コラム・観戦記

第34期Aリーグ第9節観戦記

Aリーグ第9節レポート

正午を前にして対局場は異様な雰囲気に包まれていた。

伊藤英一郎選手急病のため、金子・水巻・平賀・伊藤の卓は中止。
しかもこの組み合わせで別日対局が行われるかは不明という深刻な状況だ。

しかし残された選手たちがこの日の対局でベストを尽くすことだけは変わらずに与えられた命題である。

32回戦まで終了し終盤戦に入った。
前に出なければならない、ポイントを守りながらリードを広げたい。
各選手の胸中はさまざまであろう。
しかし、多くの観戦者に囲まれて打つAリーガーはどんなときでもプロらしく個性の光る麻雀を打つべきなのだと
各選手はそれぞれの麻雀でそのことを表現してくれた。

A卓(尾崎・冨澤・佐藤・村上)

1回戦
起家から尾崎・佐藤・冨澤・村上の順。

東2局 2本場

お互いが牽制しあい、淡々と局が進んでいるイメージであったところ
はっとする瞬間が訪れたのは12巡目に冨澤からリーチが入ったときだ。
冨澤の配牌

ここで第1ツモからチャンタ三色に一直線。
最終形

入り目でリーチ!
しかも数巡前にをツモ切りしている!!
むしろ親の佐藤のほうが手が早かったはずだが
佐藤はチートイのイーシャンテンからトイツで持っていたを引いてきてしまう。
これをツモ切ってリーチチャンタ三色の8000放銃。

大変です…!
この卓には格闘家がいます…!

南2局 ドラ

しかし今度は親番佐藤が魅せる番である。
好配牌から2巡目ツモでこの形
 ツモ
ここから打として次巡絶好のツモ
でリーチ!

7巡目にツモ ウラドラ リーチツモドラウラ4000オール。
前半放銃はあったものの、この親満ツモで一気に佐藤は50500点となる。
東場の親番のときにも絶妙のメンツ選択で2600は2700オールを引き
その後も派手さはないが自然なツモでこつこつとアガリを重ねていた。
とにかくメンツ選択の判断が秀逸である。
まるで渓流を泳ぐ魚をすばやく釣り上げるかのように
ごく自然なツモで絶好の牌を引き入れる。

南3局 ドラ

この半荘は終始苦しそうにうーんと唸りながら手を進めていた村上にようやく手が入る。
序盤にが重なったところで下家の尾崎からポン
12巡目を重ねダブ南トイトイをテンパイ
しかし鳴かせた尾崎も配牌からドラのが暗刻の勝負手が入っており13巡目にリーチ

村上  
尾崎 

ここは村上が力強くをツモ。3000・6000の元気な声がようやく届く

むぅ…みんなチカラある。

村上はこのアガリを契機にオーラスの親でいけるところまでいきたいところであったが
オーラスは尾崎から冨澤への1000点の移動で静かな幕切れとなる

尾崎 △14.1(-44.1)
佐藤 +19.5(+49.5)
冨澤 △1.1 (+8.9)
村上 △4.3 (-14.3)

対局の数日前にこの卓の見所はと村上選手に質問したところ
降級者争いがメインになるだろうとの回答だったが
1回戦では見事に佐藤が降級枠抜けのスタートダッシュを決めた

2回戦
起家から尾崎・冨澤・村上・佐藤の順。

東4局 ドラ

小場が続き各選手とも点棒をキープしながら様子を伺って折り返し地点を迎えるころ
沈黙を破って先制のリーチを打ったのは南家の尾崎8巡目。ドラがアタマの待ち
11巡目に追いついた西家冨澤もリーチ!
こちらは待ちピンズのメンホン高目がイッツー。いずれも破壊力抜群。

尾崎

冨澤

13巡目の尾崎のツモは
これは冨澤の入り目。その通ったを村上が打つと親の佐藤がチーしてテンパイを果たす。
こちらも待ちは

佐藤
 

しかし佐藤は最後のツモでをつかみテンパイを諦める。チーテンをとらずギリギリまで粘れば佐藤にはが入りのテンパイとなり、悶絶必死のは村上の手の内に行くのだが
さすがにそこまで読み切れたらヒトに非ずか…。
結局当たり牌をその手に引き当てたのは尾崎。ツモでリーチツモドラドラの2000・4000

南3局1本場

南家佐藤6巡目、をチーしてピンズのホンイツをテンパイ

 

直後に西家尾崎からリーチが入るが尾崎の河にはピンズが安い。
尾崎は一発で佐藤の当たり牌をつかんでしまい5200は5500を放銃してしまう。

南4局

点棒状況

尾崎 34100
冨澤 27000
村上 30300
佐藤 28600

前局トップ目の尾崎からラス目の佐藤へ点移動があったため団子状態に。
そしてオーラスは序盤とは対照的な激しいリーチ合戦。
まず打ってきたのは7巡目北家村上、直後8巡目東家佐藤、西家冨澤が次々と追いかける

村上(北家)

佐藤(東家)

冨澤(西家)

めくりあいの末、村上が佐藤の当たりをつかんで決着。
ウラドラリーチタンヤオドラウラ12000とリーチ棒3本が佐藤の元に…勝負あったか。

南4局1本場
西家冨澤10巡目

ここにを引いてテンパイ。
場にはがが2枚とが2枚。はともにゼロ。
冨澤気合いのリーチ!宣言牌は
しかし冨澤の一発目のツモは…そして次のツモは…そのまま冨澤の一人テンパイで流局。
冨澤がっくりと肩を落とす。
のほうがいそうだった…他の人からもそう見えただろう。
この半荘すべてリーチ不発。
放銃にまわらなかったのが不幸中の幸いとはいえこの裏目は後々まで響きそうだ。
本人も半荘終了後「立ち直れない…」と弱気の発言。
不屈のリーチファイターも打たれ強さには限界があるのか…。

尾崎 +3.1 (+13.1)
冨澤 △2.0 (-12.0)
村上 △13.7(-43.7)
佐藤 +11.6(+41.6)

佐藤が2連勝でさらにポイントを伸ばす。
そして冨澤に黄色信号が点灯。

3回戦
起家から佐藤・村上・冨澤・尾崎の順。

東1局1本場

先手をとったのは北家の尾崎。9巡目にリーチ
尾崎

12巡目に冨澤が追いついてリーチを打つもをつかみ
リーチタンヤオ三色の8000は8300を放銃

東3局

リーチ負けした後の東2局も尾崎ダマテン2600に飛び込んだ冨澤だが
折れている様子はなく親番となって積極的にしかけていく。
まず4巡目にをしかけてこの形

 

佐藤の後ろで見ていたときのような自然なツモでこのようになったのではない。
この後もツモ切りを数回くりかえしたあと2巡連続でを引く。

 

そしてツモ切り数回のちまたツモ。 發ホンイツ2600オール。
まるで牌に力ずくで言うことをきかせているような強さがそこにある。
まさに豪腕格闘家…!

東3局1本場

村上の先制リーチに佐藤がすぐに追いついてリーチ。
親の冨澤も10巡目には追いつくが一発目に村上の当たり牌をつかんでしまい3900は4200を放銃。

東4局

冨澤の不幸な出来事はまだ終わらない。
この局も村上の7巡目リーチに対し、冨澤は4巡目からテンパイしていたところに待ちかえの牌を持ってきてのリーチ。
これも村上にツモられ1300・2600。
ひたすら冨澤のリーチ不発が続く。

南1局 ドラ

この3回戦でひたすら攻め攻め…と自分らしさをアピールしている選手の影で「おや?」と思った場面がここ。
対局前にも「僕はだいたいいつもリーチしますから…」と言っていた村上からのリーチの発声が少ないような…。
すると村上の手牌はこんな感じに。

6巡目からダマテン。さすがにこれはダマなのですか?
テンパイが入った尾崎から即リーチがかかるもダマのまま押す。

ここは尾崎のツモアガリで決着。

 ツモ
リーチツモ中ウラ()2000・4000

「いつもだいたいリーチなのにダマにしちゃったね。らしくなかったね。」
と後で語った村上。その心境はいかに。

南4局1本場

点棒状況

佐藤 19100
村上 38800
冨澤 17400
尾崎 44700

トップ2着の差は5900点、3着4着の差はわずか1700点。
着争いが注目となるが、ここで気になったのが冨澤(北家)の手順。
6巡目(ドラ
 ツモ

ここで打ダマとする。
次巡ツモをツモ切り…。残しておけばピンフイーペーコどこから出あがっても着順があがる。
切りダマはシロウトですか?三色の決まらない形は最初から拒否?
ならば冨澤らしいというべきか。
そして10巡目親の佐藤(南家)が手出しでイーシャンテンとなったところで
冨澤10巡目ツモ切りリーチ
ここも打点が着に影響するので4面張を拒否か。
しかし直後に親の佐藤が追いついてこの形

ここに冨澤がをつかんで佐藤に2000は2300を放銃。

佐藤 △7.6 (-17.6)
村上 +8.8 (+18.8)
冨澤 △15.9(-45.9)
尾崎 +14.7(+44.7)

冨澤は佐藤との着順勝負に3連続で敗れここでトータル順位が入れ替わった。

4回戦
起家から佐藤・尾崎・冨澤・村上の順。

東1局 ドラ

親の佐藤が開局早々11巡目高めツモ
 ツモ
ツモピンフ三色。4000オールとスタートダッシュを決める。

東3局3本場

2局連続で重い局が続いた後、この雰囲気を打ち破ったのは北家尾崎の6巡目リーチ。
他家に動きがないまま12巡目に尾崎がツモ。
リーチピンフツモドラ1300・2600は1600・2900
尾崎はこのアガリで佐藤に傾きかけた流れを取り戻したか。

南1局

ここまで動けずにいた冨澤と村上が動きだす。9巡目冨澤(西家)にテンパイが入ると同時に村上(北家)も力強くリーチ。
12巡目冨澤がつかんで放銃。リーチピンフイーペーコドラ、8000。

南3局

マンガン放銃しラス目で迎えた親番の冨澤に2巡目でテンパイが入る。即リーチに踏み切る。

それに対し12巡目に北家尾崎この形

ここから打で迎撃リーチ!
困ったのが南家の村上。この時点でイーシャンテン。一発目に持ってきたのがまさに
肩で息をしながら「はぁ…困った…どうしよう…」とつぶやいていたように聞こえたのは自分だけだろうか。
村上が悶える様を周りの皆が唾を飲んで見守っていた。
村上が悩みに悩んだ末、河に放ったのは
冨澤に2400放銃。

南3局1本場 ドラ

ここをあがれば序盤のペースを取り戻せるか。佐藤が早々にしかけ、マンズの一色手に向かう。
尾崎も5巡目にをチーしてイッツーのテンパイ。
6巡目佐藤にテンパイが入る。入り目は絶好のカン
佐藤(西家)
 
尾崎の待ちごろの牌でうまくメンツを作ったと思ったのもつかの間次巡またしてもをつかまされてしまう。
もう間に合っていないかもしれない…そんな思いが伝わってきた。
ためらいがちに佐藤が河に置くと尾崎からロンの声。

尾崎(北家)
 
イッツードラの2000。トップ争いがますます混戦に。

南4局

点棒状況

佐藤 36100
尾崎 32200
冨澤 19900
村上 31800

7巡目にイーシャンテンとなった村上。
佐藤のダブ南の仕掛けにプレッシャーを受けてか、1巡ごとに腕組みをして考え、肩で息をしながら丁寧に手を進める。
先にテンパイが入ったのは佐藤11巡目
佐藤
 

そこへ村上13巡目にを引き入れて三色のテンパイでリーチ!
村上

同巡佐藤のツモは…一発で村上に放銃。ウラドラ
リーチ一発三色ウラ。12000。
2回戦のオーラスとまったく逆のパターン。村上に光が見えてきた。

続く1本場は尾崎が早くにポンテンを取り400・700は500・800のツモで2着をキープして終了。
村上は最後の最後で次節以降に望みをつなぐトップを勝ち取った。

佐藤 △6.4 (-16.4)
尾崎 +4.0 (+14.0)
冨澤 △10.6(-40.6)
村上 +13.0(+43.0)

苦しかったのは本手がことごとく不発に終わった冨澤。
しかし、ひたすら折れずに向かっていくその打ち方は冨澤らしさであり
常に「らしさ」を主張しながら戦うのがAリーガーなのだと感銘を受ける戦いであった。

B卓(石橋・張・上野・大柳)

1回戦
起家から石橋・上野・大柳・張の順。

東1局 ドラ

まず最初に動いたのは親の石橋。11巡目にリーチ

石橋

その一発目に西家大柳
大柳
 ツモ

即追いつき、しかも好形、打点も悪くなさそう。さらにが親には通っていない。
ここはリーチかと思ったが大柳は打ダマを選択。

石橋の一発ツモがで大柳の当たり。ピンフドラで2000。
このスタートが大柳にとって吉と出るのか凶と出るのか…。

東2局 ドラ
親の上野が早くも2巡目にリャンシャンテンからドラのをリリースと積極的。
4巡目にテンパイが入りリーチ

9巡目にツモとし、リーチピンフツモイーペーコー。2600オール。

上野今日は攻めの麻雀か…と思いきや次局は慎重にディフェンスに回って流局。

東3局2本場 ドラ

一回戦序盤から手が入っている大柳。親番を迎えたここも3巡目にはイーシャンテン。
しかし大柳がリーチを打ったその直後、東パツのお返しとばかりに石橋がリーチで応酬。
今度は大柳が一発で石橋の当たり牌をつかんでリーチピンフ一発ドラの8000は8600放銃。

リーチを打つか打たないかで、同じ状況でもこの破壊力の違い…。
どうやら石橋のほうが一枚上手というところか。

東4局
放銃して親が流れるも、手が入り続ける大柳はこの局仕掛けて積極的に攻める。
石橋から2600をあがり返す。

南1局1本場 ドラ

後半に入っても手が入り続ける大柳。前局はドラトイツのピンフイーシャンテンまでいったところで石橋の1300オールツモに遭い不発に終わるが、この局も大柳は6巡目にテンパイが入る。
大柳

ここも大柳は手を大きくしたいとの思いからかダマを選択…。
これは手が大きくなるよりもアガリが出るほうが早いのでは…と思っているうちに
9巡目北家の張よりが出て3900は4200

南2局 ドラ

ドラのを配牌からトイツで持つ親番の上野が3巡目から自風のを仕掛けイーシャンテン。
しかし6巡目に西家張からリーチが入る。
上野はイーシャンテンを維持しながら押すが、終盤に来て持ってきたに手が止まる。
張の最終手出しをケアしてのことだろう。
張の待ちは。直後にをツモって1300・2600。
上野のアガリを潰すとともに、前局大柳に放銃したダメージを1局で回復させることに成功した。

南3局
この半荘たびたび手が入るがなかなか効果的な加点につながらない大柳。
親番をむかえてここも7巡目にイーシャンテンとなるがなかなか有効牌を引かない。
13巡目にようやく役なしのテンパイ。決断の余地なく即リーチ。
厳しい表情で進めていくが流局となる。
1本積んで大柳はさらに気合の入った厳しい表情を見せる。
対照的に対面に座る石橋は涼しい表情。
石橋が軽快にポン、ポンと仕掛け300・500は400・600をアガり、あっさりと親を落とす。

南4局

点棒状況

石橋 33900
上野 31000
大柳 27900
張  27200

ドラ
僅差で迎えたオーラス。
7巡目親の張がをポン。
上野はのターツを落とそうと先にを切っていたが切りをためらう長考に入る。
上野

しかしドラを使い切らなければ石橋との2900点差を埋める手に仕上がらない。
ここで切りとして、12巡目、絶好のカンを引いてテンパイとなるがこれをダマに構える。

ピンフドラ。石橋以外からの出アガリではまくれない。
形は美しく絶好のテンパイにも見えるが、むしろドラのを先に引いて
役なしのテンパイになったほうが逆転のリーチを決断できるチャンスだったかもしれない。
親の張は二つ目を仕掛けソーズの染め気配が濃厚。
リーチを打たずに親に対し危険であればオリも選択肢にあったのだろうか。
このじっと様子を伺うのがむしろ上野らしいとも言える。

結果は石橋からこぼれたを上野がとらえて2000。
上野が粘ってトップを勝ち取る。

石橋 +1.9 (+11.9)
上野 +3.0 (+33.0)
大柳 △2.1 (-12.1)
張  △2.8 (-32.8)

「最高位戦ルールではリーチが偉いから…」というのはよく聞く話である。
しかし偉いことが勝利につながるわけではない。
この事実がプレッシャーとなってリーチ選択を難しくさせているのかもしれない。
ここではリーチを最大の攻撃材料として活用し、打点を挙げた石橋と張の攻撃力が目立ったように思う。
逆に大柳は手に恵まれていたのにもかかわらず、リーチをためらい得点につなげなかったのが悔やまれる。
そしてさらに感心すべきはリーチとダマをうまく使い分け、僅差の場を制した上野といったところだろうか。

2回戦
起家から上野・張・石橋・大柳の順。

開局早々張のマンガンツモで場が大きく動くかと予想されたが、そこからずっと小場が続く。
事態が変化したのは南場に入ってから。
親番を迎えた上野がアガリを重ねて頭ひとつ抜ける。

南1局1本場 ドラ
上野が3巡目に親リーチ。

三色の手代わりは見ずにリーチに踏み切る。
8巡目にはをツモって2600は2700オール。
1回戦から引き続き、的確なリーチ判断でチャンスをものにする力強さがあった。

南1局2本場 ドラ
張からリーチが入った直後、上野にテンパイが入るがここはダマ。
上野

張の一発目のツモがで上野の当たり。2400は3000。

次局も全体的に手が重いなかで、上野が粘り強く2000は2900をアガり着実にリードを増やしていく。

流局も含め5本まで積むがこの時点でほぼ勝負アリといったところか。
小場で点棒が動くも最後も流れて終了。

上野 +7.0 (+37.0)
張  +1.8 (+11.8)
石橋 △5.7 (-35.7)
大柳 △3.1 (-13.1)

3回戦
起家から張・大柳・上野・石橋の順。

東2局 ドラ
大柳の7巡目打に石橋が動く。この時点では石橋の手にまだドラは一枚。
10巡目石橋がドラを重ねイーシャンテン。13巡目に大柳がドラ切りリーチ。
石橋がこのドラをポンしてテンパイ。
17巡目に石橋ツモ
   ツモ

2回戦ほぼ何もしないままで不完全燃焼だった石橋が跳満ツモで一気に場を動かす。

東4局
西家大柳4巡目、上家張からをポン。6巡目にはピンズホンイツのイーシャンテンに。
しかし親の石橋は8巡目、配牌10種からスタートしてあまりなしの国士をテンパイ!
待ちはさっき大柳に鳴かれた。この時点ではまだ山生き…。

そして一枚目のを鳴かせた張が9巡目にリーチ
大柳もテンパイが入り押す。


大柳
 

この状態になると否が応でも石橋の親国士炸裂の期待度がアップしてしまう。
しかしなんということか残り一枚のは北家上野ががっちりキャッチ。
これは王牌に死んでいるケースを除いては石橋にとって最もアンラッキーなパターン。
張のリーチのゲンブツで大柳の副露メンツでありながらも上野の手の内からがこぼれることはなかった。
結局石橋が張の当たり牌のをつかんでリーチピンフドラウラ()8000放銃。
石橋にとっては痛い放銃。しかし本当の痛みはまだまだこの後にあった…。

南4局

点棒状況

張  27200
大柳 32200
上野 28800
石橋 31800

上から下まで超僅差で誰がトップにそして誰がラスになるかまったくわからない状態。

0本場 ドラ

親の石橋10巡目を引き入れてリーチ

即リーチに踏み切るが感触はあまりよくなさそう一発目をツモ切る瞬間石橋の表情が曇っていた。
は山にいなそうだ…リーチを打たずにダマで5800を拾いにいったほうがよかったか」
そんな思いがよぎったと後で語っている。
上野と石橋の二人テンパイで流局。
は2枚山、は上野に2枚、張に1枚。やはりリーチは微妙な選択だったか…。

1本場 供託1.0 ドラ

点棒状況に変化アリ

張  25700
大柳 30700
上野 30300
石橋 32300

1本場供託1本がのり、トップ目の石橋と2着の大柳は1600点差、3着の上野とは2000点差。
供託が出たことで各選手ともアガリさえすればよい状況になる。
若干点差をあけている張はトップと6600点、2着と5000点の差。
しかし張はここでとドラのがトイツという好配牌。仕掛けてあがっても2着は見える。
4巡目にをポンして9巡目には以下のテンパイに
 
11巡目親の石橋からがこぼれてロン。3900は4200。
トップ目石橋からの出アガリで張は30900点のトップに。そして石橋はまさかのラスに転落。

張  +0.9 (+30.9)
大柳 +0.7 (+10.7)
上野 +0.3 (-9.7)
石橋 △1.9 (-31.9)

「地獄を見た」とつぶやいた石橋…。これは確かに辛酸の極みといえるだろう。

4回戦
起家から大柳・張・上野・石橋の順。

東3局
序盤から上野が細かくアガリを重ね主導権を握る展開が続いていたが
北家張に10巡目ソーズホンイツのテンパイが入る。

テンパイ直後に上野がツモ切ったをとらえて8000。

東4局

前回痛いラスを引いた石橋がここで反撃の狼煙を上げる。
粘り強くテンパイを維持し2局流局。
2本場 供託1.0 ドラ
石橋10巡目ドラを重ねてドラ暗刻のリーチ。ほぼ同時に張、大柳からもリーチが入りめくりあいになるも
大柳がをつかみ石橋に放銃
 ロン
リーチドラ3、12000は12600プラス供託で石橋大きくリードを奪う。

南1局4本場 ドラ
流れて4本場親番を迎えた大柳2巡目でドラトイツのチートイイーシャンテンとなり挽回のチャンスだが
これを生かせず上野に3900は5100を放銃。

南2局
上野がを、張がを仕掛け両者ともにピンズのホンイツイーシャンテン
あがりきったのは親の張
  ツモ

上野はイーシャンテンどまりであったが最終的にはになりそうな気配で
あがりやすさを見れば上野のほうが若干有利に見えたがここは張が力強いツモを見せた。
4000オールで一気に5万点を超えトップの石橋をまくる。

南3局
前局1本場は上野が大柳から1300は1600をアガり張の勢いを止める。
その上野が迎えた親番、8巡目チートイドラドラをテンパイ。
ここに張が飛び込み9600放銃。ここで張は再び石橋に200点差でトップの座を渡してしまう。

続く1本場は石橋が1000・2000は1100・2100と堅実に加点しオーラスを迎える。

石橋は前回に引き続きラス親でオーラスを迎えるがここはしっかりと対応。
上野の一人テンパイで流局し、確実にトップをキープしてして終了。

大柳 △31.0 (-61.0)
張  +9.2 (+19.2)
上野 +6.0 (-4.0)
石橋 +14.8 (+44.8)

大柳はこの4回戦の大炎上で最下位に転落。
隣の卓で行われていた降級枠争いに一気に飛び込む格好になってしまった。

今回の対局では伊藤選手の欠席のため上位グループと下位グループの動きに注目が集まる結果となったが
各選手の明暗がくっきりと分かれ、この先の展開も非常に気になるところとなってきた。
上位をキープしわずかな得失点で今節を締めくくった尾崎、石橋の両者も残りの選手の別日対局の結果次第ではどうなるかわからない状況である。

1節ごとに目が離せない展開になってきた。
各選手とも最後まで完全燃焼して皆の目にその勇姿を焼き付けていただきたい。

文責 須藤珠水

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