コラム・観戦記

【第37期最高位決定戦第3節観戦記】河野直也

最高位戦に入会して4年目の筆者。かたや筆者の半期後の入会の華村。
筆者達自身も初めての観戦記者として神楽坂ばかんすのエレベーターを出ると、そこには普段顔を合わせて笑いながら喋ったりしてる選手達の姿はなく、
ものすごく重苦しい空気が漂っていた。

トータルポイント1位の近藤誠一

  

対局席に座りながら、まるで8回戦までを振り返るかのように静かに牌を見つめ、誰も近寄れないオーラを放ち、独特の緊張感があった。

トータルポイント2位の張敏賢 
 

時折笑みを見せながらこれから始まる戦いをどこか楽しみに待ち望んでいるかのように思えたが、1人になるとやはりいつもよりも緊張をしてるようにも見えた。

トータルポイント3位の佐藤聖誠

 

リラックスとは程遠く、自分1人の世界に入り込んでいる様子だったが今日の戦い方は決まってる!と、気負ってる感じではなくどこか晴れ晴れした表情であった。

トータルポイント4位の現最高位、石橋伸洋

 

やはり経験からか一番リラックスしてるように思えた。
もう3日目と捉えるか、まだ3日目と捉えるかでは戦う姿勢は変わってくるが石橋はどちらなのか…表情だけでは読めないが2日目のマイナスを引きずってるようにはまったく見えなかった。

8回戦終了時のポイントは以下の通り。
近藤 +65.0
張  +34.3
佐藤 +2.1
石橋 ▲102.4

観戦者も息を飲み静まり返った会場の中央で、サイコロの『カラカラカラカラ』といった音だけが響き渡り、4者全員の声が完璧なタイミングで『よろしくお願いします!』開局!!

9回戦
起家から佐藤-石橋-近藤-張

東1局、ドラ

早くも強者同士のハイレベルなぶつかり合いに遭遇!

 

 

まず先制は近藤が7巡目にピンフドラ1高めイーペーコーでリーチ!

 

それを受けた一発目の張の手。

   ツモ

現物は

みなさん何切りますか??う~ん悩んじゃうなぁ…
しかし、張はこれをノータイムでをツモ切り!

確かに自分も勝負手。リーチが入っていなければ当たり前に切る牌。
だが今はリーチの一発目。自分で理不尽な一発という役をつけてしまうかもしれない恐怖はないのだろうか…。
筆者はなーんて思ったりもしたがやはり切るのは。それをノータイムで切った張はやはり強者だ。
結果、当たり牌のを使いきり12巡目に追っかけリーチとなる。


しかしまだこの局には非常にハイレベルな押し引きが存在していた。
近藤からリーチを受けた9巡目の石橋の手牌がこちら。

   ツモ

 

現物は1枚のみ。
自分はピンフドラ1のイーシャンテン。もちろん手を進める。打牌候補は当たり前だが二種類。
自分がトイツ落とし中に安牌候補に持っていた場に1枚切れの

無筋の

石橋がスーと選んだのは

一体なぜ??

『この手はぶつける手であるから当然行く。ただ、張さんも押してるからいつリーチが来てもおかしくない。
だから誠一さんには通っていないけど二人に通りそうな西よりも先にを処理した』

現最高位の凄さを改めて実感した。
実際リーチ後の危険牌の先打ちは賛否両論だと思う。ツモられる可能性もあるのにわざわざ自分1人で負債を背負うかもしれないリスクがあるから。
それをこの大舞台でも平然とやってのける石橋は強い。

結果は石橋の思惑通り張からリーチが入るがその次巡に近藤がラス牌である、高めのをツモり2000/4000の和了。
二人の押し返しをはねのけた近藤もまた強者。
このまま走れるか。

東2局、ドラ

 

またしても先手をとったのは近藤!

10巡目にイッツーのペン待ちでリーチ!

しかし無情にも張の手に3枚。佐藤の手にメンツで1枚使われていてすでに純カラ。
そんな中、リーチの一発目に近藤が持ってきたドラのを間髪いれずに張がポン。
出される牌は危険牌だがが切られることはなく、すぐさま張も以下の形でテンパイ。

   ポン

 

 

この時筆者は近藤と張の間で見ていたのだがどうも、佐藤の打牌のトーンがいつもよりも強い気がしていた。
気のせいかなぁと思っていたら、ほどなくして近藤がを掴み、張が『ロン』と言ってる声に交わるように、なんと佐藤からも『ロン』の発声!
気のせいじゃなかった!

ピンフのみではあるがしっかりとかわし手を入れていた佐藤!
結果こそ張が頭ハネで8000横移動ではあるが存在感をしめした。
 

東3局は佐藤のホンイツ仕掛けに全員が対応する形となり、佐藤の1人テンパイで流局。
東4局1本場は佐藤が張からメンピン裏1の3900は4200を出上がり東場終了。

9回戦、南入開始時の点棒は
佐藤 33200
石橋 27000
近藤 29000
張  30800

南1局 ドラ

ようやく現最高位の本日初上がり。

   ポン   ツモ

佐藤のタンヤオ仕掛けに対応しながら丁寧に700/1300の上がり。

南2局 ドラ


こういう接戦の時は親番で抜けられた者が非常にトップに近付く場面。
こういった局面での石橋という男はつくづくやりづらい!なので、早くこの親は落としたいところ。

そんな親番石橋の配牌がこちら。

う~ん、ドラがトイツとはいえ、ほぼ面前で行かなきゃならない少々重い手。
他の3者が遅ければ…
願いも虚しく、終盤までもつれて石橋はドラがアンコの四暗刻イーシャンテンまでこぎつけるが、結果はチートイツのテンパイが入ってる張に1600の放銃。

南3局は近藤、石橋の二人テンパイで流局。
同1本場は佐藤、石橋の二人テンパイで流局。

オーラスを迎えて点棒が以下の通り。
張  28700
佐藤 31900
石橋 29100
近藤 28300
供託 2.0

オーラス ドラ

 

 

張以外は上がりトップで終了という胃がキリキリするようなオーラス。
見ている方はわくわくしながら見れるがやってる方は気が気じゃないだろう。

各者の配牌がこちら

張   
佐藤 
石橋 
近藤 

近藤の配牌…上がりトップの局面で良すぎるのではないか?
しかし、麻雀とは4人でやるものだと改めて実感した…。

まずは当然のように近藤が仕掛け、ドラも切り、6巡目にこんな形でテンパイを果たす。

   ポン

この時点で近藤はツモなら無条件単独トップだが、出上がりだとは、張、石橋からだと佐藤と同得点トップ。は無条件トップという感じだ。

ところが、近藤ばかりを見ていたらなんともまぁ近藤よりも先にテンパイをしてたのが石橋。
4巡目に以下のテンパイが入るがさすがにといったところかテンパイ外し。

   ツモ   打

次巡にを引いてを切るもなかなかテンパらず、近藤から出る8巡目のをポン。
そして長考。

・打牌候補は。目に見えてる枚数も残りは6枚づつ。
・絶対と言っていいぐらい近藤はテンパイでマンズもソウズもほぼ通っていてピンズテンパイが濃厚。
・だからこそではあるがソウズはピンズよりも若干だが張、佐藤からも放たれやすく、近藤からは放たれる牌。

石橋はどうするのだろうか?
観戦者全員が見守る中石橋が選んだ河に放った牌は
リスクを冒してでも上がりにかける方を選んだ!!
さらに言えばの優越としては、単純両面のはどちらも一緒なのだが、この時はが切れておりまずペンは否定される。
なおかつ自分はポンしていてカンチャンで当たる可能性がはワンチャンス。
さらに言えばシャンポンも上がりトップのこの場面では持ってきたら両面に変えるはずなのでシャンポンもない。

従ってよりものがはるかに通りやすいということになる。

こういうことが麻雀ではものすごく勝負の分かれ目だなと感じさせられるのではなかろうか。。

さぁさぁ話は戻り、近藤は待ち、石橋は待ち、二人の動きを見た張は流局してしまえばラスで終わってしまうが、万が一脇で決着したらラスにならない可能性があるので間に合わないと見るや早々に撤退。

佐藤も危険牌を押さずにイーシャンテンのまま維持し、テンパイで流局ならば張が降りてるためトップで終われるので簡単には終わらない!!

どうなるんだぁ~と見ていると、麻雀の神様は残酷な結果だけを石橋に押し付けた。

危険を冒してまで切ったの次巡、持ってきたのは
結果は終盤佐藤もしっかりテンパイをいれ、なんと、決着がつかず3人テンパイで流局!!

張としては明らかに先手をとられているし自分が決めなければ万が一のラス回避もあるなと思っていたところ1人ノーテン流局は残念すぎる。
とはいえ失点は少な抑えられたのであまり気にしてないか。

一方対照的なのは佐藤。危険牌を掴まずにテンパイでき、なおかつ流局でトップは、こういう小場では嬉しい限りだろう。

そして近藤。東一局の2000/4000でかなりいいスタートを切れたのだがその後は我慢の時間も続き、オーラスに完全に来たなと思った配牌もまさかの流局。
だがラスを現在2位の張に押し付けられたのは不幸中の幸いか。

最後は現最高位石橋。オーラスが終わって席をたってこっちに向かってくるやいなや『ひよっとけよ~!!!』とオーラスの結果上がり逃しになってしまった局に悔しさを込み上げた。
しかし、結局は『んまぁ、あぁ打つから無理なんだけどね』と言っていたので引きずることはないであろう。

 

9回戦スコア


佐藤 +32.9
石橋 +10.1
近藤 ▲10.7
張  ▲34.3

9回戦終了時トータルポイント

近藤 +54.3
佐藤 +35.0
張  ±0
石橋 ▲92.3

10回戦

起家から 近藤―石橋―佐藤―張

東1局 ドラ
先制したのは9回戦に続き、またしても親の近藤。

 

6巡目にメンピンリーチ!

これを受けた南家の石橋、宣言牌をこの形からポンして真っ向勝負!

持ってくる無筋をすべて叩き切り、12巡目に追いつく。

   ポン

リーチをしている近藤がラス牌であるを掴み、石橋へ8000点放銃。

石橋の強い意志を感じた1局だった。

勢いに乗りたい石橋は、続く親番で、佐藤から1500をあがるも、

同1本場では、佐藤の先制リーチを受けて、5800テンパイで追いつくも
先に佐藤の当たり牌を掴み、3900は、4200の放銃で親落ち。

どうしても後一手が遠い石橋。苦しい展開の中、活路を見い出せるか…

東3局、親の佐藤が軽快に仕掛け、終盤にツモって1300オール!

そして迎えた1本場。 ドラ

 

親の佐藤はダブとドラがトイツの配牌だが、形はかなり苦しい。
まとまるまでに時間がかかりそうだが、2巡目にをポンして手を進める。

そうこうしている間に近藤が、この形からをアンカン。

   カン

新ドラは

ここにをひき、少考の末リーチ!!

道中にを持ってきてこれもアンカン。
新ドラは

このリーチを受けた張、受けていたはずがあれよあれよと新ドラを暗刻にしてテンパイ。
ワンチャンスであるを勝負!!

次巡好形に変化しこの形

近藤の現物ではあるが、切った張に対応しないわけがない。
2人からは出そうにないが、そんなのは関係ないとばかりに力強くツモ

3000/6000の和了で佐藤、石橋を抜いてトップに。

強者たるゆえんをまじまじと見せつけてくれた。

東4局 ドラ

先制は佐藤、11巡目にリーチ。

河自体は完全に変則手なのだが、前巡に1枚切れの、宣言牌は2枚切れの

佐藤に聞くと

「重なるとしたら。ならば安全度で、仕掛けている石橋に通っていないから先に切った」とのこと。

一発でを持ってくる石橋、長考の末ツモ切り、放銃。

石橋「河は明らかに七対子なのに前巡の手出しが1枚切れ、宣言牌が2枚切れだっただけで(七対子を)否定したのはダメだった。」

 

 

東場を終えて

近藤 15600
石橋 25500
佐藤 36900
張  42000

南1局、南2局と小場が続く。

南3局 ドラ
親の佐藤の佐藤にしかあがれないスーパー手順の七対子がこれだ!!

3巡目

   ツモ

なんとここから打!!

確かに七対子のイーシャンテンではあるがメンツ手としても悪くない形なのででもよさそうなところ。
だが佐藤は場にが1枚切れと見るや七対子一直線のこの打はすごい!
そしてまさに最速のテンパイを入れリーチ!!

ちなみに河はこう

全て手出しである!

ほどなくして張から出るをロン、4800の和了。

キラリと光る七対子でトップ目に立った!

南3局1本場は石橋と近藤のリーチ合戦。
軍配が上がったのは近藤!
メンピンツモドラ3で3000/6000。

オーラスを迎えて

近藤 28900
石橋 21300
佐藤 37100
張  32700

南4局 ドラ

 

麻雀の神様が用意したラストは、明暗くっきりわかれるものだった・・・

各者配牌は良く、手の進行は全員一緒の中、最初のテンパイは佐藤。
9巡目の近藤が切ったをポンしてこの形

   ポン

一気に場況が加速

すぐさま張、近藤が追いつき同巡にリーチ!


 

近藤

2件リーチの1発目、佐藤が持ってきたのは2人に無筋の
これをノータイムで打った。

結果は近藤にメンピン一発ドラ1の8000点放銃。

近藤は3着からトップ、佐藤はトップから3着へ。
くっきり明暗が分かれた。

10回戦スコア

 

近藤 +37.9
張  +11.7
佐藤 ▲10.9
石橋 ▲38.7

10回戦終了時トータル


近藤 +92.2
佐藤 +24.1
張  +11.7
石橋 ▲131.0

11回戦

起家から 近藤-佐藤-石橋-張

東1局 ドラ

先手を取ったのは石橋

   ツモ


もちろん即リーチなのだがを切っておりフリテン
ここで石橋が横に置いた牌は。ん???

メンタンピンには受けず、メンタンでリーチを打った、なぜなんだろう?

石橋に聞くと
「フリテンリーチはツモしかないのでメンタンピンツモでもメンタンツモもあまり大差がない。
をカン出来るようにを切ってリーチを打った」とのこと。

結果は一発ツモ!!で2000/4000の和了。

続く東2局も2000/4000をツモり、頭一つ抜け出した。

東3局 ドラ

 

手がぶつかり合う!

最初のテンパイは親の石橋  

   ポン   ポン

 

これに対抗したのが張、8巡目に高目タンヤオドラ1でリーチ!

更には佐藤も真っ向から勝負している石橋が切ったをポンして追いつく。

   ポン   ポン

しかしすぐさま持ってくる生牌ので佐藤は大長考。
確かに切りづらい、親の石橋に当たれば12000点からだし・・・

張に当たるかもしれないし、かといっても生牌だし2人に通ってない。
難しい・・・
悩みに悩んだ末に切ったのは
チンイツをやめてと心中!

その後佐藤がをツモって500/1000の和了

鋭い和了りではあるが佐藤らしくない気がしてならない。
10回戦のオーラスの放銃を引きずってなければいいのだが・・・

東場を終えて

近藤 26000
佐藤 26600
石橋 43600
張  23800

南1局は近藤が佐藤から2900点。

同1本場は佐藤が近藤から1000は1300点。

南2局は佐藤と張の二人テンパイ。

同1本場は石橋が5巡目に先制リーチ!!
これをツモって1300/2600。

南3局は各者の手がまとまる中、近藤がピンズのホンイツを張から和了って3900。

オーラスまで淡々と進み点棒状況は以下の通り

近藤 28600
佐藤 23800
石橋 47600
張  20000

南4局 ドラ

 

まず動いたのが親の張、3巡目にペンを引きをアンカン。

   カン

新ドラはで、これがトイツになっていたのが近藤。張が切ったをポンしてすぐさまを引きタンヤオドラドラのテンパイ。

   ポン

そこにようやく追いついたのが張。

   カン   ツモ

 

新ドラであるを横に曲げてリーチ!
このを見て近藤が大長考!

が自分の目から見て3枚見えということもあり、押すならばポンして勝負でもよさそう。

そう・・・押すならば・・・

ポンしたところでは1枚切れで、がいい待ちかと言われたら全然よくない。
スッと息を吐いてツモりにいき無筋を引いて3秒で撤退。

近藤のこういう冷静な押し引きは本当に見習いたいところである。

一方、フリテンではあるがピンフのみのテンパイが入っていたトップ目石橋。

   ツモ

現物は2枚。降りる人が大半だろうと思っていた矢先、石橋の手から放たれたのは無筋の
フリテンを解消でき、のテンパイが組める打

親リーチの一発目には現物だが、宣言牌のまたぎを切るのは怖くないのだろうか・・・

石橋に聞くとあらためてこのひとはすごいと思う回答がかえってきた。
「近藤選手がを見て長考したという事は、ポン材のはずだからはワンチャンスってことになる。だから押した。」

もちろん当たる事があるのがワンチャンス。
だけども的確な読みで、それを信じて打っている石橋はやはりすごい。

しかし結果は張がペンを力強くツモり、裏は乗らないが1300オール。

オーラス1本場は先手のテンパイを取っていたのが石橋であったが、張からリーチが入りここが勝負どころと腹をくくった石橋。
しかし無情にも一発で持ってきた牌はロン牌である

止まることもなく、メンピン一発の5800は6100点の放銃。

   ロン

 

これで近藤を抜き2着目になった張、石橋の背中も見えてきた。

しかしオーラス2本場は、近藤が軽快に仕掛ける。
7巡目にの片あがりだが、ツモるか張から直撃だと2着。

   チー

これが最良の結果を生む。

好形のイーシャンテンが入っていた張がこれを掴み、1000は1600点で近藤が2着に浮上。

11回戦スコア

石橋 +40.2
近藤 +8.9
張  ▲11.6
佐藤 ▲37.5

11回戦終了時トータル

近藤 +101.1
張  +0.1
佐藤 ▲13.4
石橋 ▲90.8

12回戦

起家から佐藤ー近藤ー張ー石橋

東1局 ドラ

まずは親の佐藤が9巡目にリーチ!

次に追いついたのが西家の張。
受けの七対子とはこのことだと言わんばかりに、1牌も押さずに12巡目にテンパイ。
次巡持ってくるドラので初めて通ってない牌のを切って待ちかえ。


リーチを打ってもよさそうだが張はヤミテンを選択。
通ってない無筋が少なくなってきたところでを引いて撤退。

しかし直後にテンパイが入った石橋がリーチ!
宣言牌は先ほどまで張が当たりだったドラの

この1巡の後先は麻雀でよく目にする光景ではあるが、張の目にはどう映ったのだろうか・・・

 
結果は佐藤がをツモって1000オール。

東1局 1本場 ドラ

このまま連荘したい佐藤だが石橋が2巡目に切ったを近藤がここからポン。

   ポン   打

筆者の勝手なイメージではあるがあまり遠い仕掛けをする近藤を見たことがなかった。
しかしこの決定戦では随所に見る。
近藤にその旨を伝えると
「いつもの長期戦のリーグ戦とは違い、こういう短期決戦の場では俺もいるぞと主張したほうがいいと思ってさ!」
と笑いながら話してはいるが、いつもやらないことをこの大舞台でやることの怖さと難しさを感じさせない近藤はすごい。

あっさりテンパイを入れて佐藤から2000は2300点の和了。

東2局は佐藤の一人テンパイ。
東3局1本場は佐藤、石橋二人が仕掛けるが軍配は佐藤。
張から2000は2300の和了。

東4局 ドラ

 


ここまでほぼ完璧な打ち回しをしていた近藤がやや淡白な打牌だったのではないかと思う一局。

先制は張、チャンタのイーシャンテンからドラのを引きのくっつきでを引き6巡目にリーチ。

これに追いついたのが親の石橋。
10巡目にこのテンパイを入れるも、が場に3枚切れで張の現物でもあったのでヤミテン。

持ってくる無筋をすべてたたきつける石橋。
そんな中、近藤が持ってきた牌はラス牌の

これをノータイムで打ち石橋へ痛恨の5800点放銃。

リーチをしてないとはいえ石橋にはかなり危険牌である
二人に共通の安全牌が2枚ある中でのこの放銃は、やはり淡白ではないかなと思ってしまった。

同1本場 ドラ


親の石橋が2巡目に長考した手牌がこれ

   ツモ

イーシャンテンではあるが、ネックのピンズのをほぐす選択もある。石橋が選んだのは
やはりネックとはいえペンが埋まった時のテンパイ形と打点はそう簡単に捨てられない。

無駄ヅモが続く中、7巡目にようやく有効牌である、12巡目に、14巡目にを引きようやくテンパイ。

   ツモ

 

が自分の目から見てすでに4枚見えていることもあり、メンピンドラ1ではなくリーチドラ1のでリーチ!

これに対抗したのがトップ目の佐藤。
石橋リーチの直後にメンタンピンドラ1のでリーチ!


この終盤にもかかわらず山には石橋の待ちが4枚、佐藤が3枚とかなり優秀。
どちらが勝つかと見守っていると、すぐに佐藤がを掴み、石橋3900は4200点のあがりで佐藤をかわしてトップに立つ。

東場を終えて

佐藤 30800
近藤 23500
張  28500
石橋 37200

最終半荘の南場

本日息を潜めていた張が牙をむく。

まずは南1局にメンピンリーチをかけ、あっさりツモって700/1300の和了。

   ツモ 

続く南2局、ドラドラの手をしっかりまとめてリーチ。
親の近藤のテンパイ打牌を捕らえて5200点のあがり。

   ロン   ドラ 

 

これで石橋を抜いてトップに立つ張。

そのまま迎えた南3局の親番でも張は止まらない。
1人テンパイ、1500は1800点、4000は4200オール。

強い・・・

同3本場で佐藤が近藤から1000は1900点をあがりようやく張の親が終わる。

オーラスを迎えて

佐藤 24400 
近藤 10500
張  54800
石橋 30300

南4局 ドラ9p

なんとか連荘をしたい石橋の願い虚しく6巡目にラス目の近藤からリーチ。


素点を考え、当然リーチの一手。
これをなんと一発でツモり3000/6000の和了。

ん?

3000/6000はもしや佐藤をまくるのでは…

その通り!
近藤は3着に浮上。

みなさんお気づきになったでしょうか?
本日の4半荘、近藤は全てオーラスに着順アップをしているのです。

4回全部とかすごすぎますわ・・・

12回戦終了

張 +51.8
石橋 +4.3
近藤 ▲17.5
佐藤 ▲38.6

トータル

近藤 +83.6
張  +51.9
佐藤 ▲52.0
石橋 ▲86.5

今日の戦いを振り返って・・・

現在1位 近藤選手
 
『終始手も入っていたし、押し引きのバランスが迷わずはっきりしてる局面が多かった。特に9回戦を除く残りの3半荘すべてがオーラスに難解な条件ながらもすべて自分にプラスに転じる結果になって良かった』
9回戦のオーラス以外の半荘はなんとすべてオーラスに着順アップ。近藤選手の力強さと最高位への思いが垣間見えた気がした。
 

現在2位 張選手
 
『今節はいつもよりも前半は慎重に打ち、後半焦らないように打とうと思っていた。今節の最終戦、トータルトップ目の近藤がラス目で自分がトップ目で迎えた親番も自分自身の加点は確かに大事だが、近藤をそのままの位置で終わらせたい気持ちがあり、ヤミテン、ヤミテンと降りる選択肢も残す打ち方をした』
残り8回戦あるが、すでにトータルポイントを意識した打ち方をしたというコメントをいただいた。
 
 
現在3位 佐藤選手
 
『10回戦目のオーラス、ここまで我慢、我慢が続いて、苦しくて苦しくてつい顔を上げてしまった。苦しみから解放されるだけの1打を打ってしまった。しょうがないで片付けたくない気持ちでいっぱいだからこそ、今の自分の実力なのだからしっかり受け止めてまた一からやり直す』と。今節のダメなところを自覚しラスト8回戦を気持ちを新たにすると強い意思が見れた。
 
 
現在4位 現最高位石橋選手
 
『2節終わってトータルポイントが-100となって今節はそれを意識して、終始行かざるを得ない局面が多くて苦しかった。その為素点が削られる場面が多かったがプラスで終われたのは良かった。』
トータル4位ではあるがまだ誰か一人があきらかに抜け出てる状況ではないので焦りはなく終了後も牌譜を見ながら冷静に分析をしている姿を見ると、石橋選手もこのまま終わるはずがないなと感じた。
 

残りは後8半荘。
まだまだわからない最高位決定戦。
はたして37期最高位は誰の手に・・・

初めての観戦記にお付き合いいただきましてありがとうございました。

<文章中・敬称略>

文責 : 河野直也

協力 : 華村実代子

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