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平賀聡彦選手インタビュー:「第一回麻雀プロ団体日本一決定戦」

「私には理解できないほどの天才」

こう評したのは他でもない村上淳。

幾多のトッププロと対峙し、互角以上に渡り合い、数々の優勝を勝ち取ってきた村上でさえ、その才能を羨む。

 

最高位戦Aリーグ所属 平賀聡彦(ひらがとしひこ)

平賀 聡彦

1973年生(42歳) 山梨県出身
29期前期入会
入会後ストレートでAリーグ入りを果たした唯一の選手。
10期連続Aリーグ連続在籍期間は金子正輝に次ぐ。
第21期發王戦 3位
第22期發王戦 準優勝
第24期マスターズ 準優勝

 

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(C)AbemaTV

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「第一回麻雀プロ団体日本一決定戦」(主催:㈱サイバーエージェント)の開催が決まり、最高位戦も代表選手8名の選考を行うことになった。主催者指名の最高位近藤、理事会推薦の一馬、金子、村上、石橋、水巻。ここに加わる残り2名の選考方法は「選手間投票」※1
※1:Aリーグ、B1リーグ所属選手を対象とし、A~B2リーグ所属選手の連名記入投票により行われた。

得票数1位は佐藤聖誠。次いで選出されたのが平賀聡彦である。

現發王位・今期Aリーグ好調の中嶋和正、第38期最高位の新井啓文、他にも土田浩翔、宇野公介、坂本大志、園田賢らを抑え、圧倒的な得票率(36%)で選出された。

競技選手として脅威的なアベレージスコアを持つ平賀であるが、ビッグタイトルには縁遠い。それなのになぜここまで圧倒的な支持を受けたのか。実はその理由は対局者目線の一言で表すことができる。

とてつもなく強いから

第一回麻雀プロ団体日本一決定戦(以下、対抗戦)は第3節終了時で全32選手中、個人成績首位をキープ。第41期最高位戦Aリーグも現状3位(203.5p)で決定戦進出が目前である。

対抗戦では「最高位戦の秘密兵器」とチームメンバーが期したものの、存在感が強すぎて、各メディアに注目選手として披露されてしまい全く秘密にならなかった平賀聡彦。その強さと人並外れた”感覚”の正体に迫る。(聞き手/文責:高倉武士)

■「全て、信頼しあえる仲間たちがいるおかげ」

全4節の対抗戦は現在第3節が終了。この中で、平賀は個人成績1位(+267.9p 着順:5-5-2-0)である。ちなみに最高位戦チームのトータルスコアは294.1p。一見チームポイントのほどんどを平賀が一人で稼いだようにも受け取れるが、平賀は自身の結果について「信頼できるチームメイトがいるからこそだ」と強調する。

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「たまたま調子がいいってのもあるけど、自由に打たせてもらってるから。聖誠やばっしー(石橋)が他団体のスコアにも対応して、選択を変化させてくれているようだけど、そもそも俺はそういう麻雀は打てないし。対局間も他の卓は観ないようにして、次の自分の対局のために集中を切らさないように努めてるんだけど、チームメイトは受け入れてくれてるんだよ。自分のポイントが最高位戦のポイントになっているのは嬉しいけど、個人順位には意味がないと思ってるからさ。個人順位を競ってるなら周りも打ち方は変わってるだろうしね。」

実は最高位戦チームは今回の対抗戦に挑むにあたり、緻密な戦略を用意していない。それは普段から十分に研鑽を積んでいる仲間への高い信頼感もあるが、コミュニケーションを十分に取り、仲間の個性をそれぞれが理解し、受容していることの表れでもある。唯一の約束事は「自分が不調でも個人成績に左右されず、チームのためだけを思って、それぞれがベストパフォーマンスを発揮することに全力を注ぐ」というものであった。対抗戦開幕直前に開催された最高位戦チームの決起集会で金子正輝は「これだけのメンバーが揃った最高位戦は多分優勝する。ただ、団体戦であることを意識して負けてる時に無理せず、牌を押さえて、マイナスを抑えることも重要だぞ!」と発破をかけた。間髪入れず、平賀は「それ、僕は苦手です。5回ラスとっても10回トップ取るんで勘弁してください!」と応えた。金子は「・・・そうか。平賀はいつも通りでいいよ!」と。このやり取りを他のメンバーたちは微笑ましく見守っていたことが最高位戦チームの象徴であろう。

サッカーに例えるなら、俺はフォワードをやらせてもらっている。”野人”岡野みたいな存在だと思う。チームから自由にやってきていいぞと認めてもらって、点を取るプレイだけに専念できている。チームの中にはゴールキーパーもディフェンダーもミッドフィルダーもいて。ただ、俺は点を取るときはたくさん取れるけど、取れないときは全然ダメなタイプのフォワード。そんな選手を選出してくれた最高位戦の戦術がハマっている感じだと思うよ。

■第40期最高位決定戦で流した涙と訪れた「転機」

平賀聡彦の最高位戦リーグ戦における戦績は抜群である。入会後Aリーグまでストレート昇級を果たしたのは後にも先にも平賀だけであるが、10期連続でAリーグに在籍していることも驚異的な実績の一つである。決定戦進出経験が皆無であることは意外なのだが、その競技人生で壁にぶつかったことはなかったのだろうか。

今年は101競技連盟の順位戦にも出場させてもらってるし※2色々勉強しようと思って取り組んでるよ。なぜなら第40期最高位決定戦で誠一さんが最高位になったから。
※2:平賀の101競技連盟順位戦への出場は最高位戦理事会の中でも長期間に渡り検討されたが、特例として承認された。

不意に発せられた近藤誠一最高位の存在と平賀の関係性。これについては詳しく聞かせてもらわざるを得ない。160920dsc_0040

基本的に、誰に最高位を獲られようがリスペクトできる。ただ、後輩や自分がライバルだと思ってる設楽さんに獲られたりしたら悔しい気持ちはでるんだろうけど。誠一さんが第37期最高位になったときは一切悔しさはなかった。ただ、第40期最高位の獲り方・・・配信を観ていて、誠一さんの打ち方が飯田さんっぽいっていうコメントが流れて、実際俺もそう見えてたんだよね。それまでは自分の系統としては”飯田→張→平賀”というところに自分は位置付けられていると思ってた。いわゆる感覚派って称される打ち手のライン。それまでの誠一さんはデジタル寄りの打ち手だと思っていたし、強いタイプとは思っていなかった。ただ、あんな対局を見せられると・・・

第40期最高位決定戦を配信で観戦していた平賀は悔しさのあまり涙を流したという。他人の麻雀を観戦し、涙を流したのはこれが初めてだそうだ。

現役選手としてはその道を走っているのが自分しかいないと思っていたのに、スタイルチェンジした誠一さんにその道でぶち抜かれたことを実感した。自分は走っているつもりだったけど、実はのんびり歩いていたんじゃないかってことに気づかされた瞬間だったよ。俺何やってるんだろう・・・って

そして平賀は自分の覚悟を示すかのように、近藤最高位に対し「5年以内に必ず、誠一さんに追いつきますから」と直接宣言したのである。そして真っ先に思い出したのは5年前の飯田永世最高位との最後の対話。飯田正人と101競技連盟の接点、そこにある飯田正人と金子正輝の歴史、そして飯田に掛けられた「平賀くんはいいモノがある。ただ、基礎力、守備力は足りないところもあると思うから、101競技連盟のルールもやってみたらいいんじゃないのか?」というアドバイス。

ありがとうございます。とは言ったものの、俺もバカだからさ・・・忙しさにかまけて、聞き流しちゃってアクションに繋げられなかった。ただ、去年の件(近藤誠一が第40期最高位を戴冠)があったから、やれること全部やろうって。

これが今期に懸けた平賀聡彦のアクション、第37期順位戦(主催:一般社団法人日本麻雀101競技連盟)出場のいきさつである。

■最高位戦のプライドと誇りに賭けて

団体対抗戦も9月25日(日)にいよいよ最終日を迎える。平賀のコメントは仲間や最高位戦へ向けた信頼と感謝に終始する。

(メンバーに選出され)「麻雀プロ続けてきてほんとによかったなと思ったし、自分を認めてくれる人がいるのがすごく嬉しかった。

応援してくれる人のために、最高位戦のために、己の存在を証明するために!精一杯頑張ります!!

最高位戦Aリーグ誰もが死力を尽くして闘っている。結果はいつも紙一重、それが勝負の世界、受け止めて各々の道を進んでいく。そんな鎬を削りあうライバルだからこそ尊敬できるし、仲間になった時に心から信頼できる。(中略)いまこそ魅せろ、最高位戦の魂を!

麻雀だから思い通りにならないことが多いのも、自分が全員のなかで実力ナンバーワンじゃないことも、もちろんわかってるけど、敢えてボクは言う。必ず勝ちます!!ボクには結果でしか、仲間の想いに応えることが出来ないから。最高位戦の応援、よろしくお願いします。

ゴールは目立つ。でも一人では戦えない。絶対的に信頼できる仲間だからこそ、いつかパスが来るのを信じて前線で待ち続けられるのだ。決戦の日まであと一週間。オレの仕事は得点というポイントを積み重ねること。最高の仲間と最高の結果を獲るために!そのチームの名は、最高位戦。

決戦が終わったある日「いやー、勝負事だしやっぱり最後までドキドキしたよ。平賀は相変わらず変な麻雀しか打たねーし。やっぱりお前ら最高におもしれえーよ!!」優勝記念に選手たちから貰ったピアスを着けた代表と、笑いながら飲める日が来るように。己を賭けて全身全霊で頑張ります。

One for all. そんな言葉がピタっとはまる。

チームメンバーは平賀についてこのようなメッセージ

水巻渉:頼もしさがハンパない!さらに大舞台に強いイメージも付いた

佐藤聖誠:他団体戦に強い印象で、今回も間違いなく好成績を出してくれると思っていた!でもまさかこんなに暴れてくれるとは思っていなかったので、本当に頼りになる!

村上淳:私が投票したのが平賀さん。理由はただ一つ「強いから」。平賀さん1人に勝たせてもらうわけには行かないので、最終日全員で勝ってぶっちぎる!!!

点取り屋の平賀が最終日もゴールを量産するのか、あるいは大将近藤誠一や他の選手がそれを上回るゴールを決めるのか。大注目の第一回麻雀プロ団体日本一決定戦最終日は9月25日(日)14:30キックオフ

 

【インタビュー後記】

平賀の麻雀は「狂気」と「無邪気」というキーワードを伴う。
先日放送された第41期最高位戦Aリーグ第11節で魅せた地獄単騎待ちの追い掛けリーチなどは記憶に新しい。
トップ選手の多くが打てない牌でも平賀は打つ。あるいはトップ選手の多くが守備を選択する局面でも平賀の感覚次第では攻撃に向かう。
加えて、対峙した選手が異口同音に唱える卓内での「圧倒的存在感」。凄みすら感じさせるその雰囲気は、私の対局経験上、競技プロの中で、ナンバーワンである。これが「狂気」と評される所以。

一方、これはここだけの話であるが、このインタビューの待ち合わせに平賀は30分の遅刻。理由は「サッカー日本代表”ジョホールバルの歓喜”を取り上げたTV番組の録画に見入ってしまい、熱くなっていたから」とのこと。そして早速インタビューでは、最高位戦チームをサッカー日本代表に、自分を岡野選手に例えて熱く語ってくれる。麻雀ではないがこれも「無邪気」な一端。

それでも平賀は多くの後輩に慕われる。その優しさや麻雀に対する挑み方、ひたむきさに憧れるからである。

平賀は最高位戦内では珍しく弟子をもつ。(B1リーグ昇級間近の今西選手)その弟子の後ろ見に対局会場に来ているにも関わらず、同卓であった私にさえアドバイスをしてくれることもあった。
「前局の手組み、押し具合はとても良く、加点できたのに、次局どうして変化をつけにいったのか?もったいない」あるいは
「トイパイが雑すぎる。もっと牌、対局は丁寧に扱わなければならない」といった部分まで。

平賀の言葉だから有難いと感じたし、すんなりと受け入れられた。これは先輩だから、上位リーガーだから、という理由ではなく、説得力があるからに他ならない。

さて、9月25日(日)の麻雀プロ団体日本一決定戦最終日、9月28日(水)の最高位戦Aリーグ最終節、そしてその先にある・・・

平賀が果たしてどんな麻雀を魅せてくれるのか。どんな結果をもたらしてくれるのか。
ただただ楽しみである。

 

「第一回麻雀プロ団体日本一決定戦」(主催:株式会社サイバーエージェント)大会公式ページ

関連記事:近藤誠一最高位インタビュー:「第一回麻雀プロ団体日本一決定戦」(16/08/17UP)

◇最高位戦チームの応援、よろしくお願いいたします!◇

平賀聡彦選手 twitterアカウント@makko_samurai

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