【日程詳細・ルール】
5日間開催、全20半荘。
4半荘/1日。
最高位戦ルール。
初日:10月21日
2日目:10月30日
3日目:11月4日
4日目:11月11日
最終日:11月22日
会場:神楽坂・ばかんす
集合:11:45
対局前に全員で牌チェックを行い席決め
開始:12:00
【プロローグ】
―『嵐の前の静けさ』
という表現が、まさに当て嵌まる開始前だった。
筆者にとって3回目の決定戦。以前のそれとは異なる空気が漂う。
何か穏やかで、それほど緊張にも張り詰められていない、
しかし澱みもなくただ静かで―
これから始まる熱き戦いを、より熱を帯びて魅せるための演習でもあるような。
―2009年10月21日。
最高位決定戦・初日の神楽坂ばかんすは、とても不思議な空間になっていた。
先ずこの空間を演出したのは、金子だったと思う。
金子はいつも以上に饒舌で、普段の開始前特有の、ピリピリした緊張がない。
金子を纏うオーラが、まさに穏やかだったのである。
それに呼応してか、初めての決定戦を迎える石橋も、緊張感をそれほど見せることなく、表情が和らいでいた。
今期に10回目の最高位獲得を目論む大魔神・飯田は、いつものように誰よりも早く会場入りをし、寛ぎ会話を楽しんでいた。
この中で、一番気合いが滲み出ていたのが、尾崎である。
1人煙草をふかしながら、会場に置かれた他試合の観戦記のファイルを手に取り、静かに眺めていた。
溢れる気合いが雰囲気を壊さぬよう、気を使っているかのような。
闘気を押し殺し隠す様に、会場の片隅に、ひっそりと影を潜めていた。
―そして、激しく美しい最高峰の戦いが、程なくして開戦を告げた。
【1回戦】
荘家 尾崎
南家 飯田
西家 石橋
北家 金子
【東1局・ドラ
】
先ほどとは変わり急に空気が張り詰めたようになった試合開始。皆が強張った顔つきで配牌を取り出す。
一様に遅めの配牌。
決定戦の開口一番は、傍目からは一番打点のある聴牌が組めそうな、大魔神の5巡目のチーだった。
《飯田》













第二打に打
とし、一通と混一と
のみを天秤にする。
《2巡目》












ツモ
打
3巡目に
を暗刻にしたところで、マンズに寄せつつの一通目の残る六のチー。
この動きに、全員が止まる。
傍から見たら、たしかにチーテンにしか見えないだろう。
ドラは何枚?三色?ホンイツ?
この時点でドラの發*を持っていたのは金子が1枚のみ。
飯田は、しめたとばかりにツモ切りを繰り返す。
親の尾崎も6巡目からメンツを中抜きして対応に回る。
終盤めいっぱいに受けると、1人聴牌もあった飯田。しかし相手の手を緩める方を嫌って極限まで相手に絞らせることに専念。
結果 全員ノーテンで流局する。
大魔神、してやったりか はたまた…。
牽制球が決まって、卓内には開始早々に重苦しい空気が流れ始めた。
【東2局・ドラ
】
前局は飯田の牽制に唇を噛み締めた尾崎。
この局は金子の混一の大物仕掛けをさらりと躱して、1000は1300。
《尾崎・6巡目聴牌》












《金子・8巡目》












打
決定戦の初和了は尾崎が落ち着いて決めた。
【東3局・ドラ
】
飯田、好配牌に第一ツモ
でいきなり好形の一向聴。
《飯田・1巡目》












ツモ
打
2巡目のツモ
も聴牌取らずでツモ切り、早くも3巡目、ツモ
で絶好の聴牌。迷わずリーチとする。
《飯田》













これを受けた親の石橋。
《石橋・4巡目》











ツモ
打
の二向聴からツモ
、
、と順調に進んだ、6巡目。決定戦初の2軒リーチは、ピンズの三面張対決。
《石橋》













7巡目。石橋の一発目のツモは
。
大魔神が安め裏なしの2000で決定戦初和了を決め、あっさりとリーチ対決は終了。
打点こそ安いが、腑に落ちない表情の石橋。
―石橋伸洋。勝ち気な男が、ここからハマったかのように苦しんでいく。
【東4局・ドラ
】
親・金子に好手が入る。
《金子・4巡目》













しかしここからなかなか聴牌まで進まない。
白は3巡目に1枚切れている。
金子が空振りを続けている間に飯田が先に聴牌。
《飯田・12巡目》













で迷わずリーチにいく。
尾崎がリーチの現物である打白*。金子はここでポンテンをかけ、飯田のリーチに中筋、ドラ表
を勝負しての
–
待ち。
が飯田の現物とはいえ、既に3枚見えで
はドラ。
金子、1回戦の東場の親の継続に、こだわりを見せる1打だ。
《金子》











飯田の一発目だったツモ牌が尾崎に流れる。
―
金子が親に、攻撃姿勢にこだわりを見せなかった瞬間、大魔神があっさりと一発・裏1(
)の跳満を引き上がっていた。
たった一牌、一巡の重みが色濃く移る。
流局して連荘を掴んだ金子。そして金子の闘志に便乗して、尾崎がそっと
を終い込み手を伏せ、安堵の溜息を静かに吐いた。
【東4局・ドラ
】
前局の闘志のたぎる親の続行。波に乗ってか、金子、そして便乗した尾崎にも好手が舞い込む。
《金子・4巡目》













早くもドラドラの一向聴。
《同巡・南家・尾崎》












マンズの一色手で形がいい。
尾崎は、ドラ側でもある
をふとツモ切る。
すると大魔神飯田、
をチー。
《飯田》











打
ドラターツのネックのペン
からのチー。
尾崎の河の



に色の匂いを感じてか、それともアガリへの感触なのか。
そしてこのチーがこの局に凄まじい影響力を見せる。
まず、親の金子の次巡ツモだった
が尾崎に流れる。
このチーがなければ、金子は
と
のシャンポン待ちの役なしドラドラの聴牌だった。
は生牌、
はドラ。恐らく手変わりを見ずに
切りのリーチ敢行となった可能性が高いだろう。
そしてこの
を前巡の下家・飯田の仕掛けを受けて、尾崎がツモ切れなくなり足が止まる。
これをよそに飯田、一気に索子に寄せる。
生牌の
をツモり打
と両面ターツを外してさらに他家を煽る。
7巡目、尾崎は絞っていた
に
を引き、萬子の一色手は難色になるも8巡目のツモ
で一通の一向聴に。
《尾崎》













一方飯田は
、
と有効牌を手繰り寄せての二向聴。
《飯田》












前局に続けて一向聴で手が止まってしまった金子は、前巡のツモ
でリャンカンを
–
に受けかえるべく打
としていた。ここに9巡目、ツモ
で
を外すことも考えてか先に打
。
尾崎、この
にチーテンを入れて、索子処理。
のみアガれる一通の聴牌。
10巡目、飯田が
を暗刻にして手出し
。卓の視線が集まる。
石橋は牌を選びながらの七対子の一向聴。
尾崎11巡目、
。少し躊躇しながら河に並べた。
同巡、飯田もツモ
。完全一向聴を取り生牌の
切りさらにで前に出る。
静まり返った卓内は、誰の発声もなく、ただ空気だけが濃く熱くなっていくように見えた。
13、14巡目に飯田がツモ切ったのは、
、
。
この直後、尾崎は
を引かされ撤退となる。
またしても尾崎の
チーで金子の聴牌が流れていた。
15巡目、飯田がツモ切った
に尾崎、アガリは取れず。そして金子がもしリーチを打っていたら。仕掛けが1つもなかったら―
―これが金子のツモアガリの瞬間だった。
飯田が、尾崎が、金子の波を押さえこむ。
結局全員がノーテン。金子が必死に繋いだ親番は、残像すら残さぬよう洗われる牌の音と共に流れていった。
【南1局2本場・ドラ
】
色に寄せれそうな手牌続きだった親・尾崎。
ネックになりそうなドラ含みのターツ、ペン
があるが、4巡目、積極的に先手仕掛けに出る。
《尾崎》












打
次巡、
ツモで打
。さらに次巡、残した
が重なり首を軽く傾げて苦笑した尾崎。打
として6巡目、ペン
待ちの先制聴牌。
《尾崎》












8巡目、尾崎はツモ
で
を外し、ピンズに寄せる。
これが功を奏して、10巡目、先に
を引き入れての
–
–
待ちに。
《尾崎》












もちろん、1000オールのツモはこの時点で逃してるのだが、ここは磐石の聴牌取りに成功した。
場には1枚も切れていない三面張だ。
しかしここに大魔神がリーチを被せる。
《飯田・12巡目》













尾崎は、飯田の待ちをピンズであると読んでいた。
尾崎の河には萬子と索子の中張牌が並び、更に仕掛けたあとの生牌の打
から
をトイツ落としした尾崎のピンズの混一は明らかだった。
飯田が役ありの聴牌ならまずリーチにこない公算が確かに高い。ドラ面子を持ってのピンズ待ちでの勝負の可能性が高いのだ。
尾崎、リーチを受けて一発目のツモは、
だった。
飯田の河には2巡目に
が切られている。
これを見る間があったかどうか。悩むどころかノータイムで
を抜き打ち、
–
–
に受けかえる尾崎。
《尾崎》












打
自分の手牌と河を合わせて4枚見えから既に7枚見えている方への待ちかえ。しかし飯田への危険度は、
の方が高い。
実際はこの時点で、

、

の残り枚数は共に2枚と同じだった。が河は目に見えて枚数が違う。
この瞬時の判断力、決断スピードが尾崎らしさの真骨頂だと言えるだろう。
尾崎の次巡ツモ牌は、
だった。
牌を引き寄せると力強く叩き付けた尾崎。4000オール。
興奮と快感の入り交じっていた筈の尾崎の点数申告は、思いのほか落ち着いていたのが逆に印象的だった。
【南2局・ドラ
】
尾崎の1本場は、石橋が3巡目に躱し手を仕掛け、6巡目に尾崎から2000は2300を打ち取る。
続いた飯田の親番。
金子に南チャンタの配牌一向聴が入る。
《金子》













この
は、配牌から尾崎に対子。
金子は2巡目のツモ
で手出し
が入るも
、
とノータイムツモ切り。傍目からは早そうにも変則手にも、配牌オリにも見える。
一方親の飯田は
を1枚抱えての二向聴。
ラス目の石橋は
が対子の手広い二向聴だ。
5巡目にツモ
で打
とした金子。
今回は7巡目。早々にまとまり先制聴牌を迷わずリーチ。
《金子》













ヘッドが
ではピンフにならない。飯田と2300点差でラス親もある金子。リーチのみになる
でもあがる気であると思われる。
石橋は攻めようにもツモが伸びず攻められなかった。飯田も丁寧に進めるが結局オリになってしまった。トップ目の尾崎も当然押さない。
途中、金子が、背伸びをするように手を大きく伸ばして、宙に目を這わした。そして何を見るでもなく、視線だけが左右へ動く。
和了への慕情が込み上げての、気持ちとは裏腹なポーカーフェイス。
17巡目、金子がポーカーフェイスを崩さずに引き寄せた最後のツモは、恋焦がれた
だった。
そして気持ちを押し殺しているかように、普段よりも落ち着いた声で2000、4000と告げた。
【南3局・ドラ
】
ここまであまり見せ場もなく、押される一方のラス目、石橋。やっと回ってきた親番でようやく先手取りに成功する。
《石橋・6巡目リーチ》













は1枚切れ。その他の萬子の上は全く情報がないが、先制の親リーチとしては上出来である。
ここに金子、先ほどの落ち着き払った態度とは反転し、一向聴から親リーチに強打。石橋の現物は
、
と3枚持ちだが
、
と河に並べた。ラス親もあるしと、ここは被せる気満々である。
《金子・7巡目》













10巡目。金子はツモ
で聴牌。
この瞬間。
急に火が消えたように金子がおとなしくなった。その後小考し金子が選んだ打牌は、
。
《金子》













一旦
を切って、
引きでの聴牌なら
勝負、の意志表示も見えるが、済ました顔で一向聴を維持したまま親がツモらないことを願う金子がいた。
結局金子の願いが通じたかのように、石橋は和了に辿り着けず流局した。
続く1本場は、飯田が金子の当たり牌をほぼ押さえて飯田がリーチに出て、飯田、金子の2人聴牌。金子があからさまに不機嫌な顔で聴牌料を受け取り、決定戦最初のオーラスを迎える。
【南4局2本場・供託2・ドラ
】
親 金子 34500
南家 尾崎 37000
西家 飯田 23800
北家 石橋 22700
ラス目の石橋が満貫ツモで2着と、まだまだわからない点差で迎えたオーラス。
積極的に仕掛けたのはトップ目の尾崎だった。
《尾崎・1巡目》











打
配牌を取り終えた直後の、金子の第一打にポンをかける。形はまだだがそこそこ材料は揃っているといっていいところか。
ここに負けじと金子、石橋の第一打の
をポン。
《金子》











打
尾崎より若干形がある金子。
聴牌は8巡目。尾崎が先だった。
《尾崎》










打
金子も西家、飯田の打
にポンをかけて直ぐさま聴牌。
《金子》










打
直後、石橋の聴牌打で勝負が決まる。
《石橋》











打
は前巡に掴んでいたため、ツモ切りでも間に合わなかったのだが。
石橋が親、金子の仕掛けに索子を切りきれず、ピンズに寄せ切れなかったことが結局放銃に繋がる。
もしも石橋が5巡目にピンズターツのみに受けて
から切っていると、金子が
にチーテンをかけている公算が高い。
《石橋・5巡目》












ツモ
打
石橋は打
なら次巡ツモ
で












打
とトップが見える一向聴となっているのだ。
すると結果はほぼ飯田の打
で尾崎の和了となり、石橋の和了には結びつかないのだが、この場合は飯田がラスになっていた。飯田を捲るための1000点の聴牌取りが、命取りになってしまう。
続く3本場は、尾崎が先手のタンヤオ仕掛けで、美しく叩きつけてツモりあげる。
尾崎が金子を捲り返し、死闘の1回戦のトップをもぎ取った。
金子は口を閉じたまま再び宙に目を這わす。
尾崎は顔を少し上気させて、堂々と席を立ち歩き出した。
【1回戦】
尾崎 40400 +40.4
金子 37600 +17.6
飯田 22100 △7.9
石橋 19900 △40.1
【2回戦】
起家 飯田
南家 金子
西家 石橋
北家 尾崎
【東1局・ドラ
】
飯田、金子に形のいい配牌が入るも、先制は1回戦でトップを勝ち取った尾崎。
《尾崎・11巡目リーチ》













河は一見変則手の河だが、七対子の待ちを絞り切れるような風でもないし、七対子でないようにも見える。
この時点でドラ
を持っていたのが石橋が1枚のみ。尾崎の勝負感が冴えている。
《金子・12巡目》












ツモ
打
尾崎の
の筋、1枚切れている
をそっと切る金子。
リーチにいかないのは、自分の河に並ぶ第一打の
。フリテンになったからだった。それなら現物の
切りもあるが、
を押して高めのツモに賭ける。
親の飯田は13巡目に役なしの聴牌が入っていた。
頭がないシュンツ手。リーチの現物を選んでいると、望外の単騎ツモ。
《飯田・15巡目》












ツモ
聴牌が維持できたら幸運だと思っていたところに、さらにラッキーなツモアガリ。
2回戦は飯田のリードで幕を開けた。
【東1局1本場・ドラ
】
初リードを取った飯田、しかし未だにテンション上がらずに見える配牌。
《飯田・配牌》












打
それが6度のツモであっという間に聴牌一番乗り。
《飯田・7巡目》












ツモ
打
リーチ
6巡目に索子が若干高いと読むと、孤立牌の
を残して先に
切り。カン
をあっさり埋めてドラ表のペン
待ちで躊躇なくリーチ。
このあっさりとした感じが実に飯田らしい。
大魔神の嗅覚がいつも通りなら…、と危惧する間もなく、回りが頷きながらオリていると、14巡目、軽く盲牌したあと目でしっかりと確認してツモりあげた。
裏が1枚乗って4000は4100オール。
大魔神の点数申告は、前局の時と少しも変わらないトーンで、表情に微塵の動きもない。
―そう言えば、索子は1枚も引かなかった。
―続く2本場は金子が飯田の勢いを止めるべく、リーチのみだが河は強めと8巡目に先制の両面リーチ。ここにドラヘッドの尾崎が好形の二向聴から飛び込んで裏1の2600は3200。
飯田の好発進を止めた金子、次局の親で一気に詰めにいきたいところ、なのだが…
【東2局・ドラ
】
親、金子のツモが伸び悩む間に、今度は石橋が先制リーチ。またもや河が強い。
《石橋・8巡目》













《石橋・捨て牌》








しかし今日の石橋はなかなか天も味方せず。リーチ後に河が異常に温くなる。





の連続のツモ切りに他家が苦労することもなく巡目だけが深くなっていった。
15巡目、危険牌を打ち出すこともなく、親の金子が遂に追い付く。
《金子》












ツモ
打
リーチには初めて無筋の
を勝負して、先ほど通ったばかりの
の筋の
単騎に受けた金子。和了へのこだわりは少しも霞んでいない。
そしてハイテイ1つ前の牌で金子がツモ。1600オールの和了を掴む。
実はこの七対子、リーチなら裏2の6000オールだったのだが、ここは一切顔色を変えない金子。
勢いよく積み棒を片隅に並べた。
【東2局1本場・ドラ
】
金子、尾崎、飯田が前向きに手を進める。これを見てか7巡目、金子が一向聴でドラ
を離す。
《金子》












ツモ
打
が1枚切れで
・
が生牌。仕掛けと飯田、尾崎の進行も考慮してかの先切りで他家の手を止めようと試みる。
しかし9巡目に痛恨のツモ
、も次巡ツモ
で聴牌。先制リーチに出る。
《金子・10巡目リーチ》













ここで共に一向聴だった尾崎、飯田が真逆の反応を見せる。
《尾崎》













《飯田》













尾崎はリーチの同巡に
を引き即撤退の打
。
目下トップ目の飯田は、尾崎の
で3枚目のドラが見えてか、強気に攻める。入り目の
を強行のツモ切り。
これに金子も動揺を見せた。
12巡目、飯田はツモ
で高め三色のタンピン聴牌。僅かな小考のちにリーチには中筋になった
を切るも、横にはせず。待ちの
は金子の現物である。
《飯田》













この時点で高めの
は金子が暗刻、石橋に
が2枚、
が1枚。山にはあと1枚
がいる、と筆者が確認する間すらない次巡、飯田が
をツモ。
安めでは700・1300の1本場+リーチ棒1000点の計4000点。
裏こそなかったのだが、満貫をツモり損ねた空気が大魔神を覆う。
そしてこの日の終了時、飯田はこの場面を一番気にしていた。
【東3局・ドラ
】
飯田が47000点超で頭一つ抜ける。
1回戦ラスを引いた親・石橋、ここは奮起したいところだったが、好形になるもツモの噛み合いが悪く、手がなかなか仕上がらない。またもや先制を取られてしまう。
《尾崎・11巡目リーチ》













石橋はリーチの1発目に手牌の一向聴には不要な
を掴み旋回。しかし16巡目の聴牌で
を手放し、尾崎の3900に捕まってしまう。
《石橋》












ツモ
打
この局。尾崎の14巡目に切った
、これを金子がリーチを被せた上で打ち取っていた可能性があるのだが、金子は聴牌を逃してあっさりと撤退したのだった。
石橋が1人、未だ苦しい状況から抜け出せずもがいていた。
次局は全員ノーテンにて穏やかな流局を迎えた。1回戦のアドバンテージが、ラス目から抜け出した尾崎を後押しする。
【南1局1本場・ドラ
】
尾崎が早々にドラ
を重ねてのタンヤオ仕掛けに出るも、ここは石橋、際立つような発声で、現在一番近い3着目の尾崎から七対子の1600を打ち取る。
明らかに熾烈な3着争いの勝負に、尾崎の頬がまた少し、紅く染まった。
【南2局・ドラ
】
親の金子、5巡目に急所を引き好形の一向聴に。
《金子》












ツモ
打
と
が河に1枚切れていて、尾崎が萬子濃厚なのもありここで打
。
9巡目にツモ
で長考するも打
の聴牌取らず。
12巡目のツモ
に大きく頷く。
を豪快に切り飛ばしてリーチ。
《金子》













河の全体的に索子は安めで、
が3枚、
が1枚、
が3枚、
が2枚。
自分から見えていないのは
3枚と
2枚。
ドラが
で飯田が七対子の気配があるのを考えると、飯田に対子の可能性、さらに石橋が
を対子落とししているのでここがドラ対子以上、
が暗刻の可能性もある。
しかし
が3枚見えていて手変わる可能性も低く、全山の可能性まである
。
金子は意気揚々と
の感触を待ったが、金子のツモ山にいたのは4枚目の
とその2つ先に
がいただけだった。
この局の裏ドラは
だった。2600オールならトップが見える。金子、なかなか高波に乗り切れない。
【南2局1本場・ドラ
】
早そうな親・金子の切り出しを見てか、金子の現物になる
–
待ちで早々に聴牌した飯田。慎重に闇テンに構えてまたも次巡にツモ和了。
《飯田・8巡目・ドラ
》












ツモ
1300・2600の1本場+供託1本で計6500点。
この半荘のトップをほぼ手中に納めるためには大事だった金子の親番終了を、僅か8巡で手にした大魔神。
まだ表情は少しも動くことはない。重なる音も響かないほど、丁寧に点棒を手元に寄せ、しまい込んだ。
【南3局・ドラ
】
ここはどうしてもラス親の尾崎を捲っての連荘で着順を上げたい親・石橋。
飯田がトップ目で2着目の金子は親がもうない。3巡目に
を重ねて、全力で前に出る石橋。
《石橋・4巡目》












ポン
打
さらに7巡目に両面の
チー。
《石橋》











しかしこの鳴きが金子のツモをどんどん進めてしまう。同巡、三色確定のツモ
でリーチ。
《金子》













石橋は2巡後に
ツモでようやく聴牌。小考のちに安全牌を切るようなモーションでドラの
を勝負。
石橋の待ちの
、
は河に1枚で実際も残り3枚。金子の
は河に0で実際は4枚全山。
しばしの捲り合いも石橋が
をツモ切り御用となる。裏はないが5200の大きな痛手をさらに背負う石橋。
金子は、捲り合いの勝利を噛み締めるように、頷きながら和了を引き寄せた。
【南4局・ドラ
】
親 尾崎 18400
南家 飯田 52700
西家 金子 36500
北家 石橋 12400
2ラスは避けたい石橋が苦しそうに溜息を吐く中、金子は2着を決めるアガリにまっすぐ向かう。
同じように前向きに手を進めていた飯田、河が濃く聴牌気配すら若干ある。
《飯田・15巡目》













そして16巡目に河に切れていない
に待ち変え。
ここで尾崎、またもや冴え渡る勝負勘を魅せる。
《尾崎・17巡目》













安めとなる
を引いての聴牌。ここで場に一周目を這わす。

は共に生牌だ。
尾崎、徐に手をかけたのは、
。ここで慎重な聴牌取らず。
先ほど勝ち取ったトップで、尾崎には既に余裕ができていた。無理に素点を削らず、3着目に落ち着いた展開を受け入れる。
最後のツモ
でも聴牌を再び取れるのだが、安全牌を選び河に並べ手牌を伏せて2回戦は終幕した。
―卓をそっと立ち上がったあと、飾られている祝い花のスタンドに足を向けて優雅に花の香りを楽しむ尾崎。
会場内をどこへいくでもなく歩き回ったあと、落ち着きを求めるかのように卓に就いて荒く息を吐き出した石橋。
共にマイナスの2回戦だったが、対照的な2人の姿がそこにあった。
【2回戦終了】
飯田 55700 +55.7
金子 35500 +15.5
尾崎 17400 △22.6
石橋 11400 △48.6
【2回戦までの合計】
飯田 +37.8P
金子 +33.1P
尾崎 +17.8P
石橋 △88.7P
