コラム・観戦記

【36期最高位決定戦2日目観戦記】水巻 渉

 

第2節開始時点でのポイントは下記の通り。
 
 石橋 伸洋 +82.8
 曽木 達志 +58.6
 佐藤 聖誠 △59.5
 村上 淳  △81.9
 
まだ5分の2ということで、そんなに気にすることもないのかもしれないが、

それでも今節大敗してしまうと早くも村上最高位の連覇には黄色信号が灯ってしまうだろう。
 
大敗できないのは佐藤も同じようなもの。
 
一方、初日に貯金を作った石橋・曽木の両名は精神的にはややゆとりがあるのではないだろうか。
 
 
いずれにせよ、全員が自分自身の麻雀を打ち切り、飯田・金子の両巨頭不在の今期、

それでもやは り最高位決定戦はすごかったと言われるような好勝負に期待したい。
 
 
 
 5回戦(起家から佐藤・曽木・村上・石橋)
 
 
東1局 ドラ


 

曽木が7巡目にリーチ、そして一発ツモの2000・4000。


  ツモ
 
一見申し分ないスタートを切ったかに見えた曽木だったが、私は一抹の不安を覚えた。
 
それはこの局の曽木の手順にある。
 
私の知っている曽木は目先のシャンテン数にとらわれず、

中盤以降に好形リーチで勝負する打ち手だ。
 
2巡目の曽木の手牌はこう。


ここから曽木の選んだ牌はイーシャンテン取りの
 
非常に違和感を覚えた。
 
いつもの曽木ならば、リャンシャンテン戻しの打
の一手のはず。
 
例えば村上が打
としてもそんなに違和感はない。
 
カン
リーチも視野に入れているんだろうなくらいにしか思わない。
 
曽木だからこそ違和感のある
なのだ。
 
その日の第1局目だ。
 
緊張からか?まだ勝負に入り込めていないのか?それとも…?
 
その理由は定かではないが、曽木の目の前には暗雲が立ち込めているようにな気がした。
 
 
東2局 ドラ


やはり曽木の様子がおかしい。
 
親番の9巡目でこのテンパイ。


これをダマに構えたのだ。
 
は1枚切れでマチとしては決して良いとは言えないが、

それでも親で先制ならばまずリーチだろう。
 
たった2局見ただけであるが、もはや目の前に座っているヒゲの男は

私の知っている曽木の気がしない。
 
もしかして彼なりの決定戦仕様の打ち方なのかもしれないが、

いつものスタイル以外で勝ち切る曽木のイメージはまったく浮かんでこなかった。
 
結局、終盤に村上・佐藤にもテンパイを入れられ、3人テンパイで流局。
 
リーチを打っていれば、1人テンパイになった可能性が高い。
 
開けられた2人の手牌を見た曽木は、何を思っていたのだろう?
 
 
東2局1本場 ドラ

 


北家佐藤が積極的に仕掛ける。


ここから村上の第1打の(ちなみに村上はここまで全て第1打)を叩いて、

ホンイツに向かう。
 
喰ってサンシャンテンの苦しい仕掛けに見えるが、

メンゼンで進めてもたかがしれている。
 
それならば仕掛けて
の重なりや、イッツーを絡めた

マンガンまで見えるホンイツを狙い、仕上がったときだけ前に出ると、

とてもに理にかなった仕掛けではないだろうか。
 
Aリーグでの佐藤の印象は「(特にメンゼンでの)押しが強い」の一言に尽きる。
 
今節、佐藤はこういう仕掛けを多用しているが、

それはあまり手牌に恵まれなかったためであろう。
 
その後の佐藤の手牌だが、3~5巡目に
と引き入れ

あっという間にこのイーシャンテンになる。


 
そこへ急所の
が鳴けて、6巡目に高目8000のサンメンチャン、

この上ない仕上がりだ。
 
佐藤の捨て牌は分かりやすいホンイツになっていた。
 
Aリーグ等、強者が揃う対局では鳴いた方より鳴かせた方が怖いという言葉もあるが、

はたしてを喰わせた石橋の手牌はとトイメンまで足を運ぶと、こんな手牌が。

 

 

 
石橋の捨て牌は
でオール手出し。
 
 「やったな」
 
これが石橋の手牌を見たときの正直な感想だ。
 
石橋はAリーグ一の戦略家、言い方を変えると一番イヤらしい麻雀を打つ。
 
常に相手が嫌がることをしてやろうと目を光らせているイメージだ。
 
もちろん、そうすることが自分が勝つために最適な方法だと信じてである。
 
今局、曽木・村上が早く、自分にアガリがないと思った石橋は

下家の佐藤に鳴かせにいったのだ。
 
 「ドラ色でないホンイツならば子方でツモられても、さほどひどいことにはならない。

さらに脇とぶつかって打ち合いになってくれればそれに越したことはない」
 
おそらくはこんな思考からだろう。
 
この打
を見て石橋、自分の麻雀がしっかり打てているなと感じた。
 
ちなみにこの局の結果はというと、ツモのきいた石橋が

何一つ危険牌を打つことなく終盤にテンパイして、

リーチの曽木から2000は2300をアガった。
 
 
東3局 ドラ


親はここまで出番のない村上最高位。
 
ご存知の方も多いかと思うが、村上の雀風はメンゼンリーチ多用型とでも言おうか、

愚形も含め、とにかくリーチが多い。
 
その村上、3巡目にこうなった。

 


関連牌は場ゼロだが、北家の曽木が2巡目に
をポンしているのが目を引く。
 
次巡持ってくるドラの
(この間にが1枚切れる)。
 
曽木の仕掛けを一瞥してツモ切り。
 
当然のように曽木からポンの声が掛かる。
 
そして打

 
 「ポン!」
 
会場中に響き渡る、あの発声だ。
 
声の主は間違いなく村上だったが、メンホンチートイのイーシャンテンから

村上が鳴くことなどまずないと思っていたので、私の牌姿勘違いかと、

もう一度村上の手牌を確認したが、やはり上記の通り。
 
確かにドラポンの上家曽木からしばらくは何でも出てきそうだが、

逆に他の2人からはほぼ何も出てこなくなることは目に見えている。
 
そんなことは百も承知だろうが、このアガりたい手牌で、

仕掛けることによってアガリまでのスピードが上がっているとは思えない。
 
何か戦略的な意図があったのかもしれないが、とにかく村上が

ここから仕掛けたのには驚かされた。
 
その後の村上、
を引き後に曽木からポンで以下のテンパイ。
 

   

カン
のテンパイが入っていた曽木から5800を出アガったのだが、

果たしてこれで良かったのだろうか?
 
 
東3局1本場 ドラ

 
村上が配牌ドラアンコを12巡目リーチ。


同巡、タンヤオチートイのドラ単で追っ掛けた石橋から12000。
 
石橋のリーチはかなりリスキーに思えたが、

最高位を取るためにはハイリスクハイリターンということだろうか。
 
 
東3局2本場 ドラ

 

石橋が7巡目に先制リーチ。
 


13巡目、通りそうなところを打ってカン
のテンパイを入れていた佐藤が

ドラのを重ねて切りリーチ。


同巡、曽木が手詰まる。
 
のトイツ落としで佐藤に一発放銃も充分あるなと後ろで見ていたが、

熟考の末、曽木が選んだ牌は
 
すぐに石橋がアガったため、曽木本人は佐藤の最終形を知りようもないが、

間違いなくファインプレーと言っていいだろう。
 
 
東4局 ドラ


村上が234のタンヤオサンショクリャンシャンテンの好配牌だ。
 
で、第1打がドラの

 
これにいち早く反応したのが親の石橋。
 
2巡目に
をポンしてこの形。


 

次巡からツモ
→打ポン→打、ツモ→打

電光石火のテンパイで、7巡目の曽木のを捉えた。

 

   ロン


この仕掛けの損得はちょっと分からないが、

今の私にはなかなかできそうにない仕掛けで、

石橋の強さの一端を垣間見た気がした。

 

 

 

南1局 ドラ


親番佐藤が2巡目に
を仕掛けた形はこれ。




形上は喰ってリャンシャンテンだが、実質はサンシャンテンのようなもの。
 
なんとかこの親番は死守するぞ、あわよくばホンイツまでといった感じか。
 
これが9巡目にはこうなった。


  

本人も予想以上の出来だろう。
 
これに飛び込んだのはトップ目村上。
 
ピンフテンパイからの放銃だ。
 



ここに
をツモってと入れ替えてしまった。
 
佐藤の最終手出しはション牌の

 

もちろん入っていてもおかしくはないが、微妙なところだ。
 
佐藤がイーシャンテンにしろテンパイにしろ、打つならば
だ。
 
そして村上の
テンパイならきっと打つのだろう。
 
一方、曽木も8巡目にテンパイを入れていたが、


ここにをツモって打でテンパイ外し。
 
こちらは役なし愚形ということで、回る方が得策か。
 
放銃した村上の「はい」の返事があまりにも清々く、

微塵の後悔もないことが容易に想像できた。
 
 
南2局 ドラ

 

 

9巡目に石橋が少考。


ここから何を打つか。
 
見た目の枚数では
の方が1枚多いが、石橋の選択は打
 
おそらく、
が自分から3枚見えずつなのに1がション牌なので、

どこかに固まっていると読んだのだろう。
その後ツモ
でリーチ。

 


曽木のリーチ宣言牌の
を捉えて8000。
 
 
こういう自分の読みに身を任せられるというところも、石橋の強みだろう。
 
 
南4局1本場 ドラ

 
南3局は曽木・佐藤の2人テンパイで、

オーラスを迎えて以下の点棒状況。
 
 東家 石橋 29800
 南家 佐藤 31800
 西家 曽木 17800
 北家 村上 40600
 
佐藤・曽木にマンガンクラスの手が入らない限り

早い展開になるだろうなんてことを考えている内に、

石橋がをポンして佐藤から2900は3200。

 

  ロン

 

わずか5巡の出来事であった。
 
 
南4局2本場 ドラ

 


石橋が9巡目にリーチ。


同巡に村上が追い付いた。


こちらは当然のダマ。
 
どこまで押すのか興味深かったが、次巡にあっさり
を掴んで、

と振り替えて放銃。
 
この
を押すことが得かどうかは分からないが、

村上の打があまりにもノータイムだったので、

村上の中ではこれぐらいは押すというのは伝わった。
 
一時は15000点のラスまでいった石橋、

この3900は4500直撃で村上を1400点かわして、ついにトップ目に立った。
 
 
南4局3本場 ドラ


 東家 石橋 37500
 南家 佐藤 28600
 西家 曽木 17800
 北家 村上 36100
 
曽木が6巡目にリーチ。


3着まではマンツモ・5200直条件だが、は1枚切れで、

おそらくそんな都合のいいことは考えていなかっただろう。
 
これ以上素点を削られる前に終わらせてしまおうといったところか。
 
一発目に村上から切られた
に、石橋が迷わず動いた。


マンツモの親かぶりで捲られ、簡単にノーテンも取れない上に、

が切りづらいんじゃチーももちろんあるが、

放銃だけは何としても避けなければならない場面、

少しは迷ってもおかしくはない。
 
その反応の速さは、石橋の充実ぶりを感じさせた。
 
その後、現物と通りそうなところを並べながらテンパイを入れた。




 
13巡目の無スジもノータイムで勝負。


次巡、もう一人仕掛けていた佐藤が曽木から

3900は4800をさすがに見逃せんという感じで和了。
 
石橋、薄氷のトップを守りきった。
 
タラレバになるが、石橋が
をチーしなかった場合の

曽木の一発ツモはで裏ドラが
 
石橋の積極的な姿勢がトップを引き寄せたように思えた。
 
 
 
 5回戦終了時
 
 石橋 +37.5 (+120.3)
 村上 +16.1 (△ 65.8)
 佐藤 △ 5.6 (△ 65.1)
 曽木 △48.0 (+ 10.6)
 
 ()内はトータル

 6回戦(村上・佐藤・曽木・石橋)
 
 
東1局 ドラ

 

曽木の先制リーチ。


もちろん満足のいく最終形ではないだろうが、先制と打点効率でリーチか。
 
これを佐藤が追い掛けた。
 



一方の佐藤は完全なる最終形で、問題はリーチを打つかどうかなのだが、

ほぼ間違いなくオリていると思われる2人から2枚のが打ち出されないのを見て、

が山にいると判断してのリーチだろう。
結果は佐藤の狙い通り曽木が
を掴んで、12000の放銃となった。
 

それにしても佐藤は打牌が速くてテンポも良く、見ていて気持ちいい。
 

今回のリーチももちろんノータイムだった。
 

打牌が速いというのはプロにとって必要なことだと思うし、

強者の条件の一つに挙げられるとも思う。
 
話を今局に戻すが、仮に佐藤がダマテンにした場合、村上の
が非常に危うい。
 
村上、倒された佐藤の手牌を見て、ダマテンにされなくてよかったなと、

ほっと胸をなで下ろしたのではなかろうか。
 
 
東2局は石橋がチーテンのタンヤオを曽木から。
 
東3局は佐藤がドラ
単のチートイツをリーチでハイテイツモ。
 
これで佐藤の持ち点は56000、決定戦初トップが見えてきた。
 
 
東4局 ドラ


南家村上が手なりで10巡目にリーチ。


押し返しのキツいこの面子では怖いリーチだが、

ダマテンにする選択肢は果たしてあるか?
 
案の定、仕掛けている佐藤が押し返す。
 
一発目こそ現物の
だったが、次巡フリテンのテンパイで

無スジの、ション牌ドラのとノータイムで押していった。
 

  


佐藤は点棒を持つと、いつにも増して押しがキツくなる気がする。
 
まあもっとも、今局に関してはこれといった安牌もないので当然押すのだろうが、

村上にしてみれば生きた心地がしなかったのではないか。
 
結果は終盤にタンヤオのチーテンを入れた石橋が曽木からアガリ切った。
 
 
南1局 ドラ


ここで事件が起こった。
 
待ちに自信があったか、それとも押さえ付けれると思ったか、

15巡目に佐藤が2枚切れのペンでリーチ。




残り1巡となり、曽木が佐藤のハイテイを消す当然のアンカン(カンドラ
)。
 
まあ流局かと見ていると、最終手番の北家石橋の手が止まった。
 
点棒状況はこうだ。
 
 村上 25600
 佐藤 56400
 曽木 8100
 石橋 28900
 
石橋としては点棒の近い村上の連荘は望むところではない。
 
村上に喰いテンを入れさせない牌を探していたのだろう。
 
しかしもちろん佐藤に打つ訳にはいかないのだから、

打牌候補はといったところか。
 
結局、石橋が選んだのは

 
村上、迷いなくチーで、打

 

    

は佐藤にはかなりキツい牌だ。
 
通った…が、あとは佐藤のハイテイを残すのみ。
 
九分九厘、親権維持のためだけに、この二は打った方が得なのだろうか?
 
そして曽木が消したはずの佐藤の最終ツモにはなんと
が!
 
村上の声がいつも以上に会場に響き渡った。
 
これを見た瞬間、ああ、村上は親権維持ではなくアガリにいったんだと確信した。
 
長いスパンの勝負なら打たない方が得かもしれない
だ。
 
しかし村上はここが勝負所と判断し、前に出たのだ。
 
そして最高の結果を出した。
 
さすが村上とはもちろん思ったが、それよりも今の自分に足りないのは、

この打ちのような勝負の打牌なのだろうと考えさせられた。
 
これで30000点以上あった佐藤と村上の差は5800にまで詰まった。
 
私はいわゆる流れ論者ではないが、

この半荘は村上がトップを取るのではという予感めいたものは

確かに心の中にあった。
 
 
南1局1本場 ドラ


 
村上と曽木がリーチでぶつかった。
 
先制は10巡目の曽木。
 



同巡、親の村上がドラの
を切って追い掛けた。


前局の村上の強烈なアガリがまだ頭の中を渦巻いていた私は、

また村上がアガるんではないかと、すっかり観戦記者としての立場を忘れ、

見入ってしまっていたが、結果は流局。
 
続く2本場は石橋が軽快に仕掛けて、本場とリーチ棒2本をさらっていった。
 

 

南2局 ドラ

親の佐藤が4巡目に
をポンしてこう。
 

 


本日何度目かの佐藤のこんな仕掛けだが、この局には別の意図も含まれていただろう。
 
まったくアガる気がないわけではないだろうが、

ポンの目的はもっと別のところにあったのではないか。
 
親がドラ色の染め手に走れば、誰だってそこに注目せざるを得ない。
 
中途半端な手牌からはファン牌もなかなか切り出せない。
 
そしてその色やション牌を切り出してくるヤツがいれば、そこを警戒してゆけばいい。
 
現在トップ目の佐藤は自分にほぼアガリがないと判断し、

をポンすることによって相手に制約を加えることと、

状況をクリアーにして受けやすくすることを狙っていたのではないか。
 
非常にクレバーな戦略だと思ったが、ここにドラの
を打ってリーチにきた男がいた。
 
曽木である。
 
そして間髪を入れず一発ツモ。


ツモ

メンピン一発ツモの裏ドラが
で2000・4000だそうだ。
 
この局面でドラの
を宣言牌にしてピンフのみ。
 
驚愕のアガリだ。
 
このアガリについては賛否両論、むしろ否の方が圧倒的に多そうだが、

私はそうは思わなかった。
 
確かにリスキー、むしろクレイジーとも言えるリーチだが、

同時に好形(自分にアガリがある)ならば勝負、という実に曽木らしいリーチだろう。
 
曽木、点棒こそないが、闘えているなと感じた。
 
 
南3局 ドラ

 

石橋の5巡目リーチ。


一発目に切られた
に、佐藤がここから飛び付いた。


早い巡目の一発消しは後の手詰まりの可能性を上げる等、

あまり有効ではない。
 
つまり佐藤はアガリにいったのだ。
 
その後
と鳴けて、9巡目にはこのテンパイが入った。


    

ちなみに点棒状況はこう。
 
 曽木 16100
 石橋 28100
 村上 36400
 佐藤 38400
 
ラス親が残っている石橋に打つのは最悪に近い状況だ。
 
曽木はこの親を落としたくないし、村上からすれば佐藤が石橋に打って

オーラスをトップ目で迎えられるのが理想なので、

現物とはいえサシコミは期待できないはず。
 
佐藤なりの考えはあるはずだが、南1局のペン
リーチもそう、

決定戦での初トップ欲しさにかかり過ぎている気がした。
 
13巡目に石橋がツモって1000・2000。
 
 
オーラスは石橋が仕掛けて500オールで連荘するも、

1本場で村上に軽い手が入って終了。
 
 
佐藤、南入時に57000あった点棒はどこへやら。
 
やっとこさの2着。
 
それに引き換え、村上は本当によくワンチャンスをモノにした。
 
 
 
6回戦終了時
 
 村上 +37.2 (△ 28.6)
 佐藤 +16.9 (△ 48.2)
 石橋 △ 7.7 (+112.6)
 曽木 △46.4 (△ 35.8)

7回戦(石橋・佐藤・村上・曽木)
 
 
東1局 ドラ

 
佐藤が10巡目にリーチ。


同巡、村上も


にドラのを引いて追い掛けるが、その宣言牌が捕まった。
 
村上、必然の放銃といえど、かなり気持ちの悪いスタートには違いなかっただろう。
 
 
東2局 ドラ

 
前局の失点を取り戻すべく、村上が10巡目に先制リーチ。
 



これに次巡、曽木が追い掛けた。
 


この時点で残り枚数は3対3の五分。
 
曽木のリーチ一発目のツモは
で、これをアンカンするとカンドラが
 
一気にハネマンへと昇華した。
 
そして1巡置いて
をツモ。
 
裏ドラは乗らずだが、3000・6000。
 
ここまで2ラスの曽木。
 
今回こそはの思いは強かっただろう。
 
 
東3局 ドラ


 
石橋がいいアガリを物にした。
 
選択は10巡目。


 
下家の佐藤がピンズの色に走っているが、

ドラドラの威光で真っ直ぐのかなと見ていたが、石橋が選んだのは
 
ドラドラでも、リャンシャンテンではピンズを下ろすべきではないとの判断だろう。
 
これが見事にハマった。
 
次巡がツモ
で、イーシャンテンなら行く価値ありと打
 
すると次のツモが絶好の
で、静かにを置いた。




これに飛び込んだのは佐藤。
 
明らかに押してきている石橋には気付いていただろうが、
は止まらなかった。
 
巡目と自分の手牌を考えると、止められないこともない、

むしろ止めて欲しいだった。
 
 
東4局 ドラ


親の曽木が配牌でチートイシャンテンだったが、今局も点棒は佐藤から石橋へ。
 
石橋の第一テンパイは4巡目




だったが、さらなる打点と好形を見て打
のテンパイトラズ。
 
3巡後に
を引くと、リャンメンならとリーチ。


同巡に追い掛けた佐藤の宣言牌のを捉えた。
 
打った佐藤の手牌は



 
で、前巡に1枚切れの
を打っている。
 
雀頭振り替え以外にはほぼ生きない
で、すでにマンズが高くなってきていたので、

1巡前に充分処理できたであった。

 

佐藤、やはり本調子ではないか。
 
 
南1局は佐藤・村上が7巡目にリーチを打つが、流局(ドラ
)。
 
佐藤


村上

 
 
南2局1本場 供託2 ドラ


佐藤のテンパイは10巡目。
 


とりあえずの様子見か、はたまた供託を拾いにいったか、ダマテンを選択。
 
同巡、北家石橋が動いた。


 

苦しい仕掛けだが、放銃しないようになんとかテンパイを取りにいき、

あわよくば供託までという感じか。
 
12巡目、曽木にもテンパイが入る。


一見絶好に見えるカンだが、ション牌というのが気に食わなかったか、

それともトップ目ということで大事を取ったか、曽木もダマに構えた。
 
次巡ツモ
で打
 
これを石橋がチーしてようやくイーシャンテン。


  

石橋、次巡にツモった
を一瞬考えたが、

ツモ切って佐藤に3900は4200を放銃。
 
村上も前に出てきていて、

いつ誰からリーチの声が発せられてもおかしくない状況だったので、

安牌のを切りたくないという気持ちは非常によくわかる。
 
それでもこういう仕掛けからの放銃は頂けない。
 
石橋、少々見立てが甘かったか。
 
 
南2局2本場は石橋の早いリーチを終盤曽木が追い掛けたが、流局(ドラ
)。
 
 石橋

 
 曽木

 
親の佐藤もしぶとく形テンを取って連荘。

 

南2局3本場は石橋が役々を仕掛けてあっさりと500・1000ツモ。
 
今決定戦に限らないが、供託があるときの石橋のフーロ率は格段に跳ね上がり、

それに伴いアガリ率もかなり上がっている気がする。
 
おそらくは意図的なものだろう。
 
 
南3局 ドラ


4巡目、またしても石橋が仕掛けた。




9巡目に
を引いてカンのテンパイ。
 
13巡目、曽木がこれ以上ないカン
を引いて追い付き、リーチ。


すぐに石橋が2を掴んで、3900の放銃となった。
 
現状、曽木の安牌は
の1枚のみで、曽木からリーチ棒が出たことによって、

アガればオーラスをトップ目で迎えられるという状況なので、

はやっぱり打つのだろう。
 
しかしこれが仕掛けの怖さの一つだろう。
 
なまじテンパイが入っているばっかりに、安手でもこれくらいはと、

いってしまうことは多々見られる。
 
こういう仕掛けを多用する石橋は、今回のような放銃も織り込み済みか。
 
 
南4局 ドラ

 

点棒状況は以下の通り。
 
 曽木 44600
 石橋 33900
 佐藤 26800
 村上 14700
 
この状況で曽木が6巡目、さも当然のようにドラの
切りリーチ。
 
その手牌はというと、


なんとピンフのみ!
 
前回の半荘でもドラ切りピンフリーチはあったが、そのときはラス目。
 
対して今回はトップ目で、言わずもがな失うものが多い。
 
私には怖くてとても打てない(というかこの点棒状況で、このリーチを打てる人が他にいるのか?)リーチだが、今期の曽木はこのリーチを打って勝ってきたのだ。
 
これがオレのスタイルだという曽木の強い意志を感じた。
 
そして
に声が掛からなかった瞬間、曽木はきっとツモる、

あとは何点になるかだなと思っていた。
 
しかしそんな幻想を佐藤のリーチ発声が掻き消した。
 
曽木が一発目に掴んだ牌は

 
すでに自分の河に2枚置かれている牌だ。
 
これに佐藤の声が掛かり、手牌が倒された。


メンタンピン一発の8000で、曽木をキッチリ200点捲った。
 
曽木、まさかの2着転落。
 
自分を貫いた代償は高かった。
 
一方、佐藤はついに嬉しい決定戦初トップ。
 
調子は今一つに見えたが、このまま勢いに乗ることができるか。
 
村上はノーホーラのラスで、ほぼ今節開始時のポイントに戻ってしまった。
 
次は本日最終戦、なんとか踏ん張れるか。
 
 
 
 7回戦終了時
 
 佐藤 +35.8 (△ 12.4)
 曽木 +15.6 (△ 20.2)
 石橋 △ 6.1 (+106.5)
 村上 △45.3 (△ 73.9)

 8回戦(曽木・石橋・佐藤・村上)
 
 
東パツは曽木・石橋の2軒リーチになるも、流局(ドラ
)。
 
 曽木
 
 石橋

 
東1局1本場 供託2 ドラ


9巡目に親番曽木の手が止まった。



  
場には
がそれぞれ場1ずつ。
 
佐藤・村上が国士模様の捨て牌のため、
の所在は怪しい。
 
のシャンポンはその後の変化まで入れると良さそう。
 
は絶好に見えた。
 
 ここから曽木が選んだのは

 
 
があまりにも良さそうに見えたので、どうかなと思ったが、

トイツ手に重きを置いたようだ。
 
 この選択が功を奏した。
 
 テンパイまでは…
 
 その後のツモが
で11巡目にこのリーチ。


実に山5枚生き!
 
仕掛けていた石橋も早々撤退し、一人旅。
 
ツモるのは時間の問題かと思われたが、流局。
 
打っている当人には山5とは分かりようもないが、

曽木、これがツモれないようでは苦しい。
 
 
東1局2本場 供託3 ドラ


供託が増えれば石橋の出番。
 
今回は珍しくメンゼンかと思ったが、どうやら鳴ける牌が出る前にテンパってしまったようだ。




途中、佐藤にドラポンの
バックテンパイが入ったが、

その佐藤の現物で1300は1900の供託3本付き。
 
まったく、ちゃっかりしている。
 
 
東2局 ドラ

 


終盤一気に場が加速した。
 
15巡目の先制リーチは佐藤。

 


同巡、村上が追い掛けた。

 


その宣言牌の
を曽木が合わせると、石橋にチーテンが入った。
 

 


枚数は佐藤2・村上1・石橋2の勝負であったが、

リー棒2本となればアガったのは当然この人。
 
石橋が
を引き寄せ、大きな500オールとなった。
 
 
東2局1本場 ドラ


11巡目、久々のアガリに向けて村上がリーチ。


だがその河にはが…
 
前巡に入っていた曽木が、これにチートイドラドラで応戦。



 

曽木、ピンズの1枚も切れていない村上の河に向けてと強打。
 
結局、最終ツモで
を掴んでヤメて、村上の1人テンパイに終わった。
 
曽木の押しっぷりからして、高いテンパイが入っていたのは明白。
 
村上、まあ満足の1人テンパイだっただろう。
 
 
東3局2本場 供託1 ドラ


村上が8巡目に再び先制リーチを打つ。
 


リーチ時点では3枚生きていた
だが、2枚が他家へ、もう1枚は王牌。
 
佐藤との2人テンパイで流局。
 
最終的には2人テンパイになったが、途中、全員がテンパイを入れていた。
 
やはりメンツがキツくなると、リーチを打っても

簡単に一人旅にはさせてくれないものだと再確認させられた。
 
 
東3局3本場 供託2 ドラ


供託2本と、例のごとく石橋が跋扈するのかと見ていると、

2巡目に早くもその片鱗をうかがわせた。


ここから打としたのだ。
 
がすでに1枚ずつ飛んでいるが、それでも通常はを打つところだろう。
 
しかしこの状況での最速を目指すならば、
なのかもしれない。
 
素直に関心すると共に、改めてイヤらしい奴だと思った。
 
状況急変、8巡目、親番佐藤にドラポンが入った。
 
このときの石橋の対応がまたもやイヤらしい。
 
佐藤の上家である石橋は相手がまだノーテンと見るや、

喰われても急所ではなさそうというところをあえて下ろして、後の安全を確保。
 
ホントに食えない奴だ。
 
その影で6巡目、西家曽木がすでに二度テンパイトラズをしていた。
 
まずは5巡目、


 
ここから打

 
続いて次巡、ツモ
でもう一度


3本場供託2ではさすがにヤリ過ぎ感は否めないが、

実に曽木らしく、石橋との対比が見応えあった。
 
少し早すぎる気もしたが、ドラポン後には曽木もすぐにベタオリ、

佐藤の1人テンパイで流局。
 
 
次局は親の佐藤が仕掛けて、1300は1700オール。
 

  ツモ

 
東3局5本場 ドラ

 
石橋の3巡目、


 ここから打
 
そしてツモ
→打、ツモでリーチ。
 



 
捨て牌は

 


で、オール手出し。
 
これに佐藤が一発で飛び込んだ。
 
手順かもしれないが、どうも石橋がやることは全て黒く見えてしまう。
 
裏は乗らずだったが、デバサイの5200は6700で値千金のアガリを物にした。
 
 
東4局 ドラ

 
親番の村上、前の半荘からノーホーラは続いており、

今回も気付けば放銃なしで24800のラス目。
 
特にこれといったミスをしているとは思えなかったが、

手が入らないことには最高位とてただの人。
 
今局も曽木のリーチを受けて、終盤にイーシャンテンが入っただけ。
 
私なら南場に手が入ることを祈るのみだが、果

たして村上はどのように思っていたのだろう。
 
 
南1局1本場 供託1 ドラ


佐藤が動いた。


 

対抗できる者はいなく、1人テンパイで流局したのだが、この手順が微妙。
 
問題は6巡目で、そのときの佐藤の牌姿はこれ。


ここからと払いにいったが、私なら打とする。
 
イーシャンテンの余り牌なしを狙った打牌かもしれないが、

役牌がコーツになってもこの形では鳴きにくいの2枚分しか増えなく、

しかも安牌を持ってきたらさっさと切りたいだ。
 
その
のために、の8枚を見切るのは得だとは思えない。
 
また役牌を一つ仕掛けた後に、二つ目が鳴けなそうなときは

どちらかのトイツ落としをして、で手を進めるのが、

アガリ・テンパイ共に近いはずだ。
 
河的にも、
先切りの方が強いだろう。
 
対抗できる者はいなく、佐藤の1人テンパイ。
 
 
南2局2本場 供託1 ドラ

 
曽木の5巡目先制リーチに、


親の石橋が押し返す。


ダマの理由は、がすでに2枚切れ、後にオリる、

少しでも他2人からの出アガリ率を上げるといったところか。
 
終盤、
以外のすべてのスジが通った後のでヤメ。
 
 

最終手番で曽木がをツモった。
 
 
南3局(ドラ
)は曽木の先制リーチに誰も戦えず、流局。


 
南4局1本場 ドラ
供託1

 

ついに二日目オーラスを迎えて、点棒状況は
 
 村上 21100
 曽木 33400
 石橋 35200
 佐藤 29300
 
となっていた。
 
ラス目の親、村上はここ2半荘ほぼ出番なくノーホーラ。
 
是が非でもこの親番で何とかしたいところだ。
 
その願いが届いたか、村上についに入った。
 
第1打に
を打ってこの形。


4000オールなら一気に頭まで突き抜ける。
 
しかし曽木・石橋も早かった。
 
曽木 3巡目

 
石橋 2巡目

 
3人が3人とも、己のアガリを信じて疑わなかっただろう。
 
先制は曽木の6巡目リーチ。



  
のポンテンが理想だったかもしれないが、これでも充分。
 
続いてやっとテンパった村上が8巡目に追い掛けた。


同巡、石橋も追い付き、もちろんダマ。


残り枚数は村上3・曽木3・石橋2だったが、2巡後に曽木がを掴んで決着。
 
今日一番いい麻雀を打った石橋へのご褒美、そんな風に感じたアガリだった。
 
村上はとうとう2半荘ノーホーラの2ラス。
 
曽木は2半荘連続でオーラスにリーチ負けで着落ちという、

それぞれ何とも後味の悪い終わり方となった。
 
 
 
 第2節(8回戦)終了時
 
 石橋 +42.4 (+148.9)
 佐藤 + 9.3 (△ 3.1)
 曽木 △11.8 (△ 32.0)
 村上 △39.9 (△113.8)
 
 
 
トータルは石橋の1人浮き。
 
正直、後輩(村上以外)には先を越されたくないという気持ちはあったが、

今日の石橋の麻雀を見せられては認めざるを得ない。
 
石橋の持ち味が遺憾なく発揮され、ほぼ満点に近い内容だったのではないか。
 
ポイント差以上に最高位に近いように思われる。
 
 
佐藤・曽木はそれぞれのいいところも随所に見られたが、

やり過ぎと思われるところもいくつかあった。
 
キツい攻めが佐藤の最大の武器だろうが、それは諸刃の剣。
 
今節は多少、手に余す感があった。
 
次節までに調整して、今期Aリーグで見せた、ぶっちぎりの強さを見せてもらいたい。
 
 
曽木は後半は戦えていたと思うが、前半慎重になり過ぎだっただろう。
 
始めから彼らしくもっと伸び伸びと打てるようになれば、

結果は自ずと付いてくるのではないか。
 
 
最後に村上、1、2回戦をいい内容で2着、トップときていただけに、

3、4回戦の2ラスが悔やまれる。
 
しかし決して2ラスの内容は悪くなかった。
 
いや、むしろ良かっただろう。
 
本当にただ、手が入らなかっただけなのだと思う。
 
残り半荘12回で、約260ポイント差。
 
厳しい数字だが、神は乗り越えられない試練をその人には与えないと聞いことがある。
 
実際に去年は2節終了時に320あった差をひっくり返して、

見事、最高位に輝いたではないか。
 
今後の決定戦が盛り上がるためにも村上の台頭が必要だし、

村上ならきっとやってくれるだろうと思い、そして願う。

 

 

文:水巻 渉 (敬省略)

コラム・観戦記 トップに戻る