コラム・観戦記

採譜者フミさんの『迷宮を歩く』 ⑤

どうも前回のコラムでは随分と脱線してしまって、驚かれた方も多いだろう。
なにしろ麻雀のコラムで出てくる名前が太宰、芥川、漱石じゃあね!

自分でも麻雀への取り組み方には、それなりの考えを持っているつもりだが、Aリーグの選手たちと肩を並べるつもりはない。
ぼくの立場は打ち手ではなく、あくまで観戦者である。

1期から始まって、確か9期10期くらいまでは、関係者(記者及び採譜者)以外は特別な許可がない限り立ち入り禁止、密室での対局だった。今では多数の観戦者たちが対局の卓まわりを囲む。
それだけではない。メディアの発達で何万もの人たちがライブで見ることもできる。

今の選手は、どう打つか(もちろん第一義だが)だけではなく、何を見せられるかも求められている。
なんだか自己弁護のようだが、打ち手からのものだけではなく、観る側からの視点に立ったこんなコラムも、何かの参考になるかも知れないと思っている。

 

 

38年もの間よく見続けて来たと思う。それだけ人を惹きつける深いゲームだ。

基本的な骨格は変わらないが、ルールは随分と変遷してきている。

それにつれて、戦術、戦略も多様化・進化してきていた。
自分としては、骨格的な基礎力があり、それぞれのルールにかなった、戦略的な対応が必要とされてくるのだと思っている。

よくある何切る問題だが、確かにその解答が実戦で選ばれるとは限らないのは承知の上で、パズルと割り切って結構真剣に取り組んでしまう。
現時点でのシャンテン数、受け入れ枚数、また次のより良い形へのステップを考えて答えを出す。
何人かで答えを探ってみると、それぞれの選択の理由がみえてきて楽しいのだが、そんな中で頑として答えを拒否した人が。
最初は、問題自体は常に14枚からなので、

『今何をツモってきたか』

を聞かれた。これは他にも数人はいたんだが、

「骨格・基礎的な問題として、場況とかなしで考えて欲しい。例えば、親の第一打だとして」

とぼくが付け加えたところ、すかさず

『チョンチョンの2枚は何だったのか』

と切り返された。付け加えるように、

『開局なのか、そうでない場合前局がどういう局だったのか?』とまで!


麻雀が対応のゲームであるのは確かだが、その対応も、前提となる基礎力・デッサン力があってこそのものだと思っていたので、びっくりしたのと同時に、そこまで!と妙に感心させられたのを覚えている。

デジタル・アナログ(オカルト?)こんな言葉が出てきたのはいつごろからだろうか。
ファミコンでの麻雀ゲームが出現した頃かな?

手で触れられるリアルな麻雀と、画面上のものとは、明らかに違う。

例えば、局面がだいぶ見えてきた中盤以降、完全安全牌の西が打ち出されたとして、リアルな実践では、その打牌についてくる表情がかなりの手がかりとなる事がある。完全に手が入って、余剰牌として打ち出されたのか、通せる牌が種切れとなって、虎の子の安全牌を手放したのか?

でも画面上の麻雀では、この区別が難しい。リアルな実践では、その表情の差で対応すべき相手が増えたり減ったりする。こんな部分がデジタルとアナログの差なのか、程度に思っていた。
自分としては、デジタル・アナログの混合派だと認識しているので、完全デジタル派の旗印を掲げる二人、村上・水巻にインタビューしてみた。
まず二人ともに、『デジタル派は自分の得する(損しない?)選択をする』という答えが返ってきた。ではアナログ(オカルトはよくわからないので放っておこう)派は損しようと選択するのかと、意地悪な反論をしたくなったのだが、一応大人なのでやめておいた。
アナログ派の人たちだって、方法は違っても、やはり自分の得となる選択をするはず。
何回も繰り返すが、僕は単純に「基礎がデジタル、対応がアナログ」だと思っている。
両氏共に僕から見るとかなりどころじゃなく対応力が高い。

水巻のインタビューの時に、三人麻雀からの実戦での手牌から質問してみた。

で四巡目、既に他の二人からはと、が打ち出されている。

また、前提としてこの場合のサンマはツモれば二人から同等の点数、つまり倍の点数がもらえる。
枚数では単純に打
に受ければ見えているだけで7枚。

だと4枚。

数値的には枚数もツモった時の得点もに受けた時のほうが多い。
ぼくは、まず、アガリ優先なので打
に受けた。その時点での姿勢、考え方の選択なので出た結果は放っておこう。得点は倍にはならないが、は自分ひとりだけではなく三人でツモる感覚だ。
普通の四人麻雀でも、トップ目で早くアガリきりたい時などは有効なんじゃないかなぁ。特に南場の2着目の親を早く蹴りたい時とかは・・・
まぁ、
に受けることがあるとしたら、開局でドラ雀頭の時くらいかな、リーチに出て、ツモ期待で、と水巻に振ってみたら、なんとほぼいつでもに受けるんじゃないかとの答えが。

リーチでも、山にはの方が残っていそうなのでとの答えが・・・
単純に見えている数値がデジタルってわけじゃないのね!

今期の水巻は、その対応に追われる場面が多く、位置的には苦しいが彼の麻雀への姿勢は信頼に値する。
村上は、相手に対応させる場面をうまく作ることが出来たので、きっちり基礎力を発揮できて上位につけることができた。
最後に村上の牌譜を取り上げておこう。

 

二巡目に七対子イーシャンテンとなり、かなりの人がドラ対子を確定させる切りを選ぶんじゃないかな。
七対子嫌いなのと、四面子一雀頭の5ブロックで戦いたいので、僕も彼と同じ打
!8巡目のドラ七切りも絶妙かな。
結果だけではなく、この手牌進行は、姿勢としても、機能的方面でも本当に美しい。

オマケ。
(やっぱり僕も人の子。結果は別だと大口を叩いているが、前出のサンマの手牌、ツモ
でした^^)

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