コラム・観戦記

前期C1最終節自戦記

皆さんこんにちは。33期前期入会の志村友基(ゆうき)です。
現在は日吉の「ジャンナック」というフリー麻雀店に勤務しながら、日々麻雀のイデアを追求しております。

最高位戦に入会してから多くのレポートを書く機会を頂いております。
自戦記というものを書くのは今回が初めてなので、いささか面映い心持です。

お見苦しい点もあるとは思いますが、末尾までご覧頂けましたなら光栄の至りです。

今日は6月6日、35期前期C1リーグ最終節の翌日だ。

前夜の酒に因する頭痛と咽頭痛、そしてリーグ戦の翌日に決まって最盛期をお迎えになる持病の腰痛が、
改めて自身の甘さを自覚させる。

最高位戦におけるC1・C2リーグは、赤組と白組とに分かれており、私は今回赤組に属していた。

その赤組の最終節開始前のポイントが以下である。

1 栗田寛 356.9
2 秋田大介 132.2
3 中郡慧樹 130.3
4 大関忍 84.4
5 小山直樹 84.0
6 田中巌 71.8

7 志村友基 44.2

8 永田航 22.2
9 石崎光雄 -34.9
10 河本智彦 -76.0
11 依田暢久 -80.7
12 平林佑一郎 -81.7
13 阪元俊彦 -105.6
14 柳井隆道 -173.1
15 粟田口能久 -195.3
16 鴻海大輔 -223.7

最終節が終わった時点で1位と2位がB2リーグに昇級、そして12位以下がC2リーグに降級となる。

私は44.2ポイントの7位という位置で、現状維持ならばほぼ残留だが、
自分の結果と他選手のポイントの展開しだいで昇級も降級も仄(ほの)かに見えてくる。

無論切望するのは昇級だが、バランスを攻撃に傾けすぎて無理をした結果大きくマイナスし、降級となるのも避けたい。

最終目標の見極め、それは最終節全4戦の中の「初戦」での結果が全ての鍵を握っていると考えていた。

初戦を普段通りのバランスで打ち、結果として頭が取れたならば、残り3戦において降級をあまり気にせずに戦えるので、
昇級に向けてポイントを伸ばすために、フリー麻雀のようにトップに向けて「攻め」に比重を置く内容の麻雀を打つ。

初戦で大きくマイナスしてしまったのならば、昇級は来期に見据え残留を目標とし、
点棒を減らさないことを第一に考える「最高位戦クラシックルール」でのような麻雀内容にする予定であった。

また、今回の同卓者は4位の大関プロ、13位の阪元プロ、16位の鴻海プロであることが事前に分かっており、
降級を心配せず昇級を狙える位置の大関プロは本来のスタイルである「押し」の麻雀に拍車を掛けて攻めてくるだろうし、
現状維持では降級してしまう阪元プロと鴻海プロも攻め寄りの麻雀になるのでは?と予測していた。

私は親の先制愚形足止めリーチやブラフ気味の遠い一色仕掛けといった、相手に対応させる奇策を好んで使うことがあるのだが、
相手三人が前のめりならば余り対応してくれず、それほど効果的ではないのでそれらは控え、
自信を持って勝負できる手牌になったときに初めて土俵に立とうと考えていた。

自分がどのような麻雀を打てるのか、とても楽しみであった。

当日、同期で別組の橋本プロと毎節前に必ず食べている立ち食いうどんを食べ、会場入りする。

鞄には闘牌中エネルギー補充用のレッドブルと、現在ではRMUの代表をされている多井隆晴プロの著書「最速最強麻雀」が入っている。

多井プロの著書に関しては、もちろん多井プロを麻雀プロとしてとても尊敬しているし、書籍自体も勉強になるのだが、
私が学生時代、麻雀に取り組んで間もないときに様々なトッププロの著した書籍を片端から買い漁り、
ラインマーカーを所々に引き散らかしながら貪欲に勉強してきた中で、群を抜いて最も目を通した書籍であり、
私にとってはもはや情熱や貪欲な姿勢を見失わないためのお守りのようなものである。

ちなみに今では、80冊以上の麻雀戦術書が、枕元から手を伸ばせば届く状態にある。

今回の会場は今までリーグ戦が行われてきたのとは異なる場所だったのだが、その会場は決して馴染みのない場所ではなく、
当団体主催の發王戦のトーナメント戦において、多井プロや同じRMU所属の河野高志プロと同卓し、その強さを肌で感じることのできた場所であり、
会場入りした瞬間に一気に気合が高まった。

(以下、実際の対局に関する文中において、恐れ入りますが敬称を略させて頂いております)

1回戦(起家から阪元、大関、志村、鴻海)

東1局、終盤に大関からツモの発声。タンピンツモ三色イーペイコーの3000・6000と、いきなり勝負手を決められた。

そのまま淡々と局が進んで東4局、ドラ

阪元から6巡目にリーチが入る。

私の手牌は全く勝負できる形ではないので即店仕舞していたが、無常にも数巡後に安全牌が枯渇した。ワンチャンスや、筋にかかる資源すらない。

悩んだ末、阪元の捨牌がタンピン形で最初の数牌の手出しが3巡目のだったことからを軸としたターツ、メンツがある可能性があり、
もしそうだと仮定すれば他の無筋よりは若干安全度が高いことや、もし通れば3巡確実に凌げることを加味し、3羽のうちの1羽を放し飼いにした。

これが撃ち取られた。メンピンドラの3900、一本場で4200。

阪元の手牌にははなく、は単純に不必要な牌であった。裏ドラが乗らなかったのがせめてもの救いだった。

この局面に関しての自分の判断については後悔はしていないが、それまでの道中における自分の手組に関しては大いに反省して然るべき箇所であり、今後の糧としたい。

それ以降は、鴻海が大関に12000を打つなどがあり、3着目で南3局の親番を迎えた。

強く念じてシャイツを振り、天に頂いた配牌が以下。

 ドラ

形が決まっていて打点もそこそこある絶好のイーシャンテン。

勝利を確信した。

形が出来ていて三色などの手役の振り変わりもないので、を初打にトバす。

次巡、不要牌をツモ切る。

すると同巡、あろうことか阪元がリーチを宣言。

捨牌は

ここは紛れもない勝負所、全部押す、気合で通し、オレがアガりきると考えていたが、実際に押せたのは次巡のツモのみであった。

阪元が一発目のツモを引き寄せ、手牌を開いたのだ。

メンピン一発ツモの待ち。

阪元がもしツモれなかったとしても、私の手牌からはいつでもが飛び出る状態で、私の勝利は初めから無かったということがわかった。

この局の結果から、今期における昇級の夢はここまでかな、と感じた。

オーラスは親の鴻海がリーチして一人テンパイ。

オーラス一本場、2着目の阪元とは8500点位の差。

ラス親の鴻海から10巡目にリーチが入った後、仕掛けていた私もマンガンの手をテンパイする。

 ポン ポン ドラ

親の鴻海とは10000点位の差で、打てばラスに落ちる可能性も大いにあるが、アガれば2着、まだ望みがあるかもしれないので、無筋を果敢に押した。

終盤にドラのをツモり、通っているを切り、シャンポンに待ちかえる。

 ポン ポン

そして最後のツモで無筋のをを引かされ、安全なを切り撤退した。

結果は流局、親の鴻海の一人テンパイ。鴻海の手牌はチートイツのドラ単騎であった。捨牌からはチートイとは全く読めなかった。

次局オーラス二本場、阪元が6巡目、先制リーチに来る。

私にも同巡、ツモか直撃もしくは裏ドラ次第で2着の阪元を逆転できるタンヤオドラ1のテンパイが入り、勇んで追いかけようとするも、宣言牌のが阪元に捕まる。

リーチ一発の2600は3200。

今節最も重要だと考えていた初戦は、不甲斐なくも3着という結果に終わった。

全卓最終節1回戦が終わった時点で、総合ポイントは以下。

1 栗田寛 401.7
2 中郡慧樹 190.4
3 秋田大介 169.9
4 大関忍 138.2
5 田中巌 83.2
6 小山直樹 31.2

7 志村友基 23.1

8 永田航 13.9
9 石崎光雄 -25.6
10 阪元俊彦 -89.4
11 依田暢久 -95.0
12 平林佑一郎 -105.5
13 河本智彦 -110.8
14 粟田口能久 -179.0
15 柳井隆道 -218.7
16 鴻海大輔 -272.6

現状での私の昇級ボーダーまでの条件は、残りの3戦を全て55000点以上のトップ3回という相当厳しいものになってしまった。

2回戦は私が起家で始まった。

東場が終わって大きな動きはあまりなく、南1局の親番、6巡目に北家の鴻海から先制リーチが入る。

最後の足掻きとばかりに受けの広いイーシャンテンから真直ぐ押したが、数巡後にツモ切ったを鴻海がロン。

メンピンドラ裏の8000を献上し、一人大きくラスに落ちる。

結局その半荘はラスで終了。2回戦終了時の総合ポイントは以下。

1 栗田寛 459.9
2 中郡慧樹 244.0
3 秋田大介 198.9
4 大関忍 148.3
5 田中巌 136.4
6 永田航 -5.8

7 志村友基 -24.6

8 小山直樹 -26.4
9 石崎光雄 -66.9
10 阪元俊彦 -108.1
11 平林佑一郎 -125.4
12 河本智彦 -128.3
13 依田暢久 -159.7
14 粟田口能久 -159.9
15 柳井隆道 -212.1
16 鴻海大輔 -216.3

こうなってしまえば最早昇級の目はどう転んでも現実的にはなく、残り2戦は残留を目標にして堅実に打つだけだ。

そして残り2戦は手牌と展開に恵まれ、トップ-トップという成績で、今回は最終目標の通り残留という結果になった。

35期前期C1リーグ赤組最終結果は以下。

1 栗田寛 454.1
2 中郡慧樹 244.8
3 大関忍 182.3
4 田中巌 133.1
5 秋田大介 112.4

6 志村友基 76.7

7 永田航 52.4
8 平林佑一郎 -34.7
9 河本智彦 -78.0
10 小山直樹 -89.7
11 依田暢久 -120.2
12 石崎光雄 -130.9
13 阪元俊彦 -138.8
14 粟田口能久 -151.0
15 柳井隆道 -239.6
16 鴻海大輔 -321.9

赤組からの昇級は栗田プロと中郡プロ。2人の先輩を心から祝福したい。

今回のリーグ戦全節の内容を改めて思い返してみると、柳井プロへのタンヤオ三色ドラ3の18000、河本プロへの純チャン三色ドラの8000、
小山プロへのチンイツの12000など、その時は是非もなしと思っていても、現在の自分からすると酷い手順で情けない放銃を多くしていた。

他にも反省点は切りがないほど挙げられるが、それ自体の存在によって今回のリーグ戦は大きな価値を持ったし、
1ヶ月後から始まる次のリーグ戦も、より価値のあるものになるように取り組んでいかなければならないと思う。

また、一方の白組からの昇級は坂井秀隆プロと橋本辰徳プロ。

坂井プロとは私の職場で知り合ってから自然と「兄やん」「兄さん」と呼ばせてもらっている間柄であり、
橋本プロは私と同期でセットもよく組むし、週に2、3回は電話やメールで麻雀の話をする盟友である。

親しい2人の昇級を私もとても嬉しく思っているが、同時に今の自分が彼らと同じ土俵にいないことに対する悔しさや情けなさが、この惰弱な体を徘徊して止まない。

自分が次回のリーグ戦までにどれだけ成長できるかは分からないが、剣林弾雨を掻い潜り彼らの待つ目標地点へと到達できるように、
今日からまた研鑽の日々を続けていこう・・・。

文責 志村友基

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