コラム・観戦記

【第36期Aリーグ第9節自戦記】水巻 渉

3分の2が終わりAリーグもいよいよ終盤戦。

現状は+97.1の3位とまずまずの位置に付けているが、前節のポイントの動き方

(100ポイント以上動いた者が6人)を見てもまだまだ下も安心できる状況とは言えない。

しかし、やるべきことは変わらない。

ただ愚直に、自分が勝ち(この場合は主に最高位決定戦進出)に近づくと思われる

一打を選び続けるだけだ。

1回戦

東パツに石橋が大連荘であっという間に6万点越え。
その後は細かいアガリとノーテン罰符の移動で南2局の親番を迎え以下の点棒状況。

水巻 18600
曽木 12400
太田 33100
石橋 55900

4巡目に以下の牌姿になる。

 

 ツモ ドラ

関連牌はが1枚ずつ、が2枚とんでいる。
石橋の河に若干の速さを感じたが、まだ間に合うか、と
ツモ切り。

次巡、ツモで打
そして次巡、ドラの
をツモってこの形。

 

選択肢は
他家はそれほど進んでいるようには見えなかったが、点棒状況上この親番は簡単には

落とせなかったので打としてピンズが伸びなかったときと、突然火の手が上がったときの

ために安手だがリーチの保険を掛けておいた。

さらに次巡、ツモで打
9巡目に
を鳴いて予想以上の仕上がり。

 

  

これに太田が飛び込んで望外の12000となった。
幸運だったのは4巡目のツモが
だったこと。
これがもし
だったなら、のどちらかを選び全く違った結末になっていただろう。

南2局1本場 ドラ

曽木が13巡目にリーチ。
自分も同巡に追い付く。

 

ピンズはやや高いがここでたたかなければトップはない、と考え積極的に追い掛けた。



しかし、宣言牌が曽木のメンピン一発裏に捕まってしまう。
この
が放銃になったことは微塵も後悔していないのだが、

問題はリーチを打つのかどうかということ。
を払ってこの巡目のリーチである。
かなりの好形であることは容易に想像できた。

加えて、この点棒状況。
水巻 30600
曽木 12400
太田 21100
石橋 55900

曽木に8000でも打てば2~4着争いは一気に混戦になってしまう。

ダマテンでは勝ちきれない気もするが、場況からこのがアガれる気はあまりしなかったし、

最悪に近い結果になったから言っているんではなく、順位取りが大切な最高位戦ルールにおいては非常に難しいリーチ判断に思えた。

その後はそれぞれの親番で曽木が4000オール、太田が2000オールとアガって結局ラス。
南2局のチンイツから一転、ラス前、オーラスは今の自分では為す術もなかったとはいえ、

何とも気持ちの悪い終わり方だった。

2回戦

手なりの4000オールを2回ツモるも曽木が手数で応酬。

結局オーラスを迎えた時点では曽木の200点下で、もらった配牌がこれ。

 

  ドラ

この点棒状況では決していい配牌とは言えないが、幸いなことに親の

石橋が遅そうだったので役牌の重なりとリーチを目指して目一杯手を広げた。
結果は17巡目にこんなうれしすぎるツモアガリ。

 

  ツモ

太田がソーズ一直線で他の2人にもソーズは高かったためアガリは半ば諦めていたところに、

ひょっこりの

1回戦のラスを帳消しどころか、お釣りまでくる大トップとなった。
冒頭で「愚直に勝ちに近づくと思われる一打を選び続けるだけ」と書いたが、

ラスの後によりトップを取りたい、と思うのは人間の自然な心理というもの。
内心、一息ついていた。

3回戦

大物手が飛び交う展開で南3局を迎えた時点でこう。

石橋 21300
水巻 28400
太田 43800
曽木 26500

もちろん、なるべく高い手をアガってラス親を迎えるのが理想だが、次善策は現在1900点の

曽木との差を次局ノーテン罰符でも変わらない4100点差以上にするようなアガリ。
その次が1000点でもアガって次局の親カブリでも変わらない点差を作ること。
石橋の連荘はできる限り避けねば、などと考えて局に臨んだ。

2巡目に以下の牌姿となったところで場に2枚目のが打たれるが、

さすがに鳴いた後の形が悪過ぎる、とスルー。

 

 ドラ

これが8巡目にはこうなった。

 

ツモがもちろん最高だが、からでもリーチ。
引きはダマに構えよう、と考えていた矢先のツモ

太田がドラのを切っているものの、彼の一九牌とオタ風のドラ切りは手牌のスピードに

比例しないことがよくあるので特に気にかけなかったし、親の石橋に関してはほぼ字牌の

オンパレードで安心感すら持てた。
3巡目に自風のドラの
を切り出している曽木がやや気になったが、そのも2枚目で

その後のツモ切りの連打と全員の河から自分のアガリを確信してリーチを宣言した。

ところが…
まったく気にもかけていなかった親の石橋が一発目に
を強打。
明らかにイーシャンテン以上、それもそこそこの手が入っている雰囲気。

ヤバいか、と瞬間思ったが、それでもまだ追い掛けられたわけでもなく、

このまま押してきたとしても自分のの勝ちだ、と思い直したのも束の間、

石橋の「リーチ」の声。
直後につかむ

石橋「ロン!!」

彼にしては珍しく興奮気味の発声。
最低12000は覚悟したが、予想通りというか、その後には「18000」という申告が続いた。

 

 ロン

「この半荘はほぼ終わった」
この放銃の直後に思った正直な感想だ。

「あきらめたらそこで試合終了」なんて言葉も頭をよぎったが、現実は甘くない。
自分の順位がほぼ決まったここでジタバタあがいて素点を削られることこそ愚の骨頂。
ラス親でラッキーがあればいいな、くらいに考えていたが、やはりというべきか、

何事も起こらずに終了した。

4回戦

東場は曽木の独壇場で南1局4本場の親番で勝負手が入った。

 

 ドラ

これが配牌で9巡目にはこうなった。

 

一目瞭然、を打てばタンヤオドラ3のテンパイだ。



しかし、ここでまず第一の選択、リーチ判断を迫られた。
自分は点棒、場況がフラットなら出アガリ12000で高目ツモ6000オールは

ダマにすることが多いが、このときは状況があった。

水巻 29300
石橋 19100
太田 15900
曽木 55700

6000オールか曽木から12000でトップに肉薄するという点棒状況も確かにあるが、

それよりも大事なことがあった。
注目は
をポンしている石橋だ。

おそらくはイーシャンテンで、このは喰われそう。
を喰ってテンパイが入れば余程のこと(リーチや高そうな仕掛け)がない限りは

真っ直ぐ手を進めてくるだろう。
しかし、ここでリーチを打てば足を止めることができるのでは?

だけど同時に他家も含めて出アガリの可能性はひどく落ちるだろうな。
こんな風に考えていたが、最終的には少しでも自分の出アガリ確率を下げまい、とダマに構えた。

第二の選択は11巡目。
同じくリーチ判断だ。
前巡にラス目の太田が
をアンカンした直後。

この点棒状況でカンをしてリーチにこないからにはまだイーシャンテンだな、と思っていたが、

アンカンをする以上かなり手が整っているだろうし、点棒的にも親リーが入ってもある程度は

前に出てくるだろう。
テンパイが入っていると思われる石橋はどうだ?

それでもカンドラ、カンウラ付きの親リーにはなかなか押してこないか?等、様々な思考が頭をよぎったが、結局は先程と同じ理由でダマテン続行。
同巡、太田から石橋に1000は2200。

結果論はあまり好きではないし、そこから語るべきではないとも思っているが、正直、

石橋のロンの発声の直後にリーチだったか?とは思ってしまった。
それほど微妙な選択で、そして逃がした魚は大きかった。

この後、南2局が流局。
ラス前には親とのリーチ合戦を制して3900は4200。

オーラスはチーテンのタンヤオを軽くアガって2着で終了。

今節は結果はともかく、全体を通して目立ったミスもなく(気付いていない可能性はあるが)、

及第点と言ってもいいだろう。
しかし、現状維持の麻雀だったとも言える。

最大の目標である最高位獲得のためにはさらなる研鑽が必要だし、

Aリーグはそのための最高の練習場所という側面も持っていると思う。

残り3節、目一杯勝ちにいき、そしてがむしゃらに練習しよう。

文責 水巻渉

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