第35期B2リーグ優勝 齋藤 敬輔
全くといっていいほど、まだ名前を知られていない無名の若手である。
そんな私に、首位昇級者として今期のレポートを書かないか?と話をいただいた。
これを機に、こんな奴もいるのだな、と覚えていただければそれは光栄な事である。
まず、簡単に自己紹介をさせて頂きたい。
現在、25歳、池袋で一番賑やかな雀荘でスタッフとして働いている。
7年前、私が18の時、初めてフリー雀荘に行った。埼玉の坂戸にあるK・O(ノックアウト)という雀荘だ。この雀荘は最高位戦の大先輩である金子正輝氏が店長ということもあり、最高位戦の所属選手が働いている。私はそこで最高位戦という存在、そしてプロという存在を知るきっかけになった。それから1年くらい通い、その後1年ほどアルバイトとして働かせて頂いた。
そして22の時、最高位戦に入会した。
最高位戦に入会して約3年。1度も降級することなくここまで順調に昇級することができた。
ここで折角の機会なので、私の麻雀観について少しだけ語りたい。
麻雀において一番重要なモノは「速度」だと思っている。しかし、ただのアガりやテンパイまでの速さ・スピードでは無い。
「他家との相対速度」や「手牌の加速度」と言ったものである。
牌効率、山や手牌読みももちろん重要である。ただ、その読みに基づいて速度を想像し、具現化できるかどうかが重要であると思っている。これだけ聞いてもピンと来る方はいないと思うが、今回は私がそう思っていることだけわかってもらえればいいか・・・。
今期のリーグ戦でこんな手牌があった。
東1局 西家 ドラ 4巡目
ツモ
打とすれば、テンパイだ。しかしまだ4巡目。特に速そうな人はいないようだ。
私は打としてイーシャンテンに戻した。
結果は10巡目にツモで、打でリーチ、11巡目に一発でをツモって、2000
・4000のアガりとなった。
5巡目には対面にを打たれていて、事実2度もアガりを逃した形だが、東1局ということもあり、先に書いた相対速度を意識して、良形と打点を両方狙いにいったのだ。これが功を奏してリードを守りきりこの半荘はトップを取ることができた。
もちろん、リスクがあるのは百も承知だ。しかし、こういう局面で相手の速度に応じて、ギリギリまで打点を求めなければ、この先勝ち抜いていけないだろう。
また、次の局面をみてもらいたい。これも今期のとある1局である。
南2局 南家 1本場 供託1000 28000点持ちラス目
ドラ 7巡目
上家から出る
競りに競ったこの局面。2000点のアガりでも瞬間トップ目に並ぶ。
すでに、7巡目。テンパイしている者はいないだろうが、私の手牌はこのままではアガりはおろか、テンパイすら組めないかもしれないと思っていた。
私は、チーした。
この時、ターツの優劣は優秀な方から>>>と考えていた。
(理由は上家がとを1枚切っている、場にが2枚切れ等)
そこに5枚目のが出た。これをスルーしていては間に合うものも間に合わない。
さらには、もも鳴きやすそうで、が捌ければアガりまで加速度的に早くなるだろうと思ったのだ。これが、やからは自信をもって鳴くとは言えない(実際は鳴くのだろうが)
その後、うまい具合にテンパイが入る。
11巡目
チー
こうなったところにリーチを受けるが、一番優秀だと思っていたが残ったので、オリる気はさらさら無い。加えて、現状ラス目ということもある。
無筋2枚を押して、15巡目に500・1000のツモアガり、トップ目に立った。
南3局でも無理せずアガることができ、リードを広げ、この半荘もトップで終えた。
たまに1つ鳴いたら2つ鳴くもの一緒だという方がいるが、残った形や鳴きやすさを考慮して、本当にその鳴きがアガりまで速くなっているのかどうか、を考えなくてはいけない。さらには、その鳴きによってアガりまでの加速度が増すのかどうかということも。
親番 ドラ
さぁあなたはどこから鳴きますか?
と、ここまで長くなってしまったが、そろそろ今期を振り返ることとしよう。
私はB2リーグに在籍して2期目となる。去年、良いスタートを切り、前半戦が終わった時点で首位にいたのにも関らず、後半戦では失点を重ねてしまい残留という悔しい結果だった。(私の負けっぷりは、HPの34期B2リーグ結果で見れます・・・)
今期は、去年同様、いいスタートを切った。しかし、全12節の折り返しにあたる6節には、4連続ラスで▲176.1pという大敗を喫した。4連続ラスというのは今まで記憶に無い。何よりも負けたくないリーグ戦で人生初めての4ラスを引いた。私はとても落ち込んだ。
しかしその後、去年の経験を糧に我慢を重ね、後半戦は崩れることなく昇級することができた。12節の内マイナスだったのは二回だけ(もう一回は▲8.4p)と、去年の私がこれを見たら驚いているだろう。そういえば、4ラスを引いた翌日、W杯日本代表の勝利が私を勇気づけてくれた。今となってはいい思い出である。
最終節を迎えて、私は首位にいた。100p負けなければ、もし、100p負けたとしてもまだそれでも昇級できそうなポジションだ。
最終節が始まった。
1半荘目の南1局親番で先制リーチに手を曲げること無く、真っ直ぐアガりに向かった。追っかけリーチを放ち、12000をアガることができた。その親番でアガりを重ね、80000点の大トップを獲った。これでほぼ昇級できそうだ。あとは3ラス引いても大丈夫だろう。しかし、ここまできたら首位で昇級したい。残り1半荘を残し、別卓を待っている時、会場に来ていた張 敏賢氏(事務局長・HP担当)に「首位昇級者としてレポートを書いてみないか?」と話を頂いた。
最後までトップを、首位を、目指してやるだけだ。最終半荘も牌勢に後押しされ、トップで締めくくることができた。私は第35期B2リーグを優勝した。
いま、レポートを書いていて素直にうれしく思う。
来年は上位リーグとなるB1リーグで戦えることを誇りに思い、連続昇級を目指して挑んでいくつもりだ。
今はまだ、遠く見えない最高位というタイトルを目指して!
最後まで読んでいただき、有難うございました。
今後とも、最高位戦日本プロ麻雀協会をよろしくお願いします。
これから始まる最高位決定戦にはぜひ観戦にいらしてください。
独特の緊張感を生で感じて、麻雀の奥深さを味わってもらえればと思います。
文責 齋藤 敬輔
(一番難しい齋を使っている齋藤 敬輔と覚えていただければ幸いです。)