コラム・観戦記

第9期女流最高位決定戦1日目観戦記

女流1日目観戦記

 

112日。神楽坂ばかんすにて女流最高位決定戦第1日目が華々しく開幕した。

 

技の涼崎・力のいわま・バランスの和田、そして星の根本

まさに役者がそろったという格好で迎えた決勝1日目

 

「星って何なんだろう?」

 

この対局を通して最も解明したいテーマのひとつである。

決勝の2日間を通して星理論の真理に近づくことはできるのだろうか。

 

現在4連覇中の女王根本。

開始前から牌チェックの時まで、終始笑顔でリラックスした雰囲気。

プレッシャーを感じている様子は微塵もない。

根本さんらしい、ともいえるし、いつもどおりといえばそうかもしれない。

しかし、何か大きいことをやるのではなかろうか、そう感じていた者は決して少なくなかったはず

 

 

 

 

1回戦 そして、朗らかに嵐は来た

 

 

早くも根本の星理論解明の時が訪れたか。

 

 

起家からいわま、和田、根本、涼崎の順

 

 

2局 ドラ

前局チートイ1600点という小場ではあるものの、初あがりを決め、好スタートを切った根本。

6巡目に先制のリーチ。

根本

ピンフドラ1をリーチ。非常に基本に忠実な攻めといえるだろうか。

ここで涼崎よりで出あがり、ウラドラが

リーチピンフドラウラで8000

リーチを打つ利点が最大限に引き出された形である。

ダマに構えていたら2000点のところを一気に打点を4倍に引き上げた。

 

しかしこれは嵐の前触れに過ぎず

 

3局 ドラ

涼崎8巡目にこの形

カンチャンが先に埋まれば絶好のリーチが打てるだろうというところだが、涼崎9巡目のツモは

しかしここは前局の遅れを取り戻したい。打としてリーチ!

これに対し配牌からドラのをトイツで持っていた根本がチートイドラドラで追いつく。

 

そして12巡目。根本がツモって4000オールとする。女王強し。

 

31本場 ドラ

根本2巡目のツモがドラのですでにこの形

としてすぐ下家の涼崎から打たれたをポン

直後、涼崎をツモ切り。根本がこれもポン

直後、涼崎をツモ切り。今度は根本から「ロン」の発声。

 

   ロン

 

客風牌をふたつ仕掛けてのホンイツドラドラ1200012300

いわまと和田はわずか1巡しかツモっていない。

あっという間の出来事に場内騒然。

 

32本場 ドラ

2回連続で親満をあがった根本が3巡目リーチ!

勢いはとまらない。

6巡目ツモってきたをアンカン

そしてリンシャンから「ツモ」

 

  ツモ

 

リーチリンシャンツモ。ドラなしリーチのみがアンカンとリンシャンからのツモで一気に満貫に!!

40004200オール。

 

33本場 ドラ

もうそろそろこの親を流したい

追う3人の胸中はこのように共通してきたのではないだろうか。

しかし6巡目とどめを刺すような根本のリーチが入る。

リーチを打ったのはこの形

確かに待ちはいい。

しかし2着と5万点も差をつけての一人旅である。

イッツーやチンイツを見ての手作りをしてもよい場面ではないだろうか。

根本はこの点差においても3人の対戦相手としっかりと向き合って麻雀をしていた。

他の3人に反撃するチャンスをまったく与えないまま、根本11巡目ツモ

リーチツモホンイツ40004300オール。根本の点数が9万点を超える。

流れという言葉は口に出すまいと思っていたが、さすがに流れ論者でなくとも根本に流れが来ていることを疑う者はなしか

 

34本場 ドラ

もはやどうしていいのか、止まらない根本を前に策はあるのか

そんな圧倒的大差のなか、涼崎が配牌イーシャンテンから6巡目リーチというチャンス。

涼崎

このリーチに対しても、根本は攻撃の手を緩めず

8巡目にポン、10巡目にポン、最終手出しが無筋のドラという強気の攻めでテンパイを入れる。

根本10巡目

   

 

関連牌としてが場に3枚、は場にゼロ、は涼崎の河に1枚切れている。

いわまもしくは和田からのは頭ハネとなるので、枚数を考慮に入れてもここは根本に圧倒的有利な場面。

 

しかしここではっとする瞬間が訪れた。

14巡目根本がを引く。は数巡前に涼崎が通している。

トイトイに待ちかえして打とする。

 

えっじゃあこの後つかんだらどうなるの!?

ツモ切って勝負するの?

それともスジのでまわるの?

 

密かにドキドキしながら見守っていたらその瞬間はすぐに訪れた。

根本がを打った次巡のツモは

根本の選択はツモ切り。涼崎に20003200の放銃となった。

 

惜しむらくは根本が1巡前にを引いたところ。

あの場面であれば打が正着打であるように見える。

しかしトイトイに受けずとも打点が変わらないあの場面であれば待ち牌の枚数が多いを勝負すべきだったという意見もあった。

 

もしもここをツモであがりきっていたら、10万点超えの一人旅となり、本当に決まってしまっていたかもしれない。

かくしてフィーバー根本佳織の確変は終了となった。

 

南場に折り返してトップとラスの差が約9万点。

後半戦はいわまと和田の2着争いがメインとなったが、いわまの強気の攻めが効いて、和田との差が10300点。和田は満貫ツモがわずかに届かない苦しい位置にいた。

 

オーラス点棒状況

涼崎  -8800

いわま 28700

和田  18400

根本  81700

 

4局 ドラ

 

12巡目、涼崎、いわま、和田がほぼ同時にテンパイ。

その後、涼崎のドラのツモ切りで一気に卓内の空気が緊張したが、

16巡目いわまがツモピンフ400700をあがりきり、その緊迫した空気を解いた。

 

1回戦結果

根本   +81.3

いわま  +10.2

和田   △22.0

涼崎   △69.5

 

 

 

 

 

2回戦 包囲網、発動

 

起家から根本、和田、涼崎、いわまの順

 

根本の鮮やかなロケットスタートが決まった1回戦

続く2回戦では残る3人が結託して根本を押さえ込むことが大きなテーマになる。

まずは開局から起家の根本に仕事をさせないまま親を落とすことに成功。

さらに和田と涼崎が細かいあがりで点棒を増やし、いわまと根本は静かに様子をうかがうような状況であった。

しかし均衡を破ったのは東31本場の和田。

 

31本場 ドラ

早くも3巡目テンパイの和田。次巡ツモで待ち替えし、打としてリーチ。

2巡後にツモとし、リーチツモ東、1300260014002700

ここを無難にツモってリードをつくったことによって、より自分らしく打てるような心の余裕につながったか。

 

11本場 ドラ

前局根本と涼崎の二人テンパイ。

和田は2着目に付けている涼崎に3000点つめられるも、ここで落ち着いてピンフドラ1をダマに取り、しっかりと根本から20002300を打ち取る。

ロン

 

2局 ドラ

技の涼崎ダブ南ポン。力のいわまがドラを頭にしてテンパイ即リー!

攻めと攻めのぶつかり合いとなるが、ここはいわまがドラのを掴み涼崎に3900放銃で決着。

涼崎らしい攻めが生きた形になり、トップ目和田に900点差まで詰め寄った。

 

41本場 ドラ

 

点棒状況

いわま 16100

根本  23800

和田  40500

涼崎  39600

 

前局全員ノーテンで流れ1本場。

いわま7巡目リーチ。しかし残る三人もみな好形。

全員前に出て、誰が打ってもおかしくない場面。

結局、涼崎がを打っていわまにリーチ白、48005100を放銃。

 

 ロン

 

2本場 ドラ

 

点棒状況

いわま 21200

根本  23800

和田  40500

涼崎  34500

 

いわまが8巡目にをポン。11巡目にを引いてチンイツのテンパイ。

 

 

しかしそのいわまに対し、だいぶ巡目が深まったところで根本がのターツ落としを強行。

トップまで6000点差の涼崎はマンズメンホンのイーシャンテン、和田もイーシャンテンと、この局も全員前のめりの姿勢。根本は任せて3着をキープすべきだったか。

根本のがいわまにささり1200012600

ついにオーラスで三者結託し、根本をラスに沈めることに成功。

 

3本場 ドラ

 

点棒状況

いわま 33800

根本  11200

和田  40500

涼崎  34500

 

根本にラスを押し付けることには成功したが、今度は上位争いがかなりシビアな場面。

注目すべきは涼崎の位置。トップの和田とは6000点差、3着目いわまと700点差。

どこに放銃しても確実に3着以下になってしまう。上までは10002000でよくなったものの、厳しい場面である。

 

涼崎の積極的な仕掛けに対し、和田もポンからのアグレッシブな攻めで、あがりきろうという姿勢。

しかし巡目が深まってきたところで離した和田のが根本の当たりとなり、タンヤオ10001900放銃で決着となった。

 

2回戦結果

和田   +38.6

涼崎   +14.5

いわま  △6.2

根本   △46.9

 

 

3回戦 理想と現実の狭間で揺れてしまった心は

 

歯車を狂わせ、いつもと同じと思っていることがそうでなくなっていく。

少し出遅れた感のいわまと涼崎はここから挽回なるのか?

 

いわま、根本、和田、涼崎の順

 

1局 ドラ

配牌よりドラがトイツなのは配牌女王の名でおなじみの西家和田。

10巡目にリーチ!

和田

直後にテンパイを果たした根本。しかも絶好の3面張となり力強いリーチ!

根本

 ツモ 

リーチ

 

ここで和田が一発でを掴む。

リーチ一発ピンフ。根本に3900の放銃。

強気で攻める根本。前回押さえ込まれラスに落とされたことを少しも気にかけていない様子で好調なスタートを切った。

 

2局 ドラ

打ってもなお手は入る和田。立て続けに有効牌を引き、5巡目にはカン待ちの満貫テンパイ。続く6巡目ドラを重ね頭にして打としてリーチ!

 

 

親の根本は国士リャンシャンテン。余剰牌は

根本の一発目のツモは。カンが埋まった格好になったせいか一発目は打で潜り抜けた。その同巡でいわまがをツモ切り和田に8000の放銃となったが、根本からがこぼれるのも時間の問題だったのではないだろうか。

星という言葉がここでもかすかによぎった。

 

3局 ドラ

親を落とされてなお根本に激熱のテンパイが入る。

根本9巡目

さらに次巡いわまからリーチが入る。こちらもドラのシャンポンと本手が入っている。

しかしここは和田が落ち着いてタンヤオドラ1をツモ。2000オールをあがりきる。

 

続く1本場は前局リーチが不発に終わったいわまが、ここもひるまずリーチを打って前に出る。根本より26002900をあがる。

 

4局 ドラ

いわまの力強い攻めが目立つが、もっと目を見張るべきは和田の手の美しさか。

早くも2巡目で美しいイーシャンテン。6巡目にはピンフ三色ドラのテンパイが入る。

 

9巡目にいわまよりで出あがり、8000

連勝に向け磐石の態勢を作りつつ折り返す。

 

2局 ドラ

後半戦に入っても手が入る和田。10巡目カンが埋まりピンフドラ1のテンパイ。慎重に2000をいわまより出あがる。

 

3局 ドラ

これまでほとんど動きのなかった涼崎が8巡目にリーチ。

 

 

ここは一見ダマで5200を拾うのが理想かと思う場面。

相手に自由に打たせるのを嫌ったか。現在のポイントを考えたら少しでも打点を伸ばしたかったのだろうか。

 

短期決戦の戦い方に慣れている涼崎だけに、ここは並びを見るのが早かった。むしろその早さが逆に仇になったともとれる。

現実的過ぎた、とでも言うのだろうか。

ここまでのポイントが彼女にとって重圧としてのしかかり、焦りが見える構え方を余儀なくさせたのかもしれない。

 

この局は結局涼崎といわまの二人テンパイで流局。涼崎はオーラスの親に望みをつなぐ形となった。

 

12本場 ドラ

 

点棒状況

涼崎  30000

いわま 13800

根本  30200

和田  46000

 

前局1000オールをツモって粘り、2着の根本と200点差までに追い上げた涼崎、ここも8巡目リーチ。

 

そこから3巡ほど丁寧におりているかのように見えた和田に異変が起きた。11巡目、和田の河に無スジのが放たれる。

そして続く12巡目、和田から「リーチ」の発声。

和田

ここまでピンフドラ1をダマで確実に慎重にあがってきた和田が、この場面でリーチを打って勝負に出たことにハッとさせられた。

もともに場に0枚。出あがりのきかないが打たれるのを耐え、を狙うのが和田らしいかとも思えたが、ここは自力で決着をつけに行った!

そして和田の下家涼崎が一発で掴んだ牌は

リーチ一発タンヤオの52005500。ここまで大事に打ってきた和田が初めて「力」を見せ、みごと連勝を遂げた。

 

3回戦結果

和田   +52.8

根本   +10.2

涼崎   △16.8

いわま  △46.2

 

 

 

 

4回戦 ちっちゃいことは気にしない

 

初日が終了した後に残した根本の言葉である。

どっしりと構えて大きくあがろう。

勝利はその先にある。

そんなメッセージにも聴こえる。

打ち手がその闘牌からメッセージを伝えることができたなら

その人は間違いなく麻雀プロであるといえるだろう。

初日を締めくくるこの4回戦。確かにメッセージは伝わった。

 

起家から根本、和田、いわま、涼崎の順

 

1局 ドラ

涼崎の6巡目リーチ。宣言牌のを根本がチーしてとドラのシャンポンに受ける。

同巡でいわまよりが出て根本にクリーンヒット。中ドラドラ5800

 

22本場 ドラ

開局早々に天真爛漫なあがりを見せた根本だがここでものびのびとした麻雀を見せる。

親の和田が6巡目にリーチを打つがここも涼崎から一発目に打たれたをチー。

しかし残りツモがあと1回というかなり深いところで、序盤からとってあったドラを打ってのテンパイを取る。

これが和田の当たり牌。ドラ単騎のチートイであった。1200012600を放銃。

天真爛漫すぎるのもいかがなものかと少し反省点が残った瞬間。

 

23本場 ドラ

放銃によるダメージはなくサバサバしている印象の根本。

思い切りドラを打ち込んだおかげなのか、引きずる様子はまったくない。

落ち着いて仕掛けにいき、白ホンイツの39004800を取り返す。

 

4局 ドラ

ここでも自分らしさを存分に見せたのは18600点と出遅れていたいわま。チートイ發単騎をリーチし、一発でツモり、まさに力のいわま本領発揮。

タンヤオドラドラの手もイーシャンテンにとどまり間に合わず、親かぶりの涼崎、痛い失点。

 

ここより小場が続き、一人リードした和田を除き、団子の状態でオーラスを迎える

 

オーラス点棒状況

涼崎  22000

根本  26600

和田  44700

いわま 26700

 

4局 ドラ

オーラスを迎えた時点でトップと2着の点差は18000点。

2着と3着はわずか100点差、4着まではさらに4600点。

ここで思い切った根本10巡目にリーチ。

高めツモ裏1で倍満になる捲くり手である。

着取りを慎重に行ってダマに構える選択肢もあるかもしれないが、ここは根本らしい天真爛漫のびのび麻雀。

しかしのほうが現実的か、ツモったのはやはり

メンタンピンツモドラウラ(30006000

トップにはわずかに届かないが大きな2着をものにした。

 

4回戦結果

和田   +41.7

根本   +18.6

いわま  △16.3

涼崎   △44.0

 

 

初日を振り返って

和田

「イメージどおり打てた」と3連勝して初日の結果を高評価。

気負わず残りの4回もリラックスして打ってほしい。

 

根本

自他共に認めるのびのび麻雀。1年ぶりの大舞台を楽しんでいた様子。

「のびのびしすぎたかも」と少し反省点も残ったようだが、放銃の失敗を後に引きずらないのが彼女の強さ。まだ何か起こりそうな予感。

 

いわま

「ぼーっとしてたかも」と反省点を多く抱えたいわま。2回戦の根本包囲網ではいい仕事をしたが、後はいいとこなしと自己評価は辛口。次に生かしたい。

 

涼崎

自分の麻雀はどのくらい打てたかとの質問に「70パーセントくらいは」との答え。確かに技術的には定評があり、実際に力と技術の伴った麻雀を見せてくれた涼崎選手。だが初回の大きな失点が響き、いつもどおり打とうと思いつつも、追い込まれ、構え方が変わってしまったのではないだろうか。

 

後半戦残り4回。

和田が落ち着いて首位をキープするのか?

根本の怒涛の追い上げがあるのか?

準決勝2日目のようないわまの大爆発が起こるのか?

一昨年のリベンジとばかりに今度は逆に200ポイント後方から涼崎が差しきるのか?

 

そして女王の座は誰の手に?

 

 

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