第36期前期入会の荒井芳昭と申します。今期にB2リーグへ上がりたてで、初の通年リーグということで色々と手探りですが、多くを吸収出来ればという心持ちで臨んでおります。
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打ち筋としては「ロマン派」を自称しておりますが、根底にあるのはとにかく「麻雀を楽しむ」ことであり、打点重視の手作り、危険牌を通した時の刺激、丹念に育てたアガリの喜びを全身で味わうスタンスでございます。その指針は麻雀を覚えはじめた大学時代から変わっておりませんが、入会直後はかなり無邪気な、俗な言い方をすればただの全ツッパ麻雀だったように記憶しております。今では立場その他を踏まえ、衝動を抑えてだいぶ丸くなりました。
そのような私にとってリーグ戦というのは、理想を最大限に追いつつ、どこでどのようにリスクを抱え、現実と折り合いをつけるか、という選択の連続となります。言うなれば「夢のお花畑」と「残酷な現実」の凄絶な争いが、脳内で繰り広げられるわけであります。
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葛藤に苦しんだ1局だけご紹介を。
1戦目の南2局南家、上位陣と大幅に離された3着目。
(東家:竹内元太、西家:浅見真紀、北家:桐生美也子)
浅見からの先行リーチがかかっている状態で、8巡目に以下の手牌。
ツモ ドラ
三色含みのドラドライーシャンテンのところに、4枚目の。は無筋、が3枚見えではワンチャンス。ももまだそれなりに残っていそうな受け。
次局の親番が残っているとは言え、点棒の無い3着目なのでこのチャンスは活かしたい。選択としては、
「暗槓」「三色を見据えて無筋の打」「ワンチャンスの打」の3択。
脳内で悪魔が囁きます。
『先に暗槓するからこそのアガリの道もあるよ……暗槓しなよ……』
『きっと嶺上牌はかだよ……』
『この局を入れてあと3局しかないぞ……これが最後のチャンスかもよ……』
おそらくですが、最高位戦に入会したての血気盛んな自分なら、即座にを暗槓していたと思います。リスクなんて何のその、三色に彩られたお花畑へまっしぐらです。
しかしこの後に起こりうる、枝分かれした数ある未来を考え、総合的によろしかろうという選択をするのも今の使命。
さあ、どうする――。
悩んだ末、私が決めたスタンスは「暗槓せず、三色は諦め安全度の高い打としつつも、次巡以降はアガリがある限り全て押す」でした。嶺上牌の1回でテンパイする確率は低く、ここから三色が成就する確率は25%、後手を踏んでいるこの状態では可能な限り安全度重視としました。
悪魔が落胆の声をあげます。
『ロマン派を名乗っておきながら、その体たらくでいいのか』
――自責の念に駆られながらも、選択に後悔はありません。その後に押した牌も運良く通り、ハイテイ2巡前に念願のを引き入れ暗槓、嶺上牌をツモ切りリーチ。
ドラ
そして最後のツモ牌であるハイテイ――アガリ牌のが眠っていました。
裏1の3000・6000で十分、せめて一枚乗ってくれよ、と喉をスタンバイさせつつ裏をめくると、表示牌がなんとと。用意していた台詞を飲み込み、戸惑いつつも倍満のツモアガリを申告、一躍トップ目に踊り出ました。
第三者様の視点からは、打ち筋としてはむしろ尖ったところが無く平々凡々だったかも知れませんが、ロマン派としては葛藤と刺激の多い、アドレナリン効率の高い一局でございました。
このままトップで終了できれば格好がついたのですが、次局、浅見のハネマンツモを親かぶり、僅差のオーラスで2着目の竹内に1000点をアガられ、初戦はあえなく2着終了でした。
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その後も、竹内の勢いは止まらず4連勝。途中、かわし手を入れられるケースが何度かあったのですが、手を作りにいってしまいその隙に大物手を和了られる、という展開が見受けられました。ロマン派の弱点の一つ、今後の懸案事項といたします。
結果、この節は着順2・3・4・3の▲59.0となり、合計+72.2の総合9位にダウン。第4節終了ということで、これまでの半期リーグなら締めを意識するところですが、通年リーグということでまだまだ先を見据えていけるのが新鮮です。残りも精一杯楽しみつつ上を目指します。
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当方、上記に書いたような、ともすればプロらしからぬ思考が散見されるかと思われますが、麻雀を楽しむことだけは誰にも負けない所存です。よろしければ応援下さると幸いです。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
(文責 荒井芳昭)