第1日 10月29日

第2日 11月5日

第3日 11月12日

第4日 11月19日

最終日 11月30日


(全5日間20回戦)



午前11時10分、早めに会場に入ると、すでに飯田正人の姿があった。

相変わらず早い。
談笑しながら開始の時を待つのはいつもと変わらない。
その年の最高位を決めるという特別な闘いだが、特別だからこそいつも通りの平常心というのが大事なのだろう。
永世最高位の余裕ともとれなくもないが、余裕でこの決定戦を勝てる程甘い闘いではないのは飯田が一番良く知っているだろう。

間もなく金子正輝も会場入り、さすがにベテランの金子は落ち着いている。
緊張のかけらさえ見受けられない。この男がいるだけで、会場の空気がガラリと変わる気がした。

そして現最高位、張敏賢の登場。
ここまではいまいち波に乗り切れてない感があり、現在は最下位。
とはいえ、まだ慌てるようなスコアではない。
張本人もそんなことは百も承知なはずで、相変わらず飄々としている。

歴代最高位に名を連ねてる3人だけあり、皆が落ち着いていて、程よい緊張感を持っているように感じた。

最後に登場は初挑戦の佐藤崇。
表情はやや固そうではあるが、既に3節目という事もあり、こちらも特に変わった様子はない。

今期の佐藤は優駿杯(日本プロ麻雀棋士会主催)で初タイトルを獲得し、最高位戦クラシックで準優勝。
Aリーグも首位で決定戦進出を決め、「今年は佐藤の年」と周囲から言われてきた。

それでも他3人と比べると、実績では劣る佐藤。
その実績の差を埋める為にも、「佐藤の年」の集大成としても、最高位決定戦は是が非でも勝ちたいだろう。

今期の最高位決定戦で、勝つか負けるか大きな分岐点となるであろう大事な中盤戦。
今回も神楽坂「ばかんす」でこのドラマが幕を開けた。

第2節終了時スコア

金子正輝 +50.6
飯田正人 +14.4
佐藤崇 △22.6
張敏賢 △42.4


9回戦(金子・飯田・張・佐藤)

東1局 ドラ 裏
起親の金子がいきなり好配牌。
わずか5巡目にして高め親跳のリーチを放つ。



1日4半荘打つ最初の1局目。
それをいきなり親跳クラスのあがりとなれば、金子にとってはこれ以上ないスタートになる。

次局以降、点棒だけでなく精神的にも余裕をもって戦えるのではないだろうか?

高目でのあがりを望んでいただろうが、中盤に安牌無しのタンヤオドラ2のイーシャンテンの佐藤からを出あがり、5800という結果になった。

続く東1局1本場では、飯田の手順が興味深い。
飯田の7巡目の選択から。

ドラ 裏
 ツモ

形は良くないが、はっきりと一通が見える。
河は全体的にややピンズが場に安い程度で、これといった特徴のある捨て牌の者はいない。
は自身が切っており、は1枚切れである。
この牌姿で何切るかなら、おそらく打がマジョリティーではないだろうか?

筆者が卓に座っていても、深く考えずにに手を掛けると思う。

が、飯田の選択は少考後にツモ切り。
を切ってる分、周りからの2面子を作るのにはやや抵抗があると思っていたので、少し意外な選択であった。
しかし、一通が消える事以外は確かにロスは見当たらないように思える。

次巡以降
ツモ→打
ツモ→打
でイーシャンテン。
そして9巡目のツモで、七対子に決める打



7巡目にを選択し、ドラを切らずに七対子のイーシャンテンにできる打ち手はかなり少ないのではないだろうか?

結局テンパイを果たせずに張のツモあがりで終わるのだが、筆者が「大魔神」飯田正人に魅せられたうちの1局であった。

東2局親番の飯田。
この局も飯田の選択が難しく面白い。
8巡目に以下の牌姿

ドラ 裏
 ツモ

マンズの下がかなり安いのだが、既にが3枚切れ。
手変わりの可能性もあるので、を切ってとりあえずの闇テンにする。

次巡のツモがドラの

これは難しい。
飯田の手も止まる。
の残り枚数や、打点を考えると打でテンパイを外したいが、場況や巡目を加味するとやや外しずらい。

この局の運命を決めると言っても過言ではないであろう飯田の選択は長考の末、のツモ切りに辿りつく。

次巡、この形で行くと覚悟を決めたかのようにツモ切りリーチを敢行。

すぐにと河に並び、手変わりを待ち続けてればあがれていたが、無事にもツモあがる。
裏ドラも乗り、4000オールとなり、早くも頭一つ抜け出す展開となった。

東場はこの後小場で進み、飯田が一歩リードのまま南場に入る。

東場終了時
金子 29200
飯田 44700
張 26000
佐藤 20100

南1局で、2着目金子の親を軽く流す事に成功した飯田は、もう止まらない。

南2局の親番でも、ここまでの好調を象徴するかのような配牌を手にする。

ドラ 裏


1巡目からいきなり悩まされる。
か、ピンズのペンチャン外しか、打としてソウズを両面に固定か、これは打ち手によってかなり別れそうだ。

飯田は打とし、まずは一番良い形を決める。

続くツモで、打のリャンシャンテン戻し。
そしてを続けてツモり、わずか4巡目で親満テンパイ。



ここまでの飯田は、次のツモがわかってるかのように流れるように手が進んでいく。
すぐに金子が飛び込み12000。
打った金子も、これは仕方ないといった表情で静かに「はい」と返事し、点棒を支払う。

流局を挟んで飯田はまたしても親満をツモあがり、持ち点は70000点を超え、もはや飯田の一人舞台である。

結局一人で4本場まで積み、張が「もう勘弁してくれ」と言いたいかのように、タンヤオのみの両面テンパイを静かに闇テンにする。

すぐに佐藤からあがり、長かった飯田の親番を蹴る事に成功した。

南3局、自力で親番を持ってきた張に5巡目テンパイが入る。

ドラ 裏


に対する場況は全く不明。
単純なカン待ちとは違い、以外にもなどの待ち変化があるので、張が選択した闇テンは当然である。
しかし親番で先制という事や、他家への足止めという意味でも、リーチという選択肢もあるようには思うが、どうだろうか?

その後、あがり牌どころか手変わりする牌すら全く引かずに、最終手番で飯田に放銃と張にとっては何とも辛い結果になってしまう。

オーラスの佐藤の親番も全く見せ場を作る事ができず、またも飯田があがりきり、9回戦目が終了した。

トップの飯田は80000点を超える大トップ。

永世最高位ここにありといった、飯田の独壇場であった。

9回戦終了時スコア
()は9回戦のみのスコア

飯田 +99.4(+85.0)
金子 +23.3(△27.3)
張 △45.8(△3.4)
佐藤 △76.9(△54.3)


10回戦(佐藤・飯田・金子・張)

東1局は親の佐藤の一人テンパイで流局し、一本場。
好配牌をもらった張の速攻が冴えわたる。

ドラ 裏


親の佐藤の第1打のをポン。
すぐに金子のをチーして、一度もツモる事なく待ちのテンパイを果たす。

2フーロとはいえ、さすがにこれだけでは待ちが絞りきれるはずもなく、数巡後に金子からの出あがりとなった。

東2局、西家の張が7巡目に以下の手牌。

ドラ 裏
 ツモ

そして、それまでの各々の捨て牌が以下のとおり。

東家 飯田

南家 金子

西家 張

北家 佐藤


飯田は4巡目以降全てツモ切り、金子は以外は手出し、佐藤はオール手出しである。

ここは打ち手によってかなり判断が別れるのではないだろうか?

選択肢としては
切りのドラのカンリーチ
切りの闇テン
切りのテンパイとらず
ほぼこの3通りだろう。

金子の手牌はかなり進んでいるようにも見え、その分足止めの効果が低い事を考えると、ややカンリーチとは選択しにくい。

結局張は打を選択するのだが、その後のツモがどうにも噛み合わない。

ツモ→ツモ切り
ツモ→ツモ切り
と、さらに2度のテンパイとらずと、納得のいくテンパイができない。
そして12巡目のツモで、不満そうにテンパイをとるものの、次巡のツモはファーストテンパイをとっていた時のあがり牌であるドラの

ツモの順番に恵まれない張は、ここでのフリテンリーチを敢行する。

ドラ 裏


結局、この選択も「吉」とはならず、最後は金子の形テン仕掛けでまわってきた牌でホウテイドラ1放銃と、何ともツキにも恵まれない。

東3局
9巡目ながら佐藤が先手をとり、本日2度目のリーチ。

ドラ 裏


親の金子から12巡目に追っかけリーチが入るものの、張が親の現物であるを打ち上げ2600の放銃となった。

東4局、ここまで煮え切らない展開が多かった張に配牌から手が入る。
ドラ 裏


とし、早くもイーシャンテン。
しかし、今局は張に限らず全員の手がぶつかりあう。

3連続でピンズを引き入れた西家飯田も、わずか4巡目にこんなイーシャンテン



北家の金子も形は苦しいが、8巡目にはイーシャンテン。



佐藤もリャンシャンテンながら、ドラトイツのまとまった手牌。



結局10巡目に、張がテンパイ一番乗りする。



待ちがフリテンとなる為、ここは待ちの闇テンを選択。

次のツモがとなり待ち選択を迫られるが、全体的にピンズが高い上に、だけは2枚切れなので、待ちを選択。

次巡にはをツモり、張の手が止まる。

 ツモ

難しい待ち選択である。
小考後、張は待ちを選択し、すぐに飯田からを討ち取って7700を加点し頭一つリードする。

続く一本場、佐藤の好配牌が8巡目に以下の形になる。

ドラ 裏
 ツモ  

待ちはカンチャンになるが、マンズの上の場況が絶好であり、どちらを選択してもかなりあがれそう。

4者の河は以下の通りである。

東家 張

南家 佐藤

西家 飯田

北家 金子


ここまでマンズの上が良く見える場況では、個人的にはカンと心中するのが好みだが、佐藤の選択は打

どちらでもあがれそうならば、現状の見えてる枚数と両面変化を重視してのカン待ちの方が優秀ということだろう。

実際には、山にはが2枚、が1枚残っており、すぐに張からが打たれる。

どちらの待ちを選択しても決して間違えではないと思うが、結果的にこの選択が痛恨のあがり逃しとなり、この局は張の一人ノーテンで終わり、南場をむかえる。

東場終了時

佐藤 36600
飯田 21300
金子 29700
張 31400

南1局は、中盤に親の佐藤に三元牌が7枚寄るが、手牌が進行する事なく金子に躱される。

南2局は、佐藤が平和のみで怖い飯田の親を落とす事に成功する。

南3局にはラス目飯田のリーチと、親の金子の仕掛けに対応した、トップ目の佐藤が張の闇テンに放銃。
放銃こそした佐藤だが、支出はわずか2000点で、オーラスもトップ目でむかえられるため、かなりホッとしたような感じを受けた。

オーラスをむかえ、各自の持ち点は以下の通り。

佐藤 34400
飯田 19600
金子 32300
張 33700

なんとわずか2100点差に3人が競り合う大混戦。
一人とり残された飯田でさえ、跳満ツモで一気に総捲りできる。

誰もがあがりきりたいオーラス、テンパイ一番乗りはトップ目の南家佐藤であった。

11巡目ながら、ポンテンの待ち。

ドラ 裏
  

静かに他家からこぼれるのを待つ。

終盤には、北家金子も条件を満たす待ちのテンパイが入るが、どちらの待ちも誰からもこぼれない。



親の張が17巡目で、いまだイーシャンテンと、かなり流局が濃厚になってきた。
しかし、ここから全く予想しない様な展開が待ち受けていた。

流局間近である佐藤の最終手番でをツモ切ると、飯田が形テンの為のポン。
ポン出しのを張がポンしてようやくテンパイ。

  

これらの仕掛けにより、もう一度回ってきたツモ番で、佐藤がを掴み張に1500を放銃してしまうという、佐藤にとっては何とも辛い展開でトップが逆転する。

続く1本場、最高位戦ルールはあがり止めが無い為、ラス親でトップ目になっても続けなくてはならない。

そして1本場。
現状3着目の金子にまとまった手が入り、早々にポンテン。

この金子の仕掛けに親の張が飛び込むのだが、「1000は1300」で金子は2着止まり。

張にとってはかなりラッキーなトップであったが、オーラストップ目だった佐藤は痛恨の3着落ち。

対局終了後、この局に関して珍しく佐藤の口から弱気とも受け取れる発言を聞いた。
「あれは(オーラスの3着落ち)久々に精神的に堪えたわ…」

10回戦終了時スコア
()は10回戦のみのスコア

飯田 +59.0(△40.4)
金子 +36.9(+13.6)
張 △11.9(+33.9)
佐藤 △84.0(△7.1)


11回戦(佐藤・飯田・張・金子)


ドラはないものの、起親佐藤の配牌が良い。
全20回戦のうち、まだ半分を消化しただけとはいえ佐藤としてはこれ以上のマイナスは絶対に避けたいところ。
3巡目には絶好のカンチャンを引き入れイーシャンテン。

ドラ 裏
 ツモ

一発・裏ドラ有りでの親番なので、打の完全イーシャンテンにしても全く問題はないが、佐藤は一通も視野に入れ打を選択。
結局8巡目にを引き入れリーチも、ツモあがりの抽選には当選せずに、佐藤の一人テンパイで流局した。

続く1本場
序盤からイーシャンテンの張が、最高の入り目であるを引き入れ、先制リーチ。

ドラ 裏


向かってくる者もおらず一人旅となり、ほどなくして高目のをツモあがる。

東2局、親の飯田と南家の張の手がぶつかりあうのだが、リーチに至るまでの二人の選択がとても興味深い。

まずは親の飯田。
8巡目に以下の手牌。

ドラ 裏
 ツモ

親番の先制では一枚切れ。
の即リーチでも問題なさそうに思うし、実際にそうする打ち手もかなり多いと思うが、飯田の選択はテンパイとらずの打

この手牌は即リーチする一手かと思っていたのだが、河を見渡すと「なるほど」と思えるだけの情報があった。

東家 飯田

南家 張

西家 金子

北家 佐藤


河の情報は以上の通りで、ソウズが場に高く、ピンズの上がかなり良く見える。

張のピンズは全て手出しであり、ピンズを持っていたとしても、を切った瞬間はターツの2枚だけというパターンが最も多いと思え、ピンズの上を固めてる可能性が低いと予測できる。
金子は最初の以外のピンズはツモ切りだが、これもピンズの上を複合形などで持ってるとは想像しにくい気がする。
佐藤も第1打にを選択している事を加味すると、テンパイを外してまでものくっつきの方が優秀な選択ではないだろうか?

それでも私は深く考えず安易にカン待ちでリーチしてしまいそうで、このような重厚な手組みをする飯田にはすっかり魅了されてしまった。

そして、次巡のツモは知っていたかのような
もちろんこうなったらリーチするしかない。

飯田の場況を重視したこのリーチ、待ち牌のはなんと山に7枚生き!!

飯田自身もかなり感触があったはずで、さすがにあがりは時間の問題だろうと思ってたのではないだろうか?

ところが、同巡に張からもリーチが入る。

ドラ 裏


張のリーチも感触充分といった感じである。

話は少し逆上るが、この局の張の5巡目の選択が秀逸。

 ツモ

前巡にを切っていて、ペンチャンを外してる途中である。
普通は手拍子にを切るだろうが、張はを選択。

おそらく飯田のあたりを見て、対応したのだろうか?
あがりへの道は細くなるだろうが、4面子1雀頭の形を決めて、他家にとっては将来的に危険になるであろう裏筋のから外し、安全そうなを残す選択をした。
その後の有効牌がと、ツモがきっちりと噛み合って、形の悪い方が先に埋まり両面が残るテンパイとなる。

が飯田の現物で、瞬間闇テンに構える選択肢も当然あるが打点効率なども加味し、張は即追っかけリーチを決断する。

ちなみに、は張から見えている以外は飯田が1枚使ってるのみで、山に4枚残っている。

この局の決着は一瞬であった。
飯田の一発目のツモがで、張に8000の放銃となる。

この放銃で一歩後退した飯田だが、次局にはすぐにあがり返し、南入した時点では以下のような点棒状況になっていた。

佐藤 21000
飯田 25600
張 40700
金子 32700

南1局、先に今局の結果だけ述べると、佐藤と飯田の二人テンパイで流局する。

あくまでも結果論にすぎないが、佐藤と飯田と張の3人にはあがりの手順があり、特に張に関しては早々に他家をケアせずに打てば、たいした難しい選択もなく跳満クラスのあがりが拾えていた。
7巡目の張の手牌

ドラ 裏
 ツモ

このを抑えて、のトイツ落とし。
素直にツモ切れば、飯田のリーチが入った10巡目以降も危険牌を打ち出すことなくテンパイできている。
11巡目からとたて続きに引き入れテンパイ。
さらに即リーチしていればを一発ツモと、大きな跳満を逃してしまう。

そしてその飯田は、こんなリーチ。

ドラ 裏
 ツモ

でリーチ。
全くもって普通のリーチだが、リーチのみになるのを嫌ってシャンポン待ちを選択すると、数巡後にをツモっている。
しかし、ピンズの上は割と良く見える為、この中を掴まえるのはほぼ無理だろう。

最後に親の佐藤。
8巡目に、ツモでテンパイ。

ドラ 裏
 ツモ

役牌も三色も消え、待ちもカンチャンと、この牌姿からは最悪と言って良い入り目で、佐藤はこれを打の闇テンにする。

で両面に変化、で三色なら闇テンにするのは妥当であるが、もしここで押さえ付け的なリーチを敢行するか、飯田のリーチを受けてからのツモ切りリーチなら、17巡目に飯田の待ち牌のよりも先にをツモっている。

結局、先に述べた通り飯田・佐藤の二人テンパイで流局した。

1本場はトップ目の張が、確定の平和・三色を手堅く闇テンにし、ツモあがる。

南2局、ラス目で親番の無い佐藤が2巡目に以下の牌姿。

ドラ 裏
 ツモ

まだ2巡目、ドラが、三色目がある、点棒と親番が無い。
以上の理由により、テンパイとらずの打

佐藤の強い意思が感じとれる1打であったが、4巡目のツモでは妥協し、不満そうにフリテンリーチとした。

数巡後にツモあがりも、あの好配牌がわずか2700点のツモあがりと、今日の佐藤は本当にツキに恵まれない。

南3局は、ここまで息を潜めていた金子が、飯田との2軒リーチを制し、3000・6000のツモあがり。
トップ目張は痛恨の親カブリで、2着目に転落する。

オーラス、4者の点棒状況は以下の通り

佐藤 18500
飯田 19400
張 40000
金子 42100

テンパイノーテンで着順が変わる金子は戦い方が難しいが、他の3人はやる事がはっきりしている。

まずは西家の飯田が4巡目にをポン。
7巡目にはドラのをカンチャンでチーして打のペンテンパイ。

ドラ 裏
   

北家張も負けじと仕掛ける。
8巡目に以下の牌姿からをカンチャンで鳴く。

ドラ 裏
  

とし、イーシャンテン。
両面で鳴く手もあるが、金子以外からの2000点の出あがりが出来ない上にが既に2枚見えてる為、こう仕掛けた方が良いだろう。
その後、ツモでテンパイし、最終的には単騎となる。

一方、是が非でも3着に浮上したい佐藤だが、どうにも形が悪い。
8巡目にようやく戦える形になり、最も不要なドラを放す。

ドラ 裏
 ツモ

そして13巡目にようやくテンパイ

  

親の金子は完全に静観模様。
飯田か佐藤にあがってほしいのだが、なかなか決着がつかない。
そして16巡目をむかえた所で金子の手が止まる。

流局で張にトップを捲られる為、飯田と佐藤に対して差し込みに行きたいのだが、なかなか抜くべき牌が決まらない。

飯田の待ちのと佐藤の待ちのは共に手の内にあるのだが、張にも危険でもある。
長考の末、ついに抜くべき牌を決めきれずに安牌を並べてしまった。

佐藤の河にが既にあり、チー出しがなので、を選ぶかとも思ったのだが…

結局、2度の見逃しをした張がラス牌のをツモあがり、逆転でトップを掴み取り2連勝でトータルプラスになる。

ラスを押し付けられた佐藤は、他3人より大きく後退した。

11回戦終了時スコア

金子 +57.7(+20.8)
飯田 +37.7(△21.3)
張 +30.8(+42.7)
佐藤 △126.2(△42.2)


12回戦(張・金子・佐藤・飯田)


東1局は佐藤が金子から平和のみの1000点出あがりと、静かな立ち上がり。

東2局も、佐藤が闇テンで3900を飯田から出あがる。

ドラ 裏
 ロン

テンパイ形だけみるとリーチと選択しそうだが、親の金子が序盤からピンズとソウズの中張牌を連打。
北家の張も3巡目に、その後をツモ切りしているので多少の打点効率を犠牲にしても、闇テンのほうがあがりは万全だと判断したのだろう。

東3局、このまま勢いに乗って加点したい佐藤の親番。

中盤にダブを仕掛け11巡目にテンパイも、七対子ドラ2テンパイの金子が親の佐藤の現物で静かに闇テンにし、張から討ち取り大きな6400を手に入れる。

東4局、金子の配牌が良い。

ドラ 裏


1巡目にツモで、早くもイーシャンテン。
7巡目には待ちのリーチとするものの、一人テンパイで流局し、好配牌を成就させる事が出来なかった。

一度の連荘もなく南場を迎え、4者の点棒状況は以下の通り。

張 22600
金子 37400
佐藤 33900
飯田 25100

南1局1本場、早々にドラのが河に全て顔を出す、珍しい展開。
そんな中、北家の飯田が中盤にのポンテン。

ドラ
  

河は明らかなホンイツ模様で、ドラが無い仕掛けと分かっていても他家3人は丁寧に対応せざるを得なく、飯田の一人テンパイで流局する。

南2局2本場、11巡目張がテンパイ。

ドラ 裏
 ツモ

リーチとしても問題なさそうだが、を全員が切ってる為(は2枚切れ)、闇テンならほぼあがりが拾えそうであり、さらに張の河が




と、かなり弱い為を切って静かに闇テンにする。

そして、12巡目の佐藤。

ドラ 裏


ここから、上家から出たをチーして打とする。
七対子のイーシャンテンでもあるが、佐藤から見て4枚目ので、も既に2枚切れとあっては、さすがに仕掛けざるを得ないだろう。

が完全安牌であるのと、タンヤオの可能性を完全に否定しない様、佐藤は両面で鳴く。

この仕掛けを皮切りに、一気に場はヒートアップ。

同巡に張がツモ切りリーチとすると、親の金子もすぐさま追っかけリーチ。

金子
ドラ 裏


そして、金子の宣言牌のをポンして佐藤もテンパイ。

山に生きてる枚数は張が一番多かったが、張がすぐにを掴み金子に放銃。

続く3本場。
金子が無駄ツモなく、わずか5巡目でテンパイ。

ドラ 裏
 ツモ

ひとまず打とし、単騎の闇テンにする。
次巡のツモがで待ち変えするが、闇テン続行。
結局次巡のツモもで金子のあがりとなるのだが、ここはリーチを選択した方が良かったのではないだろうか?

以下は、金子が最初のをツモった時の4人の河の模様である。

東家 金子

南家 佐藤

西家 飯田

北家 張


情報に乏しい序盤だが、が良く見える。
現状トップ目で、慎重に闇テンにしたのだろうが、親番で先制という事も加味すれば、リーチする一手だと思うのだが、どうだろうか?

続く4本場と南3局は、ラス目の張が2局ともツモあがり、オーラスを迎える。

張 23800
金子 44600
佐藤 27200
飯田 24400

南家の張が積極的に動く。
2巡目にをポン、4巡目にカンをチーして8巡目にテンパイ。

ドラ 裏
   

3着取りの1000点の仕掛けだが、2着目の佐藤としては2000点の放銃で着順が変わる為、難しい対応を迫られる。

結局、トップの金子がテンパイ打で張に放銃。
張が3着に浮上し、今節の対局が終了した。

12回戦終了時スコア
()は12回戦のみのスコア

金子 +101.3(+43.6)
張 +15.6(△15.2)
飯田 +2.1(△35.6)
佐藤 △119.0(+7.2)

金子が頭一つ抜け出したが、まだまだ全くわからない。
他3名の次節以降の追い上げに注目したい。




文責・坂本大志
(文中敬称略)