3月18日に開幕したB1リーグ、注目はやはり、いわま、和田、山口の3人の中から女流初のAリーグ選手が誕生するかでしょう。
攻撃型のいわまに対し、山口、和田はバランス重視型だが、柔軟に対応するタイプの山口、自分のスタイルを堅持するタイプの和田と、それぞれ個性があって面白い戦いになりそうです。
もちろん三人とも数々のタイトル戦をにぎわせてきた実力の持ち主、ワンツーフィニッシュで二人同時昇級も十分に考えられます。
しかし、他の選手たちも実力伯仲、うっかりしていると来年の最高位の麻雀を見逃してしまうことになりかねないので、ごひいき以外の選手にもぜひ目を向けていただきたいと考えております。
第一節ということもあり、1卓1回戦ずつレポートいたしました。
1卓1回戦
起家から 須藤、太田安紀、太田智康、熊田の順
東場は連荘も含めて6局すべてにアガリがでるという激しい展開。
2000・4000をものにした須藤、太田安紀が少しリード。
南一局(親は須藤、ドラ)
須藤 37400
太田安紀 34200
太田智康 20600
熊田 27800
南家の太田安紀が6巡目に以下のリーチ
東家の須藤はそのとき
ここで降りても先々手詰まりになると判断したのか、一発目にツモったを勝負してイーシャンテンを維持。
次巡、をツモ、をアンカンして役なしだがカンテンパイ、リンシャンではツモれずもリーチはかけない。
さらに次巡、一発目に切ったを引き戻すと、太田安紀がリーチ前に、リーチ後に、を切っているのを受け、、を落とすイーシャンテン戻しを選択、数巡後にツモで
アンカン
一通をつけて追いかけリーチ。
結局は流局したが、須藤のアクロバティックな打ち筋が面白い一局であった。
ちなみに、この局がこの半荘で唯一の流局となる。
一本場は熊田が二人リーチをかいくぐって白ドラ一の2000は2300。
前局の供託と合わせてリーチ棒が4本ついてくるというおいしいアガリで、トップ争いに加わってくる。
南二局、須藤の先制リーチを太田安紀が追いかけるが、宣言牌がつかまりリーチドラ一の2600。須藤が一歩リードする。
南三局、後のない親の太田智康が14巡目にツモ切りリーチ、しかし、太田安紀が「自分もテンパっていました」とばかりにをツモ。タンヤオツモのテンパネで700・1300。
須藤を追いかける。
南四局(親は熊田、ドラ)
熊田 31900
須藤 39800
太田安紀 34800
太田智康 13500
トップ目の須藤に1000・2000で追いつく太田安紀がどう打つかが気になるところ。
しかし、どうにも重苦しい展開となり、13巡目にをポン、数巡後、熊田のリーチ宣言牌を打ち取り、タンヤオのみの1000で二着のまま終了。
熊田は良形にならぬままタンヤオをテンパイ、待ち牌選択となり
からの切り。何とも歯がゆいフリコミであった。
須藤はラッキーな気持ちがする(であろう)逃げ切りトップ。
重苦しい展開を考慮し、華麗なトップ逆転よりラス親の熊田を押さえて終局させることを選択した太田安紀の冷静な判断が光った。
須藤 +39.8
太田安紀 +15.8
熊田 -9.1
太田智康 -46.5
2卓2回戦
起家から、浅野、近藤、曽木、山内の順
ここまでのポイント(1回戦の結果)は浅野36.4、近藤-36.5、曽木11.0、山内-10.9
東一局は9巡目に曽木がタンヤオの、のシャンポン待ちでリーチ、一発ツモの2000・4000で幕を開ける。
その後、曽木と山内のアガリ合戦で早い局回しとなり迎えた南二局。
山内が11巡目リーチ、しかし数巡後、仕掛けていた親の近藤に、曽木が山内のゲンブツでフリコミ。中ドラ一の2900。両者以外のアガリが出て、卓上の風向きが微妙に変化する。
南二局一本場(親は近藤、ドラ)
近藤27000
曽木37800
山内33800
浅野21400
8巡目に七対子でテンパイしていた山内が、10巡目にタンキにしてリーチ、
すると即座に近藤がドラの白を切って果敢に追いかけリーチ、そして一発ツモ。
リーチ一発ツモで4000オール、瞬く間にトップ目に躍り出る。
二本場、今度は曽木が4巡目という速さでリーチ。ちなみにこれも七対子タンキ。
近藤はまたも果敢に9巡目に追いかけリーチ、雀頭の-待ちであったがこの局は流局。
南二局三本場(親は近藤、ドラ)
近藤 40800
曽木 32200
山内27200
浅野17800
供託 2000
浅野が序盤からをポン、
すると近藤が、浅野が切ったをで、続けざまにをでチー、
しばらくして浅野が曽木からをポン
近藤が浅野からをポン、
大物手の匂いのする仕掛け合いだ。
しかし他の二人も負けてはいなかった。
11巡目、曽木が近藤に対して押さえていたソーズを聴牌で切り出してリーチ。
切りの-待ち。近藤から「ロン」の声はかからない。
すると、ドラ一だが役なしのカンで聴牌していた山内もツモ切りリーチと出る。
さながら四人リーチのようなめくり合いとなったが、浅野がをつかんで山内がロン。
裏ドラが2枚乗って8000。リーチ棒、積み棒ともに三本ずつプラスでつごう11900の収入。これでトップ目の近藤に並びかけた山内は、続く南三局にポンのタンキで1000点を近藤から打ちとり、僅差ながらトップ目にたつ。
南四局(親は山内、ドラ)
山内 40100
浅野 8900
近藤 39800
曽木 31200
トップ目の山内だが、この点差では流局時に手牌をふせたとき、近藤が聴牌していると逆転されてしまう。
幸い、ドラこそ無いが並びのよいシュンツ手が入り11巡目に聴牌。平和への手変りを待つことなくの形からを切り、ノベタンの-でリーチ。三巡後、浅野からが出てロン。裏ドラが1枚乗って3900。これで近藤と4200点差。次局はノーテンで流局しても良くなった。
南四局一本場(親は山内、ドラ)
山内 44000
浅野 5000
近藤 39800
曽木 31200
トップ目から三着目の間での逆転劇を期待したくなる場面ではあったが、ここは近藤がタンヤオのみの仮テン(1300は1600)を曽木からロン。あっさりと終了。
リーチをかけてツモに賭ける選択肢もあったが、この局面でリーチ棒を出すと、曽木の立場からした逆転条件に以下の項目が追加される。
・満貫ツモでトップ、1300・2600ツモで二着
・近藤から直撃逆転の条件緩和
・山内、浅野からの満貫ロンで近藤を直撃せずとも逆転二着。ハネマンロンならどこからでも山内を逆転、トップ。
近藤にしてみると最低でも両面待ちでないと割に合わないだろう。
1卓1回戦の太田安紀同様、冷静な判断だった。
山内 +44.0
近藤 +21.4
曽木 -10.4
浅野 -55.0
4卓3回戦
起家から、清原、篠原、嶋村、いわまの順
ここまでのポイントは清原56.8、篠原55.4、嶋村-78.1、いわま-34.1
東一局、清原が4000オールをツモ。一本場で篠原が1000・2000は1100・2100をツモった後、東二局も終盤。
いわまが最後のツモで-待ちの平和のみをテンパイ。ドラのを切るが、このドラは親の篠原が切っており、清原、嶋村が降り気配だったのでさほど目立つものでもなかった。
ハイテイをツモった嶋村が、前巡に切ったを続けて切ろうとしたが、いわまがドラを切った意味を感じ取ったのか、別の安全牌を切り流局。いわまのテンパイを確認すると、笑顔でノーテン罰符を払う嶋村。何かやってくれそうな予感がする。
案の定、次局から、
いわま 1000・2000は1100・2100ツモ
嶋村 いわまから2900プラスリーチ棒
いわま 嶋村から1300は1600プラスリーチ棒
いわま、嶋村二人テンパイ
嶋村 リーチで一人テンパイ
いわま 1000・2000は1200・2200ツモ、プラス供託リーチ棒
嶋村 1000・2000ツモ
いわまとの激しい攻防を南二局まで演じてみせる。
南三局(親は嶋村、ドラ)
嶋村 29900
いわま 35000
清原 32100
篠原 24000
親の嶋村に軽そうな手が入る。3巡目でこの形。
ここにをツモ、中ぶくれの好形を優先して、落としに出るが、結果的にのアンコをしくじり苦笑。しかし中盤でこうなる。
を切ればテンパイ、ここは即リーチでよいだろう。
ところが、嶋村はノータイムでテンパイとらずの切りと出た。
234の三色が見えてはいるが、場に二枚が切れている。すぐにもう一枚のも切られ、手牌と合わせて四枚とも見えてしまう。
少々厳しかったかもと考えた12巡目、を引いて待望のタンピン三色ドラ一をテンパイ。
待ちはのみなので一旦はダマに受けたが、次巡にやおらツモ切りリーチと出る。
出あがりでも18000確定。これに飛びこんでしまったのが清原だった。
勝負手だったのか、やの切れ具合をみて待ちが無いと読んだのか・・・。
しかし、これはこの手をこの形に持ってきた嶋村を讃えるべきであろう。
このアガリで優位にたった嶋村だが、いわまもまだあきらめてはいない。
一本場、12巡目にドラのを雀頭にしたピンフの-待ちのリーチ。
嶋村、ここはさすがに降りるのだが、最終ツモで安全牌が無くなってしまう。
いわまがリーチ後に切ったが三枚見えて、ワンチャンスとなったが浮いていたが、なんと無筋のを切って流局。
嶋村なりの安全論があったのかもしれないが、「では振り込みたくないんだよ」という意思を感じた選択だった。
南四局、ラス親のいわまがまだ攻めて来そうな感じもしたが、清原がピンフドラ一の2000は2600を篠原からロンして終了。総合ポイントはまだ浮いているし、打ち込んだ親っパネの分しか沈んでいないことを考慮すれば、これも冷静な判断。篠原も東場のひとアガリのみという状況をよく我慢して、大きくポイントを減らさずにまとめた。
嶋村 +46.4
いわま +14.5
篠原 -17.1
清原 -43.8
3卓4回戦
起家から、和田、山口、新井、熊林の順
ここまでのポイントは和田-54.1、山口-46.5、新井63.5、熊林37.1
東一局、起家の和田が、リーチツモの1000オール、一本場でリーチの熊林からタンヤオドラ二の5800は6100を連続でアガリ、好調なスタートに思えたが、二本場で山口がリーチすると、そのゲンブツで待ちかまえていた新井のタンヤオドラ二、5200は5800につかまってしまい、逆転されてしまう。
東二局、親の山口が0本場、一本場と連続リーチも流局、これで三連続リーチ不発。
するとその二本場、今度はドラのとのシャンポン待ちをダマテンに構える。じっと我慢の14巡目に待望のツモ。4000は4200オールで自分の出した供託リーチ棒を取り返す。
三本場、序盤に熊林がカンをチー、ドラのを切ると山口がこれをポン、タンヤオドラ三で親満連発を目論む。その後、をもう一枚切り飛ばしてきた熊林、一色手か。
両者ともなかなか手が進んでいないように思えた終盤、これまでソーズを一枚しか切っていない熊林の手の内からが出される。
「一色手じゃないのかも」そう思えた。和田もそう思ったのか、を切り出したところ熊林から「ロン」。
チー
四面張の中で唯一の高目で12000。捨て牌だけを見ていれば逆に切れなかったソーズ、
和田にとっては痛恨のフリコミだった。
その後、各者に細かいアガリが出て南四局を迎える。親の熊林が和田から1500をあがって連荘。一本場でこの状況
熊林 28000
和田 12700
山口 39800
新井 39500
山口と新井はアガリトップ、親の熊林にも逆転のチャンスは十分、しかし、その中で8巡目にリーチをかけたのは和田。
実はこのとき、新井はすでに-待ちでピンフをテンパイ。一発目に無筋をひくが降りずに押す。山口も負けずに和田の切ったをチーしてタンヤオをテンパイ、新井の待ちでもあるのタンキに受ける。そしてほどなく「おっ」という感じで山口がをツモ、400・700は500・800で逃げ切りに成功した。
山口 +42.6
新井 +19.0
熊林 -12.8
和田 -48.8
総評
第一節を終了して、プラスもマイナスも100ポイント前後の範囲に収まりました。
いわま、和田の女流二人が下位にいるのが残念ですが、二連勝で挽回できる程度。この二選手なら次節には涼しい顔で上位にいるかもしれません。
今回レポートした対局で印象的だったのは、オーラスのアガリすべてがその時点の順位を確定させるものであったことでした。長期戦の戦い方を熟知している選手が多いのでしょう。また、レポートした対局では四着だった太田智康、浅野、清原が抜け目なく原点付近のポイントで今節を終了していることも見逃せません。
一年の戦いはまだまだ長く、混戦模様になると予想します。
(文中敬称略)
文:武田哲也