南1局 ドラ:

 

中嶋39800  設楽27500  夏目28500  石田24200

 

5巡目、夏目。

 

  ツモ

 

が重なり、チートイツのイーシャンテン。ここから夏目は切りを選択。

オヤの河は

南家の河は

北家の河は

牌種的にも元々良い牌ではあるが、更に河を見ても場1のはチートイツの待ち牌候補として優秀に見える景色。つまりこの切りは、メンツ手への意識がまだあるということか。それとも、“良さげ”とかいうフワっとした情報よりも、序盤は単純見た目枚数重視というのが、夏目式チートイツの作り方なのか。興味深い選択である。

しかしこの局、主役は夏目ではなかったようだ。

同5巡目、石田が切ったをオヤの中嶋がポン。

 

 

ポン 打

バック、あわよくばトイトイまで、といった感じか。

そしてその中嶋が切ったを設楽がチー。

 

 

チー 打

タンヤオ・ドラ3の、リャンカン・カンチャンのイーシャンテン。

一見、オヤの仕掛けを受けて速度合わせでリャンカン部分を捌いただけとも見えなくもないが、設楽がハードパンチャーな打ち手という情報も加味すると、同じAリーグで何度も対局経験のある中嶋からはどう映るのだろうか?

8巡目、中嶋。

 

 ポン  ツモ 打

 

しかし設楽の仕掛けがどう映ろうが、すんなり自身でを引き入れ待ちでテンパイともなれば、相当押し切る感じとなるのか?

が、同巡。石田もテンパイ。

 

  ツモ 打リーチ

 

絶好のペンを引き入れ、ピンフのみながら軽やかな手つきでリーチを掛ける。ニ枚、四枚、山に残り六枚のマウンテンシックス。

このリーチを受けてオヤの中嶋。ツモ

、W無筋の牌をひき、逡巡の後、暗刻持ちのに手を掛ける。

のみながら、オヤ番で役有りの良形テンパイ中。リーチ者の河に通っているのはの3筋だけ。リャンメン待ちと仮定した場合、18筋ある中でまだ通っていない筋は15筋もあるわけで、東場のオヤ番だったり、もう少し競っているポイント状況ならば押し寄りの判断にもなるのかもしれない。

だが、既に南場に入っていて現状全プレイヤーと1万点以上のリードをつけているこの状況。リーチの他に重い打ち手である設楽の仕掛けが入っているこの状況。ここは撤退が冷静な判断といえよう。

10巡目、石田がをツモアガり、裏ドラが1枚乗っての1300/2600

満貫放銃の後、すぐさま原点付近まで復活となるこのツモアガリ。そういえばここまでテンパイ打牌で放銃となった東1局も含めると、石田は全局テンパイを入れて局に参加できている。

 

南2局 ドラ:

 

中嶋37200  設楽26200  夏目27200  石田29400

 

9巡目、中嶋が切ったをオヤの設楽がチー。

 

 

チー 打

タンヤオ・ドラ1のカン待ちテンパイ。場にニ枚目となるでもあるし、愚形部分でもある。巡目的にも自然なチーテン取りにも思えるが、解説席の佐藤聖誠プロからは「取らないんじゃないか」という意見が出るほど、設楽というプレイヤーが普段高打点系の打ち手だということが伺える。

11巡目、石田。

 

 ツモ

 

出来メンツのを手出しで連続して河に並べるなど、早い段階から相当チートイツを意識していた石田。このをツモ切り、オヤの設楽に2900の放銃となった。

 

南2局1本場 ドラ:

 

中嶋37200  設楽29100  夏目27200  石田26500

 

  ツモ

 

ここから中嶋はドラのをリリース。数牌の浮き牌も悪くなく、メンツ手で仕上げていくことになるだろうこの手牌。東場なら自身の打点UPの目も見てまだドラを切るほどの手格好ではないが、1局1局を消化していくことの価値が大きくなったトップ目で迎えた南場の子方ならば、アガリ優先で手を進めるだろうし、そうなるといずれは出ていくであろうドラの。ならば少しでも早い方が相手に仕掛けられる可能性も小さいだろうとの思惑か。

しかし、そのを石田がポン。

 

 

ポン 打

カン、カンバックでは仕掛けるかどうか迷いの生じるところだが、ここから鳴かせて貰えると、手牌進行が随分楽になった。

が、最初にテンパイを入れたのは中嶋。

タンヤオののシャンポン待ち。そしてここでリャンメン変化。

 

 

 

 

全員がを切っていて、待ち牌となるが端牌化しており、良さげな景色。

牌をモジモジさせ、少考したが、結局リーチは掛けずヤミテンを選択。

そしてその中嶋が切ったを石田がポンしてイーシャンテンとなるも、切ったが中嶋のロン牌。

断么九、1300は1600。自身で撒いた火種を、無事自ら鎮火した結果となった。

 

南3局 ドラ:

 

中嶋38800  設楽29100  夏目27200  石田24900

 

7巡目に設楽が先制リーチ。タンヤオ、高めイーペーコーの待ち。

このリーチを受けてオヤの夏目。

 

 

 

相当手広く良形テンパイが相当見込める中膨れニつのくっつきのイーシャンテン。三着目で迎えたラス前のオヤ番。W無筋の牌とはいえ、私なんかはを叩き切りたくなる衝動に駆られるが、夏目はスっとトイツのに手を掛ける。

これが着取りの名手の判断バランス。ドラ0の手牌で後手を踏んだなら一発は避け、もう一周して、タンピンなにがしのような高い手で復活したならぶつけようかな?といった感じか。

次巡ツモ待ちのテンパイ逃しとなるが、そこで横に曲げているは設楽への放銃となっていた。

機を待てる我慢・・・自分も持てるようになりたいなぁ…(遠い目)。

同9巡目、石田。

 

  ツモ

 

タンヤオのテンパイ。ここまで全局参加の石田。ここでもを横に曲げて、カン待ちで追いかけリーチ!漲るヤル気が凄い!!

このニ軒リーチを受けて夏目。

 

 

 

共通安全牌0。ラス目の石田にツモアガられると自分がラス目へ転落することにもなるわけだし、こうなったら自己都合でやむなく打となるのか?

が、夏目の選択は打

全てマイナスの抽選を受ける選択肢しかないのであれば、自身のアガリ確率を下げない方が期待ポイントが高いという考え方もあるだろう。

ニ軒リーチを受けて自身はドラ0で非テンパイ。降りるべき局面であるならば、例えオリ打ってしまうこととなったとしても、今ある手材料の中から一番安全度の高そうな牌を選らんで切るという考え方もあるだろう。

もリーチの両者に無筋の牌ではあるが、“端っこ大体通る理論”にすがり、ここでも我慢の選択。

これが“ラス回避ゲーム”と称される、ラスにのみマイナスポイントの負荷が掛かる「天鳳」でのゲーム性においてトッププレイヤーに位置するオトコの“我慢の闘牌”か…。

前に出て、局面に参加することだけが戦いではない。グっと堪えて、耐えることも闘いなのだ。

同10巡目、中嶋。

 

  ツモ 打

 

役無しながら、単騎でテンパイ。

はもう山にないので、三者が待ちでテンパイを入れているこの状況。はまだ山に1枚生きている!

11巡目、夏目。

 

  ツモ

 

タンヤオの役有りテンパイ。が一枚ニ軒現物となったが、イーシャンテンとテンパイでは押し引き基準は変わるわけで、夏目テンパイ取りを選択。

ここで切ると、四者が待ちというなんとも面白い局面になっていたのだが、さすがにどっちも危険牌ならば2筋放銃抽選を受けるよりは1筋抽選で済む切りだし、アガリを見るにも2枚使いのよりは単騎となるわけで、を切っていなければソウズでのもう一変化も見て勝負の仮テンとしていたかもしれないが・・・夏目、打で本日初放銃。

最高位戦ルールではダブロン、トリロンは採用していない為、頭ハネで石田のアガリ。

立直・断么九、2600。

 

南4局 ドラ:

 

中嶋38800  設楽28100  夏目24600  石田28500

 

6巡目、中嶋。

 


 

急所のを埋めて、ドラ3のリャンメン待ちテンパイ。

リーチ棒を出すと設楽が満貫ツモでトップと条件が軽くなるが、ドラの無い手で満貫手を作るのは難しく、且つツモアガリで石田にオヤっかぶりさせて貰えればニ着へ浮上となるような点差なだけに、オカ無しのこのルールならば俄然受け寄りの選択になるだろうことを踏まえると、リーチ棒を出すこともリスクには感じない。

オーラス、トップ目とはいえ、この手このテンパイならば、当然加点しにリーチを掛ける!

9巡目、オヤの石田がテンパイを入れ、追いかけリーチ。

 

  ツモ 打リーチ

 

リーチのみながら、中嶋が一発で掴んで裏ドラも乗れば一気にトップ目だ!

しかし、12巡目、中嶋がをツモアガリ2000/4000

東4局1本場に続き、本日2回目の満貫も中嶋がものにし、この第1回戦をトップで終えた。

 

 1着 中嶋  47800点

 2着 設楽  26100点

 3着 石田  23500点

 4着 夏目  22600点

 

 

 

(文 : 玉利 一)

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