コラム・観戦記

【36期女流最高位戦予選第3節レポート】

8月22日 女流リーグ第3節
文責 齋藤 巧也

女流最高位戦リーグ
第2節終了時(全4節)
女流Aリーグ
1  花本 まな  +180.2
2  山口 まや   +82.5
3  浅見 真紀   +68.2
4  涼崎 いづみ  +49.1
5  柳 まお    +44.6
6  渡辺 洋香   +14.7
7  須山 いづみ   +9.0
8  池下 真理子  △34.5
9  亀山 馨    △40.1
10 野添 ゆかり  △58.8
11 和田 聡子   △59.0
12 吉川 愛莉   △84.9
13 京杜 なお  △215.0
7位までが準決勝へ。

まずは、準決勝に駒を進めること。
それを目標に全員が戦っていることだろう。
ポイント次第では最終節が消化試合になりかねない。
第3節はラストスパートにむけての重要なポジション争いになる。

1回戦
東家 京杜
南家 和田
西家 吉川
北家 浅見

東1局1本場。
先制のあがりをものにしたのは和田。

ロン

京杜から6400は6700。
和田とはB2リーグで同卓したことがある。
思い切って縦に寄せ大物手をものにするのがうまい。
このあがりも和田の意志ある打牌が成就した結果だろう。

余談だが、最高位戦リーグでの和田の手牌。
東3局 南家 ドラ手牌になし

 

和田は上記の牌姿からリーチを打たない。
マンズが場に安くはかなりいい待ち。
しかし、での1300を拒否する意思表示だ。
点棒の傾斜も一因しているだろうが、
それにしても私にはこの手をダマテンに構える胆力はない。
和田はこの局4000・8000をツモあがる。

東2局には吉川が丁寧に七対子のドラ単騎をツモあがる。

東3局
まずは親番の吉川が先制リーチ。
南家浅見が仕掛けて応戦。
浅見は手の内にドラのが暗刻だ。
カンでの聴牌。
後手を踏んだ西家京杜は

 


ここからを叩いて捌きにいく。
和田からで2000を打ち取る。
京杜は2節までに大きくマイナスしてしまっているだけに、
正直、この手を捌き手にするのは忍びなかったはず。
我慢の時と判断したのだろう。

南1局
京杜の苦難は続く。
自身の親番で吉川、和田、浅見から3軒リーチを受ける。

 

ここからを仕掛け捌きにいく。
これも仕掛けるのは本望ではないだろう。
危険牌をつかめばすぐ撤退の構えだが、
しぶとくをツモあがる。
リーチ棒も入り大きな700オール。

京杜は現在C1リーグで3位の昇級圏内につけている。
女流Aリーグでは現在最下位と苦しいポジションにつけているが、
虎視眈々とチャンスを狙っているようだ。
今後の爆発に期待したい。

南2局、京杜についに本手が入る。
ツモれば四暗刻だが、片割れがない。
親の和田も仕掛けて聴牌気配。
結局、親の和田と2人聴牌。

南2局1本場
ここまでノーホーラの浅見についにあがりがでる。

 

 ツモ

一発でツモあがり1300・2600。
ここまで手数だけは一番だったが、
やっとあがりに結びついた。
これで少し落ち着いたか。
と思いきや浅見は次局和田のリーチに飛び込んでしまう。
メンピン表裏の8000。

しかし、浅見はこのままでは終わらなかった。

 ツモ  

オーラスの親番でこの2600オールをひくと、
次局は和田の先制リーチに追いかける。

 ロン ドラ ウラ

12000は12300を打ち取り、
この半荘をトップで終了する。

浅見のここ一番での攻撃力には目を見張るものがある。
リーチ主体のスタイルで、打点が高い。
昨年は野口恭一郎賞受賞と乗りに乗っている。
今年は女流モンド杯にも出場している注目の選手だ。

1回戦スコア
浅見 +38.8
吉川 +18.0
京杜 △16.1
和田 △41.7

2回戦
東家 渡辺
南家 涼崎
西家 花本
北家 山口

東1局は渡辺から涼崎へ8000の移動。

しかし、東2局には渡辺の反撃。

 ツモ

一発でツモあがり1000・2000。
渡辺は失点の半分は取り返したが、
次局に山口へ8000の放銃となり苦しい展開が続く。

SPA世代の私にとっては渡辺といえば「ヨーコ会長」のイメージが強いが、
勝負師の顔になっている「麻雀プロ」の姿が一番かっこいい。
各方面で発揮しているマルチな才能には敬服するばかりだ。

南1局には花本がリーチ。

 

 ドラ

かなりアバンギャルドな形のリーチだが、有効な手変りは少ない。
何よりこのとき花本の河には中盤だが情報が少なかった。
実戦的で効果的なリーチだ。
一発で出あがり8000。

花本は34期後期入会。
競技歴は短いが非常に試合巧者なイメージを持った。
勝気なスタイルで現在女流Aリーグ堂々の首位。
昨年はあと一歩のところで決勝進出を逃しているだけに、
今期にかける思いは人一倍強いはず。

オーラスを迎え点棒状況は以下。
東家 山口 33000
南家 渡辺 17000
西家 涼崎 35000
北家 花本 35000

最高位戦では同点の場合順位点は分けとなる。
10-30のウマがつくので、同点1位の場合は+15のウマがつくルールだ。
トップの涼崎と花本はあがって単独トップが理想だが、
放銃すると3着になる可能性がかなり高い。
2000点以上の放銃で2着順(実際は1.5)落ちとなる。
山口は渡辺に8000を打つと同点ラスになる。
しかし、8000以下なら順位は落ちないので、
涼崎や花本に比べるとだいぶ押しやすい。
あがればトップがすぐ見えるがラス親なので連荘。
渡辺は3000・6000ツモで3着。
山口から8000で同点3着。
かなり条件が厳しいので現実的には素点を少しでも上乗せしておきたいところ。

上記を踏まえて考えてほしい。
渡辺からリーチが入る。
捨て牌

 


涼崎、花本は当然このリーチに

は向かっていかないわけだが、
山口がノータイムでを勝負。
これで困ったのは涼崎。
リーチの渡辺への現物はあるが、親の山口もケアしなければならない。
七対子の単騎で聴牌していたが無筋のを持ってきた。
は自分で切っているためフリテン。
聴牌すれば単独トップになる可能性はかなり高い。
涼崎は両者に比較的通りそうなを選択するが、
なんとこれが渡辺に捕まってしまう。

 ロン

かなり痛い2600となる。

山口がを押した。
これが涼崎にプレッシャーとなったことは間違いない。
山口は女流最高位3連覇の経験もあり、現在B1リーグ首位。
名実ともに女流リーグナンバー1といっても過言ではないだろう。
最高位戦リーグで女流としては初のAリーグ入りにも期待がかかる。

涼崎も最高位戦の看板選手。
過去には第5期プロクイーンにも輝いている実力派だ。
この半荘終了後、卓から離れられない涼崎がいた。
最後の放銃を悔いていたのか。
河をじっと見つめる姿に真摯な向上心を感じた。

2回戦スコア
花本 +35.0
山口 +13.0
涼崎  △7.6
渡辺 △40.4

2回戦
東家 柳
南家 野添
西家 池下
北家 和田

東1局
柳から和田に3900。
東2局
池下から柳に3900。

柳は積極的に仕掛け、手数が非常に多い。
終始イニシアティブをとっていた。
軽快な仕掛けで先制逃げ切りを狙う。
現在柳は女流Aリーグ5位につけており、
1、2節ともに順調にポイントを伸ばしている。

しかし、東3局、池下が反撃。
何と親のダブルリーチが入る。
が、流局。

この半荘このあと池下は我慢の展開を強いられることになる。
結果から言うと大きなラスを引いてしまうが、
5回戦の親番で大連荘し、準決勝進出に望みをつなぐ。

池下の入会当時はおとなしい麻雀をするイメージだった。
しかし、どうやらそれだけではなさそうだ。
親番での大連荘を見せつけられると、攻撃力が相当上昇している。
昨年の野口恭一郎賞での2位という好成績にもうなずける。

ここまでじっと我慢してきた野添にやっと手が入る。
東4局
まずは親番の和田が先制リーチ。
今まで先手には慎重に対応してきた野添だったが、
この局は違った。

 ドラ

で追いかけリーチ。
大物手で一気に決めにいく。
ほどなく、をツモあがる。
なんと裏ドラもで6000・12000。
ゲームを制する一撃。

南場を手堅く回し、野添がトップで終了する。

この日野添は大きくポイントを伸ばし、
準決勝進出に向けて躍進する。
非常に守備的な印象だったが、
劣勢な展開を一撃で打開する強さを持っている。
2年連続準決勝で敗退しており、
今年こそはと女王の座を目指す。

2回戦スコア
野添 +48.0
和田 +24.9
柳  △19.3
池下 △53.6

2回戦
東家 須山
南家 浅見
西家 吉川
北家 亀山

東3局4本場
吉川が親で連荘中。
すでに64700点持ち。
こうなれば、あとはひたすら叩くことを考えるだけ。
3巡目にリーチ。

ここに亀山が仕掛けて応戦。

 

ドラのない仕掛けで親のリーチに向かうのは非常に勇気がいるが、
これ以上の連荘はなんとか阻止したい。
吉川から1000は2200。

南1局
まずは、親の須山からリーチが入る。
続いて中盤で浅見の手がまとまる。

 ドラ

追いかけリーチといきたいところだが、
が場に3枚切れの上に須山の現物なので当然のダマ。
ここで吉川も追いつく。

 

を切れば聴牌だが、
浅見が押しているのを見て打とする。
リードしていることもあり冷静な判断だ。

吉川は34期前期入会。
当初は研修生としての入会だったが、素晴らしい成長を遂げていると感じた。
準決勝への切符をかけてトッププロと対等に渡り合っているのだから。
昨年は女流Bリーグ2位で準決勝進出を果たしている。

浅見がをツモあがり1300・2600。

南2局
親の浅見がリーチ。

 ドラ

ここに亀山がで飛び込み7700。
巡目が早かったが淡白な放銃に映った。

南3局
亀山に先制の聴牌。

  ドラ
1巡ダマに受けるが手変りを待つ猶予がないと判断しリーチ。
浅見から出あがり。
裏ドラがのり8000。

亀山は34期前期入会。
対局終了後東場に吉川に12000を放銃したことを悔やんでいた。
ポイントやボーダーを意識し前のめりなってしまったのだろう。
挽回に期待したい。

須山は近年最高位戦クラシックで好成績を収めている。
今年も予選3組から本戦進出。
丁寧な手作りと慎重な押し引きが印象的。
守備力は女流ナンバー1といっても過言ではない。

吉川がトップで逃げ切る。

2回戦スコア
吉川 +57.2
浅見 +10.7
須山 △15.1
亀山 △52.8

第3節終了時
女流Aリーグ
1  花本 まな +195.0 
2  涼崎いづみ +120.5 
3  山口 まや +114.9 
4  柳 まお   +62.4 
5  野添ゆかり  +53.3 
6  渡辺 洋香   -7.9 
7  浅見 真紀   -8.4 
8  吉川 愛莉  -16.0 
9  和田 聡子  -16.2 
10 池下真理子  -35.6 
11 須山いづみ -117.8 
12 亀山 馨  -178.1 
13 京杜 なお -212.1 

最終節はよりボーダーを意識した、
条件戦の意味合いが強い戦いとなるだろう。
最終節はそんな駆け引きもこみで楽しんでいただきたい。

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