コラム・観戦記

【野口賞優勝・浅見真紀の自戦記が届きました!!】

こんにちは、35期前期入会の浅見真紀です。
先日、わたくし浅見は第9回野口恭一郎賞に出場させていただきました!
今回はその時の、一生忘れられない2日間をレポートさせていただきます。

9月13日。 1日目。

最高位戦から出場する有賀一宏、佐藤聖誠、坂井英隆、池下真理子、
そして浅見の5人で東京駅で待ち合わせをし、いざ麻雀博物館へ!
特急でちょうど1時間程。
電車に揺られながら、一緒に戦うことになる池下さんと不安な気持ちを慰め合っておりました。
そして今まで味わった事のない妙な緊張感を抱きながらも、無事到着。
前々から行きたいと思っていた麻雀博物館ですが、まさかこんな形で来ることになるとは…。
なんだか不思議な気分になりつつ、到着して予選が2時間後にはじまるということで、
気分はどうしてもピリピリしてしまいました。

集合した場所には着々と選手が登場。
初めてお会いさせていただく方がほとんどでしたが、皆、少し挨拶を交わす程度。
その空気感に私ものまれてしまい、部屋の端っこでパカパカ煙草を吸って緊張をごまかすしかありませんでした。

そして12時半に、梶本さん司会による開会式が行われました。
対局会場にはモンドの撮影スタッフの方もいらっしゃって、初めて撮影をされながらの卓組抽選!
抽選が終わると、すぐ席決め、起家決めを行い、あっという間に対局は開始されました。

野口賞のルールは、一発、裏なしで順位ウマは3万点を基準に16pが変動するものです。
いわゆる「クビ」って奴ですね。
普段の最高位戦ルールとは全く違うので、免疫を付けねば!と思い、
最高位戦の先輩方に付き合っていただいて野口賞ルールでセットをしたりもしましたが
一発と裏なしという麻雀をほとんど打った事がなかったので、
押し引きや、リーチとヤミテンのバランスなどがつかめないまま、本番を迎えることになってしまいました。

最高位戦のみなさまはもちろん、友人、知人からも応援していただき、期待をされている中、
こんな状態で野口賞に臨むことが不安でしょうがなくて、何人かの先輩に相談をしていました。
「ルールに合わせて麻雀の打ち方を変えなきゃいけないことはわかるが、いつもとどう変えればいいのかわからない」と。

すると先輩たちはみんな口を揃えて、
「考えすぎるとかえってよくない。いつもの浅見らしい麻雀をしてくればいいよ」
と言ってくれたのでした。

その言葉が、自分にとって、すごく嬉しかったし、それに少し気を楽にさせてくれました。

話がそれてしまいましたが、、、予選です。
8名が抽選による卓組で1半荘。
1半荘目のポイントによって2半荘目の卓組が決定。
この流れで全部で4半荘。

4半荘の合計ポイント上位2名は決勝進出が決定。
下位2名は敗退決定。
3位~6位の4名が決勝の残り2席をかけて、半荘1回のプレイオフを行う。

こんなかんじのシステムになっています。

大事な大事な予選第1半荘目は、
東1局に日本プロ麻雀協会の、黄河のん選手に300/500をツモられ、
東2局にはハイテイ直前で黄河選手に8000を放銃してあっさりラスになり…
というなんだか不安定なスタートでした。
一発裏なしで2フーロの相手に8000放銃(しかもホンロートイトイ。)とか、
本当に私は甘い打牌が多いなぁとなんだか冷静に反省しました。
東3局には連盟の中山奈々美選手からのリーチを受け、私は高めイーペーコーのピンフのみのイーシャンテン。

オリようか、オリるべきか、オリようと思えば現物はいっぱいあるからオリれるけど…
一瞬悩みました。

でも、いつもの自分らしい麻雀を打ってこい、というみんなの言葉を思い出し、
無スジを押して、追いかけリーチ。
700/1300をツモりました。リーチ、ツモ、ピンフ。
安めはただの2000点。リーチをかける必要があるのか?という方もいると思います。
でもきっとあのリーチは、自分自身に「しっかりして!」と目を覚まさせるためのリーチだったと思うんです。
これがいつもの私の麻雀だ!というのを、自分に思い出させるという意味もあり。
今思うと、最初に8000を放銃したことで動揺せず、あの700/1300をツモったことが、
その後の予選を平常心で打てた要因になったと思います。

予選4回戦を終えて、ポイントはプラス46でトップ!
次点は池下さんの41ポイント。
最高位戦の選手で1位、2位のプレイオフなしでの決勝進出を決める事が出来ました。

ということで、決勝進出者を決めるプレイオフを観戦することができたのですが…
トータルポイントがプラスマイナス2の中に3人、そしてその3人がオーラスに3000点差以内にいるというかなりの接戦。
見ているほうまで苦しくなってしまうような緊迫した戦いの結果、
日本プロ麻雀協会の蔵美里プロ、
日本プロ麻雀連盟の白河雪菜プロ、
の2名が決勝に進出することとなりました。

その日の夜は男性陣、そして運営側の五十嵐さん、梶本さん、馬場さんたちを含め、みなさんで懇親会を行いました!
夕食を食べながら、他団体の方と交流をさせていただきました。
懇親会が終わってから、明日の決勝に向けて早めに体をやすめるべく、お風呂に入り、友人、先輩がたからのメールに返信をして夜1時には就寝。
ちなみに同室の池下さんは12時くらいに
「ねむーーーい!わたし寝る!」
と言うやいなや、びっくりするくらいいきなり寝てました。。。

9月14日。2日目。

決勝は朝10時にスタートしました。
普段の対局はほとんど12時スタートなので、こんなにはやい時間に真剣勝負をするのは初めて。
脳みそが起きるかどうか心配だったのですが、さすがにこんな大事な決勝ともなると目も頭もスッキリ覚醒しておりました。

4半荘のトータルポイントで優勝が決まります。

1回戦目は親番でのリーチ、仕掛けがうまくアガれる展開になり、プラス50.1のトップをとる事が出来ました。
野口賞のルールだと、1人浮きのトップでも順位点は16ポイントしかないため、プラスポイント50というのはかなり気持ち的にも余裕を感じる事のできる数字でした。
4半荘のトータルなのに、1回おわっただけで余裕を感じている場合じゃないんですが。。。

その余裕が仇となったのか、2回戦目は1回戦2着の池下さんに1人浮きのトップをとられ、自分はマイナス3.9の2着。
この半荘はもう2着を必死にとりにいくしかなかったです。それくらい、池下さんに怒濤のアガリを連発されました。
野口賞女性棋士部門に参加した、唯一の最高位戦の仲間。
そして同じ時期に最高位戦に入会した仲間。
池下さんのことはもちろん大好きだし、これからもずっと仲良くしていきたい同期ですが、
白河さん、蔵さんにトップをとられるよりも、池下さんにトップをとられることが悔しかったです。
これがライバルってものなんですね。
新しい感情がまたここで芽生えました。

2回戦が終わってのポイントは
浅見 +46.2
池下 +31.5
蔵 △23.9
白河 △53.8

そして3回戦。
白河さんに58.6ポイントトップという脅威の数字を叩かれました。
まっすぐに打って、リーチして、ツモる、という気持ちのいいアガリを何度もされました。
白河さんとはトータルポイントでは差があったので、トップをとられることは問題ではなかったのですが、トータルポイントが近い池下さんにしっかりと後ろにつけられて、浅見2着、池下3着で終了。

3回戦が終わって、最終戦前のポイントは
浅見 +53.2
池下 +34.5
白河 +4.8
蔵 △92.5

池下さんとのポイントは18.7。
このくらいのポイント差なら簡単にひっくりかえります。
1人浮きのトップをとられた時点で、私が2着でも順位点だけで18ポイントの差がつくのです。

池下さんをしっかりマークすることを考えながら、集中して臨んだ最終戦。

東2局、蔵さんの親番で場況も煮詰まってきた終盤、
①④⑦待ちの役なしにとるか、役ありの三六待ちにとるか悩み、私は三六待ちの亜リャンメンでタンピンをヤミテンしていました。
あまりにもいい待ちだったので、出和了できる自信があったんです。
すると、親番の蔵さんから「リーチ」。
宣言牌は三!
ロン、と発声し、手を倒そうとすると、蔵さんの下家の池下さんも「ロン」。
そして、「12000」という点数申告。

その後も途中で怖くて震えてしまうくらい、池下さんにあがられまくってしまい、
南入した時点で、すでに池下さんには50000点のトップをとられていました。
自分は2着目にはなっていたものの、ポイント差はほとんどないようなもの。

このまま池下さんに優勝されちゃう…という恐怖が襲いました。
目の前まで見えていた優勝が、するりと逃げていっているのを感じました。

私も、白河さんと蔵さんの2軒リーチに挟まれ、タンヤオチートイドラドラのテンパイから1枚無筋を押して、
8000を出あがり、池下さんのポイントをまくったのですが、やはりまた池下さんにあがられてまくられ…
どちらかがあがるたびにポイントが入れ替わる、本当に息のつけない半荘でした。

南3局、池下さんの親番。
私はトータル2着で、池下さんのポイント差は5.2ポイント。

オーラスのことを考えても、ここでなんとかあがっておきたい!逃げたい!
耐えて耐えて、作ったテンパイは

123555四五六六七⑥⑦⑧
ドラ3

ここで、打5として五八待ちのピンフドラに受ければ、リーチしてツモればトータルポイントでトップに立てるのはわかっていました。
マンズが異様に安い場況。
ただ、五八待ちよりも四七待ちにアガリがあるように私には感じられたのです。

六切りでリーチをしたところで一発、裏なしのルールでは2600しか見込めません。
それでも、あがれるかどうかわからない打点のある五八待ちでリーチをするよりも、
あがれる自信の持てる四七待ちに賭けよう!と決心し、六切りでリーチ。
出アガって2600は2900の収入。

このアガリが、今までやってきた麻雀と野口賞での私の麻雀の集大成のような気がします。
この局で自分がした選択は、たまたまアガリという結果に結びついただけかもしれませんが、
それでも私にとっては本当に特別な一局になりました。

そしてトータルポイントでまだ2.3の差がある状態で迎えたオーラス。
南家。

配牌をとると…、アンコ1つ、トイツが2つ、字牌がバラバラとあり、南がぽつんと1枚。
何に向かえばいいのかわからず、第一ツモでトイツが1つ増えました。
これはもうトイトイにいくしかない!と心に決め、丁寧にトイツを増やしていこうと思っていたのですが、
ツモるたびに残した牌が重なり…

4巡目にチートイテンパイ。

2.3ポイント差をうめるためには、ツモるかリーチをかけるかしかありません。
ここで私が選択したのは、
生牌、南タンキでのリーチ。

当然ですが、リーチをかけるとそれ以降手を変えることができません。
このテンパイ形にかけるしかなくなります。
ラス親の白河さんに南がトイツ以上で入っていようものなら、あがれることのないテンパイです。

深く息を吐いてリーチ!
この瞬間のドキドキは何ともいいようのない感情でした。

下家の蔵さんが現物を切り、あがれば優勝の対面の池下さんは無筋を切ってきました。
そして上家の連荘するしかないラス親の白河さんが切ったのは
南でした。

ロン、3200。

手を倒すのもおぼつかなくなってしまうくらいの安堵。

カメラがあがり形をとるために近寄ってきて、私はようやく、
ああ、優勝できたんだ!
と実感しました。
最終戦は、リーチをするたび、ツモるたびに震えていたんですが、この瞬間が一番震えていました。
興奮で震えるなんて人生で初めてです。

麻雀を始めて6年目。2010年の2月に最高位戦のプロになって、まだ半年程度しかたっていません。
そんな私が、始めてタイトルを獲りました。
来年には女流モンド杯に出場させていただくことにもなりました。
なんだか自分でも信じられないくらい、夢のようなことが起こっています。

私の麻雀は、本当にまだ雑だし、麻雀に関する知識もひどく浅いと思います。
決勝卓でも、初歩的、そして決定的なミスをして自分に苛立ったりもしました。

それでもこのようなタイトルを獲得することができたのは、今まで私に麻雀を教えてくれた全てのみなさまのおかげだと思っています。直接手づくりや押し引きを教えてくれた方はもちろん、一緒に麻雀を打った数えきれないくらいの方々に色んなことを教わった気がします。
そして、私を野口賞に出場させてくださった関係者のみなさま本当にありがとうございました。

これからが、プロとしての始まりだと思っています。
みなさんに恩返しをできるような、みなさんにいい報告ができるような麻雀を打てるよう、これからもたくさん勉強し、邁進していきます。

立派なプロとして胸を張ることができる日が、一日でもはやく訪れる様に頑張ります。
本当にありがとうございました。

最高位戦日本プロ麻雀協会
浅見真紀

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