コラム・観戦記

【發王位を連覇するまで その1】

發王戦のシステムは予選以降はトーナメント形式。
同一メンバーで決められた半荘数を闘い、卓内上位2名が勝ち抜けていく。
トーナメント1回戦~4回戦は半荘2回勝負。トーナメント5回戦、準々決勝、準決勝は半荘3回勝負。

トーナメント形式のタイトル戦は他にプロ連盟主催のマスターズ、プロ協会主催の雀竜戦などがあります。
それぞれルールは若干違いますが、發王戦トーナメントはオカ無し10-30と順位点が大きいので順位戦になりやすいと思います。
最終戦は条件に合わせて打つだけですが、通過ポジションにいる人は同じく通過ポジションにいる人と結託して局を進めにくるので、先行しているとかなり優位に立てます。

私は發王戦で勝つために、半荘2回勝負のトーナメントで通過する着順パターンを調べたことがあります。
詳しく書くと数学的な話で終わってしまうので書きませんが、半荘2回勝負なら初戦トップを取ればほぼOK、トップが取れない場合はラスを引かないことがとても重要です。
これが半荘3回勝負になると素点もまぁまぁ開くので順位だけでは計算できなくなってきますが、基本的には同じで、3回勝負のときは2回終わって順位点を±0以上にしておくとかなり勝ちやすいと思います。
私はずっとトーナメント形式が苦手でしたが、順位点を意識して他家の着順操作をすることで勝率がアップしました。

第20期發王戦予選で面白い局を紹介しましょう。
なお、文中は敬称を略して書かせていただきます。

第20期發王戦トーナメント5回戦 2戦目南1局

トーナメント5回戦なので半荘3回勝負です。
対戦相手は、
大柳誠 最高位戦Aリーグ
新谷秀隆 一般
オワタ 天鳳代表



1回戦の結果は
佐藤 42.0
大柳 13.1
新谷 ▲11.6
オワタ ▲43.5

そして2回戦も恵まれ、南入してトップ目でした。
こうなるともう3回戦を待たずに通過を決定付けてしまいたい。
通過決定のパターンはいくつかある。
自分がトップならまずOK。
大柳がトップで自分が2着でもOK。残された二人は一人を大きく沈めてトップを取らないといけないのでかなり苦しく、これもまず通過できる。
自分が2着だったとき、大柳以外がトップだと紛れる可能性が出てくる。つまり新谷・オワタにトップを取られるのはあまりよくない。この半荘3着以下に落ちるよりはマシですけどね。

南1局でトップは自分、南家。
親が現在2着目オワタ。3着目が西家大柳、北家新谷がラス目。
オワタの親はまくられたり肉薄される前に落としたい。この親さえ無事落とすことができれば通過率がグッと上がると思っていました。

5巡目に私の手はこう。
 ドラ

北家ラス目の新谷が変則的な切り出し。
「鳴いてくれたら嬉しい!」と思って打としました。
新谷が満貫くらいをアガってくれても、放銃さえしなければ構わない。それよりもラス目のドラポンには向かっていきにくいので、周りをけん制してもらおうという意図でした。
変則的な切り出しなのでドラをトイツで持っているケースは少ないですが、1枚以上持っていることは多いので他家にも鳴かれにくいですし、新谷に鳴いてもらったときのメリットが大きすぎます。

私の心の声が届いたのか、新谷はをポン!
こうなると次に切る牌は決まっています。です。
5巡目にがポンテンになるときは捨て牌はもっとおとなしくなるはずで、捨て牌が派手なときは手牌が整っていないことが多いんです。つまりまだテンパイしていない可能性が高いので、他家もまだ踏み込みやすい。
そこで駄目押しの!これを鳴いてくれると全員ベタオリで新谷の一人旅になりやすい。
新谷はこれも鳴いてくれて、無事オワタの親を落とすことに成功。
しかも流局、新谷の一人テンパイという理想的な局消化でした。
鳴かれたのはたまたまですが、最初のドラが鳴かれなかったら自分でアガりに行こうと思っていたのでそれはそれでOK。
結局オワタ2着、新谷3着、大柳ラスという理想的な並びで2回戦終了。
3回戦を消化試合にすることができました(#^.^#)

こういう戦略的なことは普段から多用する方ですが、順位点をきちんと計算して闘えるようになってから戦略の幅が広がったように思います。
ただこれはやはり先行していないと難しく、初戦トップを取れるかどうかがとても重要でした。
第20期は準決勝だけ初戦ラス。それ以外はすべて初戦トップとかなり恵まれていました。

準決勝の対戦相手は石橋伸洋2冠(最高位・發王位)、朝武雅晴(プロ連盟)、曽木達志(最高位戦)。
初戦は東場に石橋のダマ18000に刺さって手痛いラスでしたが、2回戦はなんとかトップ。
最終戦曽木との着順勝負に勝利し、決勝進出を決めたのでした。


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