2009年3月21日 正午
神楽坂ばかんすにて第34期最高位戦B2リーグがいよいよ幕を開けた。
B2リーグ
現在5段階構成に分かれている最高位戦リーグの中で丁度中間点となるのがこのリーグである。
このリーグの特徴をまず書くとすれば、
24分の11
現競技プロ団体のリーグの中でも最も厳しいであろうこの降級率が真っ先に挙げられる。
(補足すると例年は降級10名なのだが、今年は休場者人数の都合により例年より1人多くなっている)
麻雀プロになりたての選手にとってBリーグというのは誰もが憧れるだろうし、目標にもなる場所の一つだ。最高位やAリーグは無論だが、Bリーグを目指す道の半ばで挫ける選手も決して少なくはない。
そしてCリーグの狭き門を潜り抜けてようやくBリーグへの切符を手にした者の先に、まず待ち受けているのがこのふるい落としとは何とも酷な話だ。
とは言え闘っている選手の必死さとは裏腹に、4名の昇級枠争いは勿論、この11名の降級枠争いも見ている方にとっては最後まで目が離せない。
そして今年度このサバイバルレースに参加する選手が以下24名(各選手の詳しい情報はHPに別途記載の選手紹介をご覧になっていただきたい)。
・ベテラン
清水 昭
阪元 俊彦
・中堅
宇野 公介
谷口 竜
秋田 大介
三ヶ島 幸助
・若手
井上 慎司
嶋村 恭介
坂本 大志
佐藤 聖誠
中嶋 龍太
松田 猛
石井 一馬
津田 博愛
野口 洋貴
田中 巌
森川 健太
・新鋭
斎藤 敬輔
中邨 光康
平林 佑一郎
中村 英樹
・女流選手
川端 美雪
佐藤 かづみ
根本 佳織
御察しの通り完全なる筆者の偏見で分類をしているわけだが、概ねこんなところだろう。
ベテラン~若手に加えて女流選手までバランス良く分布されており、加えて各選手の雀風も攻撃型、対応型、面前派、鳴き派と多岐に及ぶ。
24人という年間リーグとしては多い人数になるのだから当然の話だが、これだけのバラエティーに富んだメンバー構成もB2リーグの見所の一つに違いない。
昨年と違い今年は筆者もこのリーグを”傍観”する立場にある、何とも不謹慎な話だが最後までこれら醍醐味を十二分に楽しめる勝負を期待したい。
■1回戦
[2卓]起家から順番に嶋村、田中、中村、斎藤
東1局 ドラ 裏ドラ
まず会場一番に和了の発声をしたのは中村。
ロン
開局早々に8巡目先制リーチを起家の嶋村から一発で出アガリ。続く東2局も速攻のポンテンで田中の親番を蹴り上々の立ち上がりを見せる。
結果から先に書いてしまえばこの日の中村は4連続3着という何とも世知辛い結果になった。ただ全体を通して見れば展開の不遇さも多々あり、彼本人にとっては納得の行くゲームができたのではないだろうか。
初のB2リーグ対局に臆することもなく自身のスタイルを貫き通せる辺り、中村のメンタルの強さが垣間見える。
それとは逆に序盤不安定な立ち上がりだったのが、卓内でもう1人初のB2に臨んだ斎藤。緊張のせいか、どうも自身の手組を追うのに精一杯といった感じを受ける。
南2局 ドラ
中村大幅リード、嶋村が1人大きく沈んだ状況で迎えた田中の親番。その斎藤が7巡目に先制リーチを打った。
ドラ表示牌待ちでの先制愚形リーチ、宣言牌は。
別にこのリーチを否定するわけではない、普通に曲げる打ち手も少なくはないだろう。だがこの時ノータイムでリーチといったのには少し違和感もある。
平素対応力の高い時の斎藤であればドラにこだわらず、一旦テンパイを外して好形に受け直す選択を考える余裕もあるのではないだろうか!?
さらにこの時親の田中に勝負手が入っていた。
田中 6巡目
ツモ
当然のトイツ落とし、ごく自然な選択ではあるがタンヤオ確定の好形イーシャンテンでも
をしっかりと抱えているところが打点思考の強い彼らしい。
次巡もう1枚のを田中は切るわけだが、斎藤はこの
のトイツ落としが見えた瞬間にリーチを放っていることになる。この辺り、やはり緊張から来る焦りなのか、今日の判断力に不安を感じた。
8巡目田中がを引いて追撃のリーチを打つも結果は流局。
だが斎藤もリーチ後,
と河に置き、マンズの3面張ならば楽にアガれていた。
さらに次局1本場、今度は田中が先制リーチの親満をあっさりとツモり、前局のアガリ逃しが尚更悔やまれる展開になってしまう。
しかし今日の斎藤はここから力強かった。
南2局2本場では1300・2600を、続く南3局では中村の先制リーチを掻い潜って3000・6000をツモアガリ、一気にトップ目に立つ。
そして以下点棒で迎えたオーラスに驚愕のアガリが生まれた。
南4局 ドラ
斎藤 43900
嶋村 8600
田中 35900
中村 31600
4巡目に先制リーチを打ったのは田中
斎藤からの直撃orツモで裏がのれば単独で、脇からの出アガリなら裏がのって同点トップとなる。
これを受けて流局すればトップ確定の斎藤だが、さして危険な牌を切らずに7巡目に以下聴牌。
まだ7巡目、12000を田中に打っても2着でリーチに対して降り切れる目処はまだ立っていない。おまけに自身の手も高いとなればある程度ダマで押したくなる気持ちも分かる。
ダマである程度手を進めてもし上がれれば僥倖、現物が増えればオリに回る。この筆者の予想に反して斎藤は自らの牌を横に曲げた。
(リーチ!?いくらなんでもやりすぎだろ…)
愚形とか既に打点十分とかいう問題だけではない。
これをリーチするということは放銃のリスクを増やすことは勿論、流局時に手を伏せられるというメリットも自ら放棄することを意味する。さらにリーチ棒が出 たことによって、田中は斎藤からの直撃orツモなら裏ドラに関係なくトップ、脇からでも裏がのれば単独トップと条件が楽になった。
どう考えてもデメリットの方が多い危険な選択、しかし結果は斎藤が中盤に力強く6000オールとなる牌を引き寄せる。
ツモ
確かにこのリーチを打ったことで今節得たポイントは大きい。
勢いという言葉を使うなら斎藤はこの半荘を皮切りに大幅なトータルトップで今節を終えることになる。
しかし、この選択をマジョリティとする打ち手がこれからのリーグ戦を勝ち切れるかと聞かれれば筆者の答えは正直”No”だ。
勿論今回のこの半荘だけが斎藤の麻雀を判断する材料とはならないだろう。
年間リーグはまだ残り11節、彼がこれからどういう闘い方をするのか、個人的には非常に興味深いところだ。
[1卓]起家から順番に中嶋、宇野、中邨、秋田
東3局 ドラ
最初に大きな動きがあったのは東3局、まず南家秋田が序盤に先制リーチ
とりわけ変ったこともないリーチだが、秋田大介という選手がシャンポンでリーチを放つだけで、心が弾んでしまうのは筆者だけではないだろう。
思えば去年のB2リーグ最終節最終戦のオーラス、秋田はラス親で自風ののシャンポンリーチで2局連続親満をアガり、自身の残留を手にした。昨期自らを窮地から救った秋田の代名詞たる武器、今年は飛躍の第一歩としたいところだ。
しかしこれに立ち向かったのが西家中嶋。中盤に単騎のチートイツを即リーチとすると、秋田がこれを一発で掴み放銃。裏ドラはのらないが6400の収入を得る。
ロン
場にはドラは見えておらず、宇野と中邨は既にベタ降り模様。又中邨の序盤からの変則的な捨て牌を見ても、ここで字牌単騎のチートイツのみでリーチを打つのはかなり勇気がいる。
しかしこれを躊躇せず曲げる辺りがネット麻雀を基盤とした中嶋独自のバランスなのだろう。
放銃の痛みよりも自分が上がれる可能性がある時に手数で圧倒するスタイル。迎えた南1局の親番でも素点を稼ぎ、この半荘は中嶋の手数が場を制することになった。
この影に隠れ大きなアガリこそ無かったが、ゲーム運びが光ったのが宇野公介。
ここまで細かいアガリや聴牌料を重ねて迎えた南場の親番
南1局 ドラ
宇野 34800
中邨 24000
秋田 18100
中嶋 42100
供託 1.0
9巡目にこの牌姿となるも、
中嶋がポンからのホンイツ仕掛けが入ったばかりの状況で、ここから即打
として
をリリースすることのない手格好に構える。
中嶋の仕掛けは勿論、全員の得点状況を加味してドラを打つべき局面ではないと判断したのだろう。
結果ドラなしホンイツだった中嶋の1人聴牌で流局となったが、宇野の意志が感じられる1局だった。
続く南3局では下家のドラトイツの東家中邨がポンしてイーシャンテンの仕掛けをした後は、鳴かれる牌を全て絞ってテンパイさせずに流局。
さらに秋田親番のオーラスではトップ目中嶋が2フーロした後は全員の安全牌をあっさりと抜いて堅実に2着を確保した。
オカが無いとは言え最高位戦ルールでもトップは勿論偉い。ただ無理に上を狙うことで順位を落としてしまうデメリットを宇野という選手は熟知している。
今節は中嶋の勢いに押し切られた形となったが、結果的にはほぼ最小限でマイナスを抑えた辺り、やはり地力はメンバーの中でも上位だろう。
■2回戦
[3卓]起家から順番に阪元、松田、平林、佐藤かづみ
1回戦目はB2初参戦の佐藤かづみが幸先良くトップで終了。
続く2回戦目、序盤に抜け出したのは松田と平林。逆にビハインドを背負ったのは阪元、佐藤かづみと、上下でのマッチレースとなった。
東4局 ドラ
佐藤かづみ 22300
阪元 21300
松田 38100
平林 38300
平林が澱みない手順で10巡目に先制リーチ
これに対して親番の佐藤かづみも次のツモでテンパイ
ツモ
ドラ単騎のチートイツでアガリ目は薄いが、自身の得点状況、平林が既に自分の手に蓋をしていること、聴牌をとる場合のも危険牌であることからリーチに踏み切る。
本人も上がれればラッキー位の気持ちだろうが、流石に平林の待ちの方が秀逸。結果は佐藤かづみが数巡後に3枚目のを掴んで放銃、裏は乗らずに5200。
ロン
南場に入っても松田、平林の攻勢は止まらない。
南2局 ドラ
まずは松田の親番。
ドラ暗刻の配牌から途中に重ねたを序盤に叩いて、6巡目には以下の形。
ポン
牌理上で最も手広いのは打だが、松田の選択は打
。ドラ3枚を必ず手に活かそうという意志の表れだ。
この後すぐにを引き、
ツモで目論見通りの4000オール。もしイーシャンテンの段階で
を切っていればここでドラ切りの5800リャンメン聴牌となっていた。
ポン ツモ
南3局1本場 ドラ
松田に負けじと今度は平林の親番、平場で1300オールをツモると1本場ではまたも高打点を炸裂させる。
ドラトイツだがカンチャンとシャンポン受けの残ったこの牌姿。
6巡目、ここにを引くと打
続いてツモ打
さらにツモ打
であっという間に12000リャンメン聴牌
11巡目に阪元から出アガリ、これで松田を再び抜き返した。
ロン
南4局 ドラ
佐藤かづみ 9100
阪元 5000
松田 50900
平林 55000
迎えたオーラス、何とか連荘したい佐藤かづみの11巡目手牌。
ここから持ってきたをツモ切り、打点を求める為ピンズのリャンメンとカン
の受けのみに手牌を絞る。シャンポンの受け入れやその後のリャンメン変化を考えると得な選択とは言い難いが、次巡
を引いて先制リーチ。
これに対して前巡阪元も3着条件を満たすテンパイを入れていた。
ツモ
ここからを切ってのカン
待ち、尚10巡目に松田から出た
をスルーしての聴牌だ。
確かにを鳴くと3着へはツモor佐藤かづみからの直撃条件とはなるが、リャンメン聴牌に加えて他家からリーチが入れば無条件になる為、鳴く者も少なくないだろう。
だが不安定な条件となるに目もくれないところがいかにも阪元らしい。
結局この手は2人聴牌で流局となるが、次局は供託と本場により3着まで2000点出アガリ条件になった阪元。中盤で注文通りのピンフドラ1を作り、連続ラスを回避。
南4局1本場 ドラ
ロン
最高位戦最古の古豪、未だ健在といったところか。
[4卓]起家から順番に佐藤聖誠、野口、森川、坂本
最高位戦20代選手の中でも、評価の高い4名が集った今節一番の好カードがこの卓。
1回戦トップを取った野口が牌の巡りに苦しむ中、2回戦目は東1局で奪ったリードを佐藤聖誠が着実に広げて南場終盤に突入。
昨年は後半戦でバランスを崩したと自ら語っていた佐藤聖誠だが、今節はこの半荘を含め4人の中で一番場がよく見えていたのではないだろうか。この出来が維持できれば、今年は昇級戦線を大いに賑わせてくれるだろう。
だがこの半荘主役になったのは南3局親番の森川。
南3局 ドラ
森川 24800
坂本 24500
佐藤聖 41800
野口 27900
まず平場は先制リーチ後高目をツモって2600オール
ツモ
南3局1本場 ドラ
圧巻は1本場、まず坂本が序盤に仕掛ける。
ポン
ポン
オタ風仕掛けの現状ホンイツのみだが、ドラを引くか發を仕掛けられる手格好になれば高打点が期待できる。
苦しいのはこれを受けた野口、8巡目牌姿。
2度受けカンチャンにはなるががかなり良さそうな場況でドラドラのイーシャンテン。聴牌すれば勝機もあるだろうが、ここから坂本の仕掛けに浮いた役牌2枚を切るのは相当厳しい。
野口であればこの手は役牌を絞りに回るかと予想していたが、ここは意を決しを強打。坂本は
トイツだが、鳴けば頭が無くなるのでスルー。
後日、本人が語るには昨年より一つ上のステージに上がっての初戦、これから1年間対戦する相手の出方を知る為にも、またスタートで尻込みすることのない様、普段のバランスより踏み込んで行こうと決めていたらしい。
が、次巡ツモはまたもや生牌の、流石にこれ以上切る役牌は増やせないと打
で迂回する。すると無情にも次のツモが
。
もし聴牌できていれば、坂本が12巡目にツモ切ったで5200を上がれていたことになる。
ただこれはあくまで結果論、この仕掛けに対して上記全ての字牌をぶつける野口を筆者は想像できないので、この結果はおそらく変わらないだろう。
だがこのアガリ逃しにより受けたダメージは本人が予想していた以上に痛いものだったに違いない。
直後の14巡目、森川が6000は6100オールをツモ。
ツモ
実はこの手、7巡目はまだこの形
ここからと7連続でタンピン三色となる有効牌を引き入れて電光石火のツモアガリ、ついにこの半荘トップ目に立った。
南3局2本場 ドラ 裏ドラ
続く2本場は9巡目にノミ手を先制リーチし数巡後ツモ、裏も1枚のり2000オールは2200オール
三色に加え、多面張への手変わりも見込める手だが森川は即リーチを決断。
この時7巡目からドラである自風の北をトイツにした完全イーシャンテンの野口には、またまた堪えたアガリとなった。
南3局3本場 ドラ 裏ドラ
さらに続く、3本場は6巡目リーチでこの親番2回目となる456の三色をツモり4000は4300オール。
ツモ
南3局4本場 ドラ
まだ終わらない4本場、これが筆者にとってはある意味1番森川らしいアガリにも思えた1局。
11巡目に今度は高目678の三色で聴牌
序盤に出た2枚目の南に目もくれずに作りあげた今度は高目678の三色。
一発裏有りルール、しかもこの点棒状況であれば筆者はリーチをかけなかったことがまずない。しかし森川の選択は何と片アガリのダマテン。
後ろで見ていた他の観戦者はこのダマテンを非常に驚いたと語っていたが、昨年度同じリーグで彼と戦った者ならば、森川が奇策を好むというか引き出しが非常に多い打ち手であることを知っている。
正直筆者は聴牌した時点で「森川はダマテンにするんだろうな…」と心の中で予想していたので、特に驚きもしなかった。
この手であればは勿論出上がるし、
が出れば同巡にツモ切りリーチを敢行するのだろう。
どちらが損か得かは置いておくにしても、こういったプレーを躊躇なくできるのが森川という打ち手の強みでもあり弱みでもあるわけだ。
今回の結果は一発でツモ、満貫を逃すもこれだけ点棒を掻き集めていればもはや御愛嬌といったところか。
5本場に野口がドラ3の2000・4000をツモアガリようやく森川の親が終わる。
この半荘、牌の巡りに相当苦しんでいたことから解放された喜びか、いつもよりやや強くアガリ牌を引き寄せた姿が印象的だった。
しかしこれによってさらに厳しくなったのが坂本。
佐藤聖誠には序盤走られ、森川には積まれ、おまけに唯一同じ得点圏内で争いをしていた野口にもラス前で離されてしまった。
オーラスの点棒状況は以下の通り
坂本 7800
佐藤聖 23700
野口 17400
森川 71100
こうなってしまうと他3人は自分が着順を上げることより坂本にラスを押しつけてこの半荘を終わらせる為にゲーム運びをしてくるだろう。
とにかく先手を打って周りを降ろすしか手段が残されていない中、平場こそ先制リーチを打って流局に持込むも、続く1本場は軽く佐藤聖誠に流されてゲームセット。
この半荘を含め立ち上がり3連続ラスを引かされた坂本、受難の開幕戦となった。
■3回戦
[5卓]起家から順番に津田、井上、谷口、三ヶ島
1,2回戦を連続ラスと、卓内で1人沈みとなっている三ヶ島。
3回戦の東1局も好形の牌姿にはなるが、谷口のリーチ、親の津田の仕掛けと2人にぶつけられては何とも苦しい。
ようやく転機が訪れたのは東3局。
東3局 ドラ
まず5巡目に以下の牌姿で聴牌。
リーチをかければ2600点の3面張ではあるが、三ヶ島の選択はやはりダマテン。
次巡にツモ,打
で聴牌外し、さらに次巡
ツモ,打
であっという間に好形メンチン聴牌の出来上がり。
ロン
安目だが井上からすぐに出アガり12000、反撃の狼煙を上げる。
結局この半荘三ヶ島は36000オーバーの3着とまたも辛い結果に終わるのだが、最終戦は見事に立ち直りトップを奪取した。
阪元、宇野、三ヶ島、そして後述の清水と競技キャリアの長い選手が今節一様に苦しみつつも、皆最終戦トップで傷口を小さく抑える辺りは流石である。
この半荘の勝敗が決したのは、流局して迎えた南2局井上の親番。
南2局2本場 ドラ
井上 10700
谷口 32200
三ヶ島 38900
津田 38100
三つ巴の状況が続いているが、まずは3者とも井上の親を落としてラスを確定させたいところだろう。
まず動いたのは津田、6巡目チーテンのバック
チー
続いて谷口が9巡目に強烈なメンホン聴牌を入れる
リャンメン待ちではあるが聴牌時点でが場に2枚、
が3枚見えとかなり薄い。
そこにラス親の井上が10巡目にリーチを放ち、3人聴牌となる。
そして12巡目の谷口、津田の当り牌である生牌のを引くと、小考後
を河に置いた。
確かにこの手を上がれば、この半荘トップになる確率は一気に上がる。もし対抗相手が津田のチーテンだけであれば谷口も全ての牌を押しただろう。だが井上のリーチが既に入っているこの局面、谷口は自らのトップより井上をラスに縛るメリットを重視してオリた。
当り前のバランスと言えばそうだが、この手を潔く諦められる安定したゲーム運びこそ谷口がB2に長期安定して籍を置ける所以の一つに他ならない。
一方バックで親をかわそうとした津田、引いた無筋の
を
とスライドさせて井上に放銃。
ロン
裏は乗らず2000点止まり。
は津田から見てワンチャンスだが、ドラの所在も不明な上に井上の現物も手牌にはある。
この放銃を完全に否定するわけではないし、津田はここまでこういった牌を切って勝ち上がってきたのだろう。
ただやはりこの局面での谷口と津田のとった選択の差が、2名の安定感の差を示している様に思えるのは筆者だけだろうか。
もし麻雀に神様がいるとすれば、次局谷口に与えられた手は前局のオリに報いる天恵と呼ぶべきなのかもしれない。
南2局3本場 ドラ 12巡目
ロン
谷口がこの半荘のトップを決めるダマテンを井上から和了。
開幕戦をトップ2回、3着2回と順調な滑り出しで終えた谷口。今期のB2でもこの男の安定感はやはり光りそうだ。
■4回戦
[6卓]起家から順番に根本、川端、石井、清水
3回戦までの大まかなポイントは根本+80、川端+40、石井-30、清水-90と女流勢に軍配が上がっている6卓。
東1局 ドラ
まず先制リーチを打ったのは石井。
宣言牌はドラのだが、
も
も場に1枚切れなので特に悩むこともなくリャンメンに受ける。
続いて川端も中盤に追いかけリーチ。
二人の捲り合いで流局濃厚かと思われたが、最後のツモ番で親の根本がそれとなく河に置いたのは生牌の。
当然根本も聴牌。
根本はこの局石井にリーチが入っていた時点から慎重に対応をしていた。彼女自身聴牌が入ったことは正直想定外のことだろう。この聴牌取りの損得は難しいところだと思うが、驚くべくは何の躊躇や小考もせず、安牌を切るかの様にを河に置ける精神力だ。
東1局1本場 ドラ
1本場はその根本が8巡目に速攻の3面張リーチ。程なくして安目の1000は1100オールをツモ、供託のリーチ棒も手に入れ一歩リード。
ツモ
根本続く2本場も中盤に先制リーチを打つが、ここは清水が流して親番終了。
東2局 ドラ 裏ドラ
6巡目にポンの発声は石井。
ポン
ドラは、チートイドラドラのイーシャンテンからノータイムで仕掛ける辺りが石井らしい。
先にを叩ければトイトイへ、他の牌が出ればタンヤオに移行する狙いだろう。
しかし8巡目にまたも根本からリーチ。11巡目にあっさりとツモり裏ものって満貫、強い。
ツモ
東3局は清水の先制リーチに石井がW暗刻で追いかけるも、清水が満貫ツモ。
この半荘石井は本当に苦しい。
彼の持ち味は仕掛け多様のスピード麻雀であり、平均聴牌スピードは昨期、今期のB2リーグおそらく随一だろう。その上他家の追撃リーチなどには慎重に対応し放銃も少ないので、同卓するとかなり厄介なタイプであることが分かる。
それがこの半荘では先に鳴いても同等かそれ以上のスピードで面前聴牌のリーチが入る。
自分が面前聴牌の先行リーチを打てても追いかけやかわし手に競り負けるなど、突破口を見出せないでいる。
東4局1本場 ドラ
ここでも石井は果敢に仕掛けるが、
チー
ポン
聴牌直後に川端からリーチ
2巡後にトップ目の根本も、川端の現物で果敢にリーチ
ほどなく川端が1300・2600をツモリ、石井は1人離れたラス目に追いやられてしまう。
南1局にも1300・2600をツモった川端は自身の親番でもさらに加点。
南2局 ドラ カンドラ
石井 19200
清水 34000
根本 34800
川端 34600
川端9巡目に高目満貫の聴牌をリーチ
ドラのは川端が既に切っており他からの発声はない。ここは一人旅かと思いきや立ち向かってきたのはまたもや根本。
川端のリーチ後に重なったドラを手に、イーシャンテンからの真っ向勝負。
ここから,
と無筋を切り飛ばし、さらには
をアンカンしてまた無筋の
切り。
こういった押しを根本は以前からよくするのだが、正直筆者は少し理解に苦しむ。
確かには川端のリーチ後も清水、石井が切らないところを見ればヤマに残っている可能性もあるだろう。
だがこれだけ根本が押しているのを見ればオリている2人が途中で掴んでも切ることは考えづらいし、仮にどこが入り目でテンパイしても好形とは言いづらい形だ。
自身の手組とここで親の川端のリーチに放銃する際のデメリットを考えればとりあえず現物のをトイツで落とす辺りが無難に思えるのだが、そこは女流最高位独特の勝負勘なのだろうか…。
結果はアンカンの直後に川端がツモアガリ。安目でドラものらず1300オール。
ツモ
局は進み南3局3本場 ドラ 裏ドラ
石井 18300
清水 30200
根本 33000
川端 36000
供託 2.0
ラス親でとにかく連荘したい石井。6巡目に先制リーチを打つも、
中盤清水の追いかけりリーチに一発放銃。
ロン
石井、ラス親の先制リーチも撃墜されるのでは、正直今日はお手上げだろう。次節以降の巻き返しに期待したい。
オーラスは清水がトップを決定づける6000オールを決め、本日の負債を大幅に減らして対局を終えた。
■総評
斎藤、中嶋とB2初参戦組が1,2フィニッシュを決めた第1節、総じて若手の台頭が目立つ結果になった。
ただ斎藤、中嶋ともに今日は打点とスピードに恵まれたが、ゲーム運びには課題が残る内容もあった様に思える。
年間リーグではポイントを叩く力と共に維持する技術も当然問われる。これから先彼らがどういう戦い方をするかに注目したい。
プラス組の中でも佐藤聖誠、田中、谷口らには高い安定感を感じた。来節以降もこのバランスが維持できれば昇級争いにも必ず名を連ねてくるだろう。
対してベテラン勢、中堅勢はかなり苦しい立ち上がりとなったが、キャリアの長い選手の大半が最終戦で傷口を小さく抑えた辺りが何とも頼もしい。
残り11節。まだ先は長いとは言え、今日の結果を各選手が受け止め、更なる好勝負がこれから展開されることを期待させて頂きたい。
最終決戦は10月11日(日)
文責 竹中 誠(文中敬称略)