コラム・観戦記

【最高位戦プロアマリーグ2015決勝観戦記】新井啓文

麻雀においてプロとアマの違いとは何だろう?

団体に所属して肩書を持っているのがプロ。

それは形式的な一つの答えだと思う。

 

2015年より始まったプロアマオープン決勝はプロ1人・アマ3人という構図。

唯一のプロ・菊崎としては「プロ」の肩書にかけて、貫禄を見せつけたいところである。

 

 

1回戦 起家から 山田・黒川・菊崎・村井

東1局・先手を取ったのは親・山田。

 

  ドラ

 

で12巡目に「リッチ」

マンズはやや高いがは一枚も切れておらず、当然のリーチ。

村上淳をリスペクトする山田、心なしか摸打や発声が村上に似ているような…

さて一人旅になるかと思いきや、北家・村井がと無筋を押してくるではないか。

17巡目・手を開いたのは村井

 

 ツモ

 

「4000/8000」 なんと会心の親リーチをかけた山田がバイマンを親かぶるという波乱の開局。

このアガリ、配牌

 

 

から ツモ 打  ツモ 打

という2巡から成就させた、村井の意志の塊であった。

お見事!

 

アマチュア勢3人の攻撃で劣勢に立たされた菊崎、迎えた東3局の親番で粘りを見せる。

まずはメンピンツモの1300オール。

 

1本場では

 


 

これをツモり4000オール、村井を捲る。

 

迎えた南1局 親番・山田

配牌

 

  ドラ

 

から  とツモ切り、を引っ張る。

そして狙い通りソウズを伸ばした最終形は

 

 (リーチ)

 

ここに飛び込んだのは村井。

完全イーシャンテンとなり、リーチ前にと捨てられていては厳しい。

裏も乗って12000となる。

これで気が付けば菊崎がトップ目に。

 

オーラスを迎え点数状況は

 東家 村井  30700

 南家 山田  29600

 西家 黒川  20000

 北家 菊崎  39700

 

バイマンツモでスタートした村井だったが、黒川のマンガンツモで一気にラスまで落ちる寒い状況になっている。

その村井、配牌でドラは2枚あるものの手が進まず、16巡目の打牌を終えて

 


 

というリャンシャンテン。

さすがにノーテン終了が濃厚であったが、マンガンツモを目指す西家・黒川からとツモ切られ、「ポン・ポン・ロン」で5800となる。

黒川もマンガンテンパイが入っていてはこの短期戦でこの点棒状況、オリるわけにもいかない。

讃えるべきはアガった村井。

 

 

 

から1枚切れのが南家と西家から出ると読み、リャンメン落としに踏み切った英断は見事。

 

その後村井が粘り菊崎まであと800点まで迫るが、最後は菊崎が逃げ切り1回戦終了。

 

1回戦結果

 菊崎  +42.3

 村井  +15.1

 山田  ▲11.0

 黒川  ▲46.4

 

 

2回戦 起家から 村井・山田・黒川・菊崎

 

東2局、菊崎

好配牌を丁寧にまとめ、

 

 リーチ ツモ  ドラ 裏ドラ

 

3000/6000

1回戦トップの菊崎が走る展開は避けたいところ。

しかしその思いを打ち砕くように菊崎の選択が冴え渡る。

 

東4局

まず北家・黒川がアンカンつき先行リーチ。

捨牌

 (リーチ)

 

親の菊崎・8巡目に以下のテンパイ。

 

  ドラ

 

ヤミテンに構える。

10巡目・ツモ

 


 

この時点で共に1枚切れ、はション牌。

枚数としてはシャンポン・カンチャン共に3枚で一緒だが、他2人はオリ気味であることからが山に濃いことを読み切り、敢えて打点を下げる打とする。

そして12巡目、読み通り山に3枚生きのをツモり、見事な4000オールとなった。

 

 ツモ  ドラ

 

これで菊崎が56800持ちのトップ目に。

 

さらに菊崎は南一局にバイマン和了。

2戦目にして早くも確定ムードが漂う。

しかしここで意地を見せたのは黒川。

 

南2局 南家・黒川 1巡目

 

  ドラ

 

ダブルリーチをかけられるが、三色を見てヤミテンに構える。

その後ツモでテンパイを外し、9巡目に辿り着いた最終形は

 


 

下家菊崎からの直撃狙いでヤミテン。

見事な手順で菊崎追撃への執念を見せる。

だが結果は実らず。

逆に親へ12000の放銃となってしまう。

このまま2回戦も菊崎の大トップで終了。

 

2回戦結果

 菊崎  +70.2(+112.5)

 村井     +6.6(  +21.7)

 山田  ▲26.6(  ▲37.6)

 黒川  ▲50.2(  ▲96.6)

 

なんと1回戦と同じ並びで終了。

下位陣にとっては次が正念場である。

 

 

3回戦 起家から 菊崎・村井・山田・黒川

 

東1局、先制は親・菊崎。

 

  ドラ

 

観戦記者の特権で他家の手を見てみるが、おかしい。

誰の手にも捨て牌にもがない!

驚きの7枚ヤマである。

さすがに決まったか!?

しかしここに切り込んだのは山田。

 

  ドラ

 

で同巡に追いかけリーチ。

はあと2枚。

菊崎圧倒的優勢だが、その一発目のツモは

菊崎の8000放銃スタートとという結果に。

3人としては菊崎を沈めたまま進めていきたいところ。

その菊崎に全く焦りはなかった。

横移動を尻目に全く無理はせず。

 

南2局に

 

 ロン  ドラ

 

の8000をアガリ、トップ目が見える位置まで浮上する。

 

オーラス1本場を迎え点数状況は

 東家 黒川  25900

 南家 菊崎  29800

 西家 村井  34500

 北家 山田  29800

 

黒川が7巡目にチーテン

 

 (チー)  ドラ

 

5800テンパイ。

菊崎から直撃すればラス目に落とすことができる。

菊崎の上家という座順もあり、ここは他2人からはアガらないつもりだったそうだ。

さらにここへと引き、

 

 (チー)  ドラ

 

12000へ進化。

そこへアガれば単独2着となる菊崎が腹を括った2フーロ。の片アガリで追いつく。

 

 (チー) (チー)

 

命運を分ける捲りあいとなる。

1枚目のを掴んだ山田は親のレンチャンに託し、しっかりとオリ。

2枚対1枚の勝負だったが、先に掴んだのは黒川。

15巡目にを引いてしまう。

少考の末、黒川が切ったのは

マチ替えも可能ではあるが、ここは菊崎からの直撃が一番取れそうなマチを選ぶのが自然だろう。

菊崎が急所を制し、完全なマッチレースに。

 

3回戦結果

 村井  +34.5(  +56.2)

 菊崎  +11.1(+123.6)

 山田  ▲10.2(  ▲47.8)

 黒川  ▲35.4(▲132.0)

 

 

4回戦

 

黒川が力を込めて親決めのサイコロを振ると、菊崎が起家に。

起家から 菊崎・黒川・山田・村井

菊崎・村井の差は67.4P

大きいように見えるが、トップラスの並びを作ればほぼ逆転。

山越しを狙うには座順もよく、村井がラス親と何かが起きそうな予感である。

 

東1局8巡目 親・菊崎

 

  ドラ

 

これをダマテンのままツモアガった2000オールを皮切りに、徹底したダマテンで局を潰しにいく。

筆者ならジンマシンができてしまいそうだが、これが菊崎の勝ちパターンなのだ。

記録の為に捲った裏ドラはだったが、そんなことは関係ない。

後は淡々と消化していけば菊崎の優勝である。

しかしこのヤミテンを緩手とするべく、村井が咆哮をあげる。

 

同1本場で2100/4100、

 

東2局には3000/6000をツモ。

菊崎の着が落ちればほぼ並びというところまで追いつめる。

 

東4局1本場

 

点数状況は

 東家 村井  51300

 南家 菊崎  25900

 西家 黒川  20900

 北家 山田  21900

 

3着が近づき余裕がなくなった菊崎。

7巡目

 

  ドラ

 

を親が1枚切っているだけだったが、なんとこれを菊崎はヤミテンに構える。

凄まじい胆力と意志である。

自分の麻雀を貫いて勝つ、そんな声が聞こえてきそうな決断だ。

すぐに黒川からでロン、村井の親を流す。

 

しかし次局は山田が3000/6000

菊崎は親かぶりでついに3着落ち。

 

この半荘、

暫定1着 村井 51300  トータル+107.5

暫定3着 菊崎 24100  トータル+107.7

その差なんと200点!

しかしここが最も接近した瞬間だった。

この後は菊崎が自分の選択が正しいことを証明すべく、

ヤミテンでアガリを重ねていく。

 

南2局  ツモ  ドラ

 

700/1300

 

南3局  ロン  ドラ

 

村井から8000

これが決定打。

 

そしてフィニッシュは

 

 ツモ  ドラ 

 

思わず笑いが起きるほどの美しい手で締めくくった。

 

4回戦結果

 東家 村井  +12.6(  +68.8)

 南家 菊崎  +47.8(+171.4)

 西家 黒川  ▲50.6(▲182.6)

 北家 山田     ▲9.8(  ▲57.6)

 

 

4位・黒川源梧

3回戦のオーラスに象徴されるように一日通して牌運に恵まれなかったが、ダブルリーチを拒否しての手順などは唸らせるものがあった。

 

3位・山田亮

リスペクトする村上淳同様、メンゼン主体で手を作りリーチを掛ける王道の麻雀だったと思う。

1枚ツモれていれば全く違った展開だっただろう。

 

2位・村井憲昭

菊崎台風が吹き荒れる中2着で脚を溜め、最終戦・まさにハナ差まで追い込んだ。

最後は届かなかったが、開局のメンチンなど、非常に強い意志を感じる局を多数見せてくれた。

 

優勝・菊崎善幸

唯一の肩書上「プロ」としてその面目を保って見せた。

プレッシャーを跳ね返しての優勝は見事。

そして何より2回戦で見せた山読み・最終戦の徹底した姿勢と、「プロは強い」ということを見事に証明してくれた。

そう、プロはまずその道に秀でていなければならぬのだ。

菊崎の今期のリーグ戦にも期待したい。

 

かくして第1期プロアマリーグは菊崎プロの優勝で幕を閉じた。

 

 

第2期は3/26開始予定です。

今期も豪華ゲストが多数参加予定ですので、皆様ぜひご参加ください!

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