コラム・観戦記

【第38期最高位決定戦第1節観戦記】平賀聡彦

去る10月6日、ついに今年の決定戦が開幕した。
最高の戦いに挑む4名は次のとおり。

 Aリーグ1位

 

   新井啓文(アライケイブン) 

 26期後期入会
 34歳 AB型
 主なタイトルなし
 昨年のB1リーグ、入会12年目で涙のAリーグ昇級から1年。
 Aリーグ1年目の今年、中盤から抜け出すと危なげなく首位通過。
 雀風は手役重視高打点型(本人曰く趣き深い打ち方)

 

 Aリーグ2位

 

 村上淳(ムラカミジュン) 

 22期入会
 38歳 B型
 第35期最高位 第5期最高位戦Classic 他
 Aリーグ第1節、マイナス120でまさかのブービースタートとなったが、
 徐々にポイントを挽回し終わってみれば2位通過。
 雀風は門前重視リーチ型(リッチ大好き!)
 4人のなかではやや守備寄り

 

 

 Aリーグ3位

 

 佐藤聖誠(サトウキヨマサ) 

 31期前期入会
 30歳 O型
 第20期21期發王位
 2月に發王位を連覇すると、クラシック決勝進出、3年連続決定戦進出!
 特にAリーグでは、最終日金子と同卓のデッドヒートを制して3位通過。
 今年最も波に乗っている男。
 雀風はバランス重視攻撃型(鋭い攻め返しに特徴がある)

 

 

 現最高位

 

 近藤誠一(コンドウセイイチ) 22期入会
 50歳 A型
 第37期最高位
 昨年プロ16年目にして初タイトル最高位を獲得。
 長年最高位戦の運営を支えてきたが、選手としては知名度が今一つだった。
 しかし今年はメディアなどの露出も増え、一気にその名が世に広まった。
 雀風はバランス重視ピンポイント型(勝負所の感覚に優れている)

アラフィフに30代の伸び盛りが挑む構図や、バランスよく4つの血液型がそろった点などがあるが、そちらの分析はまたの機会に。

やはり一番の注目は、初の決定戦となる新井。

5回目の決定戦となる村上・3年連続決定戦出場の佐藤・連覇を狙う近藤の3人の作り出す雰囲気に飲み込まれず、果たして普段どおりの麻雀が打てるかどうか。
しかしそんな杞憂はどこへやら。
初日は天国と地獄がはっきり分かれる、超荒れ模様となっていくのである・・・。

ジュンの我慢比べ


1回戦
起家から村上・新井・近藤・佐藤の順。

東1局 ドラ

村上配牌


新井配牌

 

近藤配牌


佐藤配牌

さて今日一日を占う初戦の配牌。
村上・近藤が70点、新井・佐藤が60点といったところか。
さすが決定戦に残った4人、全員まずまずかそれ以上の配牌。
スタートから早くも手がぶつかりそうな予感。
近藤が6巡目にイーシャンテンになると、9巡目には全員イーシャンテン。
そして11巡目に新井が先制リーチ。


親の村上は三色の見えるイーシャンテンだったが、一発でをキャッチ。


   ツモ

現物の対子落としでまわるが、を引き入れもう一度イーシャンテンとなりここで放銃。
リーチドラ1の2600を新井が村上からアガった。
初の決定戦となる新井、開始早々のアガリを手にしてまずはホッと一息。
緊張すらも楽しんでいる様子で、ノビノビ打てているようだ。

注目は新井の8巡目


   ツモ

この時点では場に見えてなかったが、は4枚見え。
新井はここからを残し、と外していきを暗刻にしてリーチ。
後に新井は、
『初戦の東パツに迷いなくリャンメンを外してリーチが打てたので、自分らしく打てているなと思った。アガリにも結びついたので、気持ちに余裕もできた』
と語っていた。

東2局は4人ノーテンで流れ、次局は佐藤が親・近藤のホンイツに攻め返し3900放銃。

東3局2本場 ドラ

村上6巡目


   ツモ

ここからソーズの伸びを睨んで切りとすると、次巡のツモはで結果的にを河に3枚並べてしまう。
しかし、当初の目論見通りにソーズを伸ばして9巡目にリーチ。


するとすぐに佐藤が追っかけリーチ。


ドラが対子の新井、親の近藤も黙っちゃいない、イーシャンテンから押し返す!
そして近藤13巡目リーチ。


待ちは狭いが、打点は高いぞ!

結果は佐藤が近藤からメンピンイーペイコー3900出アガリ。
倍返し!とはならなかったが先ほどの失点をリーチ棒付きで取り返す。

南入時点の点数状況
村上 26400
新井 30300
近藤 31000
佐藤 32300
手はぶつかり合うが、比較的小場で南入。
ここまで一人だけアガってないラス目村上、なんとか南場で挽回したい。

南1局 ドラ
親の村上、好配牌から3巡目に早くもイーシャンテン。


次巡にツモ、打でさらに好形に変化。一刻も早く得意のリッチがしたい。
しかしこれがなかなかテンパらない。
8巡目には上家からが打ち出されるものの悠然とスルー。門前派の村上らしい。

そうこうしている間に近藤が9巡目にテンパイ。


しかし、ここは村上の気配を感じ取ったか、手変わりを見て役無しダマに構える。

するとすぐさま村上が手出し(実際は空切り)、そして13巡目にリーチから一発ツモ!!


   ツモ

裏ドラものせて、メンピン一発ツモ裏1の4000オール。
実際は近藤がリーチをすると、村上は頭を振り替えて現物のを切っていたと思われるが、近藤の心中やいかに!
一方、村上はカン待ちにすれば一通も付いてハネ満だったが、所詮絵に描いた餅。
得意のリッチで初アガリをものにして感触良し、トップ目に立ちここから一気に突き抜けるのか!!

南1局1本場 ドラ
村上は配牌で対子だった自風を4巡目にスルーすると、すぐに対子落とし。
門前テンパイを目指し8巡目にイーシャンテン。


役牌対子落としで明らかに早い空気を見せる親の村上に、場に緊張感が漂う。
しかしさすがは決定戦の面子、そう簡単に独走は許さない。
9巡目に近藤がブラフ気味に仕掛けると(捨て牌にマンズ無し)、11巡目に新井がドラ切りリーチ。
近藤

 

   チー

 

新井


村上も回りながらフリテンでテンパり返すが、新井がツモ。
メンタンピンツモの1300/2600で、トップ目村上に迫る。
トップ目村上からラス目近藤までは、10100差。
まだまだ予断を許さない展開。

南2局は、親の新井がテンパイ料で稼いで連荘し、1000オールで供託回収。
効率よい加点で村上をまくりこれでトップ目に立った。

南3局 ドラ
親で連荘したいラス目近藤だったが、新井がをポン、ホンイツへの渡りを見ながらさばきにかかる。
   ポン

さらに新井ツモ、ポンでホンイツテンパイ。
  ポン  

4枚使いで待ちとなるは他の3人はかなり使いづらい。
外しのあとのポンなのでテンパイ濃厚。
しかしこれに後がない近藤とぶった切って真っ向勝負!

さらには佐藤が15巡目ピンフドラテンパイ。
待ちは出たばかりのでダマなら待ち頃だったが、勝負をかけて強気にリーチ。
すると待ってましたとばかりに近藤も17巡目に追っかけリーチに出た。


佐藤
   ドラ


近藤

佐藤が一発目に掴んだのは・・・近藤の高目!!
メンピン一発三色ドラの18000!!
近藤は一気にトップ目に、一方佐藤は箱下近くの断ラスに。
勝負を決定づける大事な1局、両者の明暗がハッキリと分かれた。

続く1本場は、新井がドラ単騎のチートイツをツモアガリ。
再びトップに返り咲きオーラスに。

オーラス点数状況
村上 33900
新井 46400
近藤 37200
佐藤  2500


トップ目新井はこのまま逃げ切りたい。
近藤は2着キープか、満貫ツモでトップ。
村上は700/1300ツモで2着、ハネ満ツモでトップ。
佐藤はとにかく連荘が必要。
南4局 ドラ
親佐藤が9巡目にをポンして、ホンイツに一気に寄せる。


   ポン

すると新井もタンヤオで仕掛け返してテンパイ。


 チー ポン

ドラがなので1000点の可能性が高い。
手がまとまらない近藤は、差し込みで2着を狙うがマンズ待ちなので中々差せない。
しかし佐藤もあと1牌が引けず、なかなかテンパらない。
結局、佐藤は最終ツモでもテンパイせず、最後にを切って新井に放銃。
万一村上が高い手をテンパイしていた時にツモられるよりは、新井の待ちはほぼ待ちなので1000点放銃したほうが得という思考らしい。実際は村上イーシャンテンだったが、確かにノーテン罰符を考えても、最小の失点に抑えようという意思が見てとれた。

新井 +47.4
近藤 +17.2
村上  -6.1
佐藤 -58.5

2時間に及ぶ熱戦を制したのは新井。
終始安定したリードを保ち、初の決定戦の初戦をトップで飾った。
安堵感からか自然と笑みもこぼれてくる。
勝負所で会心のアガリをものにした近藤。
久しぶりの対局で、まあ満足といったところか。
南場の親番以外は苦しい展開だった村上。
この結果も致し方なし。我慢を続けて挽回を狙う。
勝負が裏目に出てしまった佐藤。
今回で3回目の決定戦で本人なりにも期するものがあるはず。
この後も強気に攻め続けることができるのか!

キヨマサの呪い

 

2回戦
起家から、村上・佐藤・近藤・新井の順。
東パツに新井がリーチして満貫をツモり抜け出すと、東3局には親の近藤が連荘で点棒を稼ぐ。前回プラスの2人がリードを広げるなか、マイナスの2人は1回戦に続いて苦しい展開。


東3局5本場 供託2000 ドラ
近藤が1巡目に新井が切ったダブをポン。
更なる連荘に向かうと、高打点MAX打法の新井もここはたまらずと仕掛けてさばきに行く。
近藤もを仕掛け返してテンパイ。


近藤
 ポン ポン

 

新井
  ポン ポン

近藤は親満テンパイで、場況からソウズの上は良さげに見える。
しかし、実は新井が村上の切ったをテンパイ後なのでスルーしており、すでに空テン。
ここはあっさり新井がアガるか?と思いきや、村上がリーチで参戦!


すぐに近藤から高目のでアガり、メンピン一通ドラで満貫。
村上も原点に復帰し、トップ争いに参入。

実はこのリーチ、最後にポンカスのカンを引き入れてのリーチ。
村上自身も、
ポンの後も、2人の仕掛けにオリずにテンパイして攻め返せた。オリてしまう人も多いと思う。いいアガリが出来た』
と語っていた。
一方近藤は、新井の鳴きによってと喰い流され結果的に満貫ツモを逃す形となり、まさに鳴きが生み出す紙一重の攻防となった1局だった。

東4局 ドラ

親の新井が、12巡目にリーチ。
このリーチに佐藤が2枚切れ(地獄待ち)のツモ切ると、リーチ一発チートイツ裏裏の18000放銃してしまう。

 

   ロン ドラ 裏ドラ

こう書くと致し方ない放銃とも思えるが、この時の佐藤の手牌は


は現物、そしては2枚切れである。
しかも、4・5巡目のリャンメンターツ落としなどから、佐藤は新井のリーチがチートイツではないかと思っていたという。
ならばいくら地獄待ちとはいえ、切りが賢明ではないか。
終わった後に佐藤は
『チートイツのリーチかとは思ってました。を引けたらホンイツ、を引いたらトイツ落とし。は切れるけどはチートイツにどうせ危険なので、間を取ってを切りました。中途半端な選択だったかもしれません』
と語っていた。
攻めに対する鋭い切り返しが佐藤の持ち味でもあるが、初戦のラスで若干前のめり気味になっているようにも見えた。
しかしながら、2半荘連続のインパチ放銃はあまりにも痛すぎる代償。
決定戦での佐藤は呪われているのではないかとさえ思えてくる・・・。

一方、新井は5万点オーバーでトップ独走態勢に。
このまま楽々と2連勝してしまうのか?

東4局1本場 ドラ

近藤が7巡目にドラのを切りイーシャンテン


さらにツモで打とすると村上からリーチ。


近藤はをツモり小考後ツモ切ると、すぐにツモ(ツモ切り)。
チグハグなツモでなかなかテンパらない。
ツモ打ツモ打として、14巡目にをツモると呻るようにドラ切りリーチ!!


しかしは6巡目に自分で切っていてフリテン!!!
結果は・・・、近藤ツモ。
フリテン追っかけリーチで裏も乗ってのハネ満ツモに、他の3人からは溜息が漏れる。
近藤、親っかぶりさせトップ目新井に肉薄する。

南入時点の点数状況
村上 26700
佐藤  3200
近藤 44900
新井 45200
攻撃タイプの4人ならではの凄まじい斬り合いの様相を呈してきた。
新井・近藤が抜け出し、佐藤は大きくマイナス。
南場にも波乱はまだあるのか?

南1局 ドラ
新井が9巡目にチートイツドラドラテンパイ。
次巡待ち変えしたは近藤がターツ落としの途中で絶好の待ち。


新井

 

近藤

すぐに近藤の放銃で終わってしまうかと思えたが、近藤は有効牌を引かず出そうで出ない。
新井は13巡目にをツモり、空切りリーチ。
するとそのにロンの声!
アガったのはなんと佐藤。


   ロン


ピンフ三色ドラドラ満貫。
佐藤は苦しい手牌をまとめ上げてドラを重ねてのテンパイで見事満貫を討ち取った。
意地を見せたが依然としてラス目、ここから逆襲となるか。
一方近藤は間一髪で新井への放銃を免れていたのだが、本人は知るよしもない。
この勝負の綾が今後にどう影響していくのか。

続く佐藤の親番、苦しいながらも最後のツモでテンパイして連荘。
佐藤、復活へわずかな望みを繋ぐ。

南2局1本場 ドラ

親番佐藤の7巡目

 

   ツモ 打

 

佐藤は切りテンパイを取らずに打とすると、次巡ツモでもカン待ちのタンヤオにせずに打として、一通とドラ引きを見てテンパイ取らず。
佐藤、劣勢ながらも逆転へ向けて一打一打丁寧な打牌を続ける。
すると、8巡目に村上がリーチ。


この親が流れてしまえば最後の佐藤、力をこめてツモるがテンパらない。
結果は村上が安目をツモって700/1300。
佐藤の親は終わり、ラスは濃厚となってしまった。
先行リーチをしていれば、別の展開もあっただろう。
しかし、奥歯を噛みしめるように点棒を払う佐藤の姿に、今後に続く意志の強さを感じた。

南3局1本場 ドラ

親の近藤が、急所のカンを引き入れリーチ。


すると、新井が宣言牌のをチー


   チー 打


新井が次巡にツモったのは
近藤の一発ツモを喰い取り暗刻にすると、さらにをツモってテンパイ。


   チー

この単騎を近藤から出アガり、タンヤオドラドラ3900。
新井、軽快な打ち回しで近藤をまくってトップ目に。
チーしなければ近藤の6000オール、ギリギリの闘いが続く。

そのまま新井がオーラスの親で逃げ切り2回戦もトップ。
2回戦スコア
新井 +44.1
近藤 +18.4
村上 -12.8
佐藤 -47.7
   供託1.0

トータルスコア
新井  +88.5
近藤  +35.6
村上  -18.9
佐藤 -106.2

2回戦も1回戦と同じ並びとなり、トップ目新井からラス目佐藤までは194.7P差、早くも縦長の展開となった。
後半2回戦、新井は更なる高みへと突き抜けるのか!
マックスマックス!!
一方、早くも3桁のマイナスとなってしまった佐藤の巻き返しはあるのか?
やられたらやり返せ、倍返しだ!!

魔王ケイブン降臨


3回戦
起家から、新井・村上・佐藤・近藤の順。

東1局 ドラ

親の新井がポンポンとして、マンズのホンイツに向かう。
   ポン ポン

さらにを加カンすると、がカンドラになり、まさにやりたい放題!
しかし一向にテンパイせず、終盤にを手牌にとどめて有効牌の種類を増やしテンパイを目指す。
すると残り2巡というところでを引き入れテンパイ。
を切ると、たった今テンパイしたばかりの佐藤にストライク!!


   ロン

タンヤオイーペイコードラ3で満貫。
佐藤、新井の猛攻に耐えて一矢報いる。
3回戦、がらりと潮目が変わるのか、注目の半荘。

東場は連荘も無く、スムーズな展開で進む。
新井が東ラスに役牌のみをアガって少し回復するが、依然ラス目のまま南入。
南入時点の点数状況
新井 26100
村上 30500
佐藤 34900
近藤 28500

南1局 ドラ

東パツの失点をじわりじわりと取り返して親番を迎えた新井。
この親で一気に浮上なるか?
しかし、近藤が6巡目に早くもリーチ。新井3連勝に黄信号が灯る。


新井も9巡目に追いつき、チートイツでリーチ。
無筋のを切って、近藤の現物で自分の筋の待ちに受ける。


新井の捨て牌はチートイツには見えにくいので、これは待ち頃か。
村上も新井のリーチ宣言牌をチー、さらに仕掛けてテンパイ。


  チー
 

しかしテンパイしたのもつかの間、すぐに無筋を掴んでオリに回る。
一方、佐藤はリーチを受けた後に続々とソウズを引いて15巡目に下の形


  ツモ

ここから佐藤が選んだのは
新井にリーチタンヤオチートイツの9600放銃となる。
新井はトップ目に、佐藤はラス目にと一気に立場が入れ替わる。
確かに現物は1枚しかなく、は近藤の現物で新井の筋、もリーチ後の筋。
を引けば、マックスでメンチン三暗刻ドラドラまで見える。
しかし、佐藤は6巡目までにと切っている。
を引いてテンパイした場合はカンチャンのフリテンである。
残り巡目、2人リーチという状況を考えれば、歯を食いしばり現物のを切るべきではなかったか。
佐藤が洗面器から顔を上げてしまったように感じた。
終わった後に佐藤に聞くと
『現物はしかなかったし、どうせ次に切るのはがリーチに通ってるので村上さんからチーしやすいから、アガリはあると思っていた』
と語っていた。
しかし牌譜を確認すると、はリーチに通っておらず、実際村上は仕掛けた後にを引いて切らずにリーチに対しオリている。
インパチ放銃からの2連続ラスは、佐藤を極限まで追いつめていたのか。
この後佐藤が立直れるかが勝負の鍵を握る。

次局1本場は新井がリーチツモで1000オール。
トータルトップ目の新井が、ラスからトップに立ってさらに連荘。
点数以上の重圧が、3人の肩に重くのしかかる。

南1局2本場 ドラ

新井、4巡目にドラを対子にすると10巡目にリーチ。

 

高目ツモなら6000オール。
ちなみにリーチ時点で高目はヤマに3枚残りの全ヤマ!
新井の新井による新井のための一日になってしまうのか!!

ここはなんとか流局で、新井の1人テンパイ。
裏ドラを確認すると、なんと高目ツモなら8000オールだった!!!
これには新井も思わずニヤリ。
【今日の新井には逆らえない】そんな空気まで少しずつ漂いはじめる。

3本場は、全員ノーテンで流局。ようやく新井の親が終わる。
新井の絶対王政を揺るがす勇者は現れるのか!

南2局4本場 供託1000 ドラ
新井の配牌


自風対子、対子、ドラ対子・・・。
王じゃなくて神だ。あんた神だよ!!

親の村上、9巡目にリーチ。


ちなみに新井はこのイーシャンテン


ここからリーチ一発目に掴んで筋の切り、北をツモって暗カンせず空切り、12巡目にドラツモでドラを暗刻にして勝負してテンパイ。
村上があっさりを掴み、ドラ3の満貫放銃。
村上は2着からラス目に転落、一方新井の点棒はついに5万点に!
勇者は魔王に敗れ、世界は闇に包まれてしまった・・・。

南3局 ドラ
親の佐藤がを3巡目にポンしてホンイツに一気に寄せる。
終盤にドラを重ねてハネ満テンパイ。


   ポン

新井、ピンズを押さえながら16巡目に形テン。


   チー

するとツモ!役がない・・・。現物切り。
するとツモ!役がない・・・。現物切り。
役が無くてもなんでもツモる魔王・・・。
結局、佐藤・新井の2人テンパイ。
新井のリードはさらに広がっていく。

オーラスの点数状況
新井 54700
村上 15400
佐藤 23700
近藤 26200


新井はアガりトップ。
近藤はアガって連荘、佐藤がオリていればトップが離れているのでノーテンにするかも。
佐藤は2600出アガリか、500/1000ツモで2着。
村上は満貫ツモで2着。

南4局 ドラ
親の近藤が7巡目にポン。


   ポン 打

を先切りしてトイトイ狙い。
9巡目にをツモり、首尾良くタンヤオトイトイテンパイ。
切り出しからは、ただのタンヤオではなくトイトイもついているように見える。
が3枚見え、が1枚見えとなったところで村上が生牌ので放銃。
タンヤオトイトイ7700。

その時村上の手牌は


すぐにテンパイしそうだが、満貫にするには一発か裏ドラが2つ以上必要。
通っていると切って、三色や一通の手役を狙った方がよかったか。
村上自身も
『近藤はトイトイではないかと思っていた。満貫ツモで2着アップだったのでやりすぎてしまった。冷静にと切るべきだった』
とこの日一番の反省をしていた。

結局、このままの並びで終了。
新井が見事3連勝を飾った。
3回戦スコア
新井 +54.7
近藤 +13.9
佐藤 -16.3
村上 -52.3

トータルスコア
新井 +143.2
近藤  +49.5
村上  -71.2
佐藤 -122.5

魔王盤石!
その暗黒は世界の隅々まで広がり、人々は恐怖に怯え暮らすだろう。

と、魔王劇場はこのくらいにして。
4回戦も新井がトップならば4連勝。
まだまだ初日だとも言えるが、初決定戦の新井がこのまま気分良く走り抜けてしまう可能性もある。
現在プラスで2位につける近藤も、その展開は面白くないはず。
4回戦は、ストップ・ザ・アライがキーワードだ!

セイイチ、好位置

4回戦

起家から、近藤・村上・佐藤・新井の順。
近藤が、東1局に佐藤とのリーチ合戦を制して3900を出アガると、
東2局にも満貫をツモりトップ目に立つ。
トータルで番手の位置につけた近藤。
新井台風の中、プラスキープはさすが現最高位。
最後にトップで上々の一日となるのか。

東3局 ドラ
親の佐藤が中をポンすると、6巡目に近藤が少考してリーチ。


メンチンまで見える手だが、親が仕掛けていることを考えれば高目メンタンピンドラも悪くない。
親の佐藤、実は配牌ドラ暗刻でリーチ後チーしてすぐにテンパイ。
この親だけは、絶対譲れねえーーー!


  チー  ポン

 

両者一歩も引かずのぶつかり合い、ツモる手に気合が入る。
そしてツモったのは…、近藤。
高目をツモり裏も乗せ、メンタンピンツモドラ裏の3000/6000!!

佐藤、勝負手実らず、ハネ満親っかぶり。
オレのターンはいつ来るんだ、そんな心の叫びが聞こえてきそう。
一方近藤は、満貫ハネ満の連続和了で5万点オーバー。
今日は新井の日ではなく、近藤の日だったとなるか。

東4局の新井の親は、近藤が仕掛けて流して南入。
南入時点の点数状況
近藤 55500
村上 21800
佐藤 15900
新井 26800


近藤以外の3人はマイナス。
村上・佐藤の2人はトップなら大満足だが、大事なのは新井をまくってマイナスさせること。
4人の思惑が絡み合う南場が始まる。

南1局は、佐藤の1人ノーテンで流局。
3者一歩も譲らないなか、佐藤の苦しい状態は続く。

南1局1本場 供託1000 ドラ カンドラ
村上が近藤の切ったドラをポン、近藤はすぐにテンパイするがダマに構える。


近藤

 

村上
  ポン

近藤は終盤に危険なを持ってくるとを切ってテンパイを外す。
すると次巡、を重ねておもむろにリーチ!
この叩きあいに応じるように村上はイーシャンテンからドラを加カン。
次巡ツモでようやくテンパイ。


近藤

 

村上
   加カン

そして最終巡目、新井がチーして村上のハイテイをずらす。
村上がハイテイで危険牌を引くとオリる可能性もあるため、ずらさない選択肢もありかと思ったが、新井はハネ満以上になるのを避けた。
そして近藤が掴んだのは、止めたはずの筋、村上の当たり牌
發ドラ4満貫放銃。
村上はこれで新井をまくって2着浮上。

南2局 ドラ
2着になった親の村上、と仕掛けてホンイツに一気に寄せる。


   ポン  

さらにとツモってテンパイ。


   
ポン  

すると、佐藤も絶好のを引きいれテンパイ。


  ツモ

村上のポン後の手出しは
佐藤はが打ち切れず、切りテンパイを外す。
すると、そのに近藤からロンの声!!


一通ドラドラ8000!
まさに佐藤にとっては青天の霹靂!!

厳しい見方をすれば、2つ目のを鳴かせたのはトップの近藤、2着でホンイツ模様の親の村上に鳴かせるからには手がまとまってないはずが無い(その時点でドラ2のイーシャンテン)。
しかしが鳴かれたのは4巡目、村上の上家ということもあり近藤はそれから危険な牌は切っておらず、ノーテンや止めた可能性も多い。
テンパイ気配も出ておらず、誰が放銃してもおかしくはなかった。

しかし掴むのはやっぱり佐藤。
今までの18000や9600は、リーチに対して切り込んで打ったものだったが、今回はヤミテンでバッサリ。
えてしてこういうときの方が精神的ダメージは大きい。
マンズを押さえて張り返したら攻め返そうとした佐藤の打牌は、大きく裏目ってしまった…。
『村上の切り出しを見れば待ちが本線。ポンの後で手出しの前にをツモ切りしているので、特に待ちの可能性が高い。は切れない、だけはプロとして絶対に無理…。近藤がテンパイしてるとは思わなかった』
佐藤は、対局が終った後に一言一言しぼり出すように語っていた。

南3局、迎えた親番、佐藤はメンピン高目イーペイコーでリーチするも流局。
【頼む!一度ぐらいアガらせてくれ】願いを込めてツモるが、虚しく空を切る。

南3局1本場 供託1000 ドラ
佐藤はポンしてマンズのホンイツ。


   ポン

すると新井が中盤にピンフドラ高目三色をテンパイ


マンズに注目が集まっているので、ここはしれっとダマテン。
佐藤はを加カン、リンシャンからを持ってきてが序盤に2枚切れているので切り。
新井もを掴むものの、ぶった切って勝負。
新井も確実にテンパイ、すると佐藤がを掴む、ここは切りで耐える。
同巡に新井がを掴む、さすがに場に見えてない三元牌は切れずに頭の切り。
そして最終巡目、佐藤をツモってを勝負してテンパイ。
新井もをチーしてテンパイ。


佐藤
   加カン

 

新井

を止めた新井と、をテンパイまで止めた佐藤。
1牌の後先をめぐる麻雀マンガのような攻防。
プロの2人の技がぶつかり合う!

同2本場は佐藤が新井から2900出アガリ。
後が無い佐藤、最後の親で粘りを見せる。

南3局3本場 ドラ


佐藤配牌

到底アガれ無さそうだったが、なんとか苦しい手牌をまとめて16巡目リーチ。


  打リーチ

しかし、このドラが近藤に捕まる。


   ロン

ピンフドラ3満貫。
佐藤、この半荘もラス濃厚。最後までツキに見離されてしまった…。

オーラスの点数状況
近藤 61600
村上 29600
佐藤  4000
新井 24800
今日ノッている新井がラス親。
なんとか新井が3着のままで終らせたい。

南4局 ドラ
村上がチー、近藤がダブポン、新井の親を捌きにかかる。


村上
   チー

 

近藤
   ポン

しかし、そこに新井の親リーチが襲い掛かる!


トップ目近藤はオリ、テンパイしている村上は真っ向勝負!
すると村上がを掴んでやむなく放銃。
掴んだのは安目、しかし裏裏!メンタン裏裏12000!!
やはり最後は新井、村上をまくり2着目に。

次局は佐藤が新井から3900を出アガり終了。
4回戦スコア
近藤 +61.6
新井 +12.6
村上 -22.4
佐藤 -51.8

トータルスコア
新井 +155.8
近藤 +111.1
村上  -93.6
佐藤 -174.3

 

最後に、終了後に選手4名にコメントをもらったので掲載したい。

 

初日、首位で終えたのは新井。
初の決定戦だったが気負いもなく、3連勝を含むロケットスタート。
持ち前の高打点打法が攻撃的スタイルと噛みあい、大きくリードした。


〇まずは今日の対局について
『初戦ですぐにアガリをものに出来て、決定戦は初出場でしたがのびのび打てました。粘ってテンパイ料で稼げたのも大きかったです』


〇今期Aリーグについて
『途中の上位直接対決で勝って首位に抜け出してからは、リードも大きかったので特にマークもされず一人旅で決定戦に進むことが出来ました』


〇次節以降への抱負
『今日は正直出来過ぎ。次節に今日の分もまとめてマイナスってことがありませんように。最終節まで攻めまくります!』

番手の位置に付けたのは近藤。
新井フィーバーのなか2着をキープ。
最後の大トップでポイントも100オーバー、さすが現最高位。


〇まずは今日の対局について
『今日は新井の出来が良かったなかで、上出来の結果。ドラ中切りのフリテンツモが気持ちよかった』

 

〇今期最高位としての一年について
『リーグ戦が無いので多少の不安はあった。立会人のときは自分が対局に行くつもりでのぞんだが、実際はやはり温度差がある。一番思ったことは、今日の日がとても待ち遠しかったこと。
今回の3人はみんな強くて厳しい面子。首位の新井とはB1で対局経験があるが、当時より読み・状況判断などの精度が確実に高くなっている』

 

〇次節以降への抱負
『んー、頑張ります。特にトータルポイントは意識せずに打つ』

 

 

トータル3位は村上。
我慢に我慢を重ねた一日だったが、丁寧なうち回しで被害を最小限に抑えた。

 

〇まずは今日の対局について
『耐え続けた一日でした。今回で決定戦に出るのは5回目、もし負けるにしても、いい麻雀が打ちたいと思います』

 

〇今期Aリーグについて
『最初マイナススタートで降級やだなあと思ってたけど、徐々にプラスして取り戻して、最終節の直接対決を制して決定戦に残れました』

 

〇次節以降への抱負
『まずは体調を整えて、残り16回頑張ります!』

 

 

最下位に沈んでしまったのは佐藤。
結果的に4半荘とも大物手を放銃。
鋭い切り返しが持ち味だが、今日はそれが裏目に出てしまった。

 

〇まずは今日の対局について
『疲れました…。いっぱい振ったけど特に後悔しているのはないです』

 

〇今期Aリーグについて
『中嶋・金子と1つの席を争う形になったが、10・11節と直接対決で2人にリードされたのでダメかと思った。最終節を制して残れてよかったです』

 

〇次節以降への抱負
『2日目以降でとりあえずマイナスを2桁にします』

毎年最高位が入れ替わり、麻雀戦国時代へと突入した最高位戦。
今年の覇者となるのは誰なのか、最後まで目の離せない戦いが続く。

 

 

(文中敬称略)

 

文責:平賀聡彦

 

コラム・観戦記 トップに戻る