コラム・観戦記

【36期B1リーグ第4節自戦記】新井 啓文

-2010年10月3日

35期B1リーグ最終節、1800点差で昇級を逃した。

48半荘闘い、結果テンパイ料一回にすら満たない差で逃したAリーグ。
麻雀で負けて涙を流したのは、後にも先にもこの日だけ。

雪辱を期して臨んだ今期だが、第3節を終えて△80弱と芳しくない。

負債を重ねればバランスを崩しやすくなるのが長期戦。

今節は正念場だ。

≪1回戦≫
この日の対戦相手は齋藤、坂本、武中。

まず開局から役牌三暗刻の6400テンパイ・平和二盃口ドラドラのイーシャンテンと続けてチャンス手になるが、結果はどちらも他家の和了。

しかし高打点の道を残しつつスマートに手が組めており、感触は上々。

自分のデキの良さを感じられるのは嬉しいものだ。

 

 

勝負どころは南1局、東家齋藤からのリーチを受けた中盤。
(南家、9巡目)

 ツモ ドラ

最悪のテンパイ…

齋藤の河にマンズは

・・・・
※”・”はマンズ以外の牌

 

と切られており、私からは4枚見えている。

他二人の捨牌からもはヤマにかなり残っていそう。
また、
も親には通りやすそうだ。
しかし如何せんカンチャンのリーチのみである。

本日一番の長考の末、決断は切り「リーチ」。

 打リーチ


で振り込んだりした日にはもう死にたくなるが1回戦でもあり、まずは自分の直感に殉じた。

打点はとにかく、アガり率はかなり高いだろうと読んでの踏み込み。
形だけで打っていた昔の自分が見たら「ありえないよー!」と叫んでいたに違いない。

次々巡、を引く。
直後、親から打たれる

 

これはひどい!

しかし数巡後、嬉しいツモ。
大きな500・1000と供託を入手。

これが効き1回戦は僅差のトップ。

最高位戦のリーグ戦は一日4半荘。
その中で私が最も大事にするのが1半荘目で、ここで自分の型が崩れていないか確認するようにしている。

この日はこのままのバランスで行けると感じることができた。

≪2回戦≫
平たい点棒状況の東4局に好機到来
(西家・4巡目)

 ドラ

 

ここにツモ

 2巡目までに三人ともを切っている。を含め関連牌は切れていない。

 

 

んー…

なんか大体使われててあんま引かんやろ!引いても全然おいしくないし。」

 

という訳で打

 

 

次巡、ツモ
「カスが!」ツモ切り(ソフトに)。上家にポンされる。

次巡、ツモ

 


んー…
「さすがにソーズの下は山やろー!」で打
(生牌)

2巡後、ツモ

 

「いただきました!」
(西家・8巡目)

 打リーチ

 


結果は流局したが、なんというか勝手に気持ちのよくなる一局となった。

この後再び斎藤との捲りあいに勝つ。

 

カンドラ付きの齋藤の親リーチに無筋を3枚投げつけて6400和了。
2連勝となった。

 

 

結果この日は私が勝ち頭・斎藤が負け頭となるのだが、逆でも全く不思議はなかったと思う。

≪3回戦≫
今節は対局者の思考が一致する機会が多かった。

特にこの3回戦南2局、斎藤が地獄の単騎で七対子ドラドラの4000オールをツモったときなど、他二人の深い深い溜め息とともに

「俺のところにがくればいいのに…」

という心の声が聞こえた(気がした)。
無論、誰が掴んでも打たない。

全員が親に七対子ドラドラのテンパイが入っていると見て必死に対応していた。
アガった齋藤もほぼ流局を覚悟していたそうである。

苦しいまま迎えたオーラス1本場

齋藤・武中が数百点差でトップを競り、2万点ほど離れて私(親)が3着目、2000点差で坂本がラス目という点棒状況。

 

 

上も下も僅差である。
こうした展開ではドラの種類がとにかく重要。

サイコロを振る。
自山が割れた。

「神様、字牌でお願いします!」

強く念じてドラ表を捲ると、そこには
たまには神頼みもしてみるもんだ。

このドラが決まった瞬間、坂本はラスを覚悟したのではないだろうか。
私は心の中で軽くガッツポーズ。

当然自分が大きな手を和了できれば一番話は楽なのだが、もし自分のアガリ目が薄い時、ラスと2000点差の状況でこのドラの持つ意味は非常に大きい。

 

 

 

なぜか?

最高位戦ルールは赤がないため、字牌がドラだと喰い仕掛けが1000点になりやすい。
すると齋藤・武中が早上がりを目指して喰い仕掛けた場合、私が非常に差し込み易くなるのだ。

これでよほど早い手が入らない限り、坂本の単独ラス抜けは難しくなった。
またしても牌運に恵まれたようだ。

得たりとばかりに第一打にドラのを切る齋藤・武中。
すぐ二人とも仕掛け始める。

「わかってるな、新井」
という声が、今度ははっきり聞こえた。

こうなればわかりやすい。

 

坂本に急所を喰わせないようケアしつつ、将来の二人のロン牌候補を手の内に貯め、テンパイ気配を待つ。

程なく武中がアガり、3着死守に成功。

齋藤は三度勝負どころで牌山に嫌われた格好となった。

≪4回戦≫
東1局、8巡目に齋藤の捨牌から異臭を嗅ぎとる。
同巡、自分で切っている
を掴んでオリに回った。

全くの直感・経験則である。
仮に牌譜があってもロジカルな説明はできないと思う。

実際はなんと直前にメンホン七対子のテンパイが入っていたらしい。
やはりこの日は場が見えていた、ということの証左だろう。

麻雀と無関係で恐縮だが、ここ数年対局前日から当日朝までは禁酒などの「決め」を作って過ごしている。

それが本当にプラスなのかはわからない。

僅かでも対局へマイナスに作用する可能性があるものは全て排除したい、ただそれだけ。
モチベーションを高めるという意味では、間違いなくプラスになっていると勝手に信じている。

1回戦の踏み込みもこのオリ選択も「決め」のおかげ、と思い込むのも悪くない。

 

 

話がそれたが4回戦は、ラス前に

 ツモ ドラ

 

という申し訳ないような6000オールをリーチしてツモアガり、トップ。

 

1・1・3・1で+112.6という出来過ぎの結果となり、トータルも+35.7と持ち直してこの日の対局を終えた。

 

 

 

 

今期Aリーグでは、昨年昇級した佐藤聖誠選手が首位を快走している。
彼の姿を見ると強い羨望の思いにかられてしまう。

いや、羨望というより嫉妬と表現したほうが適切なのかもしれない。

来年こそはあの舞台で戦いたい。
そのために、冷静に攻め抜いていきます。

今期最終節は10月12日。

今年は嬉し涙を流します!

 

 

 

―36期B1リーグ第4節終了時結果

1 中嶋 龍太 315.9
2 山口 まや 195.8
3 清原 大 135.7
4 嶋村 俊幸 58.1
5 冨澤 直貴 45.0
6 坂本 大志 38.4
7 新井 啓文 35.7
8 山内 雄史 -26.1
9 谷口 竜 -36.5
10 いわま すみえ -63.0
11 浅野 剛 -68.5
12 浅埜 一朗 -96.4
13 齋藤 敬輔 -96.9
14 武中 真 -121.9
15 中村 英樹 -137.9
16 篠原 健治 -189.4

 

 

文責:新井 啓文(文中敬称略)

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