コラム・観戦記

【36期最高位決定戦1日目観戦記】鈴木聡一郎

トビウオ
海の表層近くに生息し、動物プランクトンなどを食べる。

水上に飛び出して、海面すれすれを猛スピードで滑空する。

これは主に、マグロなどの捕食者から逃げるためといわれる。

滑空時は100mくらいは当たり前に飛ぶことができ、

水面滑走時の速度は35km/h、

空中滑空時の速度は50~70km/h、

高さ3~5mに達する。

チョウチンアンコウ
丸みを帯びた体型と、餌を誘うために頭部の

誘引突起(イリシウム)から発光液を噴出することを特徴とする。

深海魚として比較的よく知られた存在である。

(Wikipediaより抜粋一部加工)

29期入会、30期引退。
最高所属リーグはC1リーグ。
筆者、鈴木聡一郎の最高位戦リーグ戦における一切輝かしくない生涯戦績である。

今となっては海面に出ることはせず、深海にたたずむ深海魚のごとく、

サラリーマンの皮をかぶって競技麻雀界の底を漂っている。
ふと、海面を見上げれば、麻雀に人生を捧げたトビウオたちが華麗に舞う。
光の関係で、そちらからこちらは見えないだろうが、

こちらからそちらは見ようとしなくたって目に入る。
もちろん、海面を舞うことは華麗に見えて、様々なリスクを伴っている。
私のように安全な海底で静かにプランクトンをいただき、

ノーリスクで暮らしているアンコウには、そのようなリスクを負う覚悟はない。
ただ、彼らに絶対的な憧れの念を抱きつつ、彼らの心情を

少しでも理解できるのは、深さは違えど同じ海に住んでいるからに他ならない。
そんなアンコウから見える、最高峰のトビウオたちの輝かしい姿、とくとご覧いただきたい。


半荘20回の短期決戦。
とことんリスクを取って一番高く飛ぶのは誰だ―

<最高位戦ルール概要>
一発、ウラドラ、カンドラあり。
30000点持ちの30000点返し。
順位点は30000点、10000点。
オヤはテンパイで連荘。

1回戦
起家から曽木達志→村上淳→佐藤聖誠→石橋伸洋の順。

東1局 ドラ
西家佐藤の12巡目。


北家石橋が放った生牌の
に反応せず。
確かに、東1局で1000点のアガリにあまり意味はないだろう。
「この手は門前でいく。まだ、テンパイを遅らせてもリスクを取って打点を選ぶ場面だ。」
静かにポンの声を呑みこむ佐藤から、最高位への意気込みが伝わってくる。
ただ、果たしてこれは正解なのか?
ピンズが連続形とはいえ、
が4枚切れ、も2枚切れで、それほど良い変化はない。
もちろんその分
は良い受けになっているのだが、それでも終盤に差し掛かる

12巡目という巡目を考えれば、手牌を短くするリスクを冒してでも動いて

テンパイを入れた方がよかったのではないだろうか。
しかし、これはこれで、この門前志向を20回戦徹底できるなら、

対局者にとって恐いリスクの取り方になるはずだ。

佐藤がを見送った直後、動いていれば佐藤の500・1000となっていた

ドラが入ってテンパイ即リーチといったのは北家石橋。

 

 ツモ
自分で
を切っているため、切りでリーチ。

すると、オヤの曽木もすぐに追いかけリーチ。

 ツモ


すぐにドラ
をツモって4000オール。

 

 ツモ ドラ ウラ


実は曽木、9巡目に下記のテンパイからを切ってイーシャンテンに戻している。

 


他家もそこそこ手がまとまっていそうで、押さえつけリーチにいく打ち手もけっこういると思われる。
そして、他家に押し返されたときにこう思うのだ。
「アタリ牌つかむなよ、おれ」
曽木はそんなリスクの取り方をしない。
曽木がリーチするとき、少なくともほどほどの手は入っているため、

他からリーチが入っても、仕掛けが入っても、素直に自分のアガリを願うことができる。
飛ぶなら前。
切りこむなら真っすぐ。
曽木がテンパイを取るとき、それはリーチしてしかるべき牌姿になっているし、

必ずリーチがかかる。
曽木がテンパイを外すとき、それは中途半端なテンパイになっているし、

イーシャンテンに戻して飛翔に備える。
曽木はそういう飛び方をする。

東3局1本場供託1000点 ドラ
流局等でトップ目の曽木と9500点差の2着目でオヤ番を迎えた佐藤。
これまで門前でリーチ手順を踏んできた佐藤が、ここから1巡目に

北家村上の切ったを一鳴きする。

 


供託が1000点あり、オヤでもあるため、アガリたい局面ではある。
しかし、このあと南家の石橋から3巡目リーチが入ると、

一発目こそ現物のを打てたものの、すぐに1枚も安全牌がない状況に追い込まれる。
佐藤は「安全牌がないから」という理由の押し。
無筋を連打したが、結果的に運良くアタリ牌を打ち出さなくて済み、佐藤のアガリとなった。

 

  ロン


1500は1800。
アガリはしたが、何かチグハグな印象は残る。
東1局の
を仕掛けない者はこのも仕掛けない方がいいのではなかろうか。
対局前のインタビューで「緊張している」と言っていた通り、最年少の佐藤に緊張の色が見える。

東4局 ドラ
東家石橋21200
南家曽木46500
西家村上16000
北家佐藤36300

オヤの石橋はドラドラのチャンス手を迎えていた。
その4巡目、3枚目のドラが訪れて何切る?

 

 ツモ


筆者なら、
引きのカンリーチ、引きのピンフを逃したくないため、

いったん打でイーシャンテンに受けつつ、に何かくっつけば

ソウズの2度受けを解消するという方法を選択する。
対して石橋は打

これは懐の深い一打である。
へのくっつきの他に、引きも想定した柔軟な手組み。
この手をどうしてもカン
リーチしたくないプレイヤーの打牌であり、

この手は大事にいきたいという意思が感じられる。
次巡再びイーシャンテンになるのだが、その形がこれ。

 


なんと美しいイーシャンテンであろうか。
それに対して短絡的な筆者はこんなイーシャンテンにしかなっていない。

 


どちらが良いかは一目瞭然である。
しかし、この差が出にくいのが麻雀というゲーム。
結局どちらの道を辿っても、8巡目に以下のリーチとなってしまうのだ。

 


煮え切らない感じはあるが、石橋もさすがにこの7枚待ちはリーチといかざるを得ない。

これに対し、村上が押す。
最初の2巡こそ現物の
といったものの、

次巡に以下のテンパイが入るとワンチャンスのを打って役なしカンのダマテン。

 

 ツモ


直前に石橋が
をツモ切りしているので、現物はとあるのにもかかわらずである。
確かにこの
ぐらいは押してもいいと思う。
次巡に
を引くと役ありテンパイを取ってワンチャンスの打
これもギリギリわかる。
しかし、さらに次巡の8pはどうだろう。

 

 ツモ

 


この
を押すのだが、正直、このを押す村上はあまり恐くない。
確かに、この巡目にしては通っているスジが極端に少なく、

役ありテンパイとあらばまだ押してもいいように思える。
しかし、ピンズ待ちがあまりよく見えず(わからないが、少なくとも場に高い)、

を切ってしまっているため良形にはもう変化しない。
私が恐いと思う村上は、そこそこの打点以上で自分が良いと思う待ちが残ったら、

どんなに深い巡目でもリーチをかけてくる村上だ。
そんなイメージがあったため、後手を踏んだときに良形になり得ない手牌での押しは村上らしくなく、いつもと少しリスクの取り方がズレているように見えた。

また、少し進んで終盤の佐藤。
うまくソウズで回って以下のテンパイにこぎつけた。

 

 ツモ
佐藤はこれをリーチといく。
石橋が切った後に
が切られておらず、村上が持っていて2枚ぐらいと考えれば、

ヤマに2、3枚ぐらい残っているだろう。
しかし、この手、オヤリーチにぶつけるというリスクを負う価値のある手か?
ドラが1枚あるならリーチでいいと思うのだが、このリーチのみでは見合わないというのが

筆者の考えなのだが、いかがだろうか。
もちろん、安全牌が
1枚しかなく、それならそこそこ勝算のある自分が先にアガることに

賭けてみようという発想もわかるのだが、いかんせん見合わない感じがしてしまうのだ。

 

 

結局、この局は3人テンパイで流局するのだが、いつも通りの麻雀が打てている曽木・石橋と、

いつもと少しリスクの取り方がズレている村上・佐藤という構図が浮き彫りになった局であったと

思われる。

東4局4本場供託1000点 ドラ
東家石橋34000
南家曽木41400
西家村上9400
北家佐藤34200
アガリやテンパイ料でコツコツ点棒を積み重ねてきたオヤの石橋。
この局も1巡目の
から仕掛ける。
このフットワークの軽さこそ石橋の持ち味であり、

この点棒の積み重ね方は正に石橋の真骨頂といえるであろう。
そして、仕掛けた後の手組みが非常うまい。
例えば、この局の5巡目。

  ツモ

 

 

石橋はこのをすっとツモ切りする。
を仕掛けた後、村上がすぐにを押してきている。
また、字牌が場に安く、リーチに挟まれたら後々安全牌に困りそうな場になっている。
そんな状況で自分の手牌に目を落とすと、
を3枚使わない限り1500か2900止まりの

愚形リャンシャンテン。
この手牌を目いっぱいに構えるのはリスクが大きい。
ここは、村上・曽木の安全牌となる
を残しつつ、比較的安全度の高いを抱え、

うまくいったとき(先にポンができたときなど)だけアガリに向かえるように構えておく。
また、
を残すと、が浮いている者が前に出にくくなるという効果も期待できるのである。
守備・攻撃・牽制すべての面において、実にバランスの取れた手組みであると思われる。
この後すぐにイーシャンテンの佐藤が
をツモ切りすると、

石橋はこれをポンして打でイーシャンテン。
実はこの順番で手を進めることができたとき、さきほどの
ツモ切りが最も利いてくる。
普通、
とあったならば、

より先にが打たれるのではなかろうか。
特に、他家から見ればなおさら「ダブ東含みの手牌なのだから
をシャンポン形で活かせるように目いっぱいに構えている可能性が高い」と映るはずである。
とすると、他家のケアはどこへ向かうのか。
ツモ切り後のポン出しなのだから、ソウズの下は受けになっている可能性が低そうだな。

ソウズはだけケアしとけばとりあえずオッケーかな」となり、情報量の少ない中盤ぐらいでは、がいったんケアから外れるのではないだろうか。
先ほどの
ツモ切り一打で、ここまで恩恵を受けることができるのである。
いかに優れた一打であったかおわかりいただけたであろう。
そして、次巡には佐藤から
が鳴けて、目論見通りカンのテンパイとなった。

 

   

前述のように、この河を作られるとソウズはにケアの比重を高めねばならず、

は危険牌の1つではあるものの、のどちらかを勝負しなければならないという

状況になった場合には、が選ばれることが圧倒的に多くなるだろう。
おそらく南家の曽木もそのような思考を踏んだはずで、

のマタギであるならまだ押してもいいという判断の下、

切りリーチといっている。
 

 

 

 

すると、このにポンの声がかかる。
北家の佐藤である。
このポンも驚きであったが、ポンして打ち出された牌にはもっと驚いた。
2人に無筋の

両者の手牌にドラが絡んでいなさそうなことはわかるが、

5800以上確定の仕掛けとそれに向かったリーチの宣言牌をポンし、

両者に無筋の打である。
これはいささかやりすぎではないか?
を切らずとも、を落としてにくっつけばまだ戦えるし、

待ちもペンとあまり良くない。
結果として、石橋が
をツモ切って佐藤のアガリなるのだが、

戦い方のベクトルが少しズレているように見える。

 

  ロン
1300は2500。供託2000点を合わせて4500点の収入となった。
確かに供託と4本場はほしいのだが、他家に放銃してしまったら

その時点でなくなるのであるし、放銃すれば逆に4本場を1人で負担しなければならないのだ。
若い佐藤の一連の打牌に、やはり気負いとズレを感じる。

南1局 ドラ
南入後も石橋の足は止まらない。
北家石橋は3巡目に
を一鳴きしてこう。

 

 


手牌が短くなっても、勝負に見合うスピード・打点になるまでは字牌たちで

守備力を強化できている。バランスのいい仕掛けだ。
また、こういう露骨なホンイツ仕掛けをすると、押してきている者が

わかりやすくなるというメリットがある。
この仕掛けに対して生牌の役牌を打ち出してきたものがいれば手が入っているだろうし、

上家がソウズを打ってきたらもうテンパイ間近だろうから、自分の手が真に合わなそうなら

そのプレイヤーに対する安全牌を抱えることができる。

この仕掛けに対応したのが上家の佐藤。
5巡目に
を引く。

 

 ツモ
テンパイチャンスと打点力では
だろうが、役ありテンパイの枚数ではが勝る。
また、ソウズのホンイツがいる状況では、アガリを優先すれば打
ということになるだろう。
しかし、佐藤は打

おおっ、さきほどの「アガリたい」症候群の佐藤とは別人だ。
を切ると役アリテンパイがほぼ確定するのだが、

形と打点の総合力で打が勝ると考えての打牌だ。
また、ソウズ模様の下家にドラそばの
を安易に鳴かせないという

守備的な面も兼ね備えている。
8巡目、ここに絶好の
を引いてリーチ。

ここにオヤの曽木が少し苦しいタンヤオ三色イーシャンテンから、

攻撃的な曽木らしくツモ切りで放銃。
これがウラウラで12000。

 

 ロン ドラ ウラ
佐藤が大きなトップ目となった。
佐藤もこれで落ち着いたようで、ここから本来の飛び方になってゆく。
あとは、最後の1人、現最高位の村上だけなのだが・・・

南2局1本場供託1000点 ドラ
東家村上11400
南家佐藤49700
西家石橋30500
北家曽木27400
その村上、オヤ番で連荘し、1本場で6巡目にこのオヤリーチ。

 

これに対して北家曽木も安全牌を切りながらしっかりと一色手をテンパイ。

 


が3枚切れているため引きなどの手替わりを望んで

ダマテンにしているとを引き、そのままツモ切りで村上へ3900は4200の放銃となった。

 

 ロン ドラ ウラ
しかし、しっかり手を作ってからの放銃であるため、曽木は全く気にしていないだろう。
それどころか、むしろ「よし、打てている」とさえ思っているはずだ。
この
をきっちり押せなければ曽木ではないのである。

南3局3本場供託1000点 ドラ
オヤの佐藤がを仕掛けてマンズのホンイツ模様。
曽木も目一杯のイーシャンテンに構えていると、ツモ

 

 ツモ
 

 

曽木はここからを打つ。
マンズを先打ちする意図と、ソウズが伸びてドラをもう1枚使えるかもしれないことに備えた

懐の深い一打である。
すると、局面はここから一気に動く。

10巡目、村上の放ったに対し、南家石橋が以下のイーシャンテンから、

シャンテン数の変わらないポンをして打

 


一応手広いドラドラのイーシャンテンなのだが、

マンズのホンイツをやっている者がいる場でのマンズ待ちが不満なようだ。
これがアツイのはオヤの佐藤である。
マンズのホンイツに見えて、実はチャンタ三色をやっていた佐藤。

 

 
ここから、目論見通りペン
が鳴けるはずだった。
現に上家の村上から
が切られたのだ。
それなのに、その
を石橋にポンされ、途端にアガリ目が薄くなってしまう。
さらに、直後に佐藤が曽木の
に合わせてをツモ切りすると、

石橋がフリテンのの形でチーとくる。
この
が孤立ターツのわけはないので、もうこの段階で待ちはにかなり絞られる。
石橋としてもオヤの
ツモ切りでマンズホンイツ説を疑ったはずで、

「オヤがマンズじゃないなら良い待ちだ」ぐらいのつもりでテンパイを取ったに違いない。
今回のメンバーの中では唯一仕掛けを多様するタイプの石橋が打てている。

また、時を同じくしてドラドラのテンパイが入った曽木。

石橋のチー直後にと連続で引き、ピンズを払ってのテンパイだ。

 

 ツモ
これをリーチ。
はもうないが、は4枚ともヤマだ。

しかし、それは石橋も同じこと。
どちらも良い待ち。
わずか1巡、ツモ
で決着。
掘り当てたのは曽木。

 

 ツモ(一発) ドラ ウラ
3000・6000は3300・6300で、トップ目の佐藤に5000点差とういうところまで詰め寄る。
浮き沈みが激しいが、これが曽木。
この攻撃こそが曽木達志の飛び方なのである。

南4局 ドラ
東家石橋25700
南家曽木38600
西家村上11800
北家佐藤43900
オーラスは佐藤と曽木の接戦になるかと思いきや、ここから石橋の攻撃が始まる。

 

 ツモ
7巡目、上記イーシャンテンに構えていたところ、
が2枚切れて薄くなったと見るや、

を残して切り。
これが活き、すぐに
と引いてリーチ。
終盤にラス牌の
をツモって、まずは1300オール。

 

 ツモ ドラ ウラ

 

南4局1本場 ドラ
続く1本場でも、4巡目に下記からペンチャンをしっかりから外す。

 

 ツモ
すると、次巡に
が重なってリーチ。

 


その後、村上が
を抑え、タンピン三色の形を作ってリーチとくる。

 


しかし、村上を振り払い、石橋がこれまたラス牌の
をツモって2600は2700オール。

 

 ツモ ドラ ウラ

南4局2本場 ドラ
東家石橋38700
南家曽木34600
西家村上6800
北家佐藤39900
これで三つ巴の接戦になったかと思うと、

石橋がこの9巡目リーチをあっさりツモって1300は1500オール。

 

 ツモ ドラ ウラ

3本場は全員ノーテンで流局し、そのまま石橋が大外一気でトップをかっさらった。

1回戦成績
石橋+43.2
佐藤+18.4
曽木△6.9
村上△54.7

2回戦
起家から村上→石橋→曽木→佐藤

東1局ドラ
前回の勢いそのままに、南家石橋が9巡目にドラ3の大物手テンパイし、

ダマテン即ツモで3000・6000。

 

 ツモ ドラ


オヤかぶりは1回戦ラスの村上。
今日の村上はとことんツイていない。

東3局 ドラ
前局1000・2000をツモった佐藤、1巡目の打牌が完了するとすでにこうなっていた。

 


これが3巡目にあっさりテンパイする。

 

 ツモ


佐藤、なんとここから
とドラのシャンポンでリーチせず、を落とし始める。
確かに、
だとリーチにいきやすいのだが、だとタンヤオが確定した上に

三色まで望めてしまう。
とはいえ、これは
を落とした方がいいのか微妙なところだと思われる。
長く打つなら、何も考えずにシャンポンリーチするのが良かったりするのだろう。
しかし、半荘20回で優勝を狙うゲームとあらば、これだけの手材料が揃ったときには

大きく狙ってみてもいい気がする。
この辺については何とも言い難いところだ。
ただ、1つ言える確かなことは、この
は落ち着いて打てている人間でなければ

落とせないということである。
完全に落ち着き、決定戦の空気にも慣れた佐藤、ここからが見物だ。

2枚目のを見ても微動だにしなかったのはオヤの曽木。

 


この巡目に
をトイツ落とししてきた佐藤の手が早くて高いと読み、

安全牌を残すために鳴かないのは定石なのだが、仮にこの2枚目のが他家からだったとしても

鳴かなかったのではないだろうか。
曽木とはそういうプレイヤーであり、オヤであろうとこの
を鳴かずに

リーチ手順を踏んでくるから怖いのである。

今局は佐藤が終盤に想定通りピンズの両面で再度テンパイするものの、

1人テンパイで流局となった。
流局とはなったものの、佐藤、曽木の充実ぶりがうかがえる。

南1局ドラ
東家村上23000
南家石橋41000
西家曽木25900
北家佐藤30100
トップ目の南家石橋が5巡目の
ポンから首尾よく仕掛け、局の消化を目論む。
7巡目には
もチーできて、あっさりテンパイ。

 

  


この手は門前で進めても安全牌を多く抱えることはできなさそうで、

ならば仕掛けて最速のアガリを目指した方が守備的にも良さそうである。


すると、次巡、今村上が切ったばかりの
を引いてくる。

 

   ツモ


この局はドラが
であるため、通常よりもの使用頻度が上がる。
また、これで
が自分から4枚見えたため、を両方使い切ることは難しくなってくる。
さらに、いざというとき(例えば、他家のリーチに
が通った場合など)には

比較的安全なを切って他の単騎に受け替えができる。
このような理由から石橋は打
といった。

この直後、ようやく村上の真骨頂である6000オールをツモりにいくリーチがかかる。

 


不調の村上、ここでこのリーチが決まればだいぶ楽になるのだが。

結果は、石橋がズバリ正解を叩きだし、ツモの300・500で

村上のオヤリーチを蹴ることに成功する。

 

   ツモ
好調石橋、不調村上の明暗がくっきりと分かれた。

南2局 ドラ
トップ目のオヤ石橋、チートイツドラドラのイーシャンテンに3枚目となるドラを引く。

 

 

石橋はこのをノータイムでツモ切り。
攻撃的にはチートイツを目一杯に構えることができるのだが、狙いはそれに留まらない。
アンコからであるため相手にポンされることがなく、

仮にチーされても2000点ぐらいの手になるはずで問題がない。むしろこのに反応して

他家が安くアガってくれればそれはそれで局が進んでOK。
「ほら、オヤがドラ打ちですよー。もうすぐリーチきちゃいますよー。

早くアガリにいかないといけませんよー」
そんな狙いがある。

トップ目のオヤが打ったドラを見ては、いくらリーチファイターの曽木といえど、

仕掛けざるを得ない。

 


ここから
をチーしてカの2000点に受ける。

また、佐藤もスピードで合わせるために、ツモで仕方なくドラ切りリーチといった。

 

 ツモ

正に石橋の目論見通り、わずか1巡で2人の手を安くすることに成功し、

曽木が500・1000をツモって終局。

 

 ツモ ドラ
石橋、ドラ切り1つでトップ目のまま静かなオヤ落ちを完了する。

4人の中で石橋が一番打てている。
「らしく」打てている。
そんな印象を抱く。

南3局 ドラ
南家の佐藤が12巡目にをポンしてテンパイを入れる。

 

 


すると、14巡目に1枚切れのを掴んだのはまたしても村上。

 

 

 

この点数状況でこんなを止めていたら麻雀にならないかもしれないが、

それでも村上には止めてほしいなのである。
が良く見えたかもしれない。
しかし、仮にテンパイしたとして、
以外が入ったときに打ち出されるのは、

それなりに危険ななのだ。
また、自分にドラが1枚もなく、相手の打点が読みづらい。
曽木が打った
なら何も言うまい。その攻撃し続ける姿勢こそが曽木なのであり、

このように特段取り上げることはしなかっただろう。

むしろ曽木がこのを打たなかったらそれこそ問題となる。
ただ、この
を打ったのが村上というのであれば、

それはもうエラーの部類に入ると筆者は思う。
「打てていない」
石橋とは対照的に、現時点で筆者が確信した村上に対する印象である。

 

  ロン ドラ
佐藤が5200をものにする。

南4局ドラ
東家佐藤33500
南家村上15800
西家石橋42800
北家曽木28600
曽木がすごい。
まずは9巡目、ツモ

 

 ツモ


自分で
を切っているため、ツモ切りかと思ったが、曽木は打
2着になるには1000・2000条件であるため、タンヤオ以外を切り捨てた。
すると、次巡、
をツモって、打でこのイーシャンテンへ。

 


そして、次々巡に
を引いてテンパイ即リーチ。

 


これ、
をツモ切りしているとおそらくこの高目ツモ条件になっている。

 


また、
を残すとして、を払うとこのイーシャンテンになっている。

 


正解を選び続け、最速最高のテンパイに到達したこととなる。

また、オヤの佐藤も、正解を選ぶ。

 

 ツモ


9巡目に上記からトイツ落としの選択を迫られると、佐藤は打
を選択。
普通は河をヌルくしないために打
だろう。
しかし、すぐに佐藤の狙いが判明する。
11巡目に
を引くと、を外しにかかる。
このとき、
は3枚切れになっていた。
なるほど。
が薄いとみるや、からもう1メンツ作れる可能性を見てから外したわけか。
そして、曽木のリーチ一発目に
を引いて追いかけリーチをしたときには、

はヤマに1枚も残っていなかった。

 

これは・・・
2人ともすごい。
冴えている。

結果は佐藤がを掴んで曽木に3900の放銃となった。

 

 ロン ドラ ウラ
しかし、放銃となった佐藤も十分に魅せてくれた。
3人が3人とも、素晴らしい飛び方を見せてくれている。
そう、これが最高峰の戦いなのだ。

こうなると、やはり現最高位村上1人が打てていないということになる。
もちろん不運すぎる面もある。
ただ、いわゆる王道といわれる雀風で最高位を獲得した者に対する期待は

それほどに大きいということなのだ。

2回戦終了時トータル(カッコ内は2回戦成績)
石橋 +85.3(+42.1)
佐藤 +7.0(△11.4)
曽木 +6.6(+13.5)
村上▲98.9(△44.2)

3回戦
起家から石橋→曽木→村上→佐藤

東1局 ドラ
に頼らずリーチを前提としたチートイツに決めた曽木。
6巡目にテンパイを果たすと、
、2枚切れのと単騎を変えて、

最後は待ちごろの単騎で8巡目リーチ。


<曽木捨て牌>

 


リーチ宣言牌が2枚切れの
であり、チートイツはケアしにくい。
また、このリーチをメンツ手と読むと、捨て牌に上が多く切られており、

警戒するとしたら下の三色となる。そのため、はケアされやすいが、

はわりとケアされにくい。
この
がリーチ時点でヤマに3枚生きているのだから、強烈なリーチである。
これに捕まったのが不調の村上。

 


上記テンパイからツモ切りの放銃ではいたしかたなし。
それにしても巡りが悪い。

 

 ロン ドラ ウラ


村上はこの半荘もいきなり8000点を失う。

東2局1本場供託1000点 ドラ
引き続き曽木の選択が冴えわたる。
オヤの曽木はダブ東をポンしてテンパイしていると、佐藤からリーチが入る。
これに一歩も引かない曽木。
終盤にドラ筋の
を引く。

 

  ツモ

 

 

 には受け替えるとして、どちらを切るか。
ここで、曽木は、佐藤のアタリ牌
ではなく、を切ってへ。
が一応あり得るのにもかかわらずである。
それよりもチートイツやシャンポンなどの変則手をケアしたということなのだろう。
牌譜で見れば納得できるが、やれと言われてなかなかすぐに決断できることではない。
そして、直後にドラツモで4000は4100オール。

 

  ツモ
曽木の優れた能力の1つに「大きな読みに従える力」というものがあると思う。
大きな読みとは、例えば相手の手がチートイツなどの変則手なのか普通の順子手なのかといった

読みの根本となる項目のことだ。
これに対し、小さな読みとは、例えば
の順で切られたから

普通はあるならよりの方だろうといった各打牌にスポットを当てた読みのことだ。
曽木は、この大きな読みが大きくズレない。
そして、何より、この自分の大きな読みを絶対的に信じ切ることができる。
この局も、変則手という大きな読みを信じ切ったからこそ、
なんてものが読みスジに入っておらず、素直にならの方が生牌だから危ないという思考に到達できているのである。
大きな読みに従えるから、押せる局面が多くなる。
この力が曽木の攻撃の原動力となっているのは言うまでもない。

東2局2本場 ドラ
石橋に疑問手。

 

  ツモ
 

 

 

石橋は切りのではなく、なんと切りのに受ける。
狙いとしては、
を切っている者が2名おり、そこがツモ切ることへの期待といったところだろう。
また、ホンイツに見えない河であるため、
を切ることで安いということをアピールできる。
しかし、せっかく目立たない河でテンパイできているのだから、安いということをアピールするより、

という明らかなテンパイ宣言をすることの方が損であるように思う。
そして何より、打点が違いすぎる。
なら、何が出てもハネ満、ツモ倍満、なら出ても倍満だ。
結果的に、アガリ逃しをした後に、マンズのチンイツテンパイから村上が

8000は8600の放銃となった。

 

 ロン ドラ
 

 

 

 

村上としても、を手出しした石橋がテンパイしていることぐらいわかっているが、

石橋が切りでリーチとこなかった以上、三色やタンピンではなく、ピンフやタンヤオのみである

可能性が高いと考えている。
そのため、ノーテン罰符を払うぐらいなら、打ってもいいと考えてのものだ。
この読み自体は然るべき思考だと思う。
これが8000に刺さるのだから、本当にツイていない。

南1局1本場ドラ
さらなる不運な放銃などで、村上はハコ下となっていた。
東家石橋44200
南家曽木50500
西家村上△2800
北家佐藤28100
ここに、石橋のオヤマン仕掛けと曽木の高目マンガン仕掛けが襲いかかる。
東家石橋

 

  


南家曽木

 

 
これを曽木が制して2000・4000は2100・4100。

 

  ツモ ドラ
曽木、トップを盤石にし、南2局自身のオヤ番へ。

南2局ドラ
東家曽木58800
南家村上△4900
西家佐藤26000
北家石橋40100
この局も手の軽いオヤの曽木、くっつきテンパイで絶好の
を引いて5巡目に3面張のリーチ。

 

これを受けて、北家の石橋が一応テンパイとなるを引く。

 

 ツモ
 

 

 

とりあえず通る可能性の高そうなを切って仮テンか。
そう思った刹那、石橋の打牌
が横に曲がる。
単騎の追いかけリーチである。

 


石橋はこう振り返る。
「まず、マンズが安くて
が悪くないことが大前提です。
その上で、自分が追いかけリーチをすると共通安牌が少なくて、

それなら切り順的にオヤに若干通りそうなは字牌以外では出やすい牌の

1つになるんじゃないかと。
確かに、
切って手替わりを待つのもいいんですが、

自分に都合の良い牌を引かなければ大体オリることになりそうですからね。
かなりリスキーではありますけど、20回の短期決戦では、どこかで必ずトップを取りにいかなければならないはずで、この回もまだトップを狙っていました。
なので、トップを取るという前提に立った場合には、

オリになるぐらいならこの単騎でリーチした方が有利だと判断しました。
優勝のためにとったリスクってところですね。
にしても、やりすぎだったかもしれませんけど(笑)。
ただ、こういう舞台では、無難に慎重に打つより、

ポジティブに大胆に打った方が優勝しやすいと思っています」
なるほど。
確かに、この2軒リーチに対して、序盤は1人しかケアすることができないであろうから、石橋を無視して、オヤの曽木に通りそうな牌を打つことになる。
それにしてもすごいリーチだ。
本人も言っているが、いわばやりすぎの部類に入る打牌だろう。
しかし、短期決戦で優勝を狙うためには、アリな選択であると思う。
とはいえ、急にこのようなリーチができるわけはなく、石橋の充実した稽古の様子がうかがえる。

このリーチに挟まれ、困ったのは村上だ。
 

 

安全牌が1枚もない。
村上は、正にさきほど石橋が言った通りの理由から、
を選択する。
すると、これが石橋の
単騎にピタリ絵が合った。

 

  ロン ドラ ウラ
8000と曽木のリーチ棒で10000点縮めた石橋、トップ目を猛追する。
対する不運の村上は、ついにハコ下12000点まできてしまった。
しかし、そんな状態の現最高位が、ついに目を覚ます。

南3局ドラ
東家村上△12900
南家佐藤26000
西家石橋49100
北家曽木57800
北家曽木が
と仕掛ける中、下記の7巡目テンパイから冷静にダマテンを選択。

 

 

曽木がを切っているなど、が薄くなっている。
それなら、曽木にアガられる前にアガり切ろうという思考だ。

 

このダマテン判断には賛否両論あるだろうが、

この持ち点まできてこれをダマテンにできる精神力は凄まじい。
なかなかできることではない。
常人ならば、リーチという楽な選択をすることだろう。
村上はこの5800をすぐに佐藤からアガると、ここから点棒を積み重ねる。

 

 ロン ドラ

南3局2本場供託1000点 ドラ
まずは南家佐藤の8巡目リーチ。

 


村上も13巡目に追いついてリーチ。

 


すぐに佐藤が掴んで7700は8300。

 

 ロン ドラ ウラ

南3局3本場ドラ
このリーチは、アンコでノーチャンスとなった石橋からが出て2400は3300。

 

 ロン ドラ ウラ


これで持ち点がプラスになったのはもちろん、3着を狙える位置までやってくる。
東家村上7000
南家佐藤9400
西家石橋47300
北家曽木56300

南3局4本場ドラ
4本場では石橋が2000・4000は2400・4400をツモアガり、村上の連荘をようやく止める。

 

 ツモ ドラ


これで石橋は狙い通りのトップ目になる。
また、村上も、オーラスでは奇跡の3着浮上を狙うことができる。

南4局 ドラ
東家佐藤7000
南家石橋56500
西家曽木53900
北家村上2600
まずはオヤの佐藤が11巡目リーチ。

 


この直後に村上が追いついてリーチ。

 


佐藤からリーチ棒が出ているため、2600ならばどこから出ても3着になる。
これに挟まれ、終盤に安全牌に窮したのはトップ目の石橋。
仕方なくワンチャンスの
を切って村上への放銃となった。

 

 ドラ ウラ

 


ウラが乗らずに2600。
この2600がドラマを呼ぶ。
村上はハコ下12000点から40000点近い点差をまくり上げて奇跡の3着浮上。
そして、石橋と曽木が同点で終了となったため、最高位戦の規定により、

順位点が両者に20000点ずつ分けられる結果となった。
つまり、この2600、自分が順位点20000点を獲得するのと同時に、

現在トータルトップの石橋から10000点をはぎ取っていることとなる。
言い換えれば、合計32600点ぐらいの価値あるアガリということだ。
これは、復調の兆しと言っていい。
次の半荘は現最高位村上の反撃に注目だ。

3回戦終了時トータル(カッコ内は3回戦成績)
石橋+129.2(+43.9)
曽木+50.5(+43.9)
佐藤△47.0(△54.0)
村上△132.7(△33.8)

4回戦
起家から石橋→曽木→佐藤→村上

東1局ドラ
オヤの石橋がいつものようにバランスの取れた仕掛けで、10巡目にはこうなっていた。

 

 


は2枚切れで安牌、は生牌で他家に切らせないという意味合いが強い。
また、
は序盤に曽木が1枚切っており、そこそこ安全で、重なれば攻撃にも使える牌だ。

ここに村上からリーチが入る。

 


もちろん1枚目の
を鳴かずに、リーチ手順を踏んだもの。

そう、実はこのメンバーでこのルールを打つと、

1枚切れの字牌がアタリになるケースというのが少なくない。
一発ウラドラがあり、トイツの字牌という安全牌を抱えながら、

破壊力のある門前手に仕上げようという思考になるからだ。
石橋もそれは重々承知しているのだが、1枚切れの字牌が

数牌より格段に安全度が高いのは紛れもない事実であり、

イーシャンテンから後スジのを掴んだ時点で打
村上に放銃となった。

 

 ロン ドラ ウラ


すると、ウラドラは

そう、これが門前で仕上げたときのメリットだ。
ついに村上が石橋をとらえ、8000スタートの好発進を見せる。

東3局ドラ
しかし、このリードを広げることができないのが今日の不運王村上。
東3局ではオヤ佐藤の早いホンイツにつかまり、5800を献上するなど、

じわじわ点数を減らしてしまう。

 

  ロン ドラ


南1局ドラ

村上の持ち点は、東場を終えてついに原点を割った。
東家石橋18500
南家曽木31900
西家佐藤40000
北家村上29600

そんな逆境の中、村上が11巡目にツモで先制リーチ。

 

 ツモ


マンズが安く、この
はヤマだ。
そう思ったに違いない。

しかし、すぐにオヤの石橋から追いかけリーチが入ってしまう。

 

 ツモ


ここから
切りでリーチといった。
村上の河に
があり、安全度で選択したのはもちろんのこと、

やはり石橋もを狙いにいっている。

また村上が負けてしまうのだろうか。
両者のツモ切りが続き、後はお互いの最終手番を残すのみ。
ヤマに選ばれたのは村上。

 

 ツモ ドラ ウラ


そして、またもやウラウラで望外の3000・6000。
ついに石橋をダントツラスに沈めつつ、村上がトップに浮上する。

南4局ドラ
その後佐藤がじわじわ点数を減らし、オーラスを迎えて

トップ争いは村上と曽木の2人に絞られていた。
東家村上43600
南家石橋12100
西家曽木38300
北家佐藤26000

このトップは取っておきたい。
そんな村上の声が聞こえてきそうだ。
ところが、11巡目、そんな村上の願いを打ち砕くリーチの声が響き渡る。
声の主は曽木だ。

 


ならどこから出てもトップ。

だとツモか直撃条件だが、この時点でが2枚ヤマに生きている。

このリーチを受けて村上はドラドラながら、まだこの段階。

 


しかし、ここからわずか3巡でテンパイまで辿り着く。

 

 ツモ
現物は、
とあり、オリるには問題ない。
流局すればトップだ。
そんな考えもよぎっただろう。
だが、最高位村上はこれを
切りでノータイムのリーチといった。
すると、すぐに曽木から
が出て7700。

 

 ロン ウラ


これでトップを盤石にし、1本場へ。

南4局1本場ドラ
東家村上52300
南家石橋12100
西家曽木29600
北家佐藤26000

村上は終盤にチートイツドラドラをテンパイしダマテン。
もうトップは盤石になったのであるから、ここは点数の叩きどころだ。
佐藤、石橋のテンパイは察知しているものの、オリずにテンパイを維持したまま流局。
実は、筆者は、この対局の現場に立ち会っていない。
後日、牌譜と映像を受け取ってこの記事を書いているのだ。
そのため、当然に次局の牌譜データを見ようとした。
ところが、この1本場、オヤの村上がテンパイだったはずなのに、

2本場の牌譜データがどこを探しても入っていない。
これはどういうことか?
1本場の牌譜をよく見てみる。
流局。
そして、村上の点数に表示された△1500の文字。
映像でも確認した。
村上はなんとノーテン宣言をしていたのだ。
これには驚いた。
初日でここまで点数を減らしたら、このようなトップがほぼ確定した半荘のラスオヤで点数を取り戻そうとするのが常人の思考ではないだろうか。

そのチャンスを放棄し、村上はこの半荘を終わらせてしまったのだ。
これについて村上に聞く。
すると、こんな答えが返ってきた。
「石橋にラス抜けされたら嫌だというのが大きかったですね。
もうこの段階で石橋をかなり意識していました。
この判断はいまだに微妙だとは思いますけどね」
なるほど。
確かに、トータルトップ目の石橋がラスのうちに終わらせたいのはわかる。
しかし、まだ初日であるし、自分の得点を考える段階ではないのか?
普通は自分の点数を考える。
ただ、村上は違う。
なんというか、謙虚で恐がりなのだ。
その証拠に、村上はメールの最後にこんなことを書いていた。
「そこまで王様点数状況じゃなかったしね」
この点数状況を王様じゃないと言う恐がり、村上淳。
なるほど。
村上の強さをさらに理解できたような気がする。
こんな恐がりが自信を持って振り下ろすリーチだから、村上のリーチは恐いのだ。
そんな、村上が村上らしく謙虚に気高く手牌を伏せ、

2日目以降の飛翔に備えたところで1日目が終了した。

1日目終了時トータルポイント
石橋+82.8(△46.4)
曽木+58.6(+8.1)
佐藤△59.5(△12.5)
村上△81.9(+50.8)

結局、4人が4人とも自分らしいリスクの取り方を見せたところで1日目を終えた。

この中から最も高く飛びだし、最高位の栄冠を勝ち取るのはどのプレイヤーなのであろうか。

 

とにもかくにも、これからも飛び続けておくれよ。

一流のトビウオなんだから。

飛べば色んなリスクがあるかもしれないけど、安心して何百メートルでも飛んでおくれよ。

あんた方の飛び方を理解してもらえないリスクなら、おれが消してやるから。

 

トビウオの華麗な姿、このチョウチンでみんなにわかってもらえるように照らしてやるから。

 

あんた方の素晴らしい麻雀は、一流のチョウチンアンコウが照らし続けるから。

 

 

文:鈴木聡一郎
文中敬称略

 

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鈴木聡一郎の今夜もツクねん
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