第1日 10月29日

第2日 11月5日

第3日 11月12日

第4日 11月19日

最終日 11月30日


(全5日間20回戦)





第4節終了時スコア

金子正輝 +146.3
飯田正人 +23.8
張敏賢  △1.3
佐藤崇  △168.8

いよいよ残り半荘4回である。
首位の金子は逃げたいところではあるが、タイトル獲得経験が豊富なだけに、自然体で挑むのではないか。
飯田と張は出来れば金子を沈めておきたいが、まずは自身がトップを取れる体勢が欲しいとこである。
今期大活躍の佐藤ではあるが、この差を逆転するには1回戦で金子をラスにし、自身が大きいトップで僅かな可能性がある程度である。年間に3度タイトル戦の決勝に残っているとは、驚異的なアベレージの打ち手である。

17回戦(飯田・金子・佐藤・張)

1局 ドラ 裏

南家の金子が3巡目に早速、仕掛ける。
 からのポンである。
飯田が上家であることも考慮し、ホンイツ狙いで打
この局は飯田もきっちり受け、金子一人テンパイで流局。
金子の気迫と飯田の丁寧な対応が印象的であった。
東2局1本場 ドラ 裏

親番を迎えた金子、5巡目 
金子の選択は「リーチ」しかし、この選択はじっくり考え抜いてのもの。場況からの情報はなく、金子らしい選択である。
無事にツモアガリ、金子は安心しただろう。

東2局2本場 ドラ 裏

飯田の先行リーチに金子が追い掛けリーチをかけるが
飯田に3,900の放銃。
金子の独走を許さない飯田ではあるが、この後に張に5,200放銃で波に乗れず。

東4局 ドラ 裏

ここまで慎重に対応してきた佐藤にチャンスが来る。
無理な攻めをすれば決定戦の内容が壊れることも考慮しているのである。
10巡目  
にツモで打のテンパイをヤミテンに構える。2巡後にツモとなるが、これをカラ切りしその後もをカラ切りし、待ちをぼかす。
これに嵌ったのが張、イーシャンテンから14巡目の放銃になる。

南1局3本場 ドラ 裏

南場に入り、飯田が3局連続でリーチ攻勢。
流局・2,000オール・流局となり、飯田が先行する展開となる。
そして、この半荘の行方を決定するアガリが出る。

飯田  
      
金子    
   
佐藤  
   
張   
   

張は9巡目にをドラツモ切りリーチを選択。 
これが金子に12,000の放銃になる。
張は7巡目にテンパイである。
普段の張ならばテンパイ即リーチのはず。
ヤミテンに構えたために佐藤は手順でを打ち、金子にテンパイが入る展開となった。
張は金子からの直撃を狙うためにヤミテンに構えたのである。
飯田は自然体で捲りに、張は何としてでも金子を沈めたいという気持ちが強かったのではないか。
しかし、これはどうだろうか?
初日からここまでの金子はじっくり丁寧に、ポイントを上げてきているのである。金子は簡単に崩れる打ち手ではない。
張のスタイルを考慮すれば、即リーチでツモ狙いがベストでは。

オーラスもあっさり金子にテンパイが入り、この半荘を終わらせる。それにしても金子の牌勢は凄いものがある。
これで事実上、金子VS飯田の対決となる。

17回戦終了時スコア
()は17回戦のみのスコア

飯田 +42.3 (+18.5)
金子 +192.1(+45.8)
張  △58.0(△56.7)
佐藤 △176.4(△7.6) .0(△7.1)

18回戦(佐藤・飯田・金子・張)

東1局1本場 ドラ 裏

東1局に佐藤が1300オール、さらに加点したいところで7巡目に珍しく長考、
から打
しかし、テンパイまで。終盤に金子もホンイツのポンテンを入れるものの、二人テンパイのまま流局へ。

東2局3本場 ドラ 裏

全局にドラトイツのリーチが流局となった飯田が、
6巡目金子のポンテン   に対抗し、
12巡目にダブのポンテン   で押し返すが流局。
飯田テンパイの後は金子は慎重に対応し、場が重くなり追う3人にとっては苦しい展開となる。

東2局4本場 ドラ 裏
再び飯田のリーチが入るが、またもや流局。
次局も飯田のリーチが入るが、張もリーチ佐藤も仕掛けて、佐藤の300・500で飯田の親番が終了。

東3局 ドラ 裏

飯田3フーロで金子の親番を流しにかかる。
フリテンから2度の待ちかえで、金子にとっては読みづらい状況になり、金子が大長考に追い込まれる。
結果は流局だが、金子の体力を奪う展開にもなってきているのである。

東4局 ドラ9 裏

親番の張が11巡目にリーチ、
 これを一発ツモで4,000オール。
やっと張らしさが出てきたが、ここまでの苦戦の原因は17回戦の南1局3本場にあるのではないか。
今局のようにリーチによるツモアガリが張の得意とする展開である。器用なタイプではないが、体勢作りがうまいのである。

南2局 ドラ 裏

この半荘、金子は一人沈みになり、飯田にとっては自身がトップ目になり今局の親番でさらに加点したい状況になってきた。
そんな飯田に落とし穴が待っていた。
1巡目から仕掛ける佐藤の牌姿はからをポン、さらに4巡目にもをポン。
これで   
やっとイーシャンテンだが苦しい形である。この後をツモり、カンマチになる。
飯田は10巡目にをツモ切りで8,000放銃。
金子にとっては良い展開である。飯田としては最悪である。佐藤の捨牌はホンイツが特定しにくくなっており、放銃そのものは仕方ないところ。
しかし、オーラスにさらなるドラマが待っていた。

南4局 ドラ 裏

ラス親の張がフリテンリーチをツモで2,000オール。
これで佐藤のトップ目を捲り、張+10.8 佐藤+6.1 飯田△5.2 金子△11.7。
そして次局ドラの1本場、6巡目に飯田が小考しリーチ 

ほぼ2着目をあきらめたリーチである。
他家からリーチ棒が出て、さらにウラドラを2枚乗せツモアガリか上位からの直撃をしないと捲れない点差である。
ラス目の金子が追っかけリーチ
でドラ待ちに受ける。ツモか飯田からの直撃でOKである。
結果は飯田のツモアガリ、しかも裏ドラで2100・4100である。なんと2着目の佐藤を捲り、飯田は2着になる貴重なアガリになった。
オーラスをトップ目で迎えていた佐藤は3着で終わってしまう。佐藤の心境はどうなのか。ハートが弱い打ち手ならここの卓には座っていないはず。
トータルトップの金子ではあるが、感触はどうなのか。

18回戦終了時スコア
()は18回戦のみのスコア

佐藤 △182.4(△6.0)
飯田  +56.4(+14.1)
金子  +147.3(△44.8)
張   △21.3(+36.7) .

19回戦(金子・張・佐藤・飯田)

東1局0本場 ドラ 裏

いよいよ残り2半荘である。
開局の親、金子の配牌は苦しい。

ここでトップならば、ほぼ優勝確定である。
ツモが好調で14巡目にテンパイ 
流局だろうなと思っていたところ16巡目にツモアガリ。
大きな4,000オールである。

東2局0本場 ドラ 裏

金子、トップ目の後も緩めずに攻め続けていた。
極自然に、そして自分の麻雀を貫くように。
この局も7巡目  からリーチ。
10巡目に佐藤・飯田からもリーチが。
飯田はドラ暗刻の役ナシから。
捲り合いは金子の勝ち、飯田からで3,900直撃。

東3局1本場 ドラ 裏
飯田の体勢にブレはない。
とにかく渋といのである。
繊細な受けと攻めきる力は抜群でこの局も10巡目にをポン
   
さらにツモでテンパイ、その後にツモでシャンポン待ちに。
そしてツモアガリ3,000・6,000。

東4局2本場 ドラ 裏

親番の飯田、前局強引な2フーロでテンパイ、流局となり必死の連荘。
苦しい飯田、そこに何と金子からダブルリーチ!!
飯田は配牌で1メンツだけ、連荘は難しくなる。
金子のリーチは  から切りでのタンキ選択。
次巡のツモは裏目の。3巡目にツモでロンアガリのチャンスが増える。
しかし、この条件でのリーチは不利ではないだろうか。
張と佐藤は金子と飯田の戦いに影響を与えないよう慎重に対応するのははっきりしている。
これでは親の飯田との一騎打ちになってしまう。
飯田は当然攻める、そしてツモは順調5巡目にテンパイ。
にツモである。
よりによって一番難しい選択を迫られることになった。
迷わず即リーチである。ヤミテンにして金子に又はを打たれたらほぼ負けである。
しかしどちらの待ちが有利なのかを判断する情報がないのである。
麻雀プロであるならばどっちでもいいなんていういい加減な打牌はできない。自分自身が悔いなしの判断を飯田は決断しなければならないのである。
飯田は2〜3秒考えカン待ちを選択。飯田の選択理由は形が三色に近いこととがツキ牌であること。デジタルだけでは限界があるのである。
この局は金子が飯田に7,700放銃。

東4局3本場 ドラ 裏

苦しんで貴重な連荘を果たした飯田。
逆転に向けて、真っ向勝負である。
9巡目  にツモ
当然即リーチである。そして一発ツモ!! 6,000オール。

東4局4本場 ドラ 裏

飯田の連荘ショーである。
6巡目  にツモ
これもリーチである。そしてまたもや一発ツモ 4,000オール。
飯田の持ち点は7万点を越えた。
タイトルを獲得するためには不可欠のツモアガリである。

そしてオーラス ドラ 裏

親の飯田71,200 金子26,700 張1,700 佐藤20,400

佐藤9巡目にリーチ 

  リーチ宣言牌はドラ、これにイーシャンテンの飯田がドラを合わせる。ここで金子が大長考。
手牌は 仕掛けるかどうかである。
佐藤のリーチにドラがないのである。そうすると手役は2ハンはあるだろう。佐藤は金子を捲れないリーチはかけないはず。
金子は佐藤に放銃できない、しかもトップ目の飯田が佐藤に放銃するのを恐れない点差でもある。つまり金子は簡単にオリれない状況なのである。
金子の決断はポン。ツモ順が変わり、佐藤が山に2枚生きていたをツモあがる。金子はテンパイまでで、この半荘は3着で終わることになった。
これで最終戦は金子と飯田の着順勝負となった。

19回戦終了時スコア
()は19回戦のみのスコア

佐藤 △174.0(+8.4)
飯田  +123.6(+67.2)
金子  +132.0(△15.3)
張   △81.6(△60.3) .

20回戦(張・金子・佐藤・飯田)

東2局2本場 ドラ 裏

いよいよ最終戦である。
金子VS飯田
張は受けを重視し、場況を荒らさないことを徹底。
佐藤は可能な限り、着順を上げるように挑んでいるようだ。
まずは飯田のリーチ、5巡目

金子もリーチ、7巡目
金子は徹底的に攻める姿勢を貫くようなリーチである。
しかし、結果は飯田のツモアガリで1,300・2,600。

東3局0本場 ドラ 裏

北家の金子、2巡目にをポン 
ここから4巡目にツモ5でテンパイし、6巡目をツモアガリだったが長考の末、アガリを宣言せず打を選択。
結局、金子と佐藤の2人テンパイで流局。

南3局4本場 ドラ 裏

佐藤の早い親リーチに金子がオリ打ち。
3,900の放銃だが、金子にとっては配牌とツモがマッチしない状況からのオリ打ちなので、非常に苦しくなった。
飯田は自然に攻め、そしてしっかり受けて盤石の体勢になってきている。

そしてオーラス、金子はバイマンツモ条件。
飯田はラスオヤで静かに流局を待つのみ。
追いかける金子、12巡目スーアンコウのイーシャンテン。
必死にそして祈るようにツモるが、結局テンパイせず。
飯田の逆転優勝!!
最高位戦の歴史とも言える飯田と金子の対決。
今回も究極の戦いとなった。
人生において麻雀を愛し、最優先してきた二人。
そうでなければ決勝戦は戦えないのである。




文責・三ヶ島幸助
(文中敬称略)