コラム・観戦記

【第37期最高位決定戦第1節観戦記】平賀聡彦


10月24日、ついに今期のリーグ戦の頂点『最高位』を決する戦いが始まった。

挑戦者は
佐藤聖誠(Aリーグ1位)
31期前期入会 28歳
第20期發王位
第36期(昨年度)決定戦4位

近藤誠一(Aリーグ2位)
22期入会 49歳
第8期日本オープン3位

張敏賢(Aリーグ3位)
24期入会 39歳
第31・32期最高位
第19期最強位

迎え撃つタイトルホルダーは
石橋伸洋
28期前期入会 32歳
第36期最高位
第19期發王位
第10回モンド21杯優勝

Aリーグ最終節、熾烈な決定戦争いを乗り越えてきた三人の猛者に王者はどう立ち向かうのか、注目の初日である。

 

【14】

1回戦
起家から佐藤・張・石橋・近藤の順。
東1局 ドラ
親の佐藤、いきなりイーシャンテンの好配牌。

 

鋭い息を吐くとの対子落とし、大物手を狙いに行く。
2巡目にペンをチーすると、と一気に引き入れ7巡目テンパイ。

 

   

 

その後、をツモって待ち変えするが、周りの三人きっちり対応しマンズは出てこない。
流局かと思われた17巡目、佐藤から高らかに「ツモ」の声。

 

      ツモ   ドラ

清一色、4000オール!
幕開けの緊張感が漂うなか幸先の良いスタートを切る。
佐藤の持ち味の一つに爆発力(素点力)がある。大きなトップが多いのが特徴だ。
波に乗って更なる加点なるか?

東1局1本場 ドラ

北家・近藤が下の形から5巡目にチー、6巡目にポンと仕掛ける。

 

 

      

は急所ではほぼ安牌とはいえ2000点、若干遠い仕掛けに見えたが・・・。
一方、この鳴きで親の佐藤がテンパイ(8巡目)。

 

がポンされていて三色にはならなそうなので、ここは押さえつけリーチか・・・。
と思われたが、佐藤はダマを選択。
13巡目にドラを持ってきて長考の末にツモ切る。
すると近藤から「ロン」の声!

 

         ロン   ドラ


と引き入れたった今ジャストテンパイ。
タンヤオドラ3、8000は8300。
佐藤にとっては手痛い放銃となってしまった。

即リーチしなかったのが攻め気の強い佐藤らしくないと思い、対局後にたずねると、
「近藤の仕掛けにドラが固まっていると思い丁寧に対応したが、あまりにも仕掛けた後の手出しが多かったので読みに迷いが出てしまった」と語っていた。
佐藤がリーチしていても、近藤は真っ直ぐ手を進められただろうか。
分岐点となる1局となった。

一方、近藤の上家の石橋は、「佐藤の1段目のカンチャンターツ外しの切り出しを見て、
積極的に近藤に鳴かせにいった」と語っていた。
頂上を決める戦いでは独走させないのが大事。
やはり決定戦、一筋縄ではいかないようである。

東2局 ドラ

続いて親を迎えたのは、四人の中で最も手役志向の高い張。
張の麻雀は、最高位・最強位とタイトルを獲得してから変わった。
以前はスピードを重視したがむしゃらな感があったが、獲得後は手役と打点を重視した重厚なものに変化した。
ギャラリーに魅せることを意識した麻雀には、一般のファンも多い。
久しぶりの大舞台、今日はどんな打ち筋を見せてくれるのか、期待が高まる。

親番の張、期待通りに三色を見ながら進めるが7巡目にドラを引く。

 

   ツモ

張、少考して切り。
すぐにツモ切りし三色を逃すが、10巡目にリーチ。まずは先手を取る。

 

結果は一人テンパイで流局。
記録のために裏ドラを確認するとだった。
あわや6000オール・・・、張やはり何か持ってる男である。

1本場は佐藤が石橋からタンヤオのみをアガり、東3局。
東3局 ドラ

ラス目になってしまった親の石橋、ポンチーと積極的に仕掛ける。

 

     

石橋の麻雀は、張とは対照的に徹底的に実利を追求する。
言わばロマン派対現実派といったところか。
それまで門前主体だった最高位戦リーグ(特にAリーグ)に、鳴き(仕掛け)主体の麻雀を持ち込んだ第一人者でもある。

その石橋の仕掛けに真っ向勝負を挑んだのが近藤。
石橋のテンパイ打牌のドラをチー、二人とも3フーロでがっぷり四つ!!


石橋

       


近藤

       

ここは意地と意地のぶつかり合いかと思われたが、石橋はを引くと対子落としであっさり撤退。
局面で何が有利かを瞬時に判断する石橋らしい一打。
有利不利に意地なんて関係ないのである。
近藤の一人テンパイで流局。

東4局1本場は、佐藤がリーチをかけるが張がピンフのみをツモ。
南入して点棒状況は以下の通り
佐藤 33800
張  29800
石橋 20900
近藤 35500
石橋が一人追いてかれた感じか。


【15】


南1局 ドラ

親の佐藤が7巡目にリーチすると、同巡に近藤が追っかけリーチ。
トップ争いの二人がぶつかる!



ペンチャン対カンチャンの悪形対決だが、注目は石橋の捨て牌。
中の対子落としで、佐藤のリーチの一発目に現物ではなく筋のを打ったこと。
近藤はドラドラ役無しなのでもちろん先行でもリーチしただろうが、
石橋がタンピン形で目一杯に構えていると思い勝機を感じたのではないか?
(石橋は佐藤のリーチの時点でドラが浮き牌のタンヤオ三色イーシャンテンだった)
結果は思惑通りか、安全牌に窮した石橋から近藤が出アガリ。
裏が1枚乗って満貫となった。

南2局は配牌ドラ対子の親の張が、ドラとを暗刻にして満貫ツモ。

 

   ツモ   ドラ

トップの近藤に肉薄する。

南2局1本場 ドラ

親の張、3巡目に下の形になるとと払ってホンイツ一気。

 

   ツモ

しかしの1枚目をポンせず連続スルー。
すぐに出たの2枚目を渋々?ポン。
大名かっ、大名なのかっ!!
の2枚目もポンしたところに、近藤のリーチが襲い掛かる。
激化するトップ争い!


      


近藤

張は一発目にを持ってくると、少考してツモ切り。
結局、張はテンパイせず、石橋が最後に粘って近藤との二人テンパイ。
張の捨て牌にはが3枚並ぶ形になったが、これは結果論で致し方なしか。

対局後に張にたずねると、「あの局はメンホンチートイを狙っていたが早い巡目に2枚目が出たので鳴いてしまった。鳴いたからにはリーチがかかってもアガりやすいを残して突っ張るべきだったが、中途半端になってしまった」と悔やんでいた。
大名には大名の考えがある。燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。

ラス前は親の石橋が仕掛けて連荘を目指すが、張・佐藤も仕掛け返し厳しい状況。
張が石橋から1000は1600をアガる。

オーラスは親の近藤がリーチをして一人テンパイ。
1本場の点棒状況はこちら
佐藤 26300
張  41900
石橋  7800
近藤 43000
供託 1000

 

張・近藤はアガり勝負のトップ争い。
佐藤・石橋は大物手狙いか?

南4局1本場 ドラ 供1.0
アガればトップの張、1巡目にドラのを切ると佐藤がポン。
なんとこの時点で早くもイーシャンテン!

 

   


佐藤は満貫ツモは3着のままだが、近藤か張から出アガリなら2着浮上。
その後にツモで切り、ツモ切りで7巡目に待ちでテンパイ。
上の二人は打てば3着なので攻めづらい。佐藤はずっとツモ切り、重苦しい雰囲気が続く。
そんななか張が12巡目にチートイツテンパイ。待ちは単騎!


佐藤

   

最終手出しがなので、待ちが本命か?
しかしを掴むと、張は安全牌を切ってまわる。
一方、親の近藤も終局間際にチートイツをテンパイするが、ここは安全牌を切ってテンパイ取らず。
結局、佐藤の一人テンパイで流局する。

近藤 +42.0
張  +20.9
佐藤 -10.7
石橋 -53.2
 供託  1.0


接戦を制してトップを取った近藤、初決定戦のプレッシャーも少しは解放されたか。
一方、ほとんど出番が無かった現最高位石橋、ここからどう巻き返すのか。


【16】

2回戦
起家から、近藤・張・石橋・佐藤の順。
東1局は石橋と佐藤のリーチ合戦。
1回戦下位の二人がマイナスを挽回すべく攻め立てる。
しかしアガれず、結果は二人テンパイ。

東2局1本場 ドラ 供2.0
近藤が4巡目にを仕掛けると、親の張が5巡目にリーチ。
今度はプラスの二人がリードを広げんと襲い掛かる。
結果は張が高めをツモってリーチツモタンヤオドラ4000は4100オール。
1回戦に続いて親満炸裂!張の好調さをうかがわせる1局となった。

 

   ツモ   ドラ


東2局2本場 ドラ
佐藤が6巡目にチーとすると、石橋がリーチ。
佐藤は宣言牌もチーして、一発を消しながら喰いのばす。


佐藤

      チー   打

石橋

佐藤が次巡ツモったのは、佐藤一発ツモを喰い取り現物のを切ってまわる。
一方、この鳴きで親の張はドラを暗刻にしてイーシャンテン、更に突き抜けるのか!

 


ここは石橋が喰い流しにも負けずツモ。
裏ものせて満貫。トップ目の張に親かぶりさせて差を詰める。

東3局 ドラ
親の石橋が前局の勢いのままに3面張でリーチ。

 

数巡後、をツモって裏が乗り、リーチツモ發裏4000オール。
2局連続で効果的に裏を乗せ、張をまくってトップに立つ。

面白いのは近藤の6巡目

 

   ツモ   ドラ


ここはを切ってイーシャンテンに受けるかと思ったが、近藤の選択は落とし。
結果はメンツ手とチートイツのイーシャンテン止まりだったが、
ラス目なので必ずドラを使い切るといった意志のある打牌を見せた。

その後は親の細かいアガリやテンパイなどで連荘が続き、点棒を増やした石橋が5万点オーバーで南入。
近藤 16600
張  33000
石橋 54300
佐藤 16100
この半荘アガリの無い近藤・佐藤。どうにかしてラスから抜け出したいところ。


【17】


南1局 ドラ

トップ目石橋が自風のを仕掛け、6巡目早くもホンイツテンパイ。
東場に続いて南場も突っ走ろうと攻め立てる。

 

   


その後ツモで切りと待ち変えしたところで、親の近藤がリーチ。

 


一発目にをツモった石橋、少考後切りでさらに待ち変え。

 

  

このしのぎ合いを制したのは近藤。力強く一発目にツモ。
リーチ一発ツモドラ4000オール。2着目の張に肉薄する。

その後石橋の細かい放銃が続くが、結果安手で局が進む形になり石橋想定内の展開。

南3局 ドラ
石橋この親番で更に加点なるか。そうはさせじと張が仕掛けてテンパイを入れる。



しかし、は1枚切れで石橋が残り1枚を持っておりはドラ。
アガリは相当苦しいかと見えた・・・。
すると石橋が現物のを切らずにと入れ変え痛恨の放銃。
中ドラドラ5200、トップ目直撃で石橋と張の差が一気に縮まる!

対局後に石橋に聞いてみると、「張はドラドラの仕掛けだとは思っていたが、最終手出しがだったので充分形でドラ頭の両面待ちかと思っていた。若干不注意だったかも」と語っていた。
石橋のトップに黄信号が灯る。

オーラス点棒状況
近藤 29900
張  36800
石橋 40500
佐藤 12800
石橋・張のトップ争い、近藤も一つでも着順を上げたいところ。
一人マイナスの佐藤だが、ラス親なので必死の連荘を目指す。

南4局 ドラ
親の佐藤が仕掛けて連荘狙いだが、いかんせんテンパイまで遠い。

 

   


石橋は8巡目に、

 

   ツモ

少考後、打。テンパイを取る。
次巡ドラツモ切り。これで石橋がテンパイなのはほぼ明らか。
近藤もを仕掛け、佐藤もなんとかイーシャンテンまで漕ぎ着けるが、ここは石橋がツモ。
トップをもぎ取った。

2回戦
石橋 +42.5
張  +16.3
近藤 -10.6
佐藤 -48.2

トータル
張  +37.2
近藤 +31.4
石橋 -10.7
佐藤 -58.9


辛くもトップをとって息を吹き返した石橋。
ポイントリーダーを争う張・近藤。
一人出遅れてしまった佐藤。
四人の思惑が渦巻くなか後半戦に突入する。


【20】

3回戦
起家から、近藤・佐藤・張・石橋の順。
東1局は張の一人テンパイで流局。

東2局1本場 ドラ
親の佐藤が8巡目にリーチをすると、近藤がイーシャンテンから無筋をかぶせて11巡目に追っかけリーチ!


佐藤

近藤

リーチ後に近藤がをアンカン。場はさらにヒートアップ!
結果は近藤が佐藤から出アガリ。リーチドラ4500は4800。
点数以上に近藤の気迫と勢いを感じる1局であった。

他家のリーチや仕掛けに対する踏み込みの深さ。
それが近藤の麻雀でここ数年一番変わった部分であろう。
一度はB1リーグ落ちも経験したが、パワーアップして1年で返り咲き。
いまだノンタイトルではあるが、進化し続ける中年の星である。

東3局 ドラ
2メンツ完成の好配牌の佐藤、2巡目に早くもイーシャンテンで3巡目に分岐点。

 

  ツモ

タンピンや遠くに三色も見えるためセオリー通りに頭固定の打
すると次巡ツモ・ツモ切り、ツモ切りリーチ!
一発ツモを逃がす手順にはなったが、予定通り高めタンピン形で5巡目リーチ!

 


しかしこれがなかなかアガれない・・・。
12巡目に石橋がをポンしてテンパイ。
ドラと中張牌のシャンポンで好形ではなかったがすぐに佐藤が掴む。

 

      ロン   ドラ


中ドラドラ3900。
今日の佐藤は1本しかない糸をたぐり寄せなければアガれないのか。
またもや一人マイナスの流れ、苦しい展開が続く。

南入して点棒は以下の通り。
近藤 33800
佐藤 20200
張  32000
石橋 34000


【23】


南1局 ドラ

親の近藤7巡目

 

   ツモ


近藤は少考するとと切り出しリャンシャンテンに戻した。
実はこの時、石橋の手牌は

 


泣く子も黙るメンホンチートイツイーシャンテン。
不穏な空気を感じた近藤は、生牌のとドラを抱え撤退したかに見えた。
しかしそうではなかった・・・。
ドラのを重ねるとを勝負、13巡目に2枚目のを鳴いて形式テンパイを取るのである。

 

   


確かにドラのは鳴きづらいが、マンズは上家の石橋から鳴けそうだし、13巡目にケイテンは早過ぎないだろうか・・・?明らかに対応している二人はいいとしても、石橋に押し返されたらどうするのか。
近藤が下した大胆な決断だった。
結局石橋はテンパイせず、近藤の一人テンパイ。最良の結果となった。

南1局1本場 ドラ
北家・石橋がドラのが配牌対子、これをアガればトップ争いで大きく抜け出す。
そして6巡目にポン。
場に緊張感が走り、心なしか打牌のトーンが高くなる。
そんななか親の近藤がリーチ、すぐに石橋もテンパイ。


近藤

石橋

   

すると張もまわりながら仕掛けてテンパイ。

 

   


奇しくもマンズの下をめくり合う形になった。
次巡張が掴んだのは無筋のであえなくオリ。
すると次のツモはさっきまでのアガり牌の、しかしこれは後の祭り。
近藤・石橋の二人テンパイで流局。

南3局 ドラ
石橋が張からチーしてテンパイ取ると、すぐに親の張がリーチ。


石橋

   

トップ目で捌きにきた石橋を迎撃する作戦か。
石橋は一発目のが打ち切れず筋のを切って単騎に待ち変え。


すると、さらに近藤が無筋を切ってぶん曲げる!!

 


張が一発目に持って来たのは、さっきまでの石橋のアタリ牌(石橋の頭ハネ)。
結果は近藤が張からリーチ一発ドラ5200出アガリ。
まさに紙一重の戦い、近藤僅差のトップに躍り出る。

オーラスの点棒は以下のとおり。
近藤 42000
佐藤 19200
張  18900
石橋 39900
熾烈なトップ争い・ラス争い。
どちらも微差なだけにスピード勝負になりそうだ。

南4局 ドラ
テンパイ一番乗りは近藤。10巡目に役無しテンパイすると、
点棒状況からかダマに構える。(1枚切れ2枚切れ)

 


すぐにツモって打で三色の片アガリの形となる。
すると、親の石橋がリーチ。

 


近藤は一発目にをツモり、現物の切りでテンパイ外し。
すると次巡にツモ、アガリ逃がしとなってしまう。
さらに流局間際に張が追っかけリーチ。

 


1回のツモと石橋が掴むことに賭けたが実らず。
実はリーチの時点で石橋も張も純カラテンパイ、絵に描いた餅になってしまった。
結局近藤との三人テンパイで流局。

同1本場は佐藤がリーチのみをツモ、なんとかラスを回避する。

3回戦
近藤 +42.4
石橋 +18.8
佐藤 -19.5
張  -41.7

3回戦終了時トータル
近藤 +73.8
石橋  +8.1
張   -4.5
佐藤 -78.4

近藤が2回目のトップで大きく抜け出す。
一方佐藤は、なんとかラス回避したが大きくマイナス。
いよいよ運命の最終戦が始まる。

 

【25】


4回戦
起家から、石橋・佐藤・張・近藤の順。
東1局 ドラ
張が2枚目のをポンしてテンパイ。

 

   


タンヤオ三色イーシャンテンだった佐藤も、ドラを勝負してすぐにテンパイ。
が2枚切れなのでダマに構える。

 


結果はすぐに張が400・700をツモるのだが、石橋の手順が面白い。

 

   ドラ


張が仕掛け、佐藤がを勝負したところで待望のツモ。
当然の対子落としかと思って見ていると、石橋が切ったのは!!

すぐに張のツモで終局するのだが、かなり疑問手だったので終わった後にたずねた。
「ドラを切った佐藤からすぐにリーチが入ると思っていた。そこにを勝負するのは厳しいので、通りやすいと切ってリーチで勝負するつもりだった。
門前ならメンピン三色ドラドラだが、切りならはもちろんも自分は仕掛けるので5800。リーチドラドラ7700もあまり変わらない」
賛否両論はあるだろうが、対応力が持ち味の石橋らしい非常に印象に残る一打だった。

東3局 ドラ
石橋が11巡目にリーチ。

 


リーチの時点でが3枚切れですぐに4枚目も切られる。
なんとこの巡目では山に3枚生き、石橋山読み大成功の絶リーチ!
しかし、タンピンドラドライーシャンテンで勝負した近藤を、親の張が捕らえる。

 

   ロン


イーペイコードラ3900。
張、3連続のアガリで着々とトップにまい進する。

東4局2本場 ドラ 供1.0
石橋が6巡目にリーチ。

 


ピンフ三色イーペイコードラのイーシャンテンの近藤がで5200は5500放銃。
この半荘の近藤は手が入るのだがアガリに結びつかず、放銃になってしまう流れ。
いわゆる一番ツイてない状態か。

石橋のリーチの前巡の形は

 

   ツモ   打


をツモる前なら、下の三人は競っているのでをポンしてテンパイを取っただろう。
しかしをツモったことにより、すぐに出たを悠然とスルーしてリーチ。
(石橋ならポンテンもあるかと後ろで見ていて一瞬思った・・・)
状況判断力も石橋の持ち味の一つである。

南入時点の点棒状況
石橋 34100
佐藤 24700
張  39300
近藤 21900


【28】


南1局、佐藤がリーチをした石橋から3900の出アガリで微差の2着浮上。
佐藤、初の連対、そしてトップはあるのか?

南2局 ドラ
8巡目、近藤が下の形からアンカン

 

   ツモ


ツモ切りが一番手広いが、ラス目なだけに打点を重視したのか。
いや、カンは流れを変えるというオカルトシステム発動か!

結局を引いてリーチし、手詰まった張から出アガリ。

 

      ロン   ドラ


リーチタンヤオ3900。
トップ目の張がラス目の近藤に打ったので、トップからラスまで1万点以内の接戦に。

ちなみに近藤に聞くと、「マンズの上よりもピンズの下が良かったからどうせピンズで待つから先にカンした。点棒フラットでも同じように打つよ」と言っていた。あしからず。

南3局 ドラ
佐藤が13巡目にポン

 

   


タンヤオ三色のイーシャンテンからだったが、が2枚切れては接戦だけに致し方なしか。
実はこの時に親の張はすでにチートイツドラドラテンパイ。
そして、その鳴きで近藤にテンパイが入る。


近藤

   ツモ

近藤、今日一番の大長考。
関連牌は、1枚切れ・2枚切れ・1枚切れ。
近藤が選んだのは切りリーチ!ツモり三暗刻の形に受けた。
一発目のツモは、アンカン!
2局連続のアンカン、これは何かが起きるのか!!
リンシャンから引いてきたのは、・・・。ガーン!

結局、張はオリて近藤の一人テンパイで流局。
記録のために裏ドラを確認すると、なんと裏ドラは。ガンガーン!!
リーチタンヤオリンシャンツモ裏4、近藤幻の倍満は泡と消えた・・・。


 

 

 

そしてオーラスを今日一番の接戦で迎える。
石橋 28200
佐藤 28600
張  34400
近藤 27800
 供託 1000


石橋・佐藤は5200出アガリか1000・2000ツモでトップ。
大接戦だけに2着取りもありか。
ラス目の近藤は、なんとかして連荘したいところ。

南4局1本場 ドラ 供1.0
8巡目、佐藤がチーしてテンパイ。2着取りにかける。

 

   


鳴かせた石橋もすぐにイーシャンテンになるが、なかなかテンパらない。
佐藤のツモ切りが続くなか、ついに親の近藤が14巡目にリーチ。

 


佐藤、一発目のドラを叩き切って、真っ向勝負!
トータルラス目なので腹を括った!
息詰まる勝負を制したのは、・・・佐藤。
気合の300・500で最後に連に絡んだ。

4回戦
張  +34.0
佐藤 +12.0
石橋 -12.2
近藤 -33.8

トータル
近藤 +40.0
張  +29.5
石橋  -4.1
佐藤 -66.4

 

 

【33】


一番年上だがまだタイトル獲得が無く、初の決定戦となる近藤。
最終戦はラスを引いてしまったが、トップ2回でポイントリーダーに輝く。

『初めての決定戦なので緊張するかと思ったが、わりといつも通りな感じでフツーに迷い無く打てました。』

 

過去に最高位連覇の経験のある張。
落ち着いた打ち回しでプラスをキープする。

『久しぶりの決定戦なので、ジトーって感じでおとなしめに。初日は様子見で、場の雰囲気に慣れるのをメインに打ちました。』

 

迎え撃つ立場となった石橋現最高位。
スコアはほぼプラマイゼロだったが、要所で独自の打ち筋を見せる。

『今日はトントンで良し。リーグ戦最終節の激戦を制したみんなの勢いに出遅れないように頑張ります。』

 

2年連続Aリーグ1位の佐藤。
終始苦しい展開だったが、最後に意地を見せ2日目以降に望みを繋ぐ。
『疲れました・・・。去年の決定戦やリーグ戦よりもフットワーク軽めに打ちましたが、大きなアガリが出来ず残念。』

 

 

【34】


さて、文中に散りばめられた【】の中の10の数字。
熱心な最高位戦ファンの方ならお気づきかもしれない。
今年の5月に亡くなった飯田永世最高位が獲得した10回の最高位の期数である。
ただの感傷から載せたわけではない。
なぜなら今回の決定戦は、ポスト飯田、次の最高位戦を牽引していく打ち手を決める戦いに他ならないのだから。
そのことは対戦している四人も感じているはずだ。
四人とも多かれ少なかれ飯田との関わりあいや思い入れがあるだろうし、その後を継いでいく責任の大きさは周囲からは計り知れないものがある。
しかしそのプレッシャーに打ち勝たなければ、真の最高位になることはできないのだ。

『麻雀を心から愛している者だけが、麻雀に愛されるんだよ』
天国にいる飯田が、微笑みながら戦いを見守っているような気がする・・・。

最高位決定戦。
最高の技を持ったものたちの頂点を決める闘いは、まだ始まったばかりだ。

文責:平賀聡彦

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