コラム・観戦記

【第21期發王戦決勝観戦記 後編その2】坂本大志

後編 その1はこちら

 

そして、いよいよ運命の最終戦。6回戦が始まった。

 

ここまでのトータル

水巻 +47.8

佐藤 △0.4

平賀 △5.3

山田 △42.1

 

6回戦(山田―平賀―水巻―佐藤)

東1局は山田が2つ仕掛けて500オールで連荘に成功。
続く1本場 ドラ

 

(東1局1本場全体牌譜)

佐藤の5巡目、

 

   ツモ

 

ソウズが二度受けになっているので、を切る手もあるが、佐藤は切りを選択。
素直にイーシャンテンにした。

ソウズは鳴くのかどうか注目していたのも束の間、すぐに絶好のを引き入れて高め満貫のリーチ。

このリーチに勝負を挑んだのは水巻。
1牌も押さずに上手く回って14巡目にこの形。

  ツモ   ドラ

 

ポイントを持っているので放銃が怖いが、こうなったら勝負の一手だろう。
を横にしてリーチを宣言。
ここで
でもツモれば、水巻はかなり楽になるが、すぐに佐藤山田のテンパイ打のを捕らえ、3900は4200。

東2局 ドラ 裏ドラ

 

(全体牌譜)

この局最初のテンパイを入れたのも佐藤。

マンズ、ソウズにくっつけての多面張リーチが理想だろう。
ツモ
で3面張となるも、が3枚切れでここも闇テンに構える。

その間に親の平賀からリーチを受けるも、絶好のツモで5面張となり当然の追っかけリーチ。
流石に待ちの強さが違いすぎた。
程なくして
をツモアガリ、大きな2000・4000。

佐藤の現状のトータルポイントはまだ届かないが、水巻が3着に落ちた瞬間に入れ替わるので、これでほぼ並んだようなものだろう。
東3局は、またしても佐藤がアガリ、水巻の親を落とす事に成功。

東4局 ドラ

 

(全体牌譜)

この局先手をとったのは山田。
7巡目にリーチ。


河からは七対子とは断定出来ない上、待ち牌の
は前巡に佐藤が切った1枚のみ。
変則手の平賀が持っていなければ勝算は高く、山田も感触があったのではないだろうか?

実際は山に2枚残りも、このが姿を現す前に平賀が追いついた。

   ツモ

 

そっと中を置いて闇テン。
ドラ表示牌のカン
と待ちは苦しいが打点は充分。
山田の手に
が対子も、1枚残っている。

平賀がと無筋を切り飛ばしていくも、最後のが水巻に流れ純カラに。
後は山田の
いつどこへいくかだと思っていたが…

平賀の次のツモは
これで三暗刻は消えるが、待ちは3面張にグレードアップ。
を切り、追っかけリーチ。

   ドラ

は無いが、は山に2枚ずつ生きている。

形勢逆転した平賀が、16巡目に力強くを引き寄せ大きな3000・6000。

トップ目佐藤に肉薄し、初タイトル奪取へ望みを繋げる。

手痛い親被りの佐藤だが、水巻が3着目になったのでこれでトータルでもトップ目に立った。

東場を終えて
山田 21300
平賀 35500
水巻 23500
佐藤 39700

このまま終われば佐藤の連覇。
平賀も佐藤を捲れば一気にトータルトップ目に立つ。
水巻は満貫分差を詰めればOKと、まだまだどう転ぶかわからない。

南1局 ドラ カンドラ

 

(全体牌譜)

山田はもう完全に後が無くなった。
ここまで展開に苦しめられ続けたが、諦める事なく必死に喰らいついていった。

最後の親番であるここで、何とか粘り一矢報いたい。

そんな大事な局面で手にした配牌は、その思いを嘲笑うかのようなものだった。

わずかな希望を胸に必死に手を進める山田だったが、水巻からのリーチにより、わずか3巡目にして希望を絶望に変えられる。

山田は前に来ざるを得ないが、追い付かなければ水巻のアガリか流局だろう。
水巻と佐藤の間で観ていた私はそう予想したのだが、この私の浅はかな予想は佐藤によって見事に裏切られる
佐藤はリーチを受けすぐに
を掴んだものの、これが重なり戦える形になる。


佐藤6巡目
  ツモ   打   ドラ

 

そして
7巡目 ツモ

8巡目 ツモ

 

一気にツモが噛み合い、10巡目にはをチーしてドラの片アガリのテンパイ。

 

   チー


が山田に流れ、お互い待ちは1枚ずつ。

もう後がない親の山田は


   ポン

 

となっており、テンパイすればどちらかが溢れるだろう。

流局もチラつき始めた14巡目、山田は持ってきたをカンするもテンパイ出来ず。
佐藤は新ドラがもろ乗りで跳満に打点アップ。

そして佐藤のツモ番。
力強く、そして僅かに震えながら引き寄せた牌は紛れもない
であった。
水巻のリーチを潰した事も加味すると非常に大きく、点数以上に価値のあるアガリだろう。

これで山田は事実上の終戦となった。

南2局 ドラ

 

(全体牌譜)

番を迎えた平賀は約20000点上にいる佐藤を捲らなくてはならないが、ここも佐藤があっさりとアガリ、平賀もかなり苦しくなった。

南3局 ドラ

 

(全体牌譜)

佐藤にとっては最大にして最後の難関、水巻の親落とし。

親の水巻は好配牌。
雀頭さえ作れたら先手を取れそうだ。

と引いた5巡目、水巻の手が止まった。


これは選択が難しい。
候補は
あたりで、形最優先ならドラのだが、水巻が選択したのは打
打点も視野に入れた選択である。

この選択がズバリ!!
次巡のツモは最も嬉しい
引き。
当然リーチを宣言した。

佐藤としては、この親を流しにくる者はいないので、自力で親を流さなければならない。
一発も消せる為、宣言牌の
をチーして前に出る機会を伺う。


   チー

次巡、佐藤のツモはなんと
もし佐藤が動かなければ水巻に6000オールをツモられていた。そんな事を知る良しもない水巻は程なくして
ツモ。
裏は乗らず2600オールで、まだ佐藤が上である。

1本場 ドラ

 

(全体牌譜)

今回も中々の配牌の水巻。この局で佐藤より上に行っておきたい。
5巡目には既に万全のイーシャンテン。


しかしここからが長い。
テンパイしたのは実に14巡目である。

一方の佐藤は、水巻が早いことを捨て牌から察知。
無理に先手を取りに行かず、危険そうな牌を先に処理して形をスリムにし、押し返しでのアガリを狙う。

佐藤の11巡目


    ツモ

どう打つのだろうか?
ここで安牌の南は打ちたくないし、マンズの両面ターツは最も面子が作り易く見える。

それ以外からの選択だと、あたりが打牌候補か。

守備の面も考えると、を残してソウズやピンズを打ち出したい。
しかし水巻はどう見てもイーシャンテン以上に見えるので、ターツの処理が終わる前にリーチと来られたらこの局はまずオリになるだろう。

勝敗を決めかねない選択、流石の佐藤も長考に入る
考え抜いた結果は、最も場に高いソウズの両面ターツを嫌う、
切りを選択。

同巡に平賀からが鳴け、打
水巻がリーチとくる前に危険牌を処理できた。

14巡目、前述の通り水巻がようやくを引き入れテンパイし、リーチ。


 

は残り1枚であり、流局が濃厚か?

佐藤は一発目にを掴み安牌のと入れ替え、16巡目にを引き入れる。


   ツモ   ポン

 

水巻の捨て牌に注目してもらいたい。
面子手と読めばまず好形待ちに見え、残っている好形は
とソウズ両面。
ソウズ待ちの場合、
より前に手出しされているので、跨ぎの両面待ちが本線になる。

いくら超攻撃型の佐藤とはいえ、残りツモ番2回で危険度Sランクのは流石に押せない。
そう思っていたが、佐藤は
を勝負した!!

単純な1局単位で見れば、これは損な選択だろう。

しかし今回はタイトル戦の決勝である。
もはや普段の損得勘定だけではなく、
時には何処かで腹を括って勝負をしなければならない。
それが正にこの局だと佐藤が判断したのだ。

今の私には到底出来ない1打である。

次巡、佐藤の勝利への強い意思に導かれるように、最後のをツモりあげた。

オーラス ドラ

 

(全体牌譜)

佐藤 54500
山田 10300
平賀 29500
水巻 25700

このまま終われば佐藤が優勝だが、水巻の1人テンパイだと水巻が優勝。
水巻は平賀との3800差を捲れば優勝。
平賀は佐藤からの倍満以上の直撃か役満。
山田の優勝条件は現状存在しない。

水巻としては、リーチ棒を出すと佐藤が1人ノーテンでもOKになるので、できる限りリーチ棒を出さずに捲れる手を目指したい。

佐藤はノーテンに出来ないので、少しでも条件を楽にして次局に入りたいところ。

12巡目に佐藤がテンパイ。


   ドラ

 

当然の闇テン。
すぐに平賀から
が打たれるが、佐藤はスルー。

これはどういうことだろうか?

平賀からあがっても今度は素点で差がつくので、次局の水巻の条件は1600・3200以上のツモか12000以上の出アガリで、もちろんテンパイノーテンでも変わらない。

条件を勘違いしたかと思ったが、対局後に聞いた佐藤の回答は違った。
より厳しい条件を押しつける為に、水巻以外からは1枚だけ見逃すつもりだったとの事。

終盤に思惑通りツモアガリ、4000オール。
これで水巻の条件は、佐藤から満貫以上の直撃か跳満以上のツモアガリとなった。

1本場 ドラ

(全体牌譜)

この局は間違いなく最終局。
水巻の5巡目


   ツモ

 

これを跳満にしなければならない。
メンピンツモ三色ドラか
メンタンピンツモ、オモウラあたりか
三色だと有効牌がかなり限定されるので、
切りでタンピンへ。

水巻待望のテンパイは11巡目。


   ツモ

 

切りでツモ裏条件のリーチ!!
山にはまだ
が3枚生きている。

1牌ツモるごとに会場全体が息を飲む。
水巻もツモる動作に自然と力が入るも、結果は無情にも流局。
記録の為に捲った裏ドラの
が、水巻の悔しさを倍増させた事だろう。

第21期發王戦は佐藤聖誠發王位の連覇で幕を閉じた。

おめでとう聖誠!!

 

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