コラム・観戦記

35期Aリーグ第8節自戦記

Aリーグ第8節自戦記

我武者羅

一つの目的に向かって、後先を考えず夢中に行動する様。

第7節までを終えて-89.8Pの8位。
節ごとにマイナスとプラスを繰り返し、スコアはAリーグになって一番の大不振。
このままでは最高位戦に入って初めてのトータルマイナスで終わってしまう。

第7節に大柳・金子の上位との対決で今期一番のマイナスをしたボクは、
現状を踏まえ新たな気持ちでリーグ戦に臨もうと考えていた。

そんななかワールドカップの決勝戦を観た。
ボクの大好きなオランダは残念ながら敗れてしまったが、
選手たちの『我武者羅さ』が強く心に残った。

ボクが忘れかけていたのは、これだと思った。
初めてリーグ戦に出た時、Aリーグに上がった時、
ただ無我夢中で打っていた気がする。
今その時と同じ気持ちで打てているだろうか・・・。
まだ何の実績も残していないのに。

我武者羅に戦おう、そう心に期してリーグ戦に臨んだ。

第8節同卓者は、大柳・水巻・村上。
以前なら上位との対決を意識するところだが、
7節に気負いすぎて大マイナスしてしまったこともあり、自分らしく打とうと思った。

1回戦
起家から大柳・村上・平賀・水巻の順。

東1局 ドラ
9巡目に先制リーチ!

が自風なのでダマにしてチャンタの手変わりを待つ打ち方もあるが、
自分のスタイルは先手を取って他者を押さえつけるものなのでリーチ。
と連続で引き入れリーチで感触もよく、と切っていたので出アガリも少し期待。
しかし、同巡に村上が追いかけリーチ。
手に汗握る展開となったが、手詰まった大柳からで出アガリ、リーチ西3200。
まずは好スタートを切る。

東2局 ドラ
配牌

ソーズに寄せて6巡目に下の形。

はチーしてチンイツにしようと思っていると、
8巡目にをツモって暗刻に、ドラを渋々切ってテンパイ。
すぐに大柳からが出て、メンホンドラ8000。

東3局1本場 ドラ 供託2000
前局は大柳と2軒リーチで2人テンパイ。
親ということもありドラを切り飛ばして仕掛け、供託と連荘を狙う。
しかし仕掛けた後に村上のリーチを受け放銃、メンピンドラドラ8000は8300。
若干カカり気味の感はあるが、納得ずくの仕掛けなので後悔はない。

南1局1本場 ドラ 供託1000
6巡目
 ツモ

少考するが、ここまで手役が見えてるのに狙わないのは格好悪いと思いツモ切り。
するとすぐに上家・村上がツモ切り。
当然チーはしないが、どうだったのかと思っていると水巻がリーチ。
同巡にをツモって追っかけリーチ!

すると前巡にテンパイしていた村上がをツモ切り、一発でロン!
リーチ一発三色8000は8300。
勝負所でトップ争いをしている村上から直撃し、一気に優位に立つ。
心の中は、『キターーーーー!』である。

水巻

村上

南3局 ドラ
この時点で47700のトップ目の親番、2着とは2万点離れている。
5巡目
 ツモ

この時に考えたのは、連荘するなら高打点ということ。
手が整わなければ、を落として撤退しよう。
そこでをツモ切りした。
10巡目に水巻のリーチを受けるが、同巡にテンパイ。

水巻がを切っていること、終盤の撤退も考えてダマを選択。
無筋をダマで押す。
こういう時の周りは若干やりにくいと思う。
普通に考えれば現物テンパイだが、実は好形高打点のイーシャンテンかもしれない。
両方の現物を切りたいが、今後2軒リーチの時に安全牌に窮するかもしれない。
先切りも効を奏したのか、大柳からでチャンタイーペイコー7700出アガリ。
自分の中では会心の局だったと思う。

このままリードを守りきり5万点オーバーのトップ。
トータルのマイナスを半分に減らして、気持ちよく次の半荘へと進む。

2回戦
起家から、大柳・村上・水巻・大柳の順。

静かに始まったこの半荘だが、大きなドラマが待っていた。

東3局 ドラ
大柳が7巡目にリーチ。
しかし、この局は捨て牌と雰囲気から、
親の水巻がドラのを持っているのではとボクは感じていた。
大柳のリーチの瞬間に、思わず水巻の表情を伺ったほどだ。
実はこの時ボクも2巡目からイーシャンテン。
ボクも水巻もリーチに対してツモ切りを続ける・・・。
11巡目、水巻が少考してツモ切り。
同巡に下の形でテンパイ。
 ツモ 打リーチ

ツモならダマにしようと考えていたが、役なしだったのでリーチ。
水巻はまだイーシャンテンかもしれない。ここは2人で大物手を捌くべし!

すると、すぐさま水巻がツモ切り追っかけリーチ!!
ヤバイ、ヤバスギル・・・。
一発目に掴んだのはドラ
暗刻であってくれと願いながら切るが、無情にも水巻からロンの声。

めずらしく水巻が役を数えている・・・。
発した言葉は『36000』。
三万六千、さんまんろくせん、サンマンロクセン!!!

リーチ一発メンホンイーペイコーW東ドラ3!
 ロン

勇気と無謀は紙一重、リーチの代償はあまりにも高かった。
『点棒貸してください』と言った後に、じっと唇をかみ締めた・・・。

東3局1本場 ドラ
自分がAリーグのなかで誇れるものがあるとすれば、メンタルの強さだろう。
どんな状況になろうとも、最後まで諦めずに闘い続けるだけだ。

1半荘目が大トップだったので、また振り出しに戻っただけだと気持ちを切り替えた。
始まる前に考えていたこともあり、ワールドカップのことが頭をよぎった。
『まだ1人退場しただけだ、試合は終わっていない。
泥臭く、我武者羅に闘うんだ。オランダのように』

この局は手牌が整ってメンホンチートイをテンパイ。
2巡前に切られた待ち頃ので待って村上からアガった。
 ロン

焦ってリーチをしていたらアガれなかったかもしれない。
落ち着いて打てたことに手応えを感じた。

その後、東ラスとオーラスの親番でリーチを打つも、他家にアガられて終了。
東4局  ドラ

南4局 ドラ    

結果箱下500点のラスとなってしまったが、集中力を切らさずに後半戦に臨むことが出来た。

3回戦
起家から、村上・平賀・水巻・大柳の順。

東場は小場な展開のまま南入。僅差の2着目で南場の親を迎える。

南2局 ドラ
5巡目に早々と先制リーチ!

三色の手変わりもあるが、ここは自分のスタイルでリーチ。
このリーチがなかなかツモれない。
大柳の追っかけリーチも受け、結局村上も加えて3人テンパイで流局。
うーん、なかなか抜け出せないなあ。

同1本場 ドラ 供託2000
下家・水巻が3巡目からポンと仕掛けてくる。
若干絞りつつ、水巻の現物で切られたばかりの待ちでテンパイする。
すると水巻がテンパイ打牌をチー、さらに次巡もチーして3フーロ。
痺れを切らしてリーチ(ウォリャー)、すると村上もツモ切り追っかけリーチ!

平賀

村上

水巻
   

一気に勝負局となったが、ここはをツモって2600は2700オール。
供託もすべてゲットして4万点越えのトップ目に立つ。

オーラス、親の大柳に連荘され粘られるが、最後は水巻のピンフのみに差し込んでトップ。
自分でも納得のいく半荘となった。

4回戦
起家から、村上・平賀・水巻・大柳の順。

東1局から親の村上が満貫ツモなどで4本場まで積み、5万点オーバーまで突き抜ける。
こうなると焦点は2着争い、しかし全くアガリに絡めぬまま南入。
南場の親も2フーロするがノーテンで流局、持ち点は2万点を割る。

南3局2本場 ドラ 供託3000
是が非でもアガって供託が欲しい。
まさに我武者羅に仕掛けて、3フーロしてテンパイ(北家)。
   

しかしテンパイの時点で、大柳が暗刻で村上が暗刻。
万事休すかと思われたが、イーシャンテンからをカンせずツモ切り。
ラッキーなアガリでオーラスの2着争いに望みを繋いだ。

南4局 ドラ
村上   53000
平賀   23900
水巻   16700
大柳・親 26400

8巡目にテンパイ。
 ツモ

ツモなら3900以上確定なのでダマでオッケーだったが、そうはいかなかった。
ダマでもツモか出アガリなら2着だったが、ここは強気に切りリーチを選択。
しかしアガりきれない・・・。
1人テンパイでも良かったが、親の大柳に終盤に仕掛けてテンパイを取られてしまう。

同1本場 ドラ 供託1000
村上   51500
平賀   24400
水巻   15200
大柳・親 27900

親の大柳がポン・チーと積極的に2フーロ。
そんななか10巡目にテンパイ。
  ツモ

ツモでテンパイならオールオッケーだったが、またまた選択の時。

今回は切りダマとした。
理由は、リーチすると大柳との差が4000以上となりオリきられる可能性があること。
他の2人よりも積極的に前に出てる大柳が打つ可能性が高いこと。
これ以上リーチ棒を出すと水巻に捲くられてラス落ちの可能性も高くなること。
役なしテンパイの可能性もあったが、ピンフテンパイになった意味を考えたこと。
最後の理由は感覚的なものなので微妙だが、以上の点からダマとした。

結果はすぐに大柳がをツモ切って、ピンフドラを直撃。
2着に浮上して、最善の結果を残すことが出来た。

結局この日は、1412で+42.7P。
卓内の勝ち頭となって、マイナスを半分ほど減らす。
しかし周囲のポイントの変動もあって、順位は8位のまま・・・。
上位と下位は少し離れている感はあるが、中軸は更に混沌としてきた。

残り4節。最終節に決定戦を目指せる位置で、最高のモチベーションで闘えるように。
一戦一戦一局一局を一生懸命闘っていこう。
我武者羅に・・・。
(文中敬称略)

文責 平賀聡彦

1 水巻 渉 511.8
2 大柳 誠 272.0
3 金子 正輝 91.6
4 上野 龍一 68.5
5 佐藤 崇 35.3
6 村上 淳 28.5
7 太田 安紀 -25.4
8 平賀 聡彦 -47.1
9 張 敏賢 -158.4
10近藤 誠一 -187.4
11 冨澤 直貴 -272.1
12 石橋 伸洋 -325.3

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