コラム・観戦記

第34期最高位決定戦4日目 その①

【最高位決定戦4日目】

会場内には、ゆったりとした緊張感が覆い始めていた。

今日と最終節、あと2節8半荘で、今期の最高位が決まる。残りが減れば、焦り、不安、そういったものが当然増してゆくのだが、割と和やかな雰囲気を保っていた今期の決定戦も、例外に漏れず重い雰囲気に変わろうとしていたのだった。

前回は、沼に嵌まりもがき苦しんだ大魔神、一度手にした和了をきっかけに、マイナスを最大限に止めて沼の淵に立ち上がった。

今期はまだ、『飯田の半荘』が少ない。

金子正輝という誇り高きライバルは、前回大きくプラスして、尾崎から手綱を奪い取っている。

飯田は、じっと待ち続けていた。無理せず、自身のもつ天賦を、生かすために。

主役は、譲らない。

11月11日。最高位決定戦第四節。

―王者が、ようやく目を覚ました。

【13回戦】

荘家 石橋 △54.4
南家 飯田 △43.3
西家 金子 +57.0
北家 尾崎 +39.7

【東1局・ドラ

親の石橋が、こだわりというか、素直ではないというか。
あまりらしくない動きで手を進める。

《石橋・配牌》

  打

ここから打とは、東1局の親では疑問を感じる人も多いだろう。5巡目のツモ、6巡目のツモで早々に和了を逃しているが、石橋の場合は打点こそ見込める一向聴。

この間に金子にはメンホンチートイの聴牌が入った。

《金子・8巡目》

ツモ

《石橋・9巡目》

ツモで、打として、10巡目に引きのリーチ。確かにツモれば4000オールなのだが、変則手の河で、そもそも出アガリは期待の薄い親のリーチ。それでも石橋が自信を持って臨んだリーチ。果たしてアガリ逃しにはならないだろうか。

《石橋・捨て牌》

()()()() ※()はツモ切り

さらに金子には大物手のヤミテンと、筆者がヤキモキしている間に、石橋が13巡目にをツモりあげてしまった。石橋の山読みが冴え渡る。

和了にさえ繋がれば、打点は申し分ない。

しかし、素直に手を進めなかった反動なのか、石橋は1日中、ここから見えない糸に絡まり続ける。

次局は飯田が四面張のリーチを打つも空振り。大魔神のリーチが多面張で流局とは、石橋と言い飯田といい、一波乱起こりそうな気配が開局早々に漂ってきた。

【東2局・ドラ

4巡目に尾崎が親・飯田の打をポン。

《尾崎》

ポン

さらに次巡にカンを鳴いて打とすると、この鳴きで手が伸びたのは金子だった。役の確定する引きで、5巡目にリーチ。

《金子》

尾崎はこのリーチを受けて、長考して打と旋回を選択、代わって前に出たのは、親の飯田。

《飯田・8巡目》

チー

次ツモにて聴牌すると、リーチに無筋のを切り飛ばす。

結局先に和了に辿り着いたのは、金子だった。をパチンと弾くようにツモりあげて2000・4000。

石橋の4000オールなど気にも止めないかのように、またこの日も飯田対金子が色濃く浮き出し始めた。

東3局は飯田が、尾崎のリーチ、それから金子の親を蹴りあげる500・1000をツモ。
リーチにそろそろと押していた親の金子が、悔しそうに手牌を終うと、力強くツモり蹴りあげた飯田は、少し浮き足立つように洗牌を始めた。

【東4局・ドラ

3巡目に一向聴の親・尾崎。

《尾崎》

しかし最後の1つがなかなか埋まらない。7巡目のツモを残すと、9巡目にツモを外す。12巡目のツモでさらにめいっぱいに受ける。

《尾崎》

13巡目、石橋がをチーして一向聴。

《石橋》

チー

《石橋・捨て牌》

河からは三色か一通かチャンタ、風牌の仕掛けの下家の石橋、ここは完全に被せる気で前に出る尾崎。ツモで打とすると、次ツモはで、をそっと切りヤミテンに構える。

《尾崎・15巡目》

河には1枚、3枚、ならツモれば6000オール。期待に胸を膨らましているはずも、聴牌後は逆に力が抜けたように静かに当たり牌を待った尾崎。この時点で山には1枚のがいたが、金子にメンツで受け入れられて流局。

さらに次局の1本場も、親リーチが流されてしまう。

尾崎、大物手も和了も得られずで、もどかしさが滲み出してきた。

【東4局2本場・ドラ

絡み付いてしまった糸が解けない石橋、伸び伸びした麻雀ではなくなってきていた。

《石橋・3巡目》

3巡目、ツモで打。5巡目のツモで打、カン待ちの先制リーチ。

ドラ対子の勝負手なら、聴牌外し、その前のも残せば両面ターツの候補になるだろう。これをあっさりとリャンカン残しで切りの筋引っ掛けリーチとした石橋。は2枚切れでは生牌だが、まだ情報は薄い。

子の5巡目リーチ、とは言え、この面子では両面すら出アガリの期待が薄いだろう。それならば、両面への手変わりを待っての勝負手への和了へのこだわり、ツモりにいく姿勢が若干薄れているように感じる。

筋を頼っての出アガリ期待、ドラ対子の打点はあるも、焦りが石橋の背中を押してしまったに違いなかった。

ひたすらツモ切りを繰り返していると、構えていた大魔神が襲いかかる。

《飯田・13巡目》

安全そうな牌を選びながら進めると、聴牌に辿り着いて堂々と勝負に出た飯田。

石橋は受けての一発目はドラの。因みに、石橋の唯一の手変わりは、カンを闇テンに受け、8巡目のツモでシャンポンリーチ。これならここでツモ。

しかしこれは和了ではないため力なく河に並べると、さらに2巡後、ラス牌のも怖がりながら河に放った。

3900は4500。ドラは1枚もない大魔神という名の王者が、石橋の前に大きく立ちはだかっていた。

【南1局・ドラ

東1局の12000点のリードを、東場を一周する間に全て放出し、原点に戻った親・石橋。相手との点差を手元のボタンでチェックすると、肩を上げて息を吐いた。

手なりで進めると、あっさりと聴牌を果たす。

《石橋・7巡目》

《捨て牌》

威勢を張り直してリーチに出る。

ここに金子、安全牌がないかのように装い、静かに手を進める。

《金子・11巡目》

ツモ聴牌

危険牌はと切り、リーチの中筋となったを待っていると、安牌にありつけなかった尾崎が、痛恨のオリ打ちをしてしまう。尾崎は生牌の1枚、中筋の1枚、中筋の2枚からの選択。これが8000に当たるのはかなり辛い。

何気ない雰囲気を取り繕っていた金子は、突然のに驚いてか、普段より一段と大きな声を出し、回りにいた観客も尾崎と共に、一瞬、怯んでいた。

【南2局・ドラ

これまでの決定戦において、終日の好調には程遠かった飯田。今日は、ここまで終始そこそこ和了へと辿れそうな手牌になっている。

実際、こうなると飯田はもう止まらない。手が入ると自ずとぶつかる。1人でアガリ倒し続けれるわけではないが、ぶつかってもぶつかっても、手牌がそれなりの纏まりを続けるのだ。

《飯田・配牌》

親の飯田は第一打をとすると、とツモで何と3巡目に聴牌でリーチ。

《飯田》

宣言牌の後、、とツモ切るのだが、これはそこまでキャッチできるものでもないだろう。

ただ少し首を傾げたのは、「そうなの?」と思う程度の、単純な疑問だったからに違いない。

飾らずにリーチをし、13巡目にをツモり、4000オールを手にした飯田。

大魔神は、大魔神である所以を疑わせる間すら持たずに、大魔神らしい麻雀を続けていた。

【南3局2本場・ドラ

続いた1本場は石橋のリーチがまた空振り、表情が尋常ではなくなってきた石橋の焦りを横目に、13回戦は終盤を迎える。この局は、和了を手にすることも、聴牌すら辛かった尾崎がオリ打った8000を回収すべく、ラス回避を目論んだ。

《尾崎・3巡目リーチ》

このをあっさりと一発ツモ。
裏はないが1300・2600の2本場に1本の供託。

大幅な修復を終えて、オーラスの自分の親番に、弾みをつける。

【南4局・ドラ

東家 尾崎 17100
南家 石橋 25300
西家 飯田 42800
北家 金子 34800

3巡目にドラのを暗刻とした尾崎。

《尾崎》

ツモ

ひとメンツ目がドラが揃ってでの尾崎の焦る気持ちか、また首を傾げる仕草に表れていた。

そして4巡目、場が動き出す。

《金子》

ポン

風牌のを仕掛け、仕切りにボードを見て飯田との距離を確認した金子。一心に混一に進んでゆく。

一向に有効牌を引くことができない尾崎。逸る気持ちは、もはや祈りに近かったに違いない。

《尾崎・8巡目》

尾崎の焦りなど気にも止めない金子はさらにも叩いたあとの9巡目、2枚切れのを重ねてカンの聴牌を入れると、次巡引きで三面張に受ける。

《金子》

ツモ

満貫ツモならトップ、出アガリなら同着トップ。急速にエンジンがかかった金子、次巡に勢いよくをツモで、飯田を再び捲りトップを獲得した。

3巡目にドラ暗刻で9巡目にようやく二向聴と、水を大きく開けられた尾崎は、遠くを見つめるように、視線を宙に這わす。

13回戦、尾崎の150ポイントを超えた貯金が、遂に消えた。

【13回戦終了】

金子 42800 +42.8
飯田 40800 +20.8
石橋 21300 △18.7
尾崎 13100 △46.9

【13回戦終了時合計】

金子 +99.8
尾崎 △  7.2
飯田 △22.5
石橋 △71.1

 

【14回戦】

荘家 尾崎
南家 金子
西家 石橋
北家 飯田

肌の白い尾崎は、時折興奮を露わにする。筆者が幾度も書いてきた、尾崎の特徴である。

決定戦の前半に慎重に積み上げたプラスのリードは、前半荘で全て吐き出してしまった。
しかし、マイナスを重ねて、仕切りに焦りが滲み出ている石橋とは真逆だった。

失ったマイナスを気にする素振りもなく、元に戻ったポイントを1からまた増やしにかかる。そこには、また顔を薄紅色に染めた尾崎がいた。

【東1局・ドラ

6巡目に仕掛けた北家の飯田。

《飯田》

ポン

河にはソウズが滲む。

《飯田・8巡目》

ツモ

聴牌打のを勢いよく弾き飛ばすと、飯田、高め満貫の聴牌。

皆が一様に一向聴だった中、

《金子》

ここにツモ7で撤退。場に切れている字牌はドラの1枚、2枚。さすがにもう押せない。

石橋もを掴んでしまっている。残るは親の尾崎。残りツモ1回でようやく聴牌。場には3枚切れ。皆がピンズをメインに切っていることを考えると、まだ山にはいそうである。

《尾崎・17巡目》

そして、尾崎が願った一発目のツモは、だった。尾崎を知る者なら誰もが痺れるあのモーションで、格好良くツモりあげる。

裏は乗らずの2600オール。実際2枚、1枚とこの巡目にして山3枚だった。

―まだ勝負は決まっていない。尾崎が、吠える。

続く1本場は、表情を少しも変えることのない飯田が9巡目にリーチ、数巡後にツモ裏1の1000・2000ツモで、尾崎の上げる熱を冷ますかのように局を進める。

【東2局・ドラ

親は流されたが、気持ちが落ちない尾崎の闘気に後押しされるかのように、手牌が早々と纏まる。

《尾崎・4巡目リーチ》

向かってきたのは、前局飄々と尾崎の流れを断ち切りにきた飯田。

《飯田・9巡目リーチ》

共に4枚生きの両面対決。ここは飯田のツモ切ったで打ち取ったのは尾崎。高め裏なしで5本折れの満貫にも、十分だと言わんばかりに、悠々とリードを広げていった。

―麻雀に於ける勝負の節目は、俗にいう流れのせいであったり、確率のせいだったりで終着を迎える。

何かにすがりついて挑む麻雀打ちの気持ちを見透かすような、無造作に積まれた牌山のアヤに、勝負は左右され続けていく。

【東3局・ドラ

親の石橋は、苛々する気持ちを隠しもせずに、9巡目の二向聴を迎えていた。

《石橋》

国士無双を狙うような捨て牌の飯田、12巡目にツモ切りで打とするが、この瞬間に若干不穏な空気が卓を覆った。

《飯田・12巡目》

5巡目にラス牌のと生牌のの一向聴で、先にを引き11巡目にヤオチュウ牌の余りはなしでの聴牌。は石橋が1枚切っている。

圧巻だったのは金子だ。一向聴だったが、ドラの生牌を掴んであっさりとメンツを中抜いてオリてしまった。これでは残り2枚。

親の石橋は、次巡に引きでようやくの一向聴を迎えていた。大魔神の国士無双の聴牌とは、不穏な空気を感じたと言えど、頭では否定したに違いなかった。

15巡目、3枚目のを引き入れた石橋、4枚切れの牌がないことを確認しつつも役あり聴牌だがリーチ。

《石橋》

飯田は一発目のツモをふと持つも、当然のツモ切り。一発で7700放銃となってしまう。石橋のも、残りは2枚だった。

それでも眉一つ動かさない大魔神。

このでの親への一発放銃を見れば、飯田がほぼ役満聴牌であったことが、手牌を見なくても伝わってくる。それでも悔しさを微塵も見せない飯田は、超がつく危険牌を、リーチもしてないのに一発で放銃したことに対する自分への戒めだったのかもしれなかった。

―1本場はトップ目の尾崎が親の石橋のリーチに被せるも4800は5100の放銃。

続いた2本場、大魔神がいよいよ反撃に出る。

【東3局2本場・ドラ

親で点棒を重ねた石橋だったが、ここは配牌に恵まれず。

代わって不安定な牌勢というところか、和了と放銃を繰り返す飯田に、またもや好手が舞い込んだ。

《飯田・4巡目》

しかしここまでは出番のなかった金子、早い聴牌で親を流しにいく先制リーチ。

《金子・4巡目リーチ》

石橋が何気なく抜いた現物ので、飯田はすかさず急所を埋める。

《飯田・5巡目》

  チー

8巡目にを暗刻にして聴牌とすると、金子に正面から勝負に挑んだ。
12巡目にを手にしたのは飯田。山がそのままなら、金子が2巡でツモっていた。

安心したようにすら見せずにこの2000・4000で傷を大きく癒すと、続く自親、大魔神が牙を剥く。

【東4局・ドラ

先ほど記した麻雀における勝負の終着。

展開のアヤがあったとしたら―

この局が、飯田への追い風になったかもしれない。

配牌は5対子だった親・飯田。3巡目のツモで打と手をほぐす。

《飯田・3巡目》

5巡目にツモ、10巡目にツモでリーチに出ると、一発目のツモに尾崎が止まる。

《飯田・10巡目リーチ》

《尾崎・11巡目》

チー

3枚、1枚と切れているのを見て、ここだけは先に埋めておくことを選択した尾崎。

すると金子が生牌のを強打してリーチ。

《金子・11巡目》

ツモリーチ

この2軒リーチにはと小考して、尾崎が打。結局丁寧に回りきって、2人と並んで聴牌とするのだが。

この尾崎の鳴きで石橋にが1枚ずつ流れ、金子の和了となっていた展開が打ち消され、飯田の連荘と繋がる。

後の結果からだけ見れば、ここが分岐点だったことは否定出来ないだろう。

【東4局1本場・ドラ

2巡目に一向聴と好調の飯田。

《飯田・4巡目》

 ツモ

1枚切れのを外すと、7巡目に先に三面張を埋めて即リーチ。この時飯田が放った声は、いつもより少しだけ早く、寸分の迷いも感じさせない発声だったのが印象的である。

《飯田・捨て牌》

七対子の一向聴、安全牌のないトップ目の尾崎、をツモ切りで打ち取る。3900は4200に2本の供託を得て丁寧に点棒を納めると、凹んでいたはずの飯田の点箱には、いつの間にか原点を僅かに超える点棒がしまわれていた。

【東4局・ドラ

また2巡目に一向聴と、飯田の勢いは止どまることを知らなかった。

《飯田》

6巡目にを引いて完全一向聴とすると、7巡目のツモで先制リーチ。

《飯田》

リーチを受けた金子と尾崎は、会場に掲げられた大きなホワイトボードを揃って覗き見た。飯田はこの挙動を見て手元の点数表示で点差を確認する。

そして尾崎が、止めに向かう覚悟を決めた。旋回したのち、筋を1牌だけ勝負してリーチ。

《尾崎・14巡目リーチ》

ここは尾崎の執念で流局となるかと息を飲んだ17巡目、最終ツモの1つ前で和了を引き寄せたのは、またもや大魔神の方だった。

をツモ、裏がで4000は4200オール。

【東4局3本場・ドラ

大魔神の攻撃はこの局も終戦の片鱗も見せなかった。

安め引きが続くも、また7巡目に先制聴牌でリーチと出る。

《飯田》

 ツモリーチ

12巡目、金子が椅子を引きながら天を仰ぎ唸り声をあげた。

《金子》

 ツモ

飯田の河は未だに強めで、オリようにも苦しい。

《飯田・捨て牌》

金子が現物のを切って七対子の一向聴とすると、次巡ツモで聴牌を逃す。これで諦めてオリるのだが、遂に安全牌がなくなった金子。のワンチャンスでを苦し紛れに切った。

するとこのを石橋が何故か仕掛ける。

《石橋・17巡目》

 チー

苦しそうにしていた金子にハイテイを回したかったらしいのだが、この鳴きで石橋のツモ山にいた3枚目のが、飯田の手元に文字通り落ちてきた。

裏1で2000は2300オール。これで飯田の点棒は、50000点を超える。

ようやく他家を引き離しひとまず落ち着いたとでも言うように、次局、飯田の手牌はそこそこ纏まってはいたが伸び悩み、この隙に攻め込んだ尾崎が満貫をツモ。飯田にどうにか親被りの一矢を報いて、この長かった東場を終えた。

そして反動でもしたかのように、急にスピードを増してこの半荘は終わりを遂げる。

南1局は、ラス目の金子からの中盤のリーチに3者がオリ。金子がゆっくりとツモり700・1300。

南2局は尾崎が2着を守りに出る。仕掛けて1000をアガって目下ポイントリーダー、ラス目の金子の親を蹴りあげた。

南3局は石橋が連荘に繋ぐ1500を三副露で何とかアガるも、1本場はラス目の金子がドラ暗刻の満貫をツモ。

仕上がった王者を無理に追う者はいない。後半は熾烈な番手争いが繰り広げられた。

【南4局・ドラ

東家 飯田 44100
南家 尾崎 32500
西家 金子 23700
北家 石橋 20700

2巡目、金子がまた唸り声をあげた。

《金子》

 ツモ

満貫ツモなら2着だが、うっすら見えるツモり四暗刻、対々和、三暗刻にも目がいく。

ここは打とした金子、縦にツモが伸びて7巡目のツモでツモれば三暗刻の満貫リーチとする。

《金子》

 ツモリーチ

は1枚切れていてが対子から。少し迷いが生じそうな聴牌である。

13巡目に追いついたのは、ラス目の石橋だった。

《石橋》

金子からで3900を打ち取ると、何とか3着を射止めた石橋だったが、東2局に飯田の役満を阻止した勢いとは、もう種類が違っていた。最後、ギリギリ踏みとどまるために力を注ぐ若き武者は、このあとの2半荘も張り巡らされた糸にさらに絡まりついてしまう。

【14回戦終了】

飯田 44100 +44.1
尾崎 32500 +12.5
石橋 24600 △15.3
金子 18800 △41.2

【14回戦終了時合計】

金子 +58.6
飯田 +21.6
尾崎 +  5.3
石橋 △86.5

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