コラム・観戦記

第10期女流最高位戦予選1節レポート

10年目の節目を迎える女流最高位戦。
今期は昨年の実績からAリーグとBリーグに分けて、
Aリーグ13名から上位8名、
Bリーグ25名から上位8名が準決勝進出となる。

6割通過のAリーグと、3割通過のBリーグでは、
当然戦い方も違ってくるであろうが、
Aリーグは最高位戦女流の中でも屈指の実力者が揃っている。
過去に決勝まで残った選手も多く、準決勝のさらなる先を見据えて、
『ストップ・ザ・根本』と心に決めている選手もいると思う。

今回のレポートではAリーグの選手に焦点を合わせながら、
戦いを見ていきたいと思う。

Aリーグ1回戦卓組(起家からの座順)
1卓 山口 涼崎 北島 いわま
2卓 夢野 須山 野添 宮本
3卓 和田 京杜 花本 川端

1卓1回戦
東1局 ドラ
会場で一番最初に発声したのは、いわま。
開始1分、4巡目に早々と『リーチ』!

北島も仕掛けてテンパイ。
  

しかしテンパイ打牌のが捕まる。
裏ものせて、メンピンドラ裏8000出アガリ。
いわまが幸先の良いスタートを切る。
【DOSU】

東2局、今度は私がと言わんばかりに親の涼崎が4巡目リーチ。
しかし、このリーチはいわまのピンフのみにかわされてしまう。

東3局 ドラ
またもいわまが今度は3巡目リーチ!

前に出てきた涼崎からロン、リーチチートイドラドラ8000!
実はこのリーチ、配牌でテンパイしてたという。
の選択だったが、いわまはダブルリーチせずダマを選択。
一枚切れのに変えて、自信を持ってリーチ!
自分ならでダブルリーチしてしまいそうだが、
いわまは確実なアガリを取りに行って大成功。
【KOI】

東4局 ドラ
3連続でアガって迎えたいわまの親番。
持ち点はすでに48000。ここからさらに突き抜けるのか!

いわまが中盤に先制リーチをすると、北島もメンホンテンパイ。
いわま

北島

山口がいわまの現物のを切るとロンの声が2人!

 ロン

ここはダマでテンパイしていた涼崎の頭ハネ。
タンヤオドラドラ5200でいわまの親番をかわした。

その後、涼崎が山口から満貫をアガるなどして迎えたオーラス。

南4局 ドラ
山口    19600
涼崎    32200
北島    17400
いわま・親 50800

涼崎が仕掛けてテンパイをとると、いわま・北島・山口が相次いでリーチ!
涼崎
  
いわま 8巡目リーチ

北島 9巡目リーチ

山口 10巡目リーチ

この半荘の一番の勝負所となったが、アガったのはまたしてもいわま!
リーチツモドラ2000オール。
トップ目からさらに加点して突き抜ける。

いわまは、ファンの友人からドスコイプロと呼ばれているという。
そのダイナマイトなボディーと、攻撃の押しの強さから来ていると言うが、
まさにこのオーラスはドスコイタイム!
圧倒的なリードを武器に、次局も持ち前の攻撃力で涼崎から9600直撃。
最後に涼崎が北島から満貫をアガって2着に滑り込むが、
ドスコイいわまここにありのロケットスタートを決めた。

いわま +68.7
涼崎   +8.9
山口  -23.4
北島  -54.2

2卓1回戦
東1局は野添が400・700ツモと静かな立ち上がり。

東4局 ドラ
親の宮本が11巡目にリーチすると、すぐに夢野・野添がテンパイ。
宮本

夢野

野添
 

野添のテンパイ打牌は生牌のだったが、次巡のツモもでアッツー。
結果は3人テンパイで流局。

1本場は、夢野・宮本・須山の3人テンパイ。
1卓と違って接戦の展開の2卓。
テンパイ料をめぐってジリジリとした攻防が続く。

その後、夢野が宮本からメンピン裏3900をアガるなどして南3局。
流局が多かったためか他の2卓に比べて進行が遅く、この局が最終局となる。
(60分+1局)
南3局3本場 ドラ
夢野   30400
須山   32300
野添・親 36700
宮本    20600
1人置いてかれた宮本だが、最後に好配牌。1つでも着順を上げたいところ。
宮本の6巡目
 ツモ

ここで宮本は少考してツモ切り。
を鳴かれるのを嫌ったらしいが、現在ラス目。
ここはを切って手広く構えた方が良かったのではないか?

結局宮本がテンパイする前に、夢野がリーチ。

ツモか裏でトップという条件だったが、
あっさりツモって裏ものせて2000・4000は2300・4300。
力強くトップをもぎ取った。

夢野 +39.3
野添 +12.4
須山 -10.0
宮本 -41.7

3卓1回戦
起家の和田の親リーチを京杜が6400でかわしてスタート。

ハイライトは東3局。
仕掛けて西ドラ3でテンパイしていた和田が、花本の切ったドラを大ミンカン!
リンシャンでツモって、西リンシャンドラ4の3000・6000。
開局の失点を取り返す。
   ツモ

一方、花本も南場の親でリーチドラ3の満貫をツモってトップ争いに加わる。
川端は全くアガれず、ツモられ貧乏でズブズブ沈んでいく・・・。

南4局 ドラ
和田   35200
京杜   35200
花本   31100
川端・親 18500
和田と京杜が同点。
1人沈んだ川端は、親で大まくりにかける。

京杜が仕掛けてテンパイ。
 

を持ってきて3面張に変わったところで、すぐに花本からが出てロン。
京杜が初戦をトップで飾った。

京杜 +37.2
和田 +15.2
花本 -10.9
川端 -41.5

Aリーグ2回戦卓組(起家からの座順)
1卓 花本 野添 野口 山口
2卓 京杜 涼崎 夢野 いわま 
3卓 宮本 北島 須山 和田

さて2回戦の注目はなんといっても2卓。
奇しくも1回戦のトップ3人が同卓で戦う形となった。
なかでもトップ2回分の大トップのいわまには大注目である。

2卓2回戦
東1局 ドラ
いわまがこの半荘も攻める!軽快に仕掛けてテンパイ。
  

しかしここは涼崎が静かにタンヤオツモ。
 ツモ

1回戦いわまの猛攻に耐えて2着をキープした涼崎。
今度は負けられない。

東2局 ドラ
京杜が中のみを仕掛けるが、
14巡目にいわまが生牌のドラを切ってピンフテンパイ。

このときの京杜
 

のこり2巡となったところで、いわまはをツモると少考して切り。
下家の京杜にテンパイを入れさせない。
次巡にをツモって300・500と望外の結果になったが、
力技だけではないところを見せた。さすがドスコイB1リーガー。

その後、親番などで加点したいわま。
リードしたままオーラスを迎える。

南4局 ドラ
京杜    18700
涼崎    23800
夢野    28100
いわま・親 49400

またまた始まったいわまのやりたい放題タイム。別名ドスコイタイム。
2連続で断トツでラス親を迎えたいわま。2着にハネ直されなければ大丈夫。
一方3人は着順を考えていわまには攻めにくい。
そんななか親のいわまはしれっとテンパイ。

ピンズの変化を待ちながら、出ればアガる構え。
局の途中でコールがあり、この局+1局となる。
いわまとしては永遠に親を続けるつもりだったのに…といったかんじか。
結局いわまと涼崎の2人テンパイで流局。

南4局1本場 ドラ
京杜    17200
涼崎    25300
夢野    26600
いわま・親 50900

ラス目の京杜がピンズまっしぐら。
2つ仕掛けて下の形。
  

しかしアガったのは、またもいわま。
  ツモ
【DOSUKOI】
力強くドラ表示牌のをツモって、ツモ三色ドラ4000は4100オール。

いわま +63.2
夢野   +2.5
涼崎  -18.8
京杜  -46.9

いわまがドスコイドスコイ。
2連続の大トップでトップ4回分の130Pを叩き出す。
ごっつあんです!!!

1卓2回戦
1回戦抜け番だった野口。
いきなりの待ちぼうけで肩透かしをくらってしまったが、気にしない。
野口には、1年半の間辛抱した過去があった。
33期のプロテストで女流合格するが、最高位戦リーグは不合格。
しかし努力して今期リーグ戦に合格して、C2からC1に昇級。
あの長かった1年半に比べれば、1半荘なんて。
野口の開幕戦が始まる!

南1局 ドラ
野添が6巡目にリーチ。

安目をツモるが裏ドラが
メンピンツモドラ裏裏3000・6000。
ラス目の野添がハネ満をツモったことにより、場は一気に大接戦。
野添僅差ながら32500のトップ目に立つ。

この後、花本が山口から満貫をアガってトップになると、
野口も親でメンピン三色をツモって捲くり返す。
トップが次々と入れ替わる目まぐるしい展開。

南3局1本場 ドラ
そんな野口にいきなりのエマージェンシー!
野添がと仕掛けては場に一枚…。

その後9巡目に野添がを切ってテンパイ。
  

大三元の目は無くなったが、テンパイは明白。
みちる、ちょっとフクザツ…。
すぐに野添がをツモって1300・2600は1400・2700。

南4局 ドラ
花本   34300
野添   34000
野口   37700
山口・親 14000

上の3人が大接戦。
1人大きく離された山口は、ラス親で挽回したいところ。

野添がメンホンのイーシャンテン。

上家が切ったを少考してチー。点差を考え広いイーシャンテンにする。
  打

このをチーして野口もテンパイ。
  打

ピンズを整理して待ちになれば鉄板に見えたが、
もうピンズは切りきれないと感じたか。
すぐに山口からが出てロン。
待った甲斐があったとばかりに野口がトップ。

野口 +38.7
花本 +14.3
野添  -6.0
山口 -47.0

3卓は、宮本が一人置いてかれる展開となり、他3人の争い。
終始リードした和田がオーラスも逃げ切りトップ。
1回戦に続きポイントを伸ばした。
一方、宮本は2連続のラス。早くも窮地に追い込まれた。

和田 +36.3
須山 +13.9
北島  -7.3
宮本 -44.9
供託   2.0

さてAリーグはいわまの独壇場となったが、
ここで前半2回戦を終えたBリーグに目を移してみよう。

注目は2回戦に三倍満をアガった今期新人の浅見。
 ツモ

この手をリーチして豪快にツモ。
『リーチツモメンホンピンフチャンタリャンペイコー』
という長い呪文を唱えてドラ無し三倍満。
浅見はリーグ戦もC2からC1に順調に昇級しており、
今期新人女流一番の注目株である。

この浅見が3回戦に対戦したのが、初代女流最高位渡辺洋香。
面子は、渡辺・浅見・高橋・成宮と、渡辺が新人3人に囲まれる形となった。

Bリーグ3卓3回戦
南4局 ドラ
浅見   33000
高橋   19200
渡辺   35900
成宮・親 31900

高橋が沈んで、他の3人の激しい争い。
9巡目に浅見が少考してリーチ。
 ツモ 打リーチ

一気通貫が出来ればベストだったが、接戦だけに致し方なしか。
しかしこのリーチ宣言牌が、高橋のピンフのみに刺さる。
結局トップは渡辺。新人たちに囲まれながら、卓の進行をリードし対局マナーも優しく教えながらのトップ。
まさに初代女王の貫禄十分であった。

前半2回戦を1着・2着とまとめて2位と3位につけた、細谷と池下。
3回戦はこの2人が同卓となった。
面子は、細谷・池下・宇佐美・亀山。
ちなみに池下も今期入った新人である。

Bリーグ4卓3回戦
今回はラス目と出遅れた池下。
しかし、南2局にタンヤオチートイをツモって2着に浮上し親番を迎える。

南3局 ドラ
細谷がポン、亀山がポン(ダブ南)、親の池下がドラポン。
細谷が最初にテンパイ
  

しかしピンズ染めの池下にピンズが切りきれず、対子落とし。
このをポンして亀山もテンパイ。
   

その後、ホンイツを捨てて単騎にして池下から満貫出アガリ。
捨て牌にが3枚並ぶ残念な形になったが、亀山なんとかトップ目に立つ。

南4局 ドラ
細谷   33600
宇佐美  29100
池下   22600
亀山・親 34700

前局満貫放銃した池下が沈み、他の3人は接戦。
ラス目の池下が10巡目に渾身のリーチ。

するとトップ目亀山が切りで一発で飛び込む。
そして裏ドラがなんと!!!
リーチ一発ドラドラ裏3、ハネ満!!!
池下はラスから一気にトップ!亀山はトップから一気にラス!
息もつかせぬノーガードの殴り合いに、見てるオジサンはタジタジです…。

池下  +34.6
細谷  +13.6
宇佐美 -10.9
亀山  -37.3

さて、2回戦を終えてBリーグの首位に立ったのは柳。
女流にしか出ていない柳だが、経験不足をものともせずこのまま逃げ切るのか。
3回戦の面子は、柳・石井・近藤・谷崎。

Bリーグ1卓3回戦
南4局 ドラ
柳    24900
石井   36400 
近藤   22800
谷崎・親 35900

石井と谷崎の激しいトップ争い。
しかしここに割り込んだのはやはり柳。10巡目にリーチ!

は三枚切れだったが、最後のをツモ!
裏ドラは・・・、のらず。
メンピンツモドラ1300・2600。
3着ながら3万点台にのせて、マイナスを最小限に抑える。

石井 +35.1
谷崎 +13.3
柳   -9.9
近藤 -38.5

それでは話をAリーグに戻そう。
注目のいわまは、3回戦も南入した時点で37000のトップ目。
今日は、いわまの、いわまによる、いわまのための女流予選になってしまうのか?
3連勝にばく進するいわま。唯一不満があるとすれば、今回は起家スタートのためにオーラスのドスコイタイムが出来ないことくらいか。

しかし結局3回戦はいわまは3連勝成らずの2着。
いわまの前に立ちふさがったのは同じくベテランの域に達した和田。
このトップで和田もいわまに続くトータル2位に躍り出た。

いわまは4回戦も2着とプラスでまとめて、結局この日は160P荒稼ぎ。
いわまと言えば、女流のなかでも並外れた攻撃力に定評のある選手。
このいわま、3度の飯よりサンマが好き。
三大欲よりサンマ欲と常々豪語している。
筆者も一緒に打つこともあるのだが、いわまの攻撃力のルーツはサンマではないか。
うちらがやる東天紅ルールはツモったら倍という、ファイター向きのルール。
さらに牌理や態勢(流れ)判断などの基準もサンマから来ているっぽい。
もしあなたがいわまの強さに触れたいなら、一緒にサンマです。
もちろんどうなっても当局は関知するところではありませんが…。

Aリーグの2位には4回戦に8万点近い特大トップをとった野添。
そのあとは涼崎、和田、夢野と続いた。

ちなみに、いわま・涼崎・和田は昨年の女流最高位決定戦のファイナリスト。
目の前で根本に5連覇を達成されてしまった3人。
リベンジに燃える気持ちが、好調なスタートにつながったのかもしれない。
『ストップ・ザ・根本』3人の心には確実にその想いがあるに違いない。

Bリーグは首位から、鳥越、浅見、渡辺、柳と続いた。
こちらは通過が3割と狭き門。
2節以降はより一層激しい争いが繰り広げられるはずだ。

1位の鳥越。
前半は上位ではなかったため全く麻雀見れませんでした…。(ガーン)
彼女も今期入った新人の一人です。
同期からは『トリママ』と呼ばれ、おあか…、お姉さんのように慕われているらしい。

さて以上お届けしました女流リーグレポート。
いつものリーグ戦に比べて、真剣ななかにも女流特有の華やかな雰囲気があります。
また短期で予選、準決勝、決勝と行われるので、ダイナミックな臨場感もあります。

みなさまの観戦をお待ちしています。

文責 平賀聡彦

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