發王戦とは、数半荘を行い、各卓のポイント上位2名が勝ち上がりというシステムで行われるトーナメント方式のタイトル戦である。
ルールは最高位戦ルールを使用。
最高位戦ルールは、主なところで、一発ウラドラ、カンドラ、カンウラドラあり。途中流局一切無し、テンパイ連荘で、30000点持ちの30000点返し。ウマが10000点、30000点である。
2月11日―第16期發王戦準決勝
14時40分
準決勝の前に準々決勝が行われているため、「最後の1半荘ぐらいは見られるかな?」、そう思ってこの時刻に会場入りした。
どんな面々が残っているのかはわからないが、とりあえず同店勤務の竹内は確実にいる。ディフェンディングシードで、準々決勝からの出場だからだ。とりあえず、その応援をしよう。
会場に着くと、現發王竹内が私を見つけ、そそくさとこちらへやってくる。
なんだろう?
しかし、語らずともなんとなくそれはわかった。
「負けちゃったよ~。」
まぁそうだろう。これから準決勝を戦おうとする者が、苦笑いを浮かべているはずがないもんな。
現發王竹内孝之、準々決勝敗退。
「それにしても、この卓はずいぶん終わるのが早かったなー」、そんなことを考えていると、不完全燃焼の笑みを浮かべて近づいてくる者がもう1人いる。
若きAリーガー石橋伸洋、準々決勝敗退。
この2人を倒しての勝ち上がりは・・・
日本プロ麻雀連盟所属―第14期發王瀬戸熊直樹
最高位戦日本プロ麻雀協会所属―川端美雪
しばし竹内と石橋の敗戦記に耳を傾けていると、続々と各卓の雌雄が決した。
一般予選代表―荒井節子
日本プロ麻雀協会所属―現雀竜位石野豊
まずはこの2人が勝ち上がりを決める。
一般予選からここまで勝ち上がるのは本当に難しいことだと感じる。その証拠に、今日この会場にいる一般予選代表は荒井ただ1人である。日本プロ麻雀連盟主催のマスターズでも決勝戦まで勝ち進んでいる荒井、このまま決勝進出なるか。
この2人に敗れたのは、共に日本プロ麻雀連盟所属の藤原隆弘、朝武雅晴。
藤原は、3半荘すべてが終わって、なんと石野と同ポイント。しかし、發王戦ルールにより、いずれの半荘も1着を取っていない藤原に対し、1着を1回取っ ている石野が勝ち上がりとなった。これ以上無いという惜敗に、「おれ、補欠1位だよね?」、こんなジョークを置き土産に、会場を後にした。
続いて、偶然にも最高位戦所属選手4人という組み合わせになった卓が終わったようだ。
大柳誠、いわますみえを破っての準決勝進出は・・
最高位戦日本プロ麻雀協会所属―嶋村俊幸
最高位戦日本プロ麻雀協会所属―冨澤直貴
最後の卓は混戦模様。
現發王竹内と同じくこの準々決勝から出場の現最高位張が、最終戦のオーラスに、アガれば通過というテンパイを入れるが、アガれず。無念の敗退となった。
最高位戦所属の淵田壮もここで姿を消した。
ここでの準決勝進出は・・・
日本プロ麻雀連盟所属―第6、7期發王伊藤優孝
101競技連盟所属―萱場貞二
現發王、現最高位が共に姿を消すという事態。なにやら波乱の様相を呈してきた。ここを抜け出す4名は一体どのプレイヤーなのか。
15:40
各卓3半荘の合計ポイントで競われる準決勝―試合開始。
1卓(石野、伊藤、瀬戸熊、冨澤)
◎1回戦◎
座順は、起家から順に、冨澤、瀬戸熊、伊藤、石野。
東2局 ドラ
ゲームが動いたのは東2局。6巡目に西家石野がドラのをポン。石野はソウズを1枚も切っておらず、役牌のバックかソウズのホンイツ模様。
ここに伊藤が反撃。11巡目に以下のリーチ。
一方、石野は以下のテンパイ。
ポン
すぐに伊藤が白をつかんで、石野に軍配。石野、短期決戦で幸先の良い8000を獲得。
「造り雀屋」の異名をとる石野。その持ち味は、なんといっても仕掛け。この準決勝では、石野の仕掛けが随所に輝きを見せ、他家のリーチ宣言牌や、リーチ者の現物をことごとく捕らえていく。
南1局 ドラ
東場は比較的小場で進んだが、この南1局で大事件。
終盤、伊藤が以下のテンパイを入れる。
ポン
誰もが流局を感じた17巡目、東家冨澤の打牌が曲がる。残りツモ1回というところでのリーチである。確かにヤマには高確率で残っていそうなペンだったが、これが凶と出る。
次のツモがでジ・エンド。伊藤への12000で、冨澤は相当苦しくなった。
3回戦の短期決戦で、初戦に何を第一に考えるかといえば、「とにかくラスだけは引かないこと」。これはおそらく多くの者が優先順位第1位に挙げるところであろう。私見だが、初戦でラスを引いた者は、高確率で落選するように感じる。
初めに貯金を作った者はそれを使って道を作り、逆に借金を作った者は通れる道を著しく制限される。今行っているのはそういうゲームであり、準決勝ともなればそのゲームの成績優秀者が相手である。
1回戦のラスはそれほどに厳しい。
そんなことは冨澤も十分わかっている。そういう覚悟の上でのリーチだったのだろうが、放銃後の焦りはこちらまで伝わってくるようであった。
自身の南場のオヤ番で、12000を打ち上げ、ラス候補となった冨澤。早くも相当厳しくなってしまった。
南2局
そして、なんといっても、この南2局が今日一番の大事件である。実に6本場まで積まれることになるのだが、その張本人がオヤの瀬戸熊。なんと4回のアガリをモノにする。
まずは、1500の仕掛けを、加カン1つで4000オールにしてみせる。
ドラ カンドラ
チー 加カン ツモ(リンシャン)
続いて、西家石野の11巡目リーチに対し、先に白をポンしていた瀬戸熊。すぐに白を引くが、ここはカンせず、ノータイムでツモ切り。
その次巡にをチーして以下のテンパイ。
チー ポン ドラ
これはアガれず、石野と2人テンパイに終わるが、「カンせず」という選択を見せてくれた。
2本場では、4巡目リーチ。これにチートイツで追いついた伊藤から出アガって、7700は8300。
ドラ ウラ
ロン
3本場は、序盤にを仕掛け、オヤ落としを目論む石野に対して、6巡目にヤミで一太刀。
暴君瀬戸熊のヤミテンである。「ロン」の声と共に点数を想像するのはさほど難しくない。私は対面から見ていたが、その瞬間に以下のような形を想像した。
○○○×××△△ ドラ
しかし、瀬戸熊は、そんな私の想像の遥か上を行っていた。
ドラ ロン
えっ!?
思わず声が出そうになる。瀬戸熊がこれをリーチしないのか!?
このヤミテンには、それほどの衝撃があった。それと共に、押し寄せる底知れぬ恐怖。
私は、2,3年ほど前から、瀬戸熊の麻雀をわりと見てきたつもりだし、瀬戸熊のことが書かれた記事なども多く目にしてきた。
そこで見た瀬戸熊は、この形で必ずリーチをしていたように思う。というより、この形でリーチをして、6000オールを引きにいくのが瀬戸熊直樹であると確信していた。
その瀬戸熊がこれをヤミにしたのだ。
2本場までで、いつもの変幻自在な攻撃っぷりは見せてもらった。しかし、このヤミテンまで、「変幻自在」という陳腐な言葉で括っていいものなのか。繰り返しになるが、それほどの衝撃があった。
私は瀬戸熊に対して、体中に色んなナイフをまとっているイメージを持っていたが、今はポケットに拳銃まで忍ばせていることになる。
変幻自在な攻撃に加え、したたかさを備えた暴君瀬戸熊、發王奪還に向けて死角無しと見える。
ひとまず、当面のライバル石野から12000は12600の直撃で、この半荘のトップを決定付ける。
そして6本場で冨澤がようやくオヤ落としをするころには、瀬戸熊の持ち点は6万点を超えていた。
南3局 ドラ
東家伊藤の仕掛けに石野がリーチで被せ、高目をツモって3000・6000。
ツモ
南2局では6巡目に瀬戸熊のヤミテンにささり、巡り合わせの悪い12000を献上することとなった石野であったが、この一撃で復活すると、きっちり2着を守り切った。
1回戦終了時
瀬戸熊 63.1
石野 8.6
伊藤 △21.6
冨澤 △50.1
◎2回戦◎
起家から順に、冨澤、伊藤、瀬戸熊、石野。
東1局こそ、冨澤が2000オールで反撃の狼煙を上げたかに見えたが、そこからは瀬戸熊と石野の2人だけがアガっていく。この2人の仕掛けとリーチに挟まれては、冨澤と伊藤は身動きが取れない。
極めつけは南3局。またもや断トツのトップ目となった東家瀬戸熊。なんと残りツモ2回でこのリーチ。
ドラ
これはアガれなかったが、断トツのトータルトップがこれをリーチである。対局者の心を折るには十分すぎるリーチだったのではないだろうか。
瀬戸熊のハイライトを端的に挙げよ、と言われれば、私は1回戦の衝撃のヤミテンと、このリーチを挙げるだろう。私はこのリーチで、瀬戸熊の勝ちを確信した。
南4局
ドラ
ここまでは細かくアガっていた石野。細かくではあるが、その踏み込みの精度は抜群。おそらく、相手の手牌進行に対する読みの精度が恐ろしく高いのだろう。
相手の進行速度に合わせ、仕掛けて、相手の手が成就する一歩手前で刈り取る。そんな職人芸のような仕掛けが「造り雀屋」の所以だろう。
そんな石野が高打点の手牌を得たなら、もう手が付けられない。
まずは10巡目にをポンして、次巡伊藤のリーチ宣言牌に「ロン」。
ポン ロン ドラ
この9600で2着を不動のものにすると、続く1本場は門前で4000は4100オール。
ツモ ドラ
これでトップ目となる。
となると、実はこの2本場が実質的な最終局。
なぜならば、このままだと1回戦の大トップ・2着が、2回戦で大2着・大トップを取ることとなるからである。
そうなると、3回戦は瀬戸熊も石野もオヤ番では必ず「ノーテン」を宣言してくるだろう。つまり、3回戦でまともに戦うことができるのは、実質的に伊藤のオヤ番2局、冨澤のオヤ番2局の計4局しかないことになってしまうのだ。
その伊藤と冨澤のオヤ番だって、瀬戸熊と石野はオヤ以外に好き勝手サシコミできるのである。それではいくらなんでも厳しすぎる。
すなわち、この2本場で伊藤か冨澤のどちらかが2着に入るか、石野を2着に落とさねばならないのだ。それができなければ、これがほぼ最終局となる。
それをわかってのことだろう。
冨澤が2人との点差を確認する。
しかし、そこに表示されるのは途方もない数字。
東家石野53500
南家冨澤18500
西家伊藤4900
北家瀬戸熊43100
それでも、何とか一矢報いようと必死の冨澤。瀬戸熊に対してはハネ満直撃で着が入れ替わる。石野に対しても、やはりハネ満直撃で2着に落とせる。
ドラ
ここからのトイツ落としで奇跡を待つ。この執念に、麻雀プロ冨澤直貴を見たような気がする。
そして、伊藤も考えは同じである。執念でこのテンパイを入れる。
ポン ポン
2人のどちらかにハネ満を直撃したところで3着に上がることはできないが、それでも高目直撃なら24000点が縮まる。さらに、石野を直撃することができれば、石野を2着に落とすことが可能だ。それならば、悪くない。
しかし、当然のことながら、石野からは一切の危険牌が打たれることはなかった。
そして最後は、冨澤が瀬戸熊の仕掛けに打ち上げ、3回戦を待たずして準決勝進出者2名が決まった。
2回戦終了時トータル
瀬戸熊 90.7
石野 62.1
冨澤 △76.1
伊藤 △76.7
◎3回戦◎
もうこの半荘は消化試合である。
とはいえ、麻雀は何が起こるかわからないゲームでもある。
しかし、瀬戸熊・石野の2人かかっては、奇跡を望む隙さえ与えられない。自分のオヤはさっと流し、それ以外の局は、ある程度手牌がまとまっていなけれ ば、中張牌のバラ切りから始め、終盤はベタオリ。アガれるときだけアガリにいき、もう片方がサシコミ。正に完璧なゲーム運び、そしてチームワークであった ように感じた。
3回戦終了時トータル
瀬戸熊 97.4
石野 23.1
伊藤 △27.8
冨澤 △92.7
2卓(荒井、萱場、川端、嶋村)
◎1回戦◎
起家から荒井、嶋村、川端、萱場の座順。
1回戦は、小場。大物手といえば・・・
東2局、嶋村の2000オール。
ポン ツモ
東2局1本場、川端が萱場に打ち上げた5200は5500。
ドラ ロン(一発)
東3局2本場、荒井が川端から討ち取った8000は8600。
ドラウラ ロン(一発)
という3つぐらいである。
しかも、このうち2つに一発で打ち上げている川端だが、アガリ回数が多いため、さほどマイナスしていない。
そのため、オーラスを迎えて以下のような点数状況となった。
東家萱場38000
南家荒井23000
西家嶋村34500
北家川端24500
南4局 ドラ
まずは7巡目、東家萱場が場に3枚目のをチーして、以下のイーシャンテン。
チー
すると次巡、南家荒井がダブ南をポンして応戦。荒井の河にはマンズが1枚も切れていないが、マンズのホンイツとは断定しがたい程度の偏りである。まして、テンパイしているなどとは、思いもよらないところだろう。
しかし、これがなんとポンテン。しかも、マンズのホンイツでドラドラのおまけ付き。
ポン
-?はて?どこかでが余りそうな手牌を見たような・・・
あっ!萱場のが危ない!荒井の仕掛けをケアして、川端が-を打とうものなら、チーして打の可能性が高い。ハネ直で荒井のトップだ!
ここへきて、今までの小場が嘘だったかのようにボルテージが上がる。
しかし、次々巡に意外な形で決着。
「ツモ」
ツモ
声の主は川端である。マンガンツモに向けて手を進めたが、この仮テンをツモってしまってはアガらざるをえない。ラスの荒井も仕掛けているため、贅沢は言っていられないところだろう。
川端、とりあえず初戦の命題である「ラス回避」。
このアガリで助かったのは萱場である。このトップで、逆に当確へ一歩リード。
萱場が主体とする101競技は完全な順位戦のため、發王戦のような条件戦には滅法強いはずである。
私が同卓者ならば、初戦では、まず「ラスを引かないこと」、そして次に「萱場に走られないこと」を目標に掲げただろう。萱場にリードされれば、もうその段階で、3人で1つのイスを争っているような状況になってしまうであろうから。
「条件戦に対する圧倒的な慣れ」は、やはり脅威である。
2回戦からは、他の3者は、「3分の1の戦い」を頭の片隅に置きながら打っていくことだろう。
1回戦終了時
萱場 35.4
嶋村 13.2
川端△10.3
荒井△38.3
◎2回戦◎
起家から、嶋村、萱場、荒井、川端の座順。
東1局 ドラ
東家の嶋村、7巡目に以下の手牌で、何切る?
が2枚、が1枚切れだが、私などは何の気なしにに手をかけそうである。
対する嶋村はここから打。薄くなった-を払いにいく。
するとこれが大正解で、ドラトイツだった川端がをツモ切り、チーテンを組む。そして、その次巡、川端がツモ切ったにロン。2900のアガリとなった。
チー ロン
嶋村が冴えている。それを感じるには十分なアガリであった。
やはり、ストップ・ザ・萱場の一番手となるのは大ベテランのこの人だろう。
東3局
しかし、この東3局、荒井が連荘で一躍トップ目に立つ。
まずは、東2局全員ノーテンの後の1本場、ドラは。
2巡目にダブをポンした荒井の手牌は、なんと既に磐石。
ポン
ここから2巡でテンパイを果たし、同巡に萱場から、5800は6100の大きな直撃。
ポン ロン
続いて2本場は、荒井の仕掛けに対して、川端のリーチが飛んでくる。
ドラ
対する荒井はこう。
ポン チー
ここに一発で引かされたのは。川端に対してピンズはすべて危ない。
小考の後、荒井が選択したのは打。
しかし、すぐにをツモり、裏目を引いた形となる。
待ちの優秀さを考えても、ここは川端が勝つかに見えたが、終盤に川端が引いたのはまさかの。
ポン チー ロン
荒井、この5800は6400でトップ目に躍り出た。
東4局
しかし、ここから萱場が3連続のアガリで反撃。
まずは、流局などでたまった5本場を一掃すべく、この8巡目リーチ。
ドラ
これに対抗したのが東家の川端。すぐにをチーして単騎の仮テンを組む。
チー
次にを引いてを勝負。これで-のテンパイへ。
しかしその後、を掴んで万事休す。
ロン ドラ ウラ
しかも、ウラドラをめくると、そこにはが転がった。痛恨のウラウラで、8000は9500。これで川端が事実上の脱落となった。
南1局 ドラ
萱場、ここでは荒井のこの仕掛け
ポン ポン
に競り勝ち、ダブ南ホンイツの2000・4000。2人共がオタ風ポンから入るという異様な場を制した。
ポン ポン ツモ
南2局 ドラ
オヤを引いた萱場は、8巡目にリーチ。これをきっちりツモって4000オール。
ツモ
これで、萱場は当確。
続く1本場では、嶋村に8000は8300を献上してしまうが、今更それぐらいの点数は大した話ではない。あとは、局を消化する道具として、うまく点数を活用するだけである。
南4局
断トツラスの川端は是が非でも連荘したいところだったが、それも1回の1人テンパイが限界。
1本場では、嶋村のリーチを捌きに出るも、あえなく5200は5500の放銃。
ロン ドラ
嶋村にしてみれば、ツモるか直撃で2着の荒井をまくれただけに、やや微妙な表情を浮かべた。しかし、ウラ1のマンガンでもまくれるなら、倒さないわけにはいかないところだろう。
2回戦終了時トータル
萱場 82.1
嶋村 9.6
荒井△19.5
川端△72.2
◎3回戦◎
起家から、荒井、萱場、嶋村、川端の座順。
1卓の場合と違い、こちらは局を潰す作業を行えるのは萱場だけである。
川端はとにかく特大トップ。
嶋村と荒井はお互いを意識しながらの戦いとなる。
東1局
まずは萱場が理想的な局潰しとなる2000・4000。
ポン ツモ
東3局 ドラ
試合が動いたのは東3局。
まずは、荒井がチーから、マンズのチンイツをテンパイする。
チー
しかし、ほどなく嶋村が表示牌のを叩きつけた。
ツモ
この4000オールで、嶋村が当確かと思われた。
東4局
しかし、流局などで迎えた2本場、荒井が以下のリーチ。これを、先に仕掛けていた東家川端から討ち取り、8000は8600と、嶋村に肉薄する。
ロン ドラ
その結果、オーラス2本場を迎えて以下の点数状況となった。
東家川端36900
南家荒井26100
西家嶋村28500
北家萱場26500 供託2000
南4局2本場
川端は猛連荘あるのみ。
嶋村は、荒井に1着差+9100点差つけられるとまくられる。すなわち、荒井の条件は、嶋村以外からならマンガン。嶋村直撃なら、嶋村をラスにして2着 差をつけられるため、1600以上で足りる。川端からなら3900以上の直撃でも、トップをまくって嶋村と2着差がつくためOKだ。
「荒井の純真な麻雀が、沢崎の圧倒的な力から、頑張ってこらえているように見え、思わず声援を送りたくなった。」
(日本プロ麻雀連盟HP、「第16期麻雀マスターズ決勝観戦記」より引用。)
URL http://www.ma-jan.or.jp/title_fight/masters16-fin.php
なぜだろう。荒井の麻雀を見ていて、私も全く同じ気持ちを抱いた。気付くと、心の中で荒井の応援をしていたのだ。
この会場中で一番麻雀を楽しんでいるのは、紛れもなく荒井である。周りを見渡すと、気難しい顔をした連中が、眉間にしわを寄せながら麻雀をしている。
そりゃそうだ。今は大事なタイトル戦の準決勝なのである。
しかし、荒井はおそらく、「大事なタイトル戦の最中」という認識ではなく、「大好きで大事な麻雀の最中」という認識なのだろう。
その純粋に麻雀を愛する姿勢を、若手の競技選手にもっと持ってもらいたい。麻雀ができる喜びを、ベテランの選手に思い出してもらいたい。
荒井は、常に柔和な表情で麻雀と向き合い、放銃には元気よく素直に「はい」と答えた。ただの一度も欠かさずである。
それは対局者に対する返事であることは元より、麻雀に対する返事なのだろう。
最近は、放銃しても返事をしない選手が目に付く。そういう選手は一体何と戦っているのだろう?思い当たる節がある方は、もう一度考えてほしい。
私たちはタイトル戦と戦っているのではない。私たちは大好きな麻雀と向き合っているのだ。
結局、このオーラスは、萱場が川端から3200は3800をさっとアガって終了した。
ロン
しかし、それでも荒井は表情一つ変えない。にこやかに、「ありがとうございました」と対局者に挨拶をした。
荒井が会場を去るとき、「それじゃ、失礼します。」と柔らかく言った。
もし麻雀の神様がいるのなら、おそらくこういう感じの人なのだろうな。
「おつかれさまでした!」・・・そして、ありがとうございました。
神様の背中に、深く一礼した。
3回戦終了時トータル
萱場 118.2
嶋村△ 1.9
荒井△ 53.4
川端△ 62.9
以上の結果より、決勝戦進出者は以下の4名に決定した。
石野豊(日本プロ麻雀協会)
萱場貞二(101競技連盟)
嶋村俊幸(最高位戦日本プロ麻雀協会)
瀬戸熊直樹(日本プロ麻雀連盟)
決勝戦は、2月17日(日)、秋葉原「雀将倶楽部」にて、11時試合開始。
入場無料ですので、是非観戦にいらしてください!
※秋葉原「雀将倶楽部」
台東区台東1-12-10小守ビル4F
アクセス http://www.mahjong-club.net/jansho/access.html
(敬称略)
文:鈴木聡一郎