コラム・観戦記

【36期後期C1リーグ第2節自戦記】石田時敬

最高位戦34期後期入会の石田時敬です。
C1リーグは今期で3期目となります。
昨年の後期C1リーグでは、最終節降級ポジションから100勝ってギリギリの残留を

果たしましたが、今年の前期C1リーグでは、最終節を首位で迎えながらもポイントを

伸ばせず昇級を逃しました。
次々とB2リーグに昇級していく同期や同世代の後ろ姿を見ては若干の焦燥感に

駆られたりする日々です。
そんな中で迎えた後期C1リーグ第1節は、昇級候補として有力視されている

田中巌、平林佑一郎といきなりの同卓となりました。
1回戦2着、2回戦トップと幸先よいスタートを切るも、3回戦3着、4回戦ラス、と

失速し-11.0ポイントの16位スタートとなってしまいました。
昇級にはおそらく200ポイント以上が必要であり、これ以上の足踏みは許されない

状況だと思われ――。

***************

第2節の対戦相手は以下の3人である。
鴻海 大輔
桐生 美也子
中野 慎也

1回戦、2回戦と牌勢にも展開にも地味に恵まれ2連勝を飾る。
さあ、今日はいくつ叩ける?とノリノリで迎えた3回戦。
並びは起家から桐生―石田―中野―鴻海
東1局 ドラ
西家の中野が序盤からマンズ、ピンズをバラ切りし、ポン。
7巡目にはでチーしてソーズを余らせほぼテンパイ。
私の手牌は

 

で打っても、まあ5200までだろう。自分の打点はそれほど高くはないが、

マンズが先に入ってもソーズが先に入っても、勝算は十分。

どっちでもブン曲げてやるから、とっとと持ってきやがれ!と、

私は、テンパイもしていないのに、同期の中野の仕掛けにリーチでぶつけて

めくり合う構図を自分勝手に思い描いていた。
その直後にツモってきた
を、無造作に河に捨てると、
あさっての方向(=鴻海)から
「ロン」の声・・・。

鴻海から何も気配を感じていなかった私は、若干の驚きとともに

鴻海の捨牌を見渡し、千点棒と百点棒を数本握ろうとした。
しかし、開けられた鴻海の手牌は、想像のはるか上を行っていた。

 


純チャン、三色、ドラ1の12000!!

正直、気が遠くなりそうになった。まるで、一対一の勝負の時に、

剣を抜いて相手と対峙している時に、真後ろから鈍器で殴られたような、そんな感覚だ。

後で、中野から聞いたのだが、中野がをチーしてソーズを余らせた後に

鴻海がションパイのを切っていたらしい。私はそれを見落としてしまっていたのだ。
ホンイツ仕掛けのほぼテンパイに向かってションパイのオタ風を切ってきている他家がいる

(つまりテンパイもしくは好形・高打点のイーシャンテンの可能性が高い)ということに

気がついていたとしても、結果は変わらないのだが、覚悟の上での放銃かそうでないかは

精神的に受けるダメージはかなり違うものだ。

他家の和了を見て、点数申告を聞いたら、了解の意味で「はい」と返事をしなければならない。
リーチや仕掛けに対して危険牌を打ったわけでもない。何の覚悟もなく12000点を失った、

その時の私の「はい」は、いつもとは違った、驚きと落胆の入り混じった何とも情けない声

だったことだろう。

精神的ダメージから立ち直る間もなく迎えた東2局の親番。
ドラも役牌の対子も何もなく、アガリにもかなり遠そうな配牌だった。
そんな配牌の時は、いつもなら他家の安全牌を残しつつ慎重に手を進めるのだが、

動揺していた私は、他家の動向に見向きもせずに機械的に門前テンパイを目指した。
中盤に先制のテンパイを果たしリーチを打ち、桐生からリーチのみの2000点をあがり、

点棒的にも精神的にもほっと一息つくことができたことは、運がよかった。
ちなみに、ドラが何だったか、和了形がどんなだったかを、後になって思いだそうとしても

まったく思い出せないことが、その時の動揺をよく物語っていると思う。

東2局1本場は序盤にをアンカンし、カンをすぐにチーして

12000のテンパイが入るが、和了には至らず、終盤に桐生が鴻海から5200は5500をあがる。

続く東3局は流局し、東4局は1600は1900を桐生からあがる。

(ちなみにこの時の和了形も役もまったく覚えていません!)

南入した時点での点棒状況は、以下の通り。
桐生:31600
石田:21900
中野:30000
鴻海:36500

南1局 ドラ
配牌

 

この日いちばんの好配牌である。第1ツモでピンズにくっつけばダブリー、

平和、ドラ1のマンガン確定のテンパイになる。
ツモる手に力をこめるが、テンパイせず。
その後のツモでもテンパイする牌をなかなか持ってこないまま中盤を迎えてしまう。
そろそろ親の桐生から先制が入りそうだな、と感じ始めた9巡目にやっと両面テンパイを果たし、

待ちでリーチを打つと、桐生が一発でを打って8000の和了となった。

南2局の親番は、逆に桐生の逆襲リーチが入るも、流局。

南3局1本場は、ここまで延々と他家の横移動を見てただけの親の中野が

終盤リーチしてメンピンツモドラの2600オールは2700オールで一躍トップ目に立つ。

南3局2本場 ドラ
配牌からマンズのホンイツ一直線。
4巡目にはドラ
を切り飛ばし、早くもメンホンチートイツのイーシャンテン。

 

桐生からが出てポンして打
次巡ツモ、打であっとう間の高めマンガンのテンパイ。
数巡後に、意外にも親の中野から
が飛び出し、5200は5800。

オーラスを迎えて、点棒状況は以下の通り。
鴻海(東家):32800
桐生(南家):22900
石田(西家):32000
中野(北家):32300

桐生は2000・4000ツモれば、一気にラスからトップ。
私と中野はアガリトップ。
私は中野が1000・2000以上をツモるか、桐生が1000・2000や1300・2600を

ツモれば鴻海の親っかぶりで2着に浮上。
逆に鴻海は現状トップ目とはいえ、何を打ってもツモられてもだいたい3着以下に

なりそうな、非常につらいポジション。

ドラは
1000点あがれば2着順アップ(40000点分)なだけに、当然、何が何でも最速で

アガリを目指す。配牌はさほどよくはなかったが、他家の動きないまま、中盤には

なんとかタンヤオのイーシャンテンにこぎつける。

ただし、がドラ表示牌と合わせて3枚見えている。
中野の切った
に大喜びで飛びつき、打
すぐに
を引き、打でテンパイ。

 

 

  ポン

も、すぐにポロリとこぼれそうな場況、しかも、誰もオリれない状況である。
2着順アップといえば素点40000点分。役満あがるよりデカイのだから、

なんとしてでもアガリたい!

だよ!早く出して、早く!ポロっと出して、って~~~!)

と心の中で叫ぶ甲斐もなく数巡が経過。
そして、
「ツモ!」
と歓喜の声をあげた主は
私ではなく・・・中野。

無情にも、中野が、麻雀の神様を軽やかに手元へ引き寄せる。
瞬間、「お願い!1000・2000!」と祈る私。
中野が手牌を開ける。

 

ななとーさんかぁ。。。。

一瞬うらめしくも思ったが、
東パツ12000放銃スタートが、浮きの3着で終われたんだから十分だな、

4回戦ラスさえ引かなきゃ、けっこうなプラスを確保して終われるし、まあ、いいか。
と気を取り直し、臨んだ最終4回戦。
並びは起家から、石田―中野―鴻海―桐生。
東場は桐生が軽快に抜け出し、僅差のラス目で迎えた南1局の親番。

配牌をなんとか形テンで凌いだり、
役牌のみの500オールをツモったりして、どうにか繋いで2着目に浮上する。
3本場でも、中盤過ぎに白バックの1500点をテンパイする。
中野と鴻海は手じまい模様。桐生だけが親の私に無筋を連打しておりテンパイ気配。
ドラの
は場に0枚。桐生の河は、ほんのり変則気味なので、

ドラ入り、またはドラ待ちのチートイツが本線か?
もちろん、1000点や2000点の手で、私の連荘を阻止すべく勝負をしている可能性もある。
ただ、ドラを持ってきた時だけはやめた方がよさそうだな、と感じていた。

何枚か桐生に通っていない牌をツモ切った後、残りツモもあと3回ほどとなった。
牌山に手を伸ばすと、私の右手親指に恐れていた
の感触が。

だが、直後にはを河に叩きつけていしまっていた。
そして「ロン」の声とともに桐生の手牌が倒される。

 

 

なぜ切ってしまったのか・・・。
ドラだけはやめた方がいい、と感じていたはずだったのに。

ドラが通って、あと2巡凌げば、1500点の収入、オリれば1000点の損失。その差2500点。
だからと言って、ドラで放銃して8000点の損失となれば、せっかく繋いで繋いで2着に

浮上したことがフイになるというのに?
そもそも、あれだけ無筋を押されるってことは、絶対に高い手が入っているんだ、

と確信して、もっと早くオリていなければいけなかったのか?
わからない。
これが自分の弱さなのか、それとも正着を打ってたまたま結果が悪かっただけなのか、

それさえもわからなかった。

次局も冴えない。
親の中野が序盤から
ポン、ポンと仕掛ける。
ドラは

中野が序盤から2つ仕掛けるということは、おそらく安い手ではない。


ポンの時点で私の手牌は以下

 

を引けば平和のテンパイだが、はすでに2枚切れ。
2枚切れだが、ポンがあり、かつ、親の現物なので、かなりいい待ちではある。
次に
を引く前に、親に危なそうな牌を引いてきたら、を落としてひとまず迂回だな、と思っていた。
そういう時に限って、
を引いてくるものだ。
実際
を引いてテンパイした。は親に通っていないが、現状ラス目の私は、

こうなったら、もう行くしかない。
を横に曲げる。
中野が手牌を倒す。

 

 

    ロン

トイトイドラドラの12000。

南2局1本場は、終盤鴻海がテンパイ濃厚、こちらも3着目にこれ以上離されるわけにはいかない!と形テンを取る。
ハイテイで引いた鴻海の危険牌を、歯を食いしばって通して流局。

南3局2本場
3着目鴻海との点差は16900点
鴻海に連荘を許すようだと、ほとんどラス確定。
だからといって、安い手をあがってもラス確定。
少なくとも、2000-4000が欲しい。
配牌ははるか遠くに678の三色が見えるのが取り柄といった程度の配牌。
手役とスピードのバランスを取りつつ、苦心しながら手を進める。
11巡目に入ったのはドラ1以外に何もない
待ちのテンパイ。
テンパイを組み替えている時間はない。
ツモと裏イチだよりのリーチを打った。
そして・・・
渾身の一発ツモ
をいつもより強めに卓に叩きつけた。

オーラスを迎えて点棒状況は以下の通り
桐生(東家):52100
石田(南家):15700
中野(西家):32500
鴻海(北家):19700

一人テンパイか、2000点直撃で同点3着。
3900出あがりでは届かない。

序盤に鴻海が自風のを仕掛けた時点で、私の手牌はまだこんな感じ。

 

 

その後、ツモ切りを挟んで、と引きイーシャンテン。

 

 

場にはソーズが高い。
お願い、先にソーズを引いてリーチ打たせて!と思っているところに、

望外のツモでテンパイ。
残りツモは7、8回。
桐生と中野は、すでに鴻海の仕掛けに対応して手じまいの雰囲気。
鴻海はテンパイかイーシャンテン。
私の待ちは場況も悪くない7枚残りの
を鴻海が序盤に捨てているだけ)
鴻海とは五分以上の勝負と見た。
私がリーチを打つと、一人テンパイでも鴻海をまくれなくなるため、鴻海はオリるだろう。
しかし、私がリーチを打たなければ、鴻海はオリることができない。
桐生や中野に何枚打たれても、1枚ぐらいは私か鴻海のところに
が来るはずだ。
最後の1枚になるまで、脇からは見逃してやる!決意で闇テンを選択。
が、しかし、待てど暮らせど、いつまでたってもツモらないし、出もしない。
その間に鴻海に手出しが2回入り、さすがに鴻海もテンパイ。
そろそろいるよね?
ツモる指に力がこもる。
残りツモ2回で私がツモってきたのは・・・

フッ・・・そうだよな、こんな時は劇的なアガリこそ似つかわしいぜ。そこにいるんだろ?

俺のは!!
と、意気揚々とカン!!
そして、リンシャンは・・・ダメ!アカギみたいにはいかん!!
結局最後まで、
は一度も顔を出すことなく、2人テンパイであえなく終局となった。

***************

第2節の結果は、1、1、3、4の+31.8ポイントでした。
そこそこのプラスですが、2連勝スタートだっただけにまったく勝った気がしません。
次こそは、大きくプラスと行きたいところですが、勝負は水もの、どうなるかはまったくわかりません。

第3節は、9月3日(土)、「柳 勝どき店」にて開催されます。
下位リーグでも、熱い息遣いが聞こえてきそうな真剣勝負が繰り広げられていますので、

ぜひぜひ観戦に足を運んでみてくださいね。
それでは、また9月に、勝どきでお会いしましょう。

文責:石田時敬(文中敬称略)

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