コラム・観戦記

【第38期最高位決定戦第2節観戦記】中郡慧樹


決定戦初日を終えて、スコアは以下の通り。

新井啓文    +155.8
近藤誠一    +111.1
村上淳        △93.6
佐藤聖誠    △174.3

最高位戦ルールはオカが無いため、順位点と素点によりポイントが変動する。
すなわち、トップを獲っても素点を稼がなければ大幅にポイントを伸ばすことができないため、縦長の展開になることが珍しい。

逆に言うと、ポイント差がつきすぎてしまった場合は、ポイント上位者を追いかけるのが困難を極める。

全20回戦とはいえ、4半荘終了時点でトップを走る新井と最下位佐藤の差は330ポイント。
これはトップラスを4回連続で決めてようやく逆転できるかどうかという点差である。
現状のポイント差以上に離されるのは優勝争いからの脱落を意味することとなるであろう。

特に現時点でポイントがマイナスの村上、佐藤はこの2日目の出来が今決定戦の結果を左右しかねない。
負けられない、勝負所である。


5回戦
起家から佐藤-村上-新井-近藤の順。

最初に本手が入ったのは佐藤。

東2局 ドラ

北家佐藤の9巡目。


ツモでテンパイだが、佐藤の選択はヤミテン。
対局後に話を聞いたところ、
「誠一さんとぶつかると思っており、誠一さんの現物待ちなのでヤミテン」とのこと。
たしかに捨て牌を見れば、速度的にぶつかりそうなのは西家近藤であるが、
それでも巡目と待ちの強さでリーチの選択もありそうだ。

しかしここは場況や他家の思考を重視する佐藤の選択がピタリとはまる。

11巡目に手牌をスリムに構えた新井から、リーチなら打たれなかった可能性の高いが出て8000。
トータル首位からの加点であれば満足だろう。
開始前はやや緊張気味に見えた佐藤、一息つくことができたか。

一方でフラストレーションが溜まる展開が続くのが村上。
東1局2本場で近藤とのリーチ合戦に負けて3900は4500を放銃。

今局は親で



 

という好配牌を貰ったのだが、いかんせんツモがかみ合わない。
11巡の間に2枚しか有効牌を引かず、結局以下のようなイーシャンテンのまま横移動で親が落ちてしまう。


佐藤のアガリ牌を持ってこなくて良かったと思ったかは定かでないが、
勝負手でなかなかアガリが拾えないのは点数的にも精神的にも苦しいので、
なるべく早くアガリをものにしたいところではあるが・・・。

南1局 ドラ

南家村上の1巡目。


   ツモ

3トイツで、やや重たい配牌。
ここから第一打にを切り出していく。
七対子、チャンタ、あるいはツモ次第では一色も見ての選択か。

筆者の考える村上の強みとは、リーチによる攻撃はもちろんだが、
まとめるのが難しそうな手牌や後手を踏みそうな場合でも、常に押し返せる手格好を作っていくところである。
本譜でもその押し返しを見せるので、是非ご覧いただきたい。

6巡目の西家新井の手牌。

 

   ツモ

 

ここからの2枚切れを見て打
決定戦1日目を見ていて感じさせられたのは、新井の前に出るタイミングの見極めの良さである。
ドラ無しで本手にはなりそうにないこの手牌、6巡目にすぱっと見切りをつけられる打ち手がどれだけいるだろうか。

イーシャンテンとはいえ自分が後手を踏む、もしくは先制が入った場合に押し返す魅力がない手牌なので、場に2枚切れの安全牌を抱えて引き気味に構えるほうがたしかにバランス良く思える。
現状23400持ちのラス目とはいえ、まったく焦りは無い。

他方、7巡目の東家佐藤の手牌。

 


 

三色になれば打点十分のイーシャンテンにを引いて打とする。

 

 

親だけに引きのピンフリーチでも良しの構えである。

その佐藤が打った(2枚目)を近藤がポンしてテンパイ一番乗り。

 

   ポン

近藤の雀風に対する筆者の印象は「試合巧者」である。
自分が勝負手とみればギリギリまでアガリを求めて押し切るし、
相手が勝負手とみれば軽い仕掛けで局を潰したりもする。
かと思えば、傍目にはぶつかる価値がありそうな手であっさりオリたりもする。
掴みどころが無い相手ほど恐ろしいとはよく言ったものだが、
この局でもその持ち味を存分に発揮する。

本譜、東家佐藤、南家村上の捨て牌が変則的であり、
ドラが固まっていた場合には大物手が出てもおかしくない。
対する近藤はポンして1000点のカンチャン待ちであり、を仕掛ければ守備力は下がるものの、他家より先にアガリがあると踏んだのだと思われる。
そして、近藤の読み通り、なんとこのカン待ち、場に1枚切れであるがヤマに残り3枚。果たして本手とぶつかる前に捌けるのか。

ここに親の佐藤が9巡目にテンパイ即リーチで襲いかかる。



 

を引き入れ、ピンフ高目三色の待ち。
この時点でがヤマに2枚、がヤマに3枚という絶好の待ちである。

このリーチを受け、同巡の村上。
南家村上は、道中でドラを引いて以下のような勝負手となっていたところにツモ


   ツモ

 

現状は七対子のイーシャンテン、かつ仕掛けてのホンイツやチャンタも見えるが、
村上はさほど悩まず現物のを打つ。
が1枚切れとなっており、リーチ後に仕掛ける価値は無いということか。

オヤの佐藤の捨て牌をご覧いただきたい。
捨て牌はやや変則に見えるが、手出しを見ると
前々巡が手出し、前巡に1枚切れの手出し、最後にを手出ししてのリーチとなっている。
単純にが最後まで必要な手牌であったと考えれば、
第一打にを打っているのでを関連牌としてかなりの確率で持っており、
そうなれば形がかなり早い段階で整っていた面子手も容易に想像できる。

村上としては、オヤの佐藤からのリーチ、
自分がテンパイでなければ無筋を押すに値しないということだろう。

道中で村上はと落としていくのだが、その間に有効牌を重ねて、



 

というテンパイで追いつく。このはヤマに2枚生き。

また、をポンしてカンテンパイだった近藤だが、


  ツモ 打
  ツモ 打

 

   ポン

 

と手牌を変化させてオヤリーチを落とそうと粘る。

しかし、ここは佐藤に軍配。
村上の手牌


   ツモ

 

ここにツモときて打
が1枚切れではあるが、のほうが固まっていると読んでの待ち替え。
結果的に三色でない方を選択したが、裏が乗って5800の放銃となった。

半荘終了後に「いやー、あれだけちょっと押しすぎかなぁー」と話していた村上。
たしかに6400をアガるとかなり有利な状況となるのだが、
は両面待ちならかなり放銃となりそうな牌であり、
加えて14巡目という条件も加味すれば、現物を抜いてオリる選択もありそうだ。

南4局1本場 ドラ

オーラスは村上が高目ツモで4着から3着に浮上するリーチを11巡目に打つも流局し、
佐藤-近藤-新井-村上の並びで終了する。

5回戦結果
佐藤    +39.3
近藤    +11.7
新井    △14.6
村上    △37.4

5回戦終了時トータル
新井    +141.2
近藤    +122.8
村上    △131.0
佐藤    △135.0


6回戦
起家から佐藤-村上-近藤-新井の順。

南2局 ドラ

東場から激しい叩き合いとなり、持ち点は以下の通り。
村上178
近藤436
新井249
佐藤337

東家村上の配牌



点数状況的になんとしても落としたくない親。
翻牌のが重なればホンイツの12000が見えるので、ひとまず打

2巡目にツモ
が1枚切れたのでリーチ進行も見据えて打
3巡目にツモでドラドラとなる。

しかし、南家近藤が3巡目にして早くもこの牌姿。



 

タンヤオ三色のイーシャンテンである。

7巡目、高打点でオヤの村上と、好形でスピードがありそうな近藤の対決に、佐藤がドラのをツモ切って参戦。


   ツモ  打

 

手牌は一応イーシャンテンであるが、あまりアガリがありそうな形ではなく、
どちらかといえば現在の点数状況を踏まえて「親の村上になら鳴かれても良い」ぐらいの感覚であろう。
村上にひとアガリしてもらい、現状3着目の新井をまくってもらった方が佐藤にとって都合が良い展開となる。

このとき、村上の手牌はここまで成長していた。


 

打点が12000で、仕掛けの利くイーシャンテンになるため、いくら門前派の村上ともいえどもポン。
のイーシャンテンにとる。

だが、村上がイーシャンテンの段階で先にテンパイを入れたのが近藤。


   打

 

ドラポンの村上から切られるを鳴かずに、を引き入れての門前テンパイ。
鳴けば1000点のかわし手になるのだが、
チーして打となった場合にかなり河が弱くなることを嫌ったのだろう。
結局、あっさりを出アガリして村上の大物手をかわすことに成功する。

南3局の親はトップ目の近藤。
この局、近藤がどれだけ点数を稼げるかということに注目しようと思っていたところ、
突如トップへの道をこじあけてきたのが佐藤。

南3局 ドラ

6巡目佐藤手牌


   ツモ

ここからトイツ系の手役を意識して打と構える。
この局佐藤は2000/4000をツモれば、トップ目でオーラスを迎えられる状況。
リーチタンヤオの両面よりはトイツ系で手役を狙った方が満貫を作りやすいと判断しての選択だろう。

7巡目、ツモで打



 

すでに新井が翻牌を仕掛けており、
将来的に打ちづらくなるであろうドラ跨ぎを早めに処理し、
七対子で即リーチをかけやすい牌を残す、佐藤らしい実利にかなった一打である。

8巡目、ツモで打



 

自分で既に切っているであるが、
新井がとペンチャンを払っており、イーシャンテンもしくはテンパイもあると読んで、今のうちに危険牌を処理しておこうという思考。

11巡目、ツモが3枚切れなので残しの

12巡目、ツモで打


 

この巡にが3枚切れとなったのだが、
巡目的にテンパイとなる可能性があるのは七対子だけと判断してか、アンコのを1枚外す。

13巡目、ツモで打


 

2枚切れの単騎でテンパイ。
ヤマにいるか誰かが安全牌として残している牌なので即リーチの選択もあるが、佐藤の選択はヤミテン。
ここでリーチをしないのも場況を意識してのものである。
「前巡に切られたで、誠一さんが押してきているのかオリているのかがわからなかった」と話してくれた。
2枚切れの単騎というテンパイが、
仕掛けを入れている南家の新井とぶつかる分には見合うが、親とぶつかるのは見合わないという価値判断。

次巡、ツモで今度は打のリーチ。



 

オヤの近藤は13、14巡目にを手出しし、
どちらかといえば引き気味に打っていることから、
打点的にも枚数的にも勝負になると踏んだ佐藤が1枚切れのでリーチに打って出る。

これに一発で飛び込んでしまったのが仕掛けを入れていた南家の新井。


   ポン

 

ここからツモ切りので裏ものり12000放銃となる。

手牌に現物がの2枚あるのでオリるには困らないことと、
自分の手からドラが見えていないこと、残り巡目を含めたらオリたほうが若干得なようにも思えるが、
新井の「満貫を放銃しても3着目、現状テンパイで場に1枚切れのを切らないのは損」という主張も十分頷ける。
ここは冷静にアガリまで持っていった佐藤の手順を讃えるべきだろう。

オーラスは新井が村上から12000をアガるなどしてラス抜けに成功。
佐藤-近藤-新井-村上の並びで終了する。

6回戦結果
佐藤    +45.7
近藤    +23.9
新井    △12.8
村上    △56.8

6回戦終了時トータル
近藤    +146.7
新井    +128.4
佐藤    △89.3
村上    △187.8

5回戦、6回戦と佐藤が連続トップ、村上が連続ラス。
5回戦開始前と比べて、佐藤と村上のポイントがそっくり入れ替わったような状況となった。

村上が苦しいのはもちろん、佐藤もそこまで安堵している状況でもないだろう。
新井、近藤にラスを押し付けられず、トータルポイントで差をなかなか縮められていないからだ。


7回戦
起家から村上-近藤-新井-佐藤の順。

南1局1本場 ドラ

東場は細かいアガリの応酬となり、南1局に佐藤が2000/4000をツモって一人抜け出したところ。
以下の点数状況。

近藤282
新井276
佐藤407
村上235

ここまであまり目立っていない新井が、突然躍動し始める。
対局後の感想で「5半荘、6半荘目の途中までは全然自分らしく打てていなかった」と語る新井。
筆者としてはアガりたいところできちんと押し切り、無理そうな手牌ではきっちりオリているように見えていたため、やや意外な感想であったが、
「自分らしく打てているか」「違和感のない打牌選択ができているか」という点において、新井自身としては不満だったということだろう。

南2局 ドラ

南家新井の1巡目がこれ。


3巡目までの間にが2枚場に打たれてしまうのだが、新井は微動だにせず。
ターツが揃っていないこの手では1枚目を仕掛けない打ち手は多いように思うが、2枚目は渋々仕掛ける打ち手も少なくなさそうである。
新井の思考としては、おそらくこんなところ。
は雀頭で構わない。先手が取れなければ安全牌としても使える。
この手牌はどのみちをポンするか自力でアンコにしない限り勝負手とならないため、
1巡目の形ならまわりの手牌の膨らみに期待する」

3巡目にが重なると、ターツが足りてホンイツに向かう。



 

はもう無いものの、1巡目と比較してかなり安定した形といえるだろう。
ツモ次第ではメンホンチートイツも見える。

そして6巡目に村上の切ったをポン。


   ポン

新井の選択はスリムに構える切り。
がもう無いためを切るとにかかる比重がかなり大きくなってしまうが、以下のようなメリットもある。

一つは、スリムに構えれば他者からの押し返しがあっても安全に手を進めることができること。
もう一つは、他3人からは新井の手牌がかなり整って見えるため、他家を対応させられるということだ。

実際、をポンさせた村上は6巡目に



 

というようなリャンシャンテンであったが、新井の切りを見てオリを選択している。

周りを対応させながら9巡目にツモ4s、13巡目にツモで新井は以下のテンパイ。


   ポン

 

最終手番でドラのをツモり、大きな3000/6000のアガリとなった。

南3局1本場 ドラ

ここまで手牌と展開に恵まれていない村上が気を吐くアガリをみせる。

4巡目にを重ねて以下の形のイーシャンテン。



オヤの新井が仕掛けを二つ入れているが、
持ち点状況から、周囲を牽制しつつツモ次第で高打点のアガリに向かう仕掛けとも考えられるので、
(実際に安全牌を抱えてのホンイツリャンシャンテン)
ある程度は自分都合で進行していくことになりそうだ。

このあと8巡目のツモをツモ切り。


   ツモ  打

ピンフ狙いなら打となるが、
ソウズの横伸びとオヤの新井への将来の危険度を比較して切りを選択する。
ターツが足りていて一通にはあまりならない形なので、この辺りは打っていての感覚を含めてのものになりそうだ。
にかなり自信がある場況だったことも理由に含まれると考えられる。

13巡目にをツモ切るのだが、8巡目にを打っていた場合には


   ツモ

 

この手牌ならを打つ手順になるのでアガリに結びついていない。
マンズのアガリやすさを見ての8巡目の好判断であった。

14巡目に佐藤がリーチ、同巡に村上がを引き入れての追いかけリーチ。



 

ヤマに3枚残りのを一発ツモ、裏も乗って3000/6000となった。

このアガリで2着に浮上した村上は、オーラスも2000点をアガって2着を確保する。
連続ラスを引いていた村上としては、ほっと一息といったところ。

7回戦結果
新井    +43.5
村上    +11.8
佐藤    △10.4
近藤    △44.9

7回戦終了時トータル
新井    +171.9
近藤    +101.8
佐藤    △99.7
村上    △176.0


8回戦
起家から新井-佐藤-近藤-村上の順。

東2局2本場 ドラ

佐藤と新井がぶつかる。
結果として新井が勝つのだが、
両者の手組が非常に興味深いのでご覧いただきたい。

佐藤の配牌。



 

ピンズで3トイツあり字牌が4種類。
おそらく最速はメンホンチートイツになるだろう。

新井の配牌。


 

第一印象はあまりぱっとしない。
しかし、これが満貫になるのだから、麻雀はわからないものだ。

3巡目、佐藤はが重なりリャンシャンテン。



 

第一打に佐藤以外の3人とも字牌から切り出しており、
字牌がかなりヤマに残っていそうな場況である。

他方、新井の手牌は4巡目に



 

を引いて若干手が引き締まるものの、
まだテンパイまでは遠い。
ちなみにを新井は2巡目に切っているのだが、
「この形ならば」と4巡目に引き戻したを手のうちに残している。
一気通貫も見ての選択であり、打点思考の高い新井ならではであろう。
目論見通り6巡目に、7巡目にを引いてイーシャンテンとなる。


これに対し、すでにイーシャンテンとなっていた佐藤は、
9巡目にテンパイするとを切ってリーチ。


は村上の第一打、は近藤の第二打でそれぞれ1枚切れなので、単純に佐藤からの見た目枚数はそれぞれ残り2枚。
待ちとしてはどちらも大差無いのだが、この単騎選択が天地の差となる。

「速度的に村上とぶつかると考えていたので、(村上のリーチが来ると想定して)村上の現物であるにした」という佐藤のコメントを貰ったが、
近藤も6巡目にドラのを切っておりそこそこまとまっていると考えるのが自然だろう。
実際、9巡目の時点で近藤も村上もイーシャンテンとなっている。

たしかに全員がぶつかる場面ではリーチでも良いと思うのだが、
ドラのが場に3枚打たれており、手役が絡まない限り打点が高くなることはない。
そのため、親がリーチときた場合にはぶつかるのを避ける選択も出てくるため、
リーチかヤミテンかの判断は打ち手によってかなり分かれそうだ。

ちなみに、実際には新井が安全牌としてを残しており、
佐藤の選択によって放銃を免れた形の新井が11巡目にを引いて追いかけリーチとなる。


この待ちは実にヤマに5枚残り。
ほどなくリーチの佐藤が掴んで8000の放銃となった。

 

 

南1局 ドラ

新井が一人抜けた以下の点数状況。

新井416
村上270
近藤260
佐藤244

新井以外の3人はなんとしても素点を叩いて新井に迫りたいところ。

南家の佐藤が4巡目に以下の手牌。


   打

 

一気にホンイツへ寄せていく。

一方、西家の近藤も5巡目で以下の手牌。


   打

 

マンズかにくっつけばターツが足りるので、打点の見込める手で先制できそうだ。

5巡目に近藤が切ったに佐藤が反応する。



 

ポンの打だが、局面をリードしようとしたのかそれともやや焦ったか。
現状ターツが足りていないので、字牌を重ねるかピンズの下でさらに1メンツが必要となる。
手牌速度もそこまで早くなっていないので、ここは鳴かずに1枚有効牌を待っても良かったように思われる。

さらに村上の切ったを佐藤がポン。

 

   ポン  

 

佐藤の目から見ては全て良さそうなので、なんとか早くテンパイしたいところ。

8巡目に近藤は以下のイーシャンテン。



 

待ちならかなりアガリが見込めそうだ。

佐藤にを鳴かせた村上もイーシャンテンとなっていた。



 

456の三色含みのイーシャンテンである。場にが3枚切れとなっているが、高目しか無いと思えばむしろ喜ばしいところか。

10巡目にテンパイが入るのは近藤。


   ツモ

 

ここでなんと打のテンパイ取らず。
仕掛けに対応した選択だが、佐藤の最終手出しがポン出しの
まだイーシャンテンというケースも結構ありそうなので、筆者ならばテンパイを取りそうだ。
現状役アリの両面待ちで、を引けば確定の一気通貫、を引けばタンピンになる手替わりもある。

結局すぐを引いて以下のテンパイ。



 

役は無いが、ホンイツの佐藤にぶつけられる待ちではないためヤミテン。

このヤミテンに対し、が重なったオヤ新井が11巡目に前に出てきて12巡目にテンパイ即リーチ。

 

子方3者ともこのリーチに向かっていくことはできず、新井の一人テンパイで流局となった。

結局この半荘、リードを守るのではなく広げていった新井がトップで終了する。
特に印象的だったのが、主導権の握り方と流局時テンパイ率である。
一人テンパイが2回、二人テンパイが1回なので、実に7500点をテンパイ料で稼いでいることになる。
単純なアガリ以外でもしぶとく点棒を増やしていく打ち方が今決定戦のポイントにも反映されているように思われた。

8回戦結果
新井    +53.8
佐藤    +6.0
村上    △17.6
近藤    △42.2

8回戦終了時トータル
新井    +225.7
近藤    +59.6
佐藤    △93.7
村上    △193.6

引き続きトータル首位は新井。
高打点を狙った手組がピタリとはまり、本日も70ポイントほど上積みした結果となった。
初の決定戦ではあるが緊張も見られず、伸び伸び打っている印象を受ける。
今決定戦の3日目以降はニコニコ生放送で動画配信をする予定となっているが、
生放送でも同じように打てるかどうか、というところはひとつのポイントになると思われる。

新井を追いかけるのは2番手の近藤。
2日目で50ポイントほど沈んだが、新井との差は160ポイント。まだ1日で入れ替わる差である。
終わってから内容について話を聞いたところ、

「うーん、あんまり良くも悪くもなかったかなぁ・・」

というコメントをもらった。
7回戦8回戦で得意とする試合運びがうまくできず、連続ラスを引いてしまったところが満足いかなかったポイントであると思われる。
3日目以降はまた気持ちを入れ替えて新井と優勝争いをしていくと予想している。

3番手の佐藤。
本日80ポイントほど負債を返済し、負債の返済完了までもう少しの位置につけた。
佐藤は「あ、こういう風に考えているんだな」ということを打牌選択で主張するのがとても上手な選手だなと筆者は思っている。
3日目以降は首位を走る新井を捕まえるための打牌が増えるだろうが、その主張がはまったときは優勝も見えてくるだろう。

4番手の村上。
本日は100ポイントほど沈んでしまい、かなりの負債を抱えての3日目以降に突入する。
ただ、今日1日はリーチ負けやツモられての失点が多かったのは間違いない。
本人からも「内容は決して悪くない」というコメントをもらっているが、内容としてはむしろ良いと思えるのである。
3日目以降に風が吹けば、村上の爆発力でまだまだ最高位を狙えると確信している。

 

 

2日目が終了し、トータルポイントとしては新井が一人抜け出した形となった。
3日目以降、どのように新井包囲網が敷かれていくのかが注目となる。

第38期最高位決定戦、まだひと波乱ふた波乱ありそうな余韻を残して2日目が幕を閉じた。

(文中敬称略)
文:中郡慧樹

 

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