コラム・観戦記

第35期最高位決定戦⑥

決定戦半荘16回を終えて、土田さんがデータを出してくれた。
アガり回数…30回
飯田46回、水巻40回、崇35回なので、ダントツの最下位である。なぜこれでトータル3位に食い込んでいるかというと…
アガり平均打点…7630点
一回あたり子供のマンガンくらいの打点があるのだ。これは水巻4290点と比較するといかにかわし手を使っていないかがわかるだろう。ダマテンでマンガンの手もリーチでハネマンにしに行った結果である。佐藤6200点、飯田5870点もかなり高い数字であると思うのだが…
メンゼン率…92%
高打点を支える一番の要因はとにかく「なるべく鳴かない」
佐藤88%、飯田86%、水巻80%。
あれだけ仕掛けてアガっているイメージがある水巻でさえ、5局に一回しか鳴いていない。それだけ鳴きは難しいということだ。比較的メンゼン派の4人が揃ったからとも言えるが、相手のレベルが高ければ高いほど仕掛けは危険となる。なぜなら、仕掛けはメンゼンと比較して数倍読み易いからだ。もちろんブラフ仕掛けを多用して相手の読みをズラす戦法を使う打ち手も最近かなり増えてはいるが、アガりに向かう仕掛けはかなりのところまで読まれる。相手によって麻雀を変える必要はないが、相手の技量は考慮する必要はあるだろう。
このデータを見て、自分は「自分らしく打てている」と思った。傍から見れば無謀に見えるリーチや、見切りが早過ぎるように見えるオリも、このバランスが取れててこそのものだからだ。とにかく集中して三人の手牌を読み、行く時と見切る時を正確にしなければならない。自分の生命線だ。
そんな中迎えた最終日東1局、起家スタートの自分が11巡目に先制リーチを放つ。
  ドラ
ドラがで場に一枚も見えていない。巡目も深いことを考えれば、かなり危なっかしいリーチだ。
だがしかし、自分はいままでこういう時のために「村上淳のリーチは怖い」というイメージを作りあげて来たのである。もちろん水巻、崇ともに「村上の親リーチか。リーチのみの愚形もあり得るな」とも読むだろう。とはいえ11回中10回が手出しのこのリーチ、例えドラをトイツで持っていても「タンピン形なら打ったら高いな…」と考える。特に有利な立場の崇であればなおさらだ。崇は他三人誰がトップであろうと自分がラスにならなければ有利は変わらないのだ。慎重な選択にならざるを得ない。
実は10巡目のを残し打として、11巡目テンパイとらず打とすればメンタンピンツモ裏裏の6000オールもあったが、対局中は1巡でも早くリーチを打つことが大事だと思っていたのでそのアガりはない。2、3巡リーチが遅れることで1、2牌危険牌を処理できた他家がアガりを拾う、という牌譜を腐るほど見て来た自分にとって、中盤から終盤にかけてのテンパイ外しは相当自信がなければやらない。親であればなおさらだ。
思惑通り一人テンパイで流局となった。序盤から一番手出しが多かった崇が怖かったのでかなりホッとしたのを覚えている。自分のテンパイ形を見て少しでも「押すべきだった」と思ってくれたらなおよい。とにもかくにも、自分の人生をも左右する大事な半荘四回は、自分の一人テンパイという形でスタートした。 続く

コラム・観戦記 トップに戻る