(インタビュー・執筆:徳岡明信)
(あれ、私が今見ているのってFACESだよね?綺麗なモデルさんの写真が冒頭から出てきたけど…)
そう思われたあなた、ご安心下さい。
こちらは間違いなく最高位戦選手の半生にスポットを当てたコラム『FACES』で、お間違いないですよ。
冒頭のモデルさんの様な佇まいの女性も立派な麻雀プロです。
しかも最高位戦リーグはB2リーグ所属、女流最高位戦リーグでは決定戦にも残ったこともある実力派。
相川まりえ(あいかわまりえ)
華やかな容姿の彼女の華やかな半生と麻雀ライフを紐解いていく。
英才教育を受けて育った幼少期
愛知県瀬戸市に生まれた幼き時の相川。某ゲームの敵で出現する虫取り少年を連想させる。
一人っ子だった相川は親御さんの愛情を独り占めし、英才教育を受けて育った。
小学生の時からいろいろな習い事に通っていました。水泳、バトントワリング、ピアノ等、あと小1から塾にも通わされていましたね。でも何事も長続きしなかったんですよ。
その後は中学受験をして南山女子中学(愛知県でもトップクラスの偏差値の中高一貫校)に入学しました。小学生の時から勉強は好きだったのですが、中学に入ると周りのレベルが高すぎてついていけなくて…
飽き性な性格の中でも今でも唯一続いている趣味は歌うことですね。
歌うことが今でも好きと話す相川が実際に歌を披露しているYouTubeチャンネルはこちら。
抜群の歌唱力でSNS上でも話題となった。
(高校時代の相川、陽キャのお手本みたいな見た目だ)
高校の頃から「歌ってみた」とかの動画を見て配信への憧れを持っていました。
そこで3年前くらいに思い立って1本「歌ってみた」の動画を撮ってみたんですよ。当時は機材もろくなものじゃ無かったのですが、反響も良かったし定期的に更新したかったので思い切ってデスクトップのPCと録音機材を買いました。
最初は週1のペースで「歌ってみた」を投稿していたのですが、案の定みるみるうちにストックが無くなってしまって…(笑)それでも週1のペースでは何かを届けたかったので最近では雀魂の配信も初めてみました。
(相川の「歌ってみた」動画のワンシーン)
(雀魂配信のワンシーン。相川の顔芸が稀に見れるかも!?)
麻雀との出会い、そしてプロの道へ
大学に進学した相川は、ついに麻雀との出会いを果たす。
当時付き合っていた男性がずっとアプリで麻雀をやっているの見て、そんなに面白いのなら私もやってみようと思って始めたのですが、当時は役も全然知らないし、鳴きボタン押して裸単騎になっても役が無いからアガれないのですよ。
毎回テンパイしているのにアガれないから「何でだ!?」って思っていました(笑)。ただ別にルールを学ぼうとはあまりしていませんでしたね。
その時にちょうど「咲~saki~」のアニメを見たのがのめり込むきっかけでした。麻雀のルールが分からなくてもアニメ自体は楽しめたのですが、ルールを覚えるともっとアニメを楽しめるのじゃないかと思ってそこから麻雀のルールを検索して覚えていった、って感じです。
元々頭を使う事が好きなのですっかりハマっちゃって20歳ぐらいの時から大学の友達と麻雀店でセットをするようになっていました。
(20歳頃の相川、この頃はメイド喫茶と系列店のメイドカジノバーでアルバイトをしていた。)
飽き性の相川がハマった麻雀。いつしか麻雀店で働きたいとも思うようになったという。
大学の友達と麻雀店で麻雀を打っている内にいつしか私も雀荘で働いてみたい!って気持ちが芽生えて。21歳になった年から『プレイボール』という麻雀店でアルバイトを始めました。
その時にちょうど大学を辞めようか悩んでいた時期で、店のオーナーに店長にならないか?と誘われて店長として働くようになりました。それからトータルでは6~7年在籍していましたね。
プロの世界に興味を持ったのもちょうどこの頃で、当時一緒に働いていた高志(伊藤高志)に最高位戦の話を聞いたりしていました。高志は最高位戦東海支部の1期生として入って、私はその翌年に受験しました。
高志はもちろんの事、優さん(鈴木優)にも入会当時から非常にお世話になりましたね。
こうして晴れて最高位戦の門を叩くこととなった相川。
相川が入会当時からお世話になっていたという鈴木優に、多忙なスケジュールの中時間を作って頂き相川について話を聞かせて頂いた。
入会当時の相川さんは一言で表すなら「天真爛漫」な子でしたね。もの凄くサバサバした女の子だなというのが第一印象でした。
そんな相川さんだからこそすぐに東海支部の中で打ち解ける事ができたのかなと思いますし、いつもニコニコしていて、周りの雰囲気を良くしてくれていました。まさに最高位戦東海支部の太陽みたいな存在ですね。
麻雀に関して言えばストレートに言うなら入会当時の相川さんはとてもヘタクソでした(笑)。でも単なるヘタクソじゃあ無かったんですよ!彼女は地頭が賢い子なので、10の事を聞いたら8、9は吸収できるタイプでした。勉強会なんかでも積極的に参加して他の選手の良いところを吸収しようと必死に頑張っていました。
なので、他の女流選手に比べると麻雀の成長スピードはとても速かったのではないでしょうか。
彼女が結婚せずに麻雀にのめり込んだ人生も見てみたかったですね。
ん!?結婚!!?
そう、実は公表していなかったが、相川は一般男性の方と入籍している。
別に隠したい訳でも無いし、ただ今更改めて公表するってもの何か変だし…
徳岡さん、FACESの記事の中でしれっと結婚のことについて触れてもらっていいですか?
何とも相川らしいお願いだなと思った。
近年の流れであれば 結婚→公表という流れが一般的にも見えるが、相川が結婚した当時は実はそういう風潮でも無かった。むしろ雀荘のゲスト活動なども今より多くは無い時代だ。結婚しているかどうかは仕事にも多少なりとも影響してくる時代であった。
まさか相川の結婚発表を筆者がする日が来ようとは…
とにもかくにも今後とも家庭と麻雀を両立して幸せな日々を過ごしていって欲しいと心から願っている。
第19期女流最高位決定戦、ヘタクソの挑戦
相川に最高位戦に所属している中で一番印象に残っていることは何かと質問したところ、まぁ予想通りではあったが、第19期女流最高位決定戦に進出したことだと語ってくれた。
(入会2年目で決定戦進出を決めた相川のオープニングでのインタビュー場面)
※画像引用:スリーアローズコミュニケーションズ
現行の女流最高位戦のプレーオフ制度が出来て初めての年でした。地方プレーオフから決定戦までの道程は自分でも引くくらいずっとツイていました。そのままツイていて欲しいなぁと思いながら挑んだ決定戦1日目は-141.9Pのボロ負けで…対局が終わったのが遅くて愛知まで帰る終電が無かったので、その日は同じく決定戦に残っていた大澤さん(大澤ふみな:元最高位戦日本プロ麻雀協会)の家で泊めてもらう事になったんです。
大澤さんと家で2人きりの時にふと「どうやったら麻雀強くなれるんですか?」って漠然とした質問を投げかけてみたんです。そしたら返答のひと声目が
「今日初めて同卓したけどあんたはめっちゃ下手だなと思ったよ」
でした。4半荘しか打ってないのにヘタクソって思われるってことは、私は相当麻雀が下手なんだなと思わされました。
入会してからずっと勝ってばかりだったので私は強いと思っていた天狗の鼻を折ってくれた大澤さんにはとても感謝しています。第19期女流最高位決定戦は最下位で終わりましたが、自分がヘタクソだと思い知らされるとても有意義な試合になりました。
「自分がヘタクソだと思い知らされるとても有意義な試合になった」
筆者はこの言葉に胸を打たれた。
結果が全ての麻雀界において、負けても自分に対するプラスを見つけて有意義なものへと変換する。
鈴木優もインタビューでおっしゃっていたように、相川の何事も吸収する力が、敗北の中でも発揮されている。
この敗北を機に相川は麻雀への向き合い方を一変するのである。
決定戦でボロ負けしたのが悔しくて悔しくて、いろんな人に麻雀を教わりに行きました。
特にお世話になったのは河野直也さんです。
当時名古屋で河野さんをお招きして勉強会をやっていたのですが、そこで直也さんに麻雀を一から教わりました。手組や押し引きの引き出しがどんどん増えていくことが楽しくて仕方なくて。それが今の私の麻雀の根源になっています。河野さんは私の麻雀の師匠ですね。
女流Aリーグのみならず、今期の最高位戦リーグは関西B2リーグ所属。初の通年リーグまで辿り着いた相川は奮闘している。
今期は関西B2リーグで戦っているのですが、やっぱり強い人とリーグ戦で戦えることは嬉しいです。特に今期入会したおかもとさん(岡本壮平)がまぁ強いこと。
その中で自分の麻雀がどれだけ通用するのか、また相手の強いところをどれだけ吸収できるのかが毎回楽しみです。
強者との戦いに胸が躍る相川。今回のインタビューで彼女の麻雀に対する向き合い方には驚かされた。
可愛いだけが売りの女流プロではない。
私は麻雀プロなの。麻雀が強くないと意味が無いの。
彼女のインタビュー中の言葉の裏で聞こえてきた心の叫び。
どうかいろいろな人にこの記事を通じて届いて欲しい。
ライバルは自分自身、相川まりえはまだまだ成長する
最後に今後の目標を相川に聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。
ん~…特には無いですね…
もちろん女流最高位を獲りたいとか、もっと麻雀が強くなりたいとか漠然としたものはあります。でも私は常に今を精一杯頑張りたいので。ライバル視している人も特にはいないですし、昔からライバルは自分自身だと中二病っぽいことを言い続けてきました(笑)。でも本当にそれは思っていて、やっぱり自分のまだまだ弱い部分に勝たないと強くなれないと思っています。
今後も東海支部に残り続けて、与えられた機会を逃さずに精一杯頑張っていきたいです。
自分自身に真剣に向き合いながら、大好きな麻雀と歌で楽しく自己表現し続ける相川の姿。
レンズ越しだけでは伝わらない彼女の魅力が伝わったらいいな。
そんな事を思いながら、筆者は相川からもらった記事用の沢山の自撮り画像を一枚一枚入念にチェックしている。