コラム・観戦記

FACES - “選手の素顔に迫る” 最高位戦インタビュー企画

【FACES / Vol.01】醍醐大 ~最高位戦入会を断った男とサウナで語る~

(インタビュー・執筆:鈴木聡一郎)

2020年9月中旬、A1リーグ翌日の正午、埼玉県戸田市にある醍醐大の自宅を訪ねた。
呼び鈴を鳴らすと、熊のような大男がぬっと顔を出す。見慣れていなければ後ずさりするところだ。家に入るなり「今日って写真撮るんだっけ?」と確認が入ったため、事前に伝えていた通り撮影をお願いした。
すると、熊は水浴びをしに浴室へ。身支度を整え、スーツにでも着替えてくれようとしているのだろうか。少し申し訳ない気持ちになる。
しかし、5分後に浴室から出てきた熊が衝撃の一言を放った。
「よし、これでもういつ撮られても大丈夫だから!」

部屋着to部屋着。

髪型などもどこが変わったのか、私には全くわからない。独特な感性を持っている熊が本日の対談相手である。最高位戦A1リーグで毎年のように勝ち続ける醍醐 大(だいご ひろし)に話を聞いた。

最高位戦選手ページ→ https://saikouisen.com/members/daigo-hiroshi/
Twitter→ @kiyoharahiroshi

 

最高位戦入会を断った麻雀店勤務時代

千葉県松戸市に生まれた醍醐は、中学から慶應義塾へ。慶應と言えばラグビーだ。

中学から部活でラグビーしてたね。ラグビーって、やると面白いのよ。観てるとそんなに面白くないんだけど。

観ていても面白くないとは、またストレートな表現で醍醐らしさを感じる。

フィールドにいないとわからない「瞬間の戦略」みたいなのがあるんだよね。大学とかになると、全員体格良い人が揃ってたりするんだけど、高校まではそうでもなくて、みんなそんなに体が出来てないんだよね。そうすると、足は速いけど当たりに弱いやつとかいたりして、そこを突破口に攻めたり、そういうのは面白いなと思ったよ。

この辺りは麻雀を観ていてもわかる戦略家の一端と言ったところか。

ポジションはナンバーエイトってとこで、フォワードとバックスのちょうど間ぐらいのイメージだから、何でもやる人って感じ。体もデカかったし、ラグビー部で2番目に足も早かったからね。

そんな体格にも走力にも恵まれた醍醐だったが、左ひざを3回骨折し、水が溜まるようになってラグビーを止める。高校1年生のことである。そんなとき、麻雀と出会った。そして、麻雀に打ち込むようになった醍醐は、大学入学と同時に麻雀店でアルバイトを始める。

大学入ってすぐ、BOYで働いてたんだよね。

BOYとは池袋にあった麻雀店で、元最高位・古久根英孝の店として有名だった。

古久根さんにはかわいがってもらってて、セットとかもめちゃめちゃ誘ってもらったね。セット終わった後に古久根さんと2人で感想戦するんだけど、それが楽しかった。で、あるとき古久根さんから「麻雀プロになれ」って言われたんだよね。

古久根の推薦とあらば、当時の最高位戦入会としてはかなりのエリートコースといったところだ。

でも、そのときは麻雀プロに全くなりたくなかったんだよね。興味がなかった。麻雀プロって仕事だとも思わなかったし、希望とかも持ってなかった。当時は、麻雀プロがこんなにみんな麻雀に一生懸命取り組んでると思わなかったから、ずんたん(村上淳)とか尾崎さん(尾崎公太・元最高位戦)が若手でいて、古久根さんとかが最高位戦にはいたんだけど、この人たちと麻雀やっていきたいなっていう風には思わなかったんだよね。今はみんな強いなと思うけど。

意外にも、この時点で最高位戦の門を叩かなかった醍醐。その後、麻雀とどのように関わっていったのだろうか。

その後、古久根さんとも仲良かった人が経営してた水道橋の雀荘に移ったんだよね。店名が「ラブリーベイベー」ってだけあって、スタッフは女性ばかりで男性は店長1人みたいな感じのお店。そこで店長が辞めちゃったから手伝ってくれないかって言われて、2年ぐらい働いたかな。

2年働いたとすると、大学4年間はこの辺りで終わってしまいそうだが、その後はどのような道を辿ったのだろうか。

卒業近くなって、まあ人として就活するじゃん。で、すごい苦労して不動産会社の内定取ったのよ。5次ぐらいまで面接あって、絵とかも描いて持っていったよ。「理想の街を描いてきてください」みたいな試験があって、きつかった。絵心ないからね。でも、結局単位足りずに卒業できなくて、内定取り消しになっちゃった。来年もう1回就活するのめんどくさくなって、大学中退することにしたんだよね。

では大学中退後、醍醐はいったいどうやって生計を立てていたのだろうか。

地元松戸の雀荘で働き始めたんだよね。そしたら、そこが十条に新店を出すっていうからおれもそっちに移って。そこで仁専(仁専寛史・元最高位戦)と知り合って仲良くなったんだよね。だけど、何年かしてその店が十条店を閉めることになって、次何するかなって。そしたら、その店のお客さんで人材派遣みたいな仕事してる人がいて、「やりたいことないならこういう会社あるよ」って3社ぐらい紹介してくれたんだよね。で、一番面白そうだなと思ったところに入社した。

こうして入社したのはシステム会社だった。27歳の醍醐はシステムを売る営業マンとして入社する。一方、仁専も麻雀店ではなくトレーダーとして別の会社に入ることとなった。麻雀で知り合った2人の強豪が、それぞれ麻雀とは関係のない仕事に就いたのである。

でも、せっかく麻雀に打ち込んできたから、麻雀から完全に離れちゃうのはもったいないなと思って、仁専と一緒にプロテスト受けることにしたんだよね。受けるとこを最高位戦にしたのは、仁専が「ここにしましょうよ」って言ったからだね。仁専がいなかったら最高位戦には入ってなかったと思うよ。最高位戦の知り合いって古久根さんとずんたんぐらいだったし、むしろ知り合いの数で言えば連盟の方が多かったからね。

古久根に気に入られていた醍醐は、実はBOYを辞めてからも古久根とのセットには誘われ続けていた。そこで最も多く打った相手が前原雄大(日本プロ麻雀連盟)だった。そのつながりもあり、連盟選手の方が多く知っていたのだそうだ。こうして、まさかの人任せによって最高位戦に入会することとなった醍醐だったが、安定した成績でA1リーグまで上り詰め、そこでも毎年のようにプラスしているのはみなさんの知るところであろう。

古久根さんといえば、最近たまたま会ったときに「この前対局見たけど調子良さそうだねえ。(麻雀が)ちょっと粗くなったんじゃない?」って言われたんだよね。「いやいや、(A1リーグで)一番粗くないでしょ」って思ったんだけど。でも、粗くなったと思われるのは良いことだと思うんだよね。それだけ読みで通せる牌は切り切れてるってことだから。

この辺りが醍醐独特の感覚。自分は粗くない。でも粗いと言われるようになったのは成長である。熊は貪欲に前向きで、冷静に狩りを続ける。

 

村上淳という世話焼きなキューピッド

醍醐といえば、仲良し夫婦として競技麻雀界隈では有名である。奥さんとはどこで知り合ったのだろうか。

かなちゃんと知り合ったのは最高位戦だよ。

そう。醍醐の奥さんは近藤加那子。醍醐と同時期に入会した元最高位戦選手である。

なんかの大会の打ち上げで知り合ったんだよね。それまでかなちゃんと話したことなかったし、なんなら近藤加那子って選手が最高位戦にいることすら知らなかったよ。おれお酒飲めないから打ち上げとかほとんどいかないからね。
元々ずんたんがかなちゃんと仲良くて、「誰か気になってる人いるの?」みたいな話になったときにかなちゃんがおれの名前を言ってくれたらしくて、その打ち上げでずんたんに紹介されたんだよね。

恋のキューピッド・村上淳。村上ほどキューピッドの格好が似合う40代男性も珍しい。妙なハマり役である。その後、交際、同棲、結婚と、とんとん拍子に進むのだが、最初から何か運命めいたものを感じたりはしたのだろうか。

うーん、そういうのは特にないね。結婚したのはたぶん単にタイミングだし。

インタビューとしては「ビビッときたね」などと言ってもらいたいところなのだが、この辺りの正直さもとても醍醐らしい。

とにかく気性が荒い人が嫌なのよ。若いときって、一緒にいて楽しくて綺麗な女性だったら何も考えず付き合うじゃん。そうやって何人か付き合ったりしてきたけど、いざ一緒に住んでみて突然キレるとことか見ちゃうとさ、好きではあるんだけど、一生一緒にいるのはきついわと思っちゃうんだよね。だから、そういうところがないかどうか確認する意味でも、結婚前に一緒に住まないとおれは絶対結婚できないね。
ちなみに、うちの弟は2回離婚してるんだけど、2回とも結婚前に一緒に住まなかったのよね。デジタルじゃないなあと思ってるよ(笑)。

兄弟の離婚なども間近で見ながら、結婚から10年以上経った今、結婚についてどのように感じているのだろうか。

かなちゃんと出会うまでにも2人ぐらい結婚を考えた人はいたけど、やっぱかなちゃんと結婚してよかったと思ってるよ。つーか、インタビューじゃそうとしか言えないよね。

それもそうだ。本当に正直な男である。それではと、何年か前に醍醐と個人的に2人で話したことを思い返す。結婚の良い面が全くわからないと言う私に対し、醍醐はあっさりとこう言った。「結婚して良いことしかないけどなあ、おれは」。なので、上記の言葉はやはり本心だろう。

全然さみしがり屋ではないんだけど、さみしくないのは今の年齢だからであって、年取るとさみしくなるとも思うしね。今は仕事上色んな人とつながってるからいいけど。そういうことも考えると結婚してると安心感あるよね。さっきも言ったように、意味わかんないのに機嫌が悪くなったりとかは嫌なんだけど、うちの奥さんにはそれがないから一生一緒にいられるわ。グチみたいなのは聞いたりするけど、それは全然嫌じゃないね。

醍醐が麻雀に集中できるのも、奥さんの支えがあってこそなのだろう。本日奥さんはお仕事で外出中。すると、なんと部屋を訪ねてすぐに醍醐が手際よく昼食を作ってくれた。

 

たまねぎとねぎがあれば大体何でも出来る!DAIGOクッキング

まず、たまねぎを剥いてから切っていく。

次に、玉ねぎと豚肉を炒める。その間に、隣のフライパンでハンバーグを焼く。

はい、あっという間に生姜焼きとハンバーグの完成。

いただきます!そして、うまいに決まっていた。

ごはん作るのは奥さんと半々ぐらいかな。おれはそんなに小難しいものは作んないけどね。これ(生姜焼きとハンバーグ)とか焼くだけだし。食材は、たまねぎとねぎぐらいは大体家にあるよ。まあ、たまねぎとねぎがありゃあ何でも出来るからね、大体。

「たまねぎとねぎがあれば何でも出来る」。いや、両方ねぎじゃん。なかなかのパワーワードだが、わからなくもない妙な説得力は麻雀解説でも時々出る醍醐節に通ずるところがある。だが、意外にも醍醐は元々解説が苦手だったと言う。

 

人前でしゃべるのが苦手で、解説もしたくなかった

麻雀の解説とかもそうだし、人前でしゃべるのが元々好きじゃなかったんだよね。

では、その苦手意識をどのように克服していったのだろうか。

1年ぐらい前からかな、麻雀のレッスンをするようになってから人前でしゃべるの好きになったね。

実は醍醐、1年前に麻雀の講師を始めている。

5時間しゃべりっぱなしってこともあるからね。それでしゃべることに慣れて好きなったよ。


ちなみにこの麻雀レッスンは現在の会社での仕事。15年ほど前に麻雀店を辞めて就職した例のシステム会社を、醍醐は1年半前に退職している。

すごく居心地は良かったんだけど、もっと麻雀に集中したいのもあって漠然と辞めようかなとは思ってたんだよね。そんなときに、いしちゃんから連絡がきたのよ。

いしちゃんとは、スリーピース株式会社代表取締役の石山大介だ。

いしちゃんとは水道橋のラブリーベイベー時代に知り合ったんだよね。そのとき、おれも大学生だったし、いしちゃんも専門学校生だった。いしちゃんが、たまたまTwitterでおれを見つけたらしくて、連絡取るの自体久々だったんだけど、急にメッセージくれたのよ。元気?って。で、色々話してたら、「会社辞めるんだったら、うちにくれば?」って言ってくれて。

これが転機だった。

もともと転職活動はしてて、あと2社ぐらい良さそうだなと思ってたとこもあったんだけど、面白そうなのは圧倒的にいしちゃんの会社だった。でも、やっぱり他2社の方が大きいから給料は当然そっちの方が高い。で、どうしようかなと思ってたんだけど、よく考えたらうちは奥さんも働いてるし、そんなに給料も要らないなと思って、いしちゃんとこに行くことにしたんだよね。

こうして1年半ほど前、やりたいことを重視してスリーピースに転職することとなったわけである。スリーピースのスローガンは「ダマされるな!人生は楽しい。」。奇しくもその言葉通りの転職となった格好だ。

会社入って最初は普通に働いてたんだけど、半年ぐらい経ったときに麻雀事業を立ち上げる話になった。そこで「HQ麻雀」を作って、おれはそっちの事業をやることになったんだよね。

HQ麻雀とは、2019年4月にスリーピースが立ち上げた、麻雀の普及を目的とした事業である。醍醐が麻雀レッスンの講師をしているのもこのHQ麻雀という事業の中の話だ。ちなみにHQとはHigh Qualityの略とのこと。

HQ麻雀公式Twitter→ @HQMJ2020

この事業って、儲けより第1に麻雀の普及が理念としてあるんだよね。とはいえ、株式会社の1事業なわけだから最低限の収益は上げないといけないし、できれば大きくしていきたい。最初は自分の給料が出ればいいな、ってとこを目標にやってたんだけど、少し軌道には乗ってきて他の人も雇えるようになってきたんだよね。おかげさまで。


講義を行う河野直也(左)と醍醐大(右)

HQ麻雀は、最高位戦A2リーグの河野直也も講師として雇用し始めたりと、順調に規模を拡大している。この事業規模拡大について、醍醐はどのように感じているのだろうか。

スタートするときはそんなにわからなかったんだけど、思ったより受講の需要があることを感じてるよ。これはやってみないとわからなかったことかな。需要に合わせて、事業を大きくしていきたいとは思ってる。だから、直也みたいに麻雀の技術もあって、人と接するのが得意な人を雇用していける場所にできればいいなって。

醍醐自身も実感している受講需要。さて、では気になる麻雀講義の内容はどのようなものなのだろうか。

まず、お客さんを初級、中級、上級で分けて講座を用意してるんだよね。初級はとにかく楽しく。だから直也メインだね。おれみたいなおっさんよりは直也みたいな明るい兄ちゃんがやった方が楽しいから。中級以上が主におれの担当。中級は牌効率とか形がメインで、勝てるための基礎を学ぶ感じ。上級はいわゆるガチで、毎回テーマを持ってやっていく。上級までくると、ネット麻雀の高段者とか超上級者も受けてくれたりするから、そういう人にとって学びになるようなことも入れるようにしてるね。ちなみに、1コマ5時間で、上級は2コマ連続だから10時間ぶっ通し。中級と上級は半分以上座学だね。

中・上級者に対して座学というのはあまりイメージがなかったが、実際にはどのように運営しているのだろうか。

確かに中・上級者向けでオフラインの座学ってこれまであまりなかったかもしれないんだけど、おれは座学だけでもいいと思ってるぐらいなんだよね。麻雀って同じ局面がないから、どこまで行っても考え方と知識を学ぶしかないからね。能力を伸ばすのは実は座学だと思ってる。
座学では当然テキストが必要になるよね。直也はテキスト作りとかできないから、テキストは全部おれが作ってるよ。

なるほど。これはお笑い芸人のネタを書く方・書かない方のような分担なのかもしれないなと感じた。それに当てはめるなら、確かに河野は舞台に立たせてしまえばとてつもなく輝くが、ネタを書くところは全く想像できないほど天真爛漫なキャラである。

そうそう、直也はそんなキャラだよね。で、このテキスト書くのが大変なわけよ。中級者向けなら1コマ1~2週間で作れるんだけど、上級者向けの難しいやつとかは1か月かかったりするからね。講義ペースが各レベルで月2コマずつぐらいだから、テキストを一通り作るところはめちゃめちゃ大変だったね。

テキストをチラっと見せてもらったのだが、書籍を何度か書いた経験から言えば、このテキストを作る作業のペースは異常だと感じた。1コマで書籍の1~2章分、30~50ページに相当する内容なのではないか。それを上級者向けともなると、企画から練り直してテーマを変えて作りこむのだから、途方もない作業に思えた。と、同時に、ある疑問が湧いた。そもそも受講者のレベル分けはどのようにやっているのだろうか。

基本的には、受講者さんが自分で申し込んでくるんだけど、例えば上級って中にも色んなレベルがあるじゃない?そこはもう話しながら個々にレベルを把握していく感じだね。そういう場面では、ネット麻雀の段位って客観的でわかりやすいから目安としてはすごく便利だよね。

確かに、雀力の評価基準を一律に作ることなど不可能だろうが、ネット麻雀の段位がわかりやすいというのは非常に納得感がある。醍醐自身もネット麻雀「天鳳」で高段者まで上り詰めたことで知られるネット麻雀プレイヤーだ。次にネット麻雀との付き合い方について話を聞いた。

 

浜松の川に落ちて天鳳を始めた

そもそも、麻雀店勤務時代からネット麻雀をやっていたのだろうか。

いや、やってなかった。天鳳始めたのは最高位戦入ってからなんだよね。10年ぐらい前に前の会社で浜松近くの駅まで営業に行ったんだけど、街灯もないし帰りとか真っ暗なわけ。本当の真っ暗ね。で、コンビニの光が遠くに見えたから、その方向にまっすぐ歩いたのよ。そしたら、そこが川でさ。川に落ちて、足を骨折したんだよね。

浜松近くの夜が漆黒であることはわかったが、それがネット麻雀とどう関わってくるというのか。

足を骨折するとさ、家で仕事することになるじゃん、1か月ぐらい。そのときに天鳳始めたんだよね。それがなかったら天鳳やってないかも。そのときはけっこう打ってたんだけど、骨折が治ってからはそんなにできなくなっちゃったんだよね。

確かに、足が治れば営業の移動にも時間を取られるし、麻雀店で練習もしやすいのだから、ネット麻雀にこだわる必要はなくなりそうだ。

いや、そういうわけじゃないのよ。家の中のPC置いてある場所の関係で、夜に奥さんがドラマ見てる横で天鳳やらなきゃいけないんだよね。そうすると奥さんに話しかけられるし、集中できないじゃん。人としてちゃんと受け答えはするからさ。しかもおれはそんなに麻雀をシステム化しないようにしてるから、その場その場で一から考えて選択していくんだよね。だから、話しかけられることにものすごく弱いのよ。それでそんなに打たなくなっちゃったんだよね。

麻雀のバランスと同じぐらい大事なバランスが家庭にはあった。とはいえ、そこからも少しずつ天鳳を打っていた醍醐は、十段(最高段位まであと1段という高段位)まで駆け上がり、自身が言うところの便利な目安として、客観的に雀力を証明して見せた。現在、日常的にネット麻雀を打つわけではなくなった醍醐だが、天鳳名人戦には出場している。醍醐のネット麻雀が気になる方はぜひそちらを覗いてみてはいかがだろうか。

第十期 天鳳名人戦公式ページ→ https://tenhou.net/cs/2020/09tm/

 

将棋を観ると寝つきがいい。そこから将棋を観るようになった

ここで、麻雀から離れて趣味について聞いてみた。

うーん、将棋かな。大学生のとき、寝つきが悪かったんだよね。

この男に質問すると、なぜこういう突拍子もない語り出しになるのだろうか。浜松経由のネット麻雀に続いて、寝つきの悪さ経由の将棋になりそうな雰囲気が漂ってくる。

どうやってもなかなか眠れない日が続いて困ってたんだよね。で、あるとき、日曜日にテレビ付けたら将棋のNHK杯やってたのよ。これ観てたときにすぐ寝ちゃったんだよね。そのとき、これだ!と思って、それからNHK杯は毎回録画して寝るとき付けてたんだよね。そしたらやっぱりすっと寝れて。そこからだね、将棋観るようになったのは。

おそらく、このような将棋の入口は世界初なのではないか。どうしてこの熊はこうもおかしな獣道を通ってこられるかと呆れながら続きを聞く。

それで、観てるうちに詳しくなっていったんだよね。そのうち将棋の機関誌とかも買ったりして。今でも寝れないときは将棋観るし、それ以外にも普通に楽しく将棋観るから、Abemaでは麻雀より将棋観てる時間の方が確実に長いと思う。指すのは全然しないけどね。

そんな「観る将」の醍醐には好きな棋士もいるのだそう。

好きな棋士はすごくベタなんだけど、元々は羽生さん(羽生善治九段)を好きになったところからだね。今だと藤井さん(藤井聡太二冠)とか、木村さん(木村一基九段)とか。とにかく強い人が好きなんだよね。やっぱ応援してる人には勝ってもらいたいじゃん。だから強い人、勝ってる人を自然と応援してるかな。

意外性のある男・醍醐だが、好きな棋士については誰もが知っているトップ棋士であるところが面白い。応援している人には勝ってもらいたいというのも人間らしいではないか。

観るのが好きといえば、人狼も観るの好きなんだよね。人狼もけっこう昔から観てるね。昔テレビで人狼やってるときに山本美月さんが出てたんだよね。そのとき山本美月さんがすごく好きだったから、そこから観始めた。すげえきれいな人だけど狼臭いなと思って観てたの覚えてるわ。

そういえば醍醐と好きな女性の話などしたのは初めてだが、山本美月さんが好きとはなかなか気が合う。ところで、人狼もやはり自身でプレイしたりはしないのだろうか。

人狼の話をすると、人狼の番組出ようよってみんな言ってくれるんだけど、出たくはないんだよね。番組出るとなると、がんばらないといけないじゃない?研究とか練習とかがんばるっていうのはしたくないんだよね。他のことをがんばる時間があるなら、おれはそのがんばりを麻雀に向けたいからさ、やっぱり。もちろん人狼がんばってる人を否定する気は全くないけどね。あくまでおれの話。

純粋な醍醐らしいなと思う。どうりで好きな女性の話もしたことがないはずである。思えば醍醐と話す内容はほとんど麻雀、たまに仕事ぐらいであった。今日は意外な話を聞けて新鮮である。
ちなみに、この話をしているころ、私と醍醐は全裸だ。ごはんも食べ終え、近所のスーパー銭湯にやってきたのである。

これを趣味というのかわかんないけど、サウナはめっちゃ好き。少なくても週2回はサウナ行くね。休みの日とか、午前中に行って晩飯前までいるから、7、8時間ぐらいいたりするよ。入って休んでの繰り返しで。

それほどにサウナを愛してやまない醍醐だが、試合前のルーティンとしてもサウナが登場する。

試合の前日は仕事休みにしてもらってるから、必ずサウナ行くね。試合前日ってさ、どんだけ頭使わないで過ごせるかだけを考えるからサウナとか最高だよ。試合前日にできることって頭休めることぐらいしかないからね。汗かくと夜よく寝れるし。

試合前日の過ごし方をここまで徹底している選手は多くない。こういうルーティンを徹底できるところにも、醍醐が持つ安定感の基があるのだろうなと感じた。ちなみに、醍醐が世界で最も気持ちいいことは、サウナ後の水風呂、だそうだ。

 

麻雀しかやってこなかった男が麻雀の説明を始めた理由

ここでサウナから上がる。


ここまで話を聞いて思ったことがある。それは、醍醐の人生はほぼ全て麻雀のつながりの中で動いてきたということだ。人生の転機で必ず麻雀そのものや麻雀から生まれたつながりが関係している。私が「すごいな、人生が全部麻雀で決まってるじゃん」と言うと、醍醐は笑いながら応えた。

まあ、それ(麻雀)しかやってないからね。

新卒で麻雀店に就職し、そこでの縁でシステム会社に入ると同時に、一度は断った最高位戦に入会する。続いて最高位戦で奥さんを見つけると、またもや麻雀の縁で転職。そして、現職では仕事も麻雀一色に戻った。麻雀とともに生きてきた醍醐が、次に見据えるのはどんなところなのだろうか。

最近、「note」始めたのよ。

noteとは、文章メインのメディアプラットフォームで、ブログとSNSがくっついたようなサービスだ。醍醐はこのnoteをおもむろに始めた。
醍醐大のnote→ https://note.com/4778

最初はHQ麻雀の宣伝のために始めたんだけど、今一番伝えたいのは、最高位戦の打牌が遅いことの説明だね。

放送でも打牌が遅いとのコメントをいただくことがある通り、確かに巷の麻雀と比較すると最高位戦の対局ではかなり打牌に時間がかかっていると感じる。

その思考時間が無駄な時間じゃないってことをわかってほしいんだよね。でもさ、何も説明せずにそれを理解してくれっていうのは無茶な話だから、打牌の意図とかをできるだけ丁寧に説明していきたいんだよね。対人要素とかも含めて思考を全て晒すことはできないけど、受けとか読みの話は書いていきやすいから、そういう説明は続けていきたいね。なので、対局観て「あれ?」って思ったところがあったら、ぜひ醍醐noteを観てください!


醍醐の取材を終えた私は、銭湯を後にする。醍醐はといえば、銭湯に残るとのことだった。現在16時。この後いったい何時間サウナに入るのかは定かではないが、1つだけわかっていることがある。
サウナに入った醍醐は、今夜将棋を観ながら眠りにつき、麻雀の夢を見る。

 

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