(インタビュー・執筆:小山直樹)
※この記事は後編です。前編はこちら。
長い低迷期から復活し、A2リーグに上がった浅井は、そこからさらなる進化を遂げることとなる。
俺たち一緒に周りを見返してやろうぜ
A2リーグに上がってから、環境がそれまでと更に変わったんだよね。
まずVS研に入れてもらえたことが大きい。VS研は純度が物凄く高くて勉強になってる。
(※VS研とは、最高位戦選手のみが参加する研究会。醍醐大・村上淳・園田賢・坂本大志・佐藤聖誠・吉田光太他多くの上位リーガーが参加している)
VS研は光太さん(吉田光太)にお願いして入れてもらった。
麻雀はそこまで影響を受けたわけじゃないけど、人間としては光太さんにめちゃくちゃ影響を受けた。
光太さんと初めて会ったのは先輩の結婚式の二次会だったかな。
「浅井くんは俺のこと光太さんって呼んでくれるから、俺も裕介って呼ぶね」
「裕介は、今大切な人がいるの?もしいないんだったらオススメのデートコースがあるよ。ディズニーランドに一緒にいって、18時くらいになったらディズニーランドを出て新木場辺りへ向かうんだ。女の子はこれからパレードと花火があるのになんで?って言うかもしれない。でも新木場にヘリポートがあるから、一緒にヘリに乗ってディズニーランドの花火を見るんだ。それで、この夜景と花火を君にプレゼントするよって言うんだ。大切な人が出来たら是非このデートプランを使うといい」
これを初対面で言われたんだよ?俺の隣には当時付き合ってた彼女もいて。この人頭おかしいのかな?って思って一瞬で好きになった。
光太さんも最高位戦に来てすぐ降級したりで肩身が狭い思いしてたみたいで、俺が光太さん光太さんって慕ってたら、「裕介、俺たち一緒に周りを見返してやろうぜ」って言ってくれて、それからずっとお世話になってます。
(左:浅井、右:吉田)
光太さんは相手の三色を見つけるのが上手くて、最初の3巡を見れば相手が何をやってるのかわかるとか、読みの体系的なところを最初に教えてくれて、それは今でも使ったりしてる。
そんなお世話になった光太さんに、今の俺ならVS研に誘ってもらえるかもしれないって思ってお願いして、入れてもらえることになった。
そのVS研ではどんなところを学んでいるのだろうか。
技術の吸収は当然として、VS研はやっぱり麻雀の話をするのがすごく楽しいんだよね。
A2リーグで初めて対局した時も思ったけど、周りが強い中で真剣にやる麻雀ってなんて楽しいんだろう。その楽しさがさらに自分のモチベーションを上げてくれたなあ。この強い人たちに何をしたら勝てるんだろうって考え続けて、それが今年バチっとハマった。
配信対局に出ると検討材料が増える。特に序盤
もう一つA2に上がってよかったことが、配信があることなんだよね。
自分が打った半荘を自分の目で見直すってなかなかできないことじゃない。下位リーグにいた頃は特にね。だから、自分のあの時の打牌は間違っていたのかどうかってなかなかわかりづらいのよ。
VS研とかSリーグとかの私設リーグ・勉強会って終局図を写真に撮って、後から話すっていう形式が主流だと思うんだけど、自分が気づいてないミスに気付くのって結構大変なんだよね。
それなりのレベルになれば明らかな間違いには当然気づけるんだけど、細かい部分に気づくことは難しかった。
それが映像を見て十分な検討ができるのって配信に出た人の特権だと思うんだよね。そのおかげで自分では気づかなかった序盤のミスとかにも気づけるようになったから、これは大きな収穫だったなあ。
この収穫がきっかけとなり、浅井は研究会を立ち上げる。
配信で序盤の大事さに気がついて、今年から品川(品川直)・坂井(坂井秀隆)・小山(小山直樹)・太野(太野奈月)・小川さん(小川裕之:日本プロ麻雀協会)の6人で研究会を始めた。
リーグ戦形式じゃなく1局毎に動画とか牌譜を取って、最初から完全再現して検討するっていう。
序盤の構成について重点的にやってます。切り出しによって相手に与えるイメージとか、それを踏まえた手組とか、切り順とか。昔より本当に序盤を大事にするようになったね。
俺ってここ数年で急激に麻雀が変わったのよ。あれだけ鳴きが苦手だったのに今ってすごくよく鳴くし。ミスも少なくなったし、序盤の手組もだいぶ変わった。
それってなにか一つだけの要素じゃなくて、色んな要素が積み重なって今の自分があるんだと思う。
「魔境」などと言われることもある最高位戦A2リーグ。
そこへ一歩足を踏み入れた浅井の前には、これまでと違う世界が次々と現れた。その扉をひとつひとつ開いていったのは浅井自身であるし、その積み重ねが現在のA1リーグ昇級という結果につながっているように思えた。
俺が受けたこの恩を、俺のところで止めたらいけないなと思ってる
浅井といえば最高位戦内でも屈指の交友関係の広さで知られている。VS研に入るにあたって吉田光太を紹介したが、他にも数多くの出会いがあったことだろう。ここで、浅井に影響を与えた印象深い出会いについて聞いてみた。
影響を受けたってことで言えば、まず一馬(石井一馬)。一馬と会って、同世代でこんな強いやつがいるのかって尊敬したし影響受けた。
そのあと聖誠(佐藤聖誠)に会って、この人すごいなって思って、あんな出会い方したけど麻雀強い奴は全部許せるから、仲良くなったしお世話にもなった。
そして、後輩で自分より優れてるやつってあんまいないなと思ってたけど、初めて心の底からすごいと思う元太(竹内元太)が現れた。
38期(2013年)くらいから今でも仲良いやつがいっぱい入ってきたんだよね。38期に元太、足木(足木優)、里菜(植村里菜)。39期にみっきー(塚田美紀)。この辺とはC3リーグの後とかに一緒に飲みに行ったりしてすぐ仲良くなった。
で、元太がやっぱすごいのよ。入ってきた頃はそんな麻雀強いと思ってた訳じゃないんだけど、コミュ力がお化けで。俺が8年かかっても仲良くなれなかったような先輩たちと一瞬で仲良くなってくのよ。ばっしー(石橋伸洋)とかね。そんな元太のおかげで色んな人と仲良くなっていけたってのはある。
元太はすぐ意味わかんないくらい強くなっちゃったしね。俺の中では元太との出会いはすごい大きかったな。
元太に出会ったことで、自分も歳を取ってきて、自分より若くてもすごいやつって出てくるんだなって思ってからちょっと変わったなあ。素直になれるようになった。
と、語るやいなや、今度は元最高位戦選手の名前が挙がる。
あとは張さん(張敏賢:元最高位、現在はRTD株式会社代表取締役)。
張さんって俺と中学から学校同じ大先輩なんだよね。それで張さんとは仲良くなって、張さんが最高位戦にいたころから運営とかで使ってもらったり、張さんが最高位戦からいなくなっちゃった後もお世話になった。3~4年前とかに一時期RTDでも働かせてもらってたしね。
昔から可愛がってもらってるし、すごいところが沢山あるから本当に尊敬してる。A2の最終節が終わって昇級が決まったあとにすぐ電話くれたのも嬉しかったなあ。
張さんのバイタリティとかはすごくお手本にしてる。それで、結局やりたい事は自分で動いて立ち上げた方がいいなって思って、独歩ちゃん(山田独歩)と一緒にビギナーミーティングっていうイベントを企画したり、一人で麻雀教室をやってみたり。こういうところは全部張さんから学んだ気がするなあ。
多くの人と関わりながら仕事をしてきた浅井が、率先して個人で仕事をしていくことを選んだというのは少々意外だった。これについてはどのような考えがあるのだろうか。
今はそういう個人の仕事が多いんだけど、なんでそうしてるかっていうと、自分で色々やることによってもっと多くの人に自分のことを知ってほしい、有名になりたいっていう動機が一つ。
もう一つは、個人でやった方がやっぱりお金を稼げるじゃない。効率良くお金を稼いで空いた時間を全部麻雀の勉強に充てたい。今は教室とかが上手く回ってるから、たぶん人生で一番麻雀の勉強に時間が取れてるんだよね。それも絶対強くなれる要因だからさ。
浅井と話していると本当に色々な人の名前がひっきりなしに出てくる。全最高位戦選手とのエピソードトークができるのでは?と思えるほどだ。
過去のFACESでも浅井の名を出す選手は多かった。それだけ浅井が先輩には可愛がられ、後輩には慕われる存在であるということなのだろう。
強く思ってる事があって、俺って結果が全然出ない頃から一番お世話になってるのって絶対に大志さん(坂本大志)なのね。あの人も本当に麻雀バカで、麻雀が好きなヤツのことが好きすぎるの。だから自分にまるで得にならないセットとかをめちゃくちゃやってくれるわけ。
もちろん大志さんだけじゃなくて最高位戦の先輩たちって本当にご飯だったり麻雀だったり、後輩の面倒をよく見てくれて、俺はその恩恵を多大に受けたと思ってるし、この最高位戦の文化って本当に素晴らしいと思ってる。
俺が受けたこの恩を、俺のところで止めたらいけないなって。だから、後輩から誘われたセットは絶対に最初の1回は断らない。最近忙しかったり、声かけてくれる人が増えすぎて物理的に厳しくなってきちゃったんだけどね。
その中でも一生懸命やってる子とかは一緒にやりたいなって思うからセットとかも良くしてるね。FACESでも取り上げられた牧野(牧野伸彦)・多喜田(多喜田翔吾)・山崎(山崎淑弥)の3人とか、最近だと成田(成田裕和)とか神原(神原健宏)とかはすごく慕ってくれるし、こっちも色々返そうと思っちゃうよね。
名前を挙げた以外でも、最近の若手は感じも良いしやる気もあるしで、こっちが全然手が回らなくなっちゃってる状態だね。
最高位戦の先輩たちは本当に面倒見がいい。筆者も本当にそう思う。
まだ入会間もない頃、私は麻雀の勉強のためにA1リーグの採譜の仕事を毎回受けていた。配信など一切なかった時代に、かぶりつきでトップ選手たちの打牌が見られるからだ。対局後の打ち上げにも何度か同席させてもらったり、そこでわからなかった打牌を聞いたら本当に熱心に答えてくれた。
繰り返すが当時の私はド新人で、基本の牌効率すら怪しかった時分だ。的外れな事を聞いていたのかもしれないと、今思えば空恐ろしくなる。A1リーグに限らず、先輩たちには本当にお世話になった。これを繋げていきたいという浅井の話には共感を覚えると共に、私ももっと後輩に優しくしようと心に刻んだ次第である。
最強戦は特別。最強戦の負けが今年のA2に活きている
ここまで浅井の半生を振り返ってきたわけだが、努力を続ける浅井裕介という選手を一躍有名にしたのは、なんといっても最強戦2017であろう。
全日本プロ代表決定戦を制し、ファイナルへと進出したことにより浅井の知名度はそれまでよりも大きく上がった。そんな最強戦について聞いてみる。
確かこの年から最強戦がABEMAで配信になったんだよね。
全日本プロ代表決定戦の前日、200名超を8人にする予選の日。通過率4%もないから大体負けそうだなあって思ってたけど、8人に勝ち残った。なんとこの日誕生日だったんだよね。そこまで揃ったら、なんか勝てそうな気がしてくるじゃん(笑)
そして、浅井は自身初となる公式タイトル戦の配信対局に臨むこととなる。
ちょっと緊張もあったけど、楽しみで楽しみで仕方なかった。スタジオ入りした後も、ヘアメイクってすげぇ!ヒゲが隠れる!とか、カメラマンさんすごい!とかって感動ばっかしてた。
一緒に出たほかの人が「めちゃくちゃ緊張してます!」って言ってて、黒木さん(黒木真生:日本プロ麻雀連盟)が、「緊張して当たり前です。しない奴はバカですから」って励ましてるのを聞いて、やべえ俺全然緊張しないけどバカなのかなって思ったりした(笑)。
控室が石原さん(石原真人:麻将連合)と一緒で、初対面の先輩だから挨拶しにいくじゃない。そしたら石原さんが「よろしくね。で、君何リーグなの?」って。どっかで聞いたことあるセリフを言ってくるの。
「C1リーグです」って答えたら「あ、そう」って会話が終わっちゃった。
そんなやりとりがあり、1半荘勝負で上位2人通過の対局が始まる。
東場でいきなり親の満貫を2回打ったのよ。普通負けるじゃないそんなヤツは。でも圧倒的な雀力で勝ったのよ。
その時結構派手な勝ち方をしたんだよね。点棒全然ないのにタンピンドラのイーシャンテンから当たり牌をビタ止めして、オーラスの親番でタンヤオドラ1の先制テンパイをテンパイ外しして4000オールツモって、みたいな。
それで逆転通過して控室に戻ったら石原さんがすごい食いついてきて。
「C1リーグって聞いてたのに麻雀を見てすごいじゃん!」って評価が変わったみたいで。
石原さんもそのあとのB卓を勝ち上がって、一緒に決勝を戦って、そこからめちゃくちゃ仲良くなった。
今は一緒に麻雀もするし、プライベートでも遊んだりする友人です。
この決勝を制し、全日本プロ代表の座を勝ち取った浅井は、12月のファイナルに進出した。ファイナルの相手は、加賀まりこ(女優)、石橋伸洋、そして昔に野口賞で負けた経験のある金太賢(日本プロ麻雀協会)だった。
ベスト16とはいえABEMAで生放送もあって、視聴者数もすごくて、これまでの麻雀人生最大の舞台じゃない?でも全然緊張してなくてさ。俺もう緊張とかしないんだなあとか考えてた。
で、卓について開始の銅鑼が鳴らされるじゃん?そしたらその瞬間頭真っ白になっちゃった。そこで急に緊張が来たんだよね。東場の記憶はほとんどない。特に東1局はひどい麻雀を打ったなあ。
でもそこで持ち直して、そこからはきちんと打てたかな。
かなりツイてたし上手くいって、32,000点くらいリードしてオーラスを迎えた。この勢いは俺も最強位かあとか思ってたらオーラスだけで金さんに捲られて、そのまま金さんが最強位獲った。
思い返せば2011年、浅井が初めて野口賞に出場した時も、優勝したのは金だった。再び浅井の前に現れた壁が同じく金だったというのは何か因縁めいたものも感じる。
しかも、今回はあと少しで勝ちそうな、絶対有利な位置からの敗退。悔しい、だけでは済まないだろう。
でも、この時の経験が今年のA2とかにも活きてるんだよね。
最強戦の時、あのリードをもっと広げておけば、リードがある状態で先に押しきれていれば。他の人たちがアガらなくなって、自分が戦って終わらせなきゃいけなかったのに。
頭じゃわかってるつもりだったけど、雀力が追いついてなくてできなかった。
A2の最終戦とかも、オーラスは多分俺しかアガらないと思ってた。だからラス親の直也のリーチには全部一発目から押したと思う。もちろん自分の手牌がバラバラだったら押してなかったと思うけどね。いけるような手が入った時はちゃんと押そうって決めてたかなあ。
最強戦ファイナルでの敗戦が今年のA2リーグに活きていようとは。というより、浅井はこれまでの敗戦すべてを糧にしてきたのだろう。誰よりも負けてきた選手なのだから。
最強戦ってやっぱりすごくて、初めて全日本プロ代表決定戦を勝った時に、その時だけでTwitterのフォロワーが1000人くらい増えたんだよね。
その辺からプロ意識っていうのを考えるようになったと思う。たくさんの人が対局を見てくれて、その人達が俺という個人を探し当ててフォローしてくれて、祝福したり応援してくれたりして、それで見られ方っていうのをちょっと考えるようになった。
そういう意味では最強戦は自分のプロ人生の大きな転機だったかな。
その後もプレミアトーナメントとかに出ても、なかなか勝てないながらも派手な負け方とかしてるおかげで何回も呼んでもらえて、最強戦は自分の中でも特別なタイトル戦になったね。絶対に次は勝ちたいなあ。
最強戦という大舞台での敗北。この経験が浅井の中で特別な成長につながったのは間違いなさそうだ。
初タイトル獲得の日もなんと○○
2019年、浅井は待望のG1タイトル「第13期RMUクラウン」を手にした。
(第13期RMUクラウン開催要項より)
あの時のクラウンは、A2リーグに上がった年で久々にシードが回って来たんだよね。
実は本戦から決勝まで全部危なげが無くて、準決勝とかも最後着順勝負だったんだけどリード持った状態で先に勝負するやつだったし、経験を活かせてるなあっていう残り方をして決勝へ。
そして、どういった運命のいたずらか、第13期RMUクラウン決勝も浅井の誕生日9月22日に行われた。
9月22日ってさ、秋分の日とかで連休になることが多いんだよね。だからタイトル戦決勝が起きやすいのかもしれない。で、最強戦の例もあるし、これもう勝ちそうじゃない?
決勝はさすがに強かったね。色んな試行錯誤を繰り返してきたけど、このクラウンの決勝のあたりから今の俺の麻雀の形になったような気がする。
決勝の1回戦終了後、けんちゃん(園田賢)からLINEが来た。「ナイストップ!内容いいね!」って。けんちゃんから麻雀の内容を褒められるとか結構うれしいじゃない。初めて褒められてテンション上がったね。
内容的にはあんまり苦しまないで取れちゃったから喋ることも少ないんだけど、決勝が終わった後は沢山の人におめでとうって祝ってもらえてうれしかったなあ。
最強戦ファイナル進出、第13期RMUクラウン獲得、そしてA1リーグ昇級。
ここ数年、毎年のように結果を出し続けているのは驚異的である。
知名度を上げるためにMリーガーになりたいと思ってたけど、今は・・・
最後に、麻雀プロ浅井裕介の目標について聞いた。
ちょっと前までは、麻雀界で一番強い人は誰?っていう質問で、選択肢に挙がる存在になりたかったんだよね。麻雀っていうゲームの性質上、一択ってことはないと思うから。
そのためにどうしたらいいかって考えたら、雀力はもちろんだけど、絶対に知名度が必要。
今俺が仮にMリーガーの誰より強かったとしても、絶対に俺の名前は挙がらないじゃない?そのためにMリーガーになりたいなって思ってた。Mリーガーに選ばれるためにも知名度が必要で、知名度を挙げるためにビッグタイトルが獲りたかった、最強位とか最高位とかね・・・
と思ってたところで、A1に昇級して、色んな人からおめでとうって言われて、段々実感が沸いてきて。数日後に最高位決定戦の解説をしたのね。解説しながら見てたらさ、「俺もここで打ちたい!!!」って思っちゃって。
今まで俺には最高位決定戦って関係なかったのね。関係ないって言ったらあれだけど、遠くから見てる舞台だった。でも来年は20%ちょっとの確率でやれるわけでしょ?そしたら来期のリーグ戦ちょっとツイてたら決定戦に行けるなあ。
そう思って見てたらさ、「最高位になりたいなあ」って思っちゃって。
あと去年醍醐さんが最高位獲って泣いてるのを見たのが大きかったかな。大志さんは泣くに決まってるじゃないそりゃ。でも醍醐さんがタイトル獲って泣くとか考えられなかった。あのいつもマイペースで動じない醍醐さんが泣くほどの舞台に、純粋にプレイヤーとして座ってみたくなった。
有名になって色んな人から強いと思われたいっていう目的が無くなったわけじゃないけど、今はただ純粋に、あの景色を見てみたい。
初めて会った頃、若くて自信に満ち溢れた浅井の事をとても眩しく感じた。
しかし、その後しばらく浅井は燻ることとなる。
浅井とは特にここ数年一緒に私設リーグや研究会を一緒にしてきたし仲良くさせてもらっているが、見ているそばからメキメキと力をつけ、私などではとても敵わないと感じることも増えてきた。
輝かしいデビューを飾り、挫折を味わい、力をつけて出世していく。
まるで物語の主人公のようではないか。
来期、初のA1リーグへと挑む浅井裕介。
10年間負け続けてきた男の目は、最高位という頂を真っ直ぐに見つめている。