第35期最高位決定戦~開幕前プロローグ~
【観戦記を書く背景】
私は直感をものすごく信じるほうですし、何かを予感しながら生きている典型的なB型人間です
そんな私が最高位決定戦の観戦記者を申し出たのは(はい、依頼されたのではなく自ら売り込んだのです)たしか7月下旬あたり。書いてみたいなと強く思い始めたのがGW明けあたりだったでしょうから、かなり早い段階から(誰が出るかは分からないが)今期の決定戦は面白いものになるという予感がありました
各団体の決定戦観戦記を読んでいて、楽しくて面白い記事はたくさんありましたし、ヒリヒリするような闘いが伝わってくる名観戦記もありました
でも、もしかするともっと突っ込んだ観戦記に仕立てたかったはずなのに、組織人として或いは上下関係を大切にして、ひと筆足りないところで止めてしまった観戦記もたくさんあるような気がしてならなかったのです
だったら何ものにも気を遣わずに書かせて貰える立場でいられる時期に、その重責を担えないものかと売り込んでみたところ、新津代表と事業を差配する事務局の張さんが快諾してくれたのです
ですから私は、最高位戦の提灯記事を書く気などさらさら無く、歯に衣を着せぬ観戦記を書かせて貰うつもりでいます
もちろん、私自身が今期の決定戦に進出し、初日を迎えるべき気構えで書くつもりでいます。ですから体調管理は言うに及ばず、初日までの麻雀の調整、心の置きかた、イメージトレーニング等、最高位を獲るつもりで初日に備えます
そうしないと、第1回戦の東1局に、選手たちと一体化した形で入っていけないと思うからです
譜だけ並べてみたところで、卓に座っていないとわからないことがたくさんあるわけで、ハタから見ていれば、何故あんな一打を?と思うところでも、選手と同じ熱さで卓に入っていれば、その微妙な変化を見逃すことなく書けるかなと思っています
もちろん、私は飯田最高位ではないし、チャレンジャー三人と同化できるはずもないわけで、あくまで私の私感に過ぎない観戦記になってしまう危惧もあります
ましてや(血液型好きのバビィ曰く)思い込みの激しいB型人間、的外れな記事を書いてしまうかもしれませんが、極力打ち手たちの思考を聞き出して、双方向性のある観戦記にしていければいいな~と考えています
【開幕前選手アンケート&コメント】
観戦記を書くにあたり、決定戦進出プロに私からアンケートを実施させていただいたので、
まずはご覧ください
アンケートは、12の質問からなっていて、その質問は以下の通りです
<Q1>生年月日は?(干支もお願いします)
<Q2>血液型は?
<Q3>プロ入りの年は?
<Q4>プロになった一番の動機は?
<Q5>尊敬するプロはいますか?もしくは目標とするプロはいますか?
<Q6>Aリーグに昇級した年は?(昇降級がある場合は、その昇降級の年もお願いします)
<Q7>ライバルはいますか?
<Q8>プロとしての最終目標は何ですか?(最高位に就くことは除いてください)
<Q9>決定戦でマークする人はいますか?
<Q10>自分の勝ちパターンを競馬に例えると、大逃げ・逃げ・好位差し・中位差し・追い込み・後方一気の6パターンから選んでください
<Q11>一番好きな色は?
<Q12>観戦記に望むことは?
〔アンケート回答〕
【飯田正人】
<Q1>昭和24年4月5日丑年
<Q2>A型
<Q3>昭和54年第6期入会
<Q4>誌上プロたちをコテンパンにやっつけたくて
<Q5>尊敬するのは古川凱章先生、人間味では小島武夫先生
<Q6>
<Q7>
<Q8>
<Q9>出たとこ勝負ではあるが、強いて挙げれば、佐藤崇
<Q10>昔は逃げ、あるいは好位差しが多かったのですが、最近は中位差しとか捲りが多いです
<Q11>
<Q12>好きなように書いてください
【佐藤崇】
<Q1>昭和53年8月6日生まれの馬年
<Q2>AB型
<Q3>24期生・今年で12年目
<Q4>当時働いていたお店の知名度アップの為に…上司に言われてちょっとした軽い気持ちで…力試しというか…汗
<Q5>尊敬するプロ…古久根英孝プロ、飯田正人プロ、金子正輝プロ
目標とするプロ…土田浩翔プロ
<Q6>2007年(32期)、Aリーグ4年目で決定戦は2度目
<Q7>うーん…やっぱ村上さんと水巻さんかな?先輩ですけど。他団体なら吉田光太!…さん?(笑)3人共年上だけど、プライベートで散々やりあったから。そしてその中で、間違いなく俺の方が強い!とは思えないのが同世代ではこの3人くらいしかいないから
<Q8>賭け麻雀を除いて人並み以上に稼ぐ事
<Q9>多分全員僕より強いのでおこがましいです。ですが強いて上げるなら、昨今の充実度から村上さんかな…
<Q10>わかりません
<Q11>黒
<Q12>好き勝手書いちゃって下さい、楽しみにしてます!
【水巻渉】
<Q1>1976年5月29生 龍年
<Q2>A型
<Q3>1998年(23期)
<Q4>自分の力を試してみたかったから
<Q5>
<Q6>2001年(26期)昇級2002年(27期)降級・2005年(30期)昇級
<Q7>自分自身
<Q8>
<Q9>特にいません。
<Q10>強いて挙げるなら「自在」かな
<Q11>緑
<Q12>とにかく盛り上げてください!
【村上淳】
<Q1>1975年4月10日 うさぎ年
<Q2>土田さんと同じB型です(笑)
<Q3>1997年だと思います。今年が14年目のシーズンです。水巻の1年先輩になります
<Q4>とにかく「麻雀」というものを極めたかったので。「強くなりたい」という想いだけで受験しました
<Q5> 尊敬するプロは多すぎるのですが…やはり飯田正人、金子正輝の2人は外せません。飯田さんが好きな言葉を使うと、2人とも「麻雀バカ」であるところを一番尊敬しています!2人ともタイプは違うし、ダメなところもあるんですが、単純に「カッコいいなぁ」と思っています。僕も後輩から「カッコいいなぁ」と思われる麻雀バカにならなくては!!
目標とするプロは、あえていないと答えておきます。誰かのようになりたい、ではなく「麻雀プロ村上淳」が唯一無二の存在にならなければいけないと思っておりますので。道のりは長く険しいですが、この道に人生をかけた以上、一生かけてでも目指すべきかと
<Q6>2001年ですかね。C2(優勝)C1(3位)B1(5位)B1(優勝)で5年目からAリーグです。2007年、ダントツの最下位でB1リーグに陥落しました…奇跡的に翌年B1リーグで優勝してAリーグに復活できたのですが、今思えばあの陥落があって少し麻雀が成長したのかもしれません。技術面以上に精神面で
<Q7>自分自身、と書くのがセオリーなんでしょうが…今回対戦する水巻、佐藤は愛すべき後輩でありますが、2人ともかけがえのない親友であり、そしてライバルであると言えると思います。特に水巻渉は、年が近い、家が近い、麻雀の考え方が近い(いわゆるデジタル派は当時少なかったのです)、酒が好き(実はこれが一番大きい!?)ということもあり13年前から共に切磋琢磨して来た間柄で、今回最高位決定戦という最高の舞台で戦えることは本当に感慨深いです。ちなみに2年前の自分の結婚式で親友代表の挨拶をしてくれたのも水巻渉だったりします
<Q8>Q4でもお話した通り、ただ「強くなりたい」一心で麻雀プロになりました。14年間のプロ活動の中で、「麻雀プロとは何か」「麻雀の強さとは何か」何度も考える機会はありましたが…やはり自分の中には「もっと強くならなければ、胸をはってプロとは名乗れない」という思いがまだまだあります。もっと麻雀の勉強をして、実績も残して、自分の中でプロと呼ばれても恥ずかしくない強さを身につけること、これが最終目標なのだと思います。その強さを身につけ、いつか息子に「父ちゃんは日本一の麻雀プロです!」と言わせたいですね…
<Q9>特定の人間をマークしたりはしません。もちろん誰か一人が抜け出せば、自分が優勝するためにマークせざるをえない状況は来るかもしれませんが。まずは自分ができる事を精一杯やる、それだけです
<Q10>優勝した経験が少ないので勝ちパターンと言えるかわかりませんが…2回とも大量リードで最終戦を迎えているので、逃げ馬ということにしといてください。土田さんらしいユニークな質問ですね(笑)
<Q11>黒です
<Q12>なんでも質問していただけたら嬉しいです。ミスした場合も正直に「間違えました」と答えますので!!最高の舞台、最高のメンツ、最高の観戦記者…思い切り楽しみたいと思います。
アンケートに引き続き、チャレンジャー三人のコメントと飯田永世最高位のコメント(これはインタビューではなく、ブログから引かせていただきました)を披露しておきます
尚、チャレンジャー三人のコメントは、佐藤かづみプロがとある酒席でインタビューしたものです。ゆえに私などがインタビューするものと違い、構えた回答ではなく、本音そのものの話が引き出せていて、佐藤かづみプロの才能に感謝しております
また、チャレンジャー三人は、コメントを読んで、「えっ?!俺そんなこと言った覚えないなー」と思われるかもしれませんが、たぶん99%かづみプロに吐露ってますので、酒席に免じて御容赦ください(笑)
【佐藤崇】「このメンバーで最高位決定戦を戦えるのが夢だったので嬉しい」
夢が叶うって素敵なことです
「このメンバーなら、飯田さんは別にして五分に戦えるかもしれないので、勝率は前回チャレンジしたときより高いと思う」
フムフム、かなりの感触
「水巻の勝って喜ぶ顔も見たいけど、今回は俺が勝ちます…いや、勝ちたいな、くらいにしときますか」
やはり水巻に意識が…
「ヨミ合い勝負なら負けないけど…強い奴がいたら仕方ないけど…やっぱり最終戦勝負になるんじゃないかな」
崇はヨミに強いんだ、フム
「誰も抜けさせないよ」
オッ!能動的なコメント
【水巻渉】「決定戦進出の感動とかはないよ」
意外に冷めてます
「今期のリーグ戦は気合いが実った形で勝てたかな」
やっぱり気合いか
「決定戦にズンタンさん(注:最高位戦の方々は村上プロをこう呼ぶらしい)崇さんと、仲のイイ三人が進出できて奇跡みたい」
奇跡って、イイ表現…冷めてないじゃない
「決定戦が楽しみで仕方ないし、ステージが上がって、いつもより内容の濃い麻雀は見せられる自信がある」
ほほぅ、ステージが上がれば上がるほど乗ってくるタイプなのね
「自分を麻雀でアピールできたらいい」
プロの真骨頂ね
「ズンタンさんや崇さんに獲られても仕方ないけど(注:飯田永世最高位の名は出てません)、最高位戦ルールじゃチョイ俺のほうが強いかな」
ルールね、なるほど、自分の土俵ってことね
「とにかく、初心に還って、モチベーションを上げて、喧嘩がしたい。そして負けたくない」
そう、《喧嘩》しなきゃダメだよね、殴り合いから逃げる奴は最高位にはなれないよね
【ズンタン(村上淳)】「3年勝てなかったので、今年こそ勝って、三冠王に俺はなる(注:日本オープン・最高位戦クラシックの二冠を制覇中)」
断定的な表現<俺はなる>がステキです
「決定戦は3度目なので緊張感は無いかな~、7度目のGI決勝進出だしね」
3度目の正直、七転び八起き、なるほど!
「俺以外の後輩たちには負けたくないし、子供にカッコイイとこ見せたい」
私も子供がいたら…もっとタイトルとれてかな(涙)
「麻雀プロの負のイメージを払拭したい」
そうですね、麻雀のイメージもそうだけど、麻雀プロのイメチェンも大事ですね
「水巻・崇とも、十年来の友人であり強敵なので、飯田さんの胸を借りてイイ牌譜を残したい」
そう、勝ち負けは時の運だけど、牌譜は実力そのものだから、四人の力で名譜を残してね
「そしてその飯田さんと上位争いして、Mr最高位を倒して最高位を獲りたい」
《Mr.最高位》を狙ってるのね、ステキです、やっぱりカッコイイな
【飯田永世最高位】
「過去の決定戦、思い起こせば、それぞれ感慨深いものがある。
でも今回の決定戦はちょっと違う。たぶん、いや間違いなく最後の決定戦になるはずだ」
最後の闘いに出かける前の静かな独白、やはりそういう勝負なんですね
「なのに、なかなか気持ちが入っていかない。 何が何でも勝ってやるという気持ちがなければいけないのに……」
その気持ちが永世最高位の全てであり、類い稀な強さでコントロールしてきたはずですから、きっと初日までには…調うはずです
「何でやねん?このモチベーションの低さは。まだ時間はあるけど何とかモチベーションを上げなければ、間違いなく負けてしまう」
必ず上がるはずですし、上げられるのが飯田正人ですから
「負けたら負けでいいじゃないかとも思うが、それはダメだわな。プロなんだから、麻雀しかないんだから」
それはダメだわ、飯田正人は最高位決定戦そのものが人生なんですから
「俺のファンにがっかりさせてはいけないよな」
そうです、飯田ファンはもとより、麻雀ファンのためにも
「夢と勇気と希望をファンに与えるのがプロの仕事だから、決定戦までには良いコンディションに仕上げるよ」
流石の締めです、<夢と勇気と希望>を与える仕事をしてる自覚、これこそが本物の《プロ》です
以上、決定戦進出選手の偽らざる本音と、ツイッター風返しでした
【決定戦の展望】
決定戦は半荘4回戦を5日間に分け、計20回戦で行われます
アンケートにも競馬の脚質を例にとって聞いてみたように、半荘回数も競馬の距離にたとえて考えてみると面白いかなと思います
私は半荘1回を400メートルと捉えるのが適切かと考えていて、半荘4回戦が競馬の基本距離となっている1600メートルのマイル戦に該当するのです
つい先日、鈴木たろう雀王が誕生したプロ協会の《雀王戦》が一日半荘5回×4日間の20回戦で、最高位決定戦と同じ20回戦でありながら、《雀王戦》は2000メートルを4回走るレースなのです
さらに、プロ連盟の《十段戦》などは一日に6回打って勝ち抜いていくシステムなので、俗にクラシックディスタンスと言われる2400メートルのタフなレース設定になっているのです
という前提で考えると、【最高位決定戦】は、半荘4回戦ですから、マイルのレースを五日間繰り広げる闘いということになります
1600メートル(半荘4回)と2000メートル(半荘5回)では全く違うレースの流れになります。マイル戦は、ほどよいスピードと瞬発力が要求されますが、2000メートル戦は、ある程度の持久力と忍耐力が無いと、スピードだけでは太刀打ちできません
ただし、同じマイル戦でも、スピードが生かされるパンパンの良馬場もあれば、2000メートルや2400メートル戦のような持久力や耐久力が必要とされる不良馬場もあるわけで、当日の馬場状態も気になるところです
もちろんこの馬場状態は、対局者四人が作るもので、その日のコンディションもさることながら、各選手の得意とする距離に因るところが大きいのです
飯田永世最高位が勝っている決定戦全てに金子プロが同卓しているのも、この得意とする距離が似ているところに勝因があったように思えます。つまり二人ともステイヤーに近いクラシックディスタンスホースということで、距離が長くなればなるほど持ち味が活かせるタイプではないかと
なので、お互いアウンの呼吸で、マイル戦を2400のダービーや3200の天皇賞(春)に仕立て上げたペース作りに勤しんでいたような気がしてならないのです
ところが…今回の決定戦にはその金子の名前が無く、名マイラーの誉れ高い水巻、2000メートルを得意とする村上・佐藤が出場する。となると必然的に前半の二日間はパンパンの良馬場での速い流れが予想されます
もちろん飯田永世最高位はレースキャリアが豊富なため、その速さに戸惑うはずはありませんが、唯一の不安は、引っ掛かり癖のある佐藤が超ハイペースを演出した場合、飯田の持久力が封印されてしまう可能性があるということです
ただ、五日間開催されるところが飯田にとっての大きなアドバンテージであり、開催が進めば進むほど馬場が荒れてきて最終日は不良馬場必至なので、ゴール前、マイラーたちの脚が上がる可能性は十分に考えられます
アンケートで飯田が、強いて挙げればという前提付きで、佐藤をマークすると答えたのは、多分に道中のペース配分を気にしてのものかと私は勝手に推測しています
村上は心身ともに成長ぶりが著しく、多少のレース展開の乱れにはビクともしないはずですが、飯田が真骨頂を発揮する不良馬場が多発するようだと、持ち味を生かせないまま馬群に沈む可能性があるように思えます
いずれにしても、当日の馬場状態とレースのペース次第で、結果は恐ろしいまでに違ったものになるであろうことは、容易に予測できます
果たして五日間のマイル戦がマイラーたちの天下になるのか、はたまた一変してステイヤーの出番になるのか、ワクワク感いっぱいの決定戦。
観戦記者としてこの名勝負に立ち会える幸運を神様に感謝しています。
観戦記者 土田 浩翔