Aリーグの第十一節が始まった。
Aリーグは全十二節なので、この第十一節というのは、最終節の並びを決める重要な節ということになる。
上位のものは安定した打ち方を、下位のものはある程度危険を覚悟した打ち方をせざるを得ない。
最終節に近いリーグ戦の場合は、各選手のポイントを意識しながら観戦すると、より深い楽しみ方ができるだろう。
C卓第二回戦。
起家から、金子、上野、張、平賀の座り順。
筆者が注目して見たのは、第一回戦目でトップを取った平賀だ。
理牌をせず、必要以上に安全牌を抱え持たず、ノーテンから無筋をばしばし押していく、独特のスタイルを持った打ち手である。
両手を天井に向かって上げて大きく欠伸をしたり、首を振って歌うようにリズムをとってみたり、
その独特の飄々とした打ち方は、得体の知れない雰囲気を感じさせる……。
飄々としているという点では、上野も同じだ。
金子と張も含め、特に個性的な顔ぶれが集った卓だと言えるだろう。
東1局、東2局と平賀の配牌は、こうだ。
ドラ
ドラ
こうして振り返ってみると、それほど良いとは言えない。
しかし、当時の筆者のメモには、「良い配牌」という記述がある。
平賀が楽しそうに配牌をとっていくので、それがまるで良い配牌であるかのように感じられたのだ。
しかし、これがテンパイにすらならなかったり、金子への打ち込みに回ることになってしまう。
ドラ
ロン
をチーさせた直後に
をつかまされてしまう辺り、前半荘とは打って変わって、平賀の不運さを感じさせられた。
(筆者が疫病神のように後ろに立っていたことは、もちろん無関係だろうが……)
平賀に代わって、東3局に勝負手を入れたのが親番の張だ。
ドラ
ドラ単騎という悪形ではあるものの、ツモれば4000オールの勝負手。
しかしここに、上野のリーチが入る。
張はをつかんで
を切ってイーシャンテンに戻し、直後に
を持ってくる。
手痛い4000オールのあがり逃しで、張は深くため息をつく。
実は、上野のリーチはこうした手だった。
ドラ単騎形という、張とほぼ同じかたち。
リーチをかけた上野と、回し打った張。対称的な打ち方だ。
張は、少しポイントを落とせば、即座に降級争いの仲間入りをするという位置につけている。
おそらく、たとえ満貫のテンパイであっても、悪形では勝負にいかないと決めていたのだろう。
同じく、この後の南2局一本場においても、
という形から、親の現物牌にがあることも鑑みて、
を打ち出していく張。
悪形で勝負しない、という方針を持ったなら、一度や二度の失敗でころころとその方針を変えてはならない。
一貫性を持った張の打ち方だ。
東3局一本場、再びリーチと打って出た上野に対し、歯向かっていったのは平賀だ。
ドラ
悪形で、しかも安手。
普通なら、このかたちで攻めてはならないと教えられるだろう。
平賀は、無筋を連打。見事カンをツモあがる。
マッコー平賀という通称は、伊達ではない。
しかし、それだけで流れが平賀に舞い込むことはなかった。
この半荘の主役はやはり、東2局に2000点を上がった金子だった。
東4局。
ドラ
一発ロン
南2局2本場。
ドラ
裏ドラ
リーチツモ
一見するとどうということのない平和手だが、好調者の典型のように、一発や裏ドラが付く。
この二つの大物のあがりが決定打となり、この半荘は金子がトップを決めた。
金子 +51.4
張 +14.1
上野 -20.9
平賀 -44.6
B卓第四回戦。
座順は、起家から近藤、大柳、太田、村上。
注目は、ここまでトップ、トップ、三着と来ている村上だろう。
村上は日本オープン、クラシックと続けざまにタイトルを獲得し、現在乗りに乗っている打ち手だ。
しかし、この半荘は立ち親である近藤の調子がいい。
東一局に手なりで2000オールをツモり上げると、続く一本場でこの配牌。
ドラ
当然ダブリーをかけ、村上から5800点の直撃を取る。
続く東2局でも満貫をツモ上がり、近藤早くも50000点オーバー。
そして東3局、近藤はこの手でリーチをかける。
ドラ
この時点では山に一枚残り。
あがるためというよりは、同じようにを一枚浮かせた親の太田を封じ込めるためのリーチだろうか。
そこへ、ドラのを重ねた村上が追いかけリーチ。満貫をツモ上がる。
ツモ
このリーチの失敗から、近藤の調子が落ち始める。
東4局ではタンヤオのみで先制リーチをかけるも、追いかけリーチの太田に満貫の放銃。
トータルポイントで大きくマイナスしているという意識があるためか、若干前がかり気味になってしまったのだろうか。
近藤は更に大柳と太田にツモ上がられてじりじりと点棒を削り取られ、オーラス一本場には村上に2900点を振り込み、ついに逆転されてしまう。
南4局二本場。
勝負を決めるための村上のリーチ。
ドラ
覚悟を決めた近藤も、このテンパイで押しに押す。
逆転は村上からの直撃かツモあがりのみという条件。
がほぼ完全な安牌であることもあり、降りようと思えばいつでも降りることができる。
無謀に突っ走るだけなら、ツモでトイトイに手替わりし、逆転の条件を広げることもできた。しかしその場合は、
で村上に放銃となる。
近藤は待ちのまま押し続け、見事村上から
を討ち取った。
見事なバランス感覚だと言えるだろう。
近藤 36.6
村上 33.9
太田 29.9
大柳 19.6
1回戦 B卓
座順は、起家から村上、太田、近藤、大柳。
東1局 ドラ
配牌からドラがトイツの太田。
6巡目にはこの形。
東1局からこの手をあがることができれば、いいスタートが切れそうである。
しかしこのイーシャンテンが埋まらない。
11巡目、近藤がドラを手出し。
このとき、太田以外の3人はすでに聴牌。
次巡、チートイツ聴牌の村上から、近藤が
を打ち取る。
東3局 ドラ
11巡目に村上のリーチ。
少考してのリーチだったように見えたが、
高めをツモり、さらには裏ドラが
で3000/6000のアガリ。
この局、8巡目に大柳に待ちの聴牌が入っていた。
結果的に村上のリーチに引く結果となっていた。
東4局 ドラ
西家3着目の太田、この局は配牌でなんとドラがアンコ。
この手が誰よりも早く聴牌に1番乗り。
6巡目にリーチ!
東1局の好形ドラトイツが不発に終わったことを思い返すと、この手はなんとしてもあがって南場を迎えたいものだ。
が、同巡近藤にピンフの聴牌が入る。
しかも待ちとなっていて、太田の河には
が・・・。
近藤は太田のリーチに、
と無筋を押して、大柳から
で出和了。
太田はまたしてもあがりを阻まれた。
南1局は太田の1人聴牌で流局。
そして印象的だったのが
南2局 1本場 ドラ
トップ目、北家の村上の配牌。
ドラがトイツだが、他の形がどう整っていくかが見もの。
と、思いながら見ていると・・・
2巡目にはドラツモ(!!)。
4巡目にはをツモり、
8巡目にこのイーシャンテンとなった。
この局は、村上のこの手でダメ押しか。
すると太田と同点2着目の大柳から「リーチ!」の声が。
このリーチ、
この牌姿で宣言牌が。
ツモで300/500だったところを、ピンフ高目三色を見据えてのリーチだったのだ。
役牌ドラアンコのイーシャンテン村上と
高目三色、3面張フリテンリーチの大柳。
結末は・・・
リーチに対し、村上はまず1枚見えのをツモ切り。
下家、親番の太田は
ここからをツモ切り。
これを村上がポン!
ポン
この後3巡のめくり合いが続き、先にアタリ牌を掴んだのは、大柳だった。
村上はで8000は8300の出和了。
やはり、村上のダメ押しアガリとなった。
3回戦 C卓
起家から、上野、金子、張、平賀の座り順。
東2局 2本場 ドラ
持ち点は
上野 30500
金子 35500
張 28500
平賀 24500
ここまでは細かなアガリや流局で、大きな点棒の移動はない。
最初に点棒を集めたのは西家の平賀だった。
2巡目に
という形で出来合い一気通貫。
4巡目には
のイーシャンテンとなり、その後ツモ切りが続くも、8巡目。
南家の張が動いた。
からカンをチー。
そして平賀にが重なる。
となり、切りの満貫確定リーチ。
この瞬間の張の少し首をかしげたなんとも言えない表情がとても印象的だった。
さてこの待ち、実はこの時点で山に1枚づつしか生きていない。
しかし平賀はこれをしっかりツモり、2000/4000のアガリ。
そして南1局 ドラ
6巡目に南家の金子のリーチ。
捨て牌は
となっている。
これに対し、同巡に張が切った現物のを平賀がチー。
そして打。
その動きで、親の上野のこの手牌に
が入る。これでチャンタ三色のイーシャンテン。
淡々と、無表情でを切る上野。
リーチに対し、ここまで淡々と無筋を切られるのも怖いものだ。
オリているのか向かってきているのかわからない打ち手ほど読めないものはない。
結果は金子の500/1000ツモ。
南3局 ドラ
3着目の東家、張が
このリーチを一発でツモあがり、4000オールでトップに躍り出る。
依然張のトップ目で向かえたオーラス ドラ
3巡目の東家平賀のリーチ
は流局となる。
そしてオーラス1本場。非常に興味深い1局を見せてもらった。
ドラは。
張の配牌は
と、わりと整った形であった。
他家に目立った動きもない7巡目、下の形に。 ツモ
ここから張はを切り、カン
のヤミテンに受けた。
河を見ると、マンズが特別安いというわけでもない
後の話ではこの局はマンズ、特ににアガリがあると感じた、とのこと。
ピンズの伸びには期待できなかったということだろう。
この話を張から聞いた時、これがAリーグなのか・・・!!と羨望の眼差しを送ってしまった自分がいた。
この局の結果は3着目の金子が2着目の平賀から2600を出アガり。
金子が2着に浮上して終了となった。
レポーター 今西祐司・浅見真紀