こんなことがかつてあっただろうか……前代未聞の経過である
全20ゲーム中16ゲームが終了し、
佐藤 崇 +73.7
水巻 渉 ▲6.6
村上 淳 ▲16.8
飯田正人 ▲53.3
ここまでのトップ回数・二着・三着・ラス回数を左から並べると
佐藤 崇 4⇒5⇒5⇒2
水巻 渉 3⇒5⇒7⇒1
村上 淳 6⇒2⇒3⇒5
飯田正人 3⇒4⇒1⇒8
最高位戦本戦及び最高位決定戦の成績評価は、持ち点3万点からの得失点+順位点で争われている
順位点は以下の通りである
トップ +30000点
二着 +10000点
三着 ▲10000点
ラス ▲30000点
そして便宜上、千点を1ポイントに換算し直して表記するため、たとえば以下のような持ち点で1ゲーム終了すると、成績表記は次のようになる
(1ゲーム終了時持ち点)
Aさん…37800点…トップ
Bさん…28500点…二着
Cさん…27700点…三着
Dさん…26000点…ラス
(1ゲーム終了時ポイント)
Aさん…+7.8
Bさん…▲1.5
Cさん…▲2.3
Cさん…▲4.0
(1ゲーム終了時順位点)
Aさん…+30.0
Bさん…+10.0
Cさん…▲10.0
Dさん…▲30.0
(1ゲーム終了時成績)
Aさん…+37.8
Bさん…+8.5
Cさん…▲12.3
Dさん…▲34.0
となり、トップを取ったAさんとラスを引いたDさんとの間には、+37.8と▲34.0の差が開くことになる。これは点棒にして、7万1千8百点もの差であるから、親満6回分もの差になる
1ゲーム終了時の純粋な素点の開きだけカウントすれば、1万1千8百点なので、親満1回分で足りる点差でしかない
つまり、この成績評価法の特徴は、順位取りにあることがわかる
翻って今回の決定戦16ゲームまでの経過をなぞってみると…恐ろしいまでにこの順位取りの特徴が出ている
(順位点得点)
佐藤 崇 +60000点
水巻 渉 +40000点
村上 淳 +20000点
飯田正人 ▲120000点
(純粋素得点)
佐藤 崇 +13700点
水巻 渉 ▲46600点
村上 淳 ▲36800点
飯田正人 +66700点
大差で永世最高位がリードしているはずなのに、なぜ最下位なの?と納得いかない方々のために、平均順位率なるものを算出してみる
(16ゲーム終了時平均順位率)
佐藤 崇 2.312
水巻 渉 2.375
村上 淳 2.437
飯田正人 2.875
平均順位率は、オールトップを取れば、1.000になり、オールラスならば、4.000になる
最高位決定戦は、第一期だけ、この順位率部門と、素得点部門とに分けて最高位を決定していたが、第二期以降は、ミックスさせた現評価法になっている
ただ、今回の決定戦にみられるように、永世最高位が突出した得点を叩き出しているにも関わらず、差のついたラスに甘んじているところに、もしかするとこの成績評価法に問題点があるのかもしれない
もちろんプロであるからには、ルールや成績評価法によって、力が発揮出来なくなるなどあってはならないことであり、現に永世最高位をこの評価法で獲得した飯田にしてみれば、最下位に甘んじてる現実を真正面から受けとめているのは当然のことなのである
ただ、三日目に雪崩のように崩れ落ちた佐藤が、四日目に首位を奪還したわけだが、最高位の頂きにつくために、ゲームメイクの上手さだけでは物足りなく思うのは、これまた当然のことなのである
つまり、最高位に就く者には、小手先の技術に溺れることなく、大上段から振りかぶって打ち込む強さが求められているし、その体勢を作るために準備すべき幾多の技をも兼ね備えてなければならないのである
そのことを知っている勇者三人が今回永世最高位に挑んでいるわけで、16ゲームが終わり、残すところたった4ゲームであるが、最高位に果たして就いてよいものかどうか?自問自答し、もがき苦しみ悩みながら闘うはずなのである
[永世最高位の苦難]
三日目を終えて、僅かなマイナスを背負うものの、悠々の射程圏内に位置し、目論み通りの展開で四日目を迎えた永世最高位が、その初戦で火を噴く
《13回戦南1局親番》ドラ
オール手出しの5巡目、おもむろに飯田はリーチを宣言した。その対角線上に陣取って戦況を見ていた私は、外側から内側に切られているとはいえ、字牌を一枚も切らずにリーチがかかるなどとは思っていなかったため、まさか次のテンパイが入っているとは想像だにしてなかった
ドラがだということと、その以外の字牌がすべて一枚ずつしか場に顔を見せてなかったため、思考がトイツの塊のような私は、飯田の待ちがタンキやシャンポンにしか目がいってなかった
10巡目、永世最高位はものの見事に私の稚拙な読みを裏切り、をパシッと右端に寄せてみせてくれたのだった(4000オール)
へぇ~、いまフリー店に行けば、多くの店で楽しめる<アルティマ>仕様のような捨て牌とテンパイ形、飯田の若さに私は驚愕の唸りをあげるしかなかった
この4000オールで飯田の持ち点は5万点近くまで上昇し、このゲーム終了時には<54500>となり、たった1ゲームでトータル首位に躍り出てしまうのである
《14回戦東2局西家》ドラ
6巡目、カンを引き込み、を捨てテンパイする飯田
親の水巻の第一打が、南家佐藤の第二打がであったが、慎重に手替わりを待つ飯田
7巡目、下家の村上がを手出しし、更に次手番の水巻がを手出しした同巡、飯田はツモってきたを横に曲げる
この時点で残り三枚のはすべて山に生きていたから、飯田のリーチは的を得ていた
14巡目、親の水巻が気合い充分の追いかけリーチをすると、次巡を引いてきてしまい、それを見た佐藤が16巡目にをオリ打ちするわけだが、私は何かしっくりしない気持ちで飯田が点棒をしまい込む様子を見ていた
飯田はリーチ直後にを引いている。もちろん飯田が手役指向の強い打ち手だとは思わないが、せっかく前回戦で大トップを取ったフォローの風を利用しない打ち手だとは思えなかった
だからヤミテンに構えていたはずではなかったのか?
単純に村上の、続く水巻の手出しを見て、は最低山に二枚はあると踏んでのリーチ宣言だったのだろうか?
1300と5200の違いはたった3900であるが…飯田はこの局を制すことだけが目的だったのだろうか?
《14回戦東3局》ドラ
前局カンをアガッた飯田が4巡目にリーチをかける
ドラ
ここからを横に曲げてのリーチである。そして9巡目に村上からを召し捕るのだが、私には前局にも増して違和感があるアガリ方に思えた
この話をすると、若手プロたちからは確率論や和了期待値の話で反論されることは承知しているのだが、役牌…とくに三元牌には、その特性が強く出ているところがあり、できうるならばその特性を活かしたアガリ方が望ましいのではないか?と考える文化もある
その考えが正しいと言いたいのではなく、三元牌の美しさを倍加させるアガリがあるのも事実なのである。そして永世最高位ほどの打ち手であれば、そんな話は充分わかったうえでを曲げたはずなのである
何故ゆえに?美しさよりアガリ易さを優先させたのか?…というより、絶対にアガリが必要な局面だったのか?私には疑問だらけの局が重なってしまった
親の佐藤が配牌から抱えていたをリーチ一発で討ち取れていた話をしたくて言ってるのではない。そんな結果論ではなく、飯田の思考の背景にある<勝負>への構えに陰りを見てしまったのである
嘘偽りなく、私のメモには「飯田危うし」「これから起こるであろう苦難にどう対処していく?」と飯田が2600を村上と授受してる最中に書いてある
前回戦に大トップを取り、今回戦も2局連続でアガッた飯田であったが、このゲーム、マイナス2万点のラスを引き、次回戦もラスを引き、この日の最終ゲームも三着で終わっている
未熟な私の目であるから敗因は別のところにあるのかもしれないが、私はこの2局をもってこの日の飯田は終了したような気がしてならない
勝負への構えということに関して言えば、プロ界でも右に出る者はいないと断言してもいい永世最高位が、最終日までにどう気持ちを立て直してくるのか、私は大いなる期待とともに注目している
[村上淳への降臨]
女神はこの日も村上に微笑みを投げかけるのだろうか?三日目の奇跡をどう生かすのか、私は興味津々村上の背中を追った
《13回戦東2局》ドラ
第一打を終えた親番村上の手牌である。ドラが二枚あるものの、かなり重たい手組みになっている。ところが…この手が9巡目に親満和了となるのである
さて村上はどんな絵解きをしたのだろうか?
2巡目ツモ⇒打
3巡目ツモ⇒ツモ切り
4巡目ツモ⇒打
5巡目ツモ⇒打
この時点で手牌はこう化けている
恐ろしいまでの埋まりかた。勝負の女神はまたしても村上に降臨しているのか
村上がイーシャンテンになった5巡目、タイミングが良すぎるくらいのタイミングで水巻がをいとも簡単にツモ切りする
なるほど、さすがにイーシャンテン手牌だったが、こういう巡り合わせにしてしまうのは女神の仕業なのかなと思う私
当然「ポン」して打とする村上
ポン
電光石火の親満仕上がり、<嗚呼このに飛び込んでしまう可哀相な男は誰なんだろう?嗚呼できることならツモってくれ>と心の中で叫んでいた
そして運命の9巡目、水巻は先の手にを引いてきてしまう
ツモ
いつものフォームと違っていいから、234の三色手筋に入るに手をかけてくれ、そしてを引いて落としをして
こんな最終形を描いてくれないか…と淡い期待をしてみたのだが、水巻は少し小首をヒネりながらもを河に置いていた
「ロン!!」会場内に響き渡る朗々しい声で村上は親満をアガッた
村上の挨拶、村上の発声、そして村上の闘牌姿勢には見習うべきものが多々ある。そのすべてに嫌みがなく、そのすべてに村上の素敵な人間性が溢れていて、そのすべてに村上の素直さが表れている
勝負の女神が村上のそばにいたいなと想うのは自然なことなんだな、私はを捉えた村上の発声を聴いていて女神の想いがわかったような気がした
《14回戦南2局1本場》ドラ
3巡目の村上の打牌に私は驚いた
ツモ
場はいたって平々凡々で、村上の持ち点は22400点だった
村上のフォームはまだよくわからないところはあるが、ドラがということを加味すれば、か、もしくはあたりなのかなと思っていると、打(ツモ切りではなく手出し)
ほう!?私はビックリした。<ヘェ~、123の三色も見るんだ、なるほどそれは持ち点から打点を考慮してなのかな?>と下世話な読みを働かせて村上のその後の摸打に注目した
4巡目ツモ⇒打
5巡目ツモ⇒打
6巡目ツモ⇒打
7巡目ツモ⇒打(リーチ)
11巡目にをツモってラス目から二番手に浮上するのだが、この和了手順を見ていると、女神と二人三脚で上昇気流に乗っていく村上が神々しく見えるのだった
《16回戦オーラス1本場》ドラ
供託棒が千点あるオーラス、各自の持ち点を記してみると
トップ…西家佐藤…41100
二番手…北家村上…30400
三番手…南家飯田…26800
ラス目…親番水巻…20700
村上の配牌はこうだった
ドラがトイツで入っているものの、とてもとてもトップ逆転の手に仕上がるとは思えなかった
ところが、またまた女神は降臨した
第一ツモ⇒打
第二ツモ⇒打
第三ツモ⇒打
第四ツモ⇒打
第五ツモ⇒打
第六ツモ⇒打(リーチ)
この時点では場に二枚切れ。でもそんなことは勝負を語るには一切関係無い話。ましてや村上には女神が降臨しているのだから、煮詰まった局面での判断に狂いがあろうはずがない
そして…例の村上の凛とした発声が会場内に響き渡ったのは13巡目のことだった「ツモ!!」
裏ドラを開けると、そこにもがあり、いわゆるリン牌を村上はツモり上げていた。トップの佐藤との差は1万700点だったので、供託棒千点・積み場込みできっちり700点交わしてのトップ逆転劇と相成った
<八>は麻雀発祥の地中国では最も縁起のいい数字とされているし、日本でも末広がりとして好まれる数字である
村上が大事な大事な四日目最終ゲームのオーラスで、リン牌のをツモり、裏ドラにが表示された御利益を最終日に活かせると、勝負の女神が3度目の微笑みをしてくれるに違いない
[水巻の苦悩]
四日目、水巻は明らかに不調だった。東2局の村上への親満献上などその端緒な例で(注:村上編参照)、開局直後の交通事故に遭遇するパターンは、その日一日の苦闘を予感させるものである
水巻もそのあたりの経験はイヤというほど積んできている打ち手なので、どんなふうにしてその悪い状況を打破していくのか、プロの矜持を見せて欲しいなと思いながらみていた
《13回戦東3局》ドラ
例の親満放銃直後の水巻親番の配牌である
素晴らしい配牌イーシャンテン手牌である。しかも固定形ではなく<くっつきテンパイ>と呼ばれる変化形である
私は七対子が好きである。なぜ好きかというと、変化形だからである。拘束されるのが嫌いなB型気質に因るところが大きいのかもしれないが、テンパイを自分で選べる有利さが、七対子好きの最大の理由になっている
やはり1巡ごとに変化するゲームゆえ、固定形より変化形のほうが有利なのではないかなと思って打っている
水巻は選択権のある手牌を貰ったわけだが、自分の置かれている不幸な状況をどこまで掌握しているのか?神様に早くも問われた1局が訪れていた
2巡目に、3巡目にを引いて手牌はこうなった
ドラ
神様は本当に意地が悪い
なぜゆえにドラ表示牌のをこの巡目に引かせたのか?
水巻の掌握力を試すには十分過ぎる牌だった。そして水巻はこの神様の悪戯に惑わされ沈んでいく
置かれた状況が悪くなければ、誰だって二枚使いのドラ表示牌は重宝する。だから水巻が上の手牌からを切っていったことを責めることはできない
次巡、を引いて待ちで即リーをかけることになるのだが、ちょっと斜に構えて生きている人間なら、打とせずに、ドラ表示牌を前巡の選択時に切っているかもしれない
するとツモの次巡にを引いてのテンパイになる
どちらがアガリ易いのか?比較してしまえば下段が有利に思えるし、現に8巡目にを引いている。もちろんこれは結果論なのかもしれないが、現実の話でもある
そして運命は水巻を更なる窮地に追い込んでいく。14巡目、まるでライオンが獲物をキャッチしたかのような眼光で捨て牌をなめ回した佐藤が追いかけてくる
残りツモ2回でロープブレイクできる17巡目、水巻はを持ってきてリング中央に放られてしまう。たった2600ではあるが、傷みとしてはマンガンを遥かに超えるものがあったように思う
《13回戦オーラス》ドラ
先の回戦のオーラスである。傷つき疲れ果て瀕死の重傷を負った水巻であったが、これまで幾度となく修羅場をくぐってきただけあって、打たれても打たれても、はい上がってくる強さが水巻にはある
このオーラスを迎え、ラス目の西家村上とは2800差の三番手に踏み留まっていた水巻は(二番手の親佐藤とは1万3千点差だった)、6巡目に次の手牌から仕掛けを入れていく
ドラ
北家だったので、ポンの仕掛けだなと思うだろうが、水巻はをチーしたのである。なぜかといえば、3巡目にを捨てていたからである。それにしても…この三番手を死守する飽くなき執念に私は脱帽してしまった…凄いな
すると8巡目に親の佐藤が配牌から持っていたを打ち出してくる。そのときの佐藤の手牌はこう
ドラ
空恐ろしい手構えであり、<肉を切らせて骨を断つ>考えで、水巻に鳴かれるのはわかったうえでの切りであった
一方水巻はをポンして打とし、手牌はこうなった
チー ポン
もう格好もヘッタクレもない渾身の仕掛けテンパイである
そして…14巡目に雀頭のを引いてきて打とし、タンキに構え直す。は一色手が明らかな親佐藤に切れる牌ではないため、仕方ない構え直しであった
次巡、を引いてと入れ替え、手牌はこうなる
チー ポン
のノベタンにしなかったのは、場に&が二枚ずつ飛んでいたためである。そして次巡を引きを切り、今度は絶テンの待ちに受け替えをする水巻
すると下家の親佐藤が、すんなりをツモ切りしてくれて、三番手死守の千点をGET
水巻の半荘16ゲーム中、なんと三番手が7ゲームある。率にして約四割四分。四日目が終わって、首位を走る佐藤と80P差の二番手に付けているが、良くも悪くもこの三番手率が、今決定戦の水巻を物語っているような気がする
成績評価法が、トップ取りかラス抜けかという形になっているため、調子が上がらないうちは水巻のような三番手死守作戦が、戦略的に有効なことは明白である
現に水巻はラス回数1回である。この我慢が最終日に花を咲かせることに繋がるのか、水巻の心中と共に、とても興味深いものがある
[飄々と積み上げる佐藤崇]
《14回戦南1局》ドラ
西家佐藤の配牌をご覧あれ
ここまでの佐藤の持ち点は36700でトップ目に立っている
そして、親村上の第一打牌のを「ポン!」。私は佐藤の手牌が見えぬ位置にいたので、ドラでもトイツで入っているのかな、くらいの考えで見ていた。それにしても…親の第一打にポンの声をかけられる佐藤の好調さに目を奪われた
佐藤は次巡にを引きを切り、6巡目のをカンの形でチーしてテンパイを入れる
チー ポン
カンでチーしたのはとの振り替えでチャンタが付加できるからで、当然のことなのだが冷静な佐藤の捌きを垣間見た
佐藤の第一打が、第二打がなので、誰もこのピンズ一色手を見破ることができない。北家の飯田が次の手格好から生牌のを打ち上げたのも頷ける話である
飯田も無風下なら、もしかするとワンズのドラ含みペンチャンを外してソーズ一色手にしたかもしれないが、佐藤の1巡目ポンを見て、さすがにドラは切れないと思ったのも当然である
で3900、で8000放銃だったわけだが、両方抱えている飯田にすれば薄ら寒い放銃だったに違いない。また、佐藤の恵まれた手牌が開けられた瞬間、飯田が開幕前危惧していた筋書きが、いよいよ現実のものになりつつある危機感でいっぱいになったはずである
《14回戦南3局》ドラ
持ち点37500でトップ目に立っている佐藤が親を迎えた。二番手には西家村上が30700で付けている。そして佐藤の配牌
第一打はもちろん
第二ツモ…⇒打
第三ツモ…⇒打
早くもこのイーシャンテンになる
第四ツモ…⇒ツモ切り
第五ツモ…⇒ツモ切り
第六ツモ…⇒ツモ切り
第七ツモ…⇒打
第七打までの切り牌を並べると
恐ろしい捨て牌。南1局の捨て牌もピンズ一色手に見えなかったように、今局も全くチャンタ手牌には見えないし、テンパイ打牌のに<色>が無く、同巡飯田が配牌からあったを打ち出したのも仕方ない話だった
<色>が無いという表現は抽象的過ぎるが、テンパイ気配はおろか大物手気配も無く、見事なまでに消していた佐藤に私は感服した
南家飯田の放銃手牌であるが、ワンズ一色手への渡りもあり、かと言ってダブとを絡めてのチャンタ手もあり、を打ち出した飯田を責める材料はひとつもなかった
ただ…南1局に佐藤への放銃も、ととのシャンポンで、今局もととのシャンポン。しかも今局は親満の放銃。飯田の心境を考えると、思わず目を覆いたくなる無惨な放銃劇であった
逆に考えると、とで飯田から直撃した佐藤にとっては、新最高位に近づく貴重な和了に思えたのではないだろうか
《16回戦南2局》ドラ
43100点持ちのトップ目で親番を迎えた佐藤7巡目の手牌をご覧いただきたい
ここに佐藤は生牌のを引きトイツにすると、迷うことなくを打ち出していく。場に二枚切れのを打っていくのかなと見ていた私は我が眼を疑った
そして次巡を引くと場に一枚切れのを中抜きしていく。七対子決め打ち打法である
9巡目ツモ…⇒打
10巡目ツモ…⇒打
とした佐藤の手牌はこう
そして14巡目に二枚切れのを重ね七対子テンパイを果たす。アガリまではいかなかったが(西家水巻が、とのシャンポン待ちリーチを16巡目にツモる)、見事な七対子手順を見せてくれた
7巡目の、8巡目の、この2牌を捨てて七対子テンパイに持ち込める麻雀能力は桁外れである
私が七対子好きだから言ってるのではなく、アガれなくてもいいから、ハイレベルな舞台でこういうプレーを魅せてくれるプロが、一流プロの称号を与えられるのではないかなと私は思う
最終日を迎え首位に立つ佐藤が、どんな気構えで卓に着くのか知る由もないが、目先の勝ち負けに振り回されずにファインプレーを魅せてくれないかなと、私は期待に胸膨らませている
データで見る《第35期最高位決定戦》…四日目終了時・全201局
【親の第一打牌】
<1・9牌>98局(49%)
和了局21・放銃局21
<オタ風>50局(25%)
和了局16・放銃局10
<三元牌>22局(11%)
和了局3・放銃局2
<2・8牌>18局(9%)
和了局4・放銃局4
<場風>8局(4%)
和了局1・放銃局1
<3~7牌>3局
和了局0・放銃局0
<自風>2局
和了局1・放銃局0
【和了数と和了点アベレージ】
飯田⇒46回(23%)・5870点
佐藤⇒35回(18%)・6200点
水巻⇒40回(20%)・4290点
村上⇒30回(15%)・7630点
【放銃数と放銃点アベレージ】
飯田⇒19回(10%)・4750点
佐藤⇒19回(10%)・4390点
水巻⇒17回(9%)・5010点
村上⇒24回(12%)・4140点
【メンゼン局数】
飯田⇒172局(86%)
佐藤⇒177局(88%)
水巻⇒160局(80%)
村上⇒183局(92%)
【リーチ回数と和了数&放銃数】
飯田⇒63回・和27回・放9回
佐藤⇒34回・和16回・放4回
水巻⇒33回・和16回・放6回
村上⇒52回・和25回・放7回
【仕掛け回数と和了数&放銃数】
飯田⇒29回・和8回・放3回
佐藤⇒24回・和8回・放2回
水巻⇒41回・和14回・放7回
村上⇒18回・和4回・放2回
【リーチ成功率と仕掛け成功率】
飯田⇒リ43%・仕28%
佐藤⇒リ47%・仕33%
水巻⇒リ49%・仕34%
村上⇒リ48%・仕22%
【ロン和了アベレージ&ツモ和了アベレージ】
飯田⇒3730点・8200点
佐藤⇒5200点・6860点
水巻⇒3700点・5090点
村上⇒5630点・10240点
【メンゼン和了点アベレージ&ロンアベレージ&ツモアベレージ】
飯田⇒3180点・3490点・1800点
佐藤⇒5220点・5760点・4550点
水巻⇒3060点・3440点・2570点
村上⇒5040点・5550点・3000点
【リーチ和了点アベレージ&ロンアベレージ&ツモアベレージ】
飯田⇒7110点・3470点・9610点
佐藤⇒7660点・7370点・7910点
水巻⇒6100点・4210点・7580点
村上⇒8860点・5880点・11200点
【仕掛け和了アベレージ&ロンアベレージ&ツモアベレージ】
飯田⇒5380点・5000点・5750点
佐藤⇒4440点・2790点・6750点
水巻⇒3090点・3480点・2030点
村上⇒3200点・2930点・4000点
【メンゼン時放銃点アベレージ&リーチ時放銃点アベレージ&仕掛け時放銃点アベレージ】
飯田⇒4500点・5030点・4830点
佐藤⇒4750点・4280点・2300点
水巻⇒6150点・4670点・4660点
村上⇒4090点・4470点・3350点
観戦記者 土田 浩翔