全5日間20回戦

第1日(坂本大志)

第2日(平賀聡彦)

第3日(風祭学)

第4日(須山いづみ)

最終日(佐藤崇)

〜第4日〜(須山いづみ)


残りはわずか8戦。競馬で言えばちょうど第三コーナーに差し掛かった辺りだろうか。
ここまでのレース展開は、スタートダッシュを決めて、念願の最高位へ向けて先行した村上淳を、
Aリーグ3年目で初の決定戦を迎えた張敏賢が捲り先頭。後続を引き離し、ゴールめがけてひた走る。
ここ5年で3度の最高位を奪取し、新ミスター最高位の声も聞こえてきた古久根英孝は、終始好位置をキープ。
涙の戴冠から2年、若手のエース尾崎公太はここまで揮わず後方からという展開になっている。

12回戦終了時スコア
1 張  敏賢 +75.3
2 村上 淳 +12.1
3 古久根英孝 -12.3
4 尾崎 公太 -79.1

〜13回戦〜

東1局。古久根が3巡目に捨てたに声がかかる。
他の3者とは違い一人抜けて良い配牌をもらった村上のピンフが最初のアガリであった。
張に逆転されたものの、村上の好調はまだ持続しているようだ。

東3局。最初に動いたのは尾崎。をチーしてドラ受けのカンの聴牌。
古久根も をポンしての聴牌を入れる(その後をカン)。
尾崎、古久根、どちらかのあがりになるだろうと思われたが17巡目に両者とも聴牌を崩す。
このまま流局かと思われたその時、村上から気合の入った「リーチ!」の声。
そして一発でツモったを手牌に引き寄せた。

「3000・6000」

 一発ツモ ドラ カンドラ

カンドラがのったことでダマでも満貫、しかももう流局寸前。それでも曲げる村上。
これが今期Aリーグ断トツ首位を走り続けた村上麻雀なのであろう。
痛恨の親かぶりをした古久根から深い溜め息が漏れる・・・。


南1局。親の張、なかなかの好配牌
 ドラ
この親番で一刻も早くリーチを入れ先手を取りたい。10巡目、ドラのを引きカンの聴牌。
を引けばタンヤオ三色になるからなのだろうか一巡役無しダマに構えるが、次巡ツモ切りリーチにでる。

 ドラ

そしてここまで何も出来ぬまま微差のラスの尾崎。親のリーチに無筋を2枚おす。尾崎の手は、



早く追いついてこの局を自分のものとしたい。しかし意外と早く決着はついた。
張が2巡後をツモりあがる。初アガリにホッとした張の気持ちが空気に伝わる。
それとは逆に尾崎の心中は・・・。自分から3枚見えてる・・・。
そのカンをいとも簡単にツモられてしまった。
この局も、今決定戦に於いていつもの勢いが無い尾崎の状態を表しているかのような決着であった。


局は進んで南3局。ここまでの点棒状況。

東家 古久根 22900
南家 尾崎   24700
西家 張    35200
北家 村上   37200

ここまで一人まだアガリのないラス目の古久根の親番。

  
 ドラ

ドラが対子の好形二向聴の手牌である。
遂に古久根キタか!観戦記者の立場を忘れてこの好配牌に心を奪われてしまった。

そして4巡目には



高め8000オールまで見える超好形の一向聴。
しかしここからがなかなか進まない・・・。
既に中盤に差し掛かったその時、トップ目村上からドラのが突然打ち出される。
もちろん古久根は満貫のポン聴をとる。
トップ目の村上から打ち出されたドラの
もちろん村上は聴牌間違いないだろうが・・・。

「ツモ!4000オール」
次順のツモは古久根にとって嬉しい初アガリ、しかも親満となる
たしかに張との差は2000点。古久根の親を落とし、先にアガってオーラスを迎えたい村上の気持ちはわからなくもないが
ここでのドラの切りはどうだったのであろうか?いろんな意見があるだろう。
古久根のアガリによって尾崎を除く三人が団子状態になる。


南3局1本場。
古久根1300オールのアガリ。
ここで古久根はトップ目にたつ。

続く2本場。
村上の配牌が実に良い。

 ドラ

自らの東打ちで、古久根をラス目から一気にトップまで浮上させてしまった村上だったが、
ここでまた大物手を予感させる配牌をもらう。恐ろしい打ち手である。
3巡目にをポンして6巡目には

 ポン の聴牌。
8巡目に尾崎からリーチが入るが、同巡村上がツモ牌を引き寄せる。
尾崎はリーチ後一回も牌山に触らせてすらもらえなかった。
実は村上のアガリ牌はラス牌。
尾崎の待ち は5枚山であった。これが勢いの差か。
オーラスを前に再び村上がトップに立った。

オーラス。

尾崎  16100
張    27600
村上  41400
古久根 34900

9巡目に南家張がタンヤオのみの聴牌を入れる。

 ドラ

満貫で2着になれる張は、ここで三色の手変わりを待ちダマに構える。
しかし直後に北家古久根が当たり牌であるをツモ切る。
張はそのにロンをかけて1300のアガリ・・・。
しかし、このにロンをかけるのならば、リーチだったのではないだろうか。
トータルトップで確実に回数を進めたい張の気持ちもわから無いでもないが・・・。
「フーン・・・。」古久根の呟きがやけに印象的であった。

13回戦終了時スコア

張 +65.2
村上 +53.5
古久根 +1.3
尾崎 △123.0


13回戦終了後、最後まで席を立たなかった尾崎。
残り7回戦を残し大差の一人沈み。
尾崎の胸中はいかがなものだったであろうか。


〜14回戦〜

東1局。
最初に動いたのは南家古久根。6巡目に先攻リーチと出る。

 ドラ

同巡、西家尾崎にも聴牌が入り追っかけリーチ。



そして8巡目、親の張も聴牌。



をアンコにしての会心の聴牌だったに違いない。しかし張の曲げたが尾崎の当たり牌であった。
裏ドラがのり、2600のアガリとなる。古久根、張、両者の手は満貫の見える手であった。
打点こそは安いものの、尾崎のこのアガリは二人の大物手をつぶす良いアガリだったであろう。
その証拠にこの回は尾崎の半荘となった。

東2局。
私は尾崎の対極の位置にいたのだが、この局はきっと尾崎が早いだろう・・・。
尾崎の捨て牌を見てそう思った。予想は的中!
尾崎、5巡目リーチ!さっきのリーチ合戦を制し調子が上がってきたようだ。

そしてもう一人、8巡目に牌を横に曲げたのが、前局先行リーチも尾崎にかわされてしまった古久根。
尾崎が一瞬、「ふぅーー。」と息を吐いたように見えた。
このとき、尾崎の待ちは知らなかったが先手を取ったもののこんなにすぐに追いかけられるのか・・・そんな感じに見えた。

尾崎の手牌
 ドラ

古久根の手牌


古久根のの方が尾崎のカンより良く見えたがこの二巡後、古久根が尾崎に放銃。
はこの時点で山に3枚、古久根の待ちは残り1枚であった。麻雀って本当にわからないものだ・・・。


局は進んで南2局4本場。供託リーチ棒4本。親番古久根。
ここでアガリをものにしたものがトップへの道へ大きく前進するであろう。
そしてやはり、この均衡を破ったのは調子を上げてきた尾崎であった。

まず10巡目に村上リーチ。
 ドラ

ダマテンの効く2000点の聴牌。しかし現状は供託も含め7200点の聴牌とも言えよう。
ダマテンに構える人も少なくはないのであろうか?でもこれがきっと村上麻雀なのだろう。

ツモ番が回ってきた尾崎が軽く息をつく。
そして「リーチ」とを横に曲げる。
 ドラ ウラドラ

実は尾崎は村上より2巡早い8巡目に聴牌していたのだった。
との入れ替えである。追いかけを受けた村上が一発でツモってきた牌は、尾崎への当たり牌だった・・・。
村上のリーチが尾崎のピンフのみを『リーチ一発ピンフ裏』に化けさせてしまったのかも知れない。
それでも村上に悔いはないであろうが・・・。
尾崎、14200点の収入。この半荘のトップは決まったかな・・・・。そんな大きな大きな尾崎のアガリであった。

オーラスも尾崎が軽快にツモり、トータル一人沈みの尾崎が大きなトップを取ったことで
私達観戦側にとっては、ますます面白くなったこの14回戦が終了した。

14回戦終了時スコア
張  +44.7
村上 +11.4
古久根 +7.9
尾崎 △67.0


スタート時、10人程度だった観戦者もこの頃には30人位に増え、ますます熱気が増した神楽坂「ばかんす」。
今日観戦していて一つ気付いた事がある。
村上淳。彼は対局者の表情を常に観察していた。余裕があるようにも見える。
しかしそれは彼の戦略の一つなのであろう。場が進み動きなどが入るとちょっとした長考場面も出てくる。
そんな時いつも村上はジィっと対局者の表情を見つめていた。今日私が印象に残ったことの一つである。


〜15回戦〜

東1局。
この局、親の村上が他家の表情を伺う様子が何度となく見られた。
その村上の捨て牌は国士模様。流局間近、張から「リーチ」の声。

 ドラ

残り2巡ということもあり、リーチにはいかないだろうと思っていた。高めツモって「1300・2600」でも充分では?
やはりこれが最高位戦ルールの魔力なのだろう。
もしかしたらこれが「3000・6000」に化けるかもしれないのだから・・・。

そして村上が動く。 チー。
村上の手牌。



誰もがわかる一発消し。これがデジタルの一つなのであろう。
今の自分に出来る精一杯の防御をしたに違いない。
このチーにより、張がハイテイ前に掴まされたは、古久根がひそかに聴牌していたメンホンチートイに当たってしまう。

 ドラ

村上が鳴きを入れなければ恐らく二人聴牌で流局していただろう一局であった。

東3局。
親の尾崎の14巡目。

 ドラ

待ちチートイで即リーを打つ。捨て牌で4トイツ失敗しているが、ここで即リーを打つのは親の特権か。
南家古久根も同巡、尾崎の当たり牌を引きピンフを張る。



親の尾崎のリーチ一発目にドラの切りで追いかける。

そして西家村上。



は尾崎が一枚、古久根が一枚切ってある。しかしはまだ山にいそう・・・。村上3人目のリーチ!
3人リーチにより一気に追い込まれた張。ツモってきた牌は村上の当たり牌

張の手牌。
 ツモ

尾崎の捨て牌




古久根の捨て牌




村上の捨て牌




3軒リーチに共通安牌はない。苦しむ張が選択した牌は・・・。尾崎、古久根二人の捨て牌にあるのツモ切り。

「ロン。12000」

一呼吸おいて村上の印象的な静かな声。
結果、張は自ら一番高いところへの放銃。村上のカンリーチは、張の心理状態を読んだ上でその裏を書いたようなリーチに感じられた。
この局、村上の心理戦法が成功するのであった。それとは対照的に、張の歯車はこの日どこかが狂っていた。

東場の親で4連続アガりをものにした古久根と村上が、局面をリードし場を進める。
張も途中、親満を尾崎からアガるが、狂った歯車を直せずに2局後にはそのまま尾崎へ返してしまった。

そしてオーラス(一本場・供託リーチ棒1本)

古久根 42800
村上  38000
尾崎  25800
張   12400

ここでトップを取ればトータル首位に躍り出る古久根はなんとかこのトップを守りきりたい。
しかし古久根の手は重く、苦しいながらもなんとかチートイの一向聴までこぎつけていた。
そんな古久根とは対照的に、村上のツモ牌はトップへと導いてくれるかのようだ。

 ドラ

11巡目聴牌一番乗りを果たし、次巡、尾崎から3を打ちとる。
供託リーチ棒の差で古久根をかわし、この半荘の勝利の女神は村上に微笑むのだった。

15回戦終了時スコア
村上  +54.6
古久根 +30.7
張   △2.9
尾崎 △85.4



〜16回戦〜

東1局。
古久根の8巡目リーチを、同巡村上からをポンして即古久根から1000点をあがる尾崎。
古久根のリーチは、カン待ちから引き待ちへの手変わりリーチで、待ち牌はザックリ山に残っていた。
尾崎がうまくさばいたと言えよう。

続く東2局も、尾崎、張の2軒リーチになるが軍配は尾崎にあがる。

東3局。
張はピンフドラドラを曲げ一人旅。
 ドラ
時間はかかったが、をツモった時のホッとした表情が印象的であった。

東4局。
村上、古久根、尾崎のリーチ合戦となる。尾崎が古久根から2000点をあがり、この半荘尾崎のアガリは3度目になった。
尾崎、少しずつエンジンが暖まってきたのか?

局は進み南1局1本場。
北家尾崎から6巡目リーチが入る。
13巡目にピンフを張った西家村上だったが今回はしっかりダマに構える。
そしてハイテイ前にツモってきたを突然横に曲げた。

あれ・・・?これって何処かで見た光景・・・。
思えば昨年、今日と同じこの決定戦において、最高位獲得へと一歩ずつ近づいていた尾崎がこの戦法により、
金子にハイテイで放銃し、その後古久根に捲られるという誰もが印象深いあのシーンが頭をよぎった。
しかし今、余計なリーチ棒を出してまでその戦法を使う必要があるのだろうか?結果は事無く流局。
しかしながら村上という打ち手は魅せてくれるなあ。

南2局2本場(供託リーチ棒2本)
親の古久根、3巡目にをアンカン。
 

恐らく自分の手が最も早いと思い、テンパイチャンスを広げたのであろう。
ところが同巡、尾崎からリーチが飛んでくる。古久根首をひねる・・・。

 ドラ カンドラ

そして又、古久根より早く聴牌し追いかける村上。

 打
カンドラが乗り攻めたいところだ。

打牌選択は。そして村上の選んだは尾崎の単騎のチートイにピッタリと当たってしまう。
まさに絵の合ったようなアガリだった。

オーラス 親尾崎。
ここまでの点棒状況。

尾崎 42100
張  38300
古久根 19100
村上 19500

この並びのまま終わると最終日が一段と面白くなるなと思っているのは私だけでないはず。
古久根、村上は一刻でも早くあがって3着をとりたい。

7巡目、先に古久根が動く。
 ドラ

チー。そして11巡目にをチーして、誰よりも早く聴牌を入れる。

 チー チー

一方村上は、ドラアンコの一向聴からなかなかが鳴けず(は山2枚だった)、
遂に13巡め尾崎からをポンしてバックの聴牌を入れる。
  ポン

そこに親でトップ目の尾崎からの突然のリーチ。



一人ノーテンでも張と変わってしまう点棒状況、伏せることも出来ない。この形だったら当然のリーチだろう。
そして村上が尾崎のリーチ後、一発でもってきた牌は尾崎への当たり牌である・・・。
村上、さすがに長考に入る。約20秒経過したであろうか・・・。村上はそっとを河に置いた・・・。


オーラス1本場。
村上を除いた他3人はこのままこの半荘が終わればいいと思っているであろう。
いや、違う・・・。尾崎はここで更に点棒を稼ぎたい!そう思っているに違いない・・・。

そうはさせずと古久根、満貫もみえる一向聴から10巡目、2000点のポンテンを入れすぐに尾崎から出あがり終局となる。

16回戦終了時スコア
張   +14.4
古久根 +12.8
村上  +8.6
尾崎 △39.8



16回戦が終了して残りは4回。もう待った無しの直線勝負である。
ここから先は一打一打が、栄光と地獄との狭間を行き来する事であろう。
4者共にチャンスのある近年稀に見る接戦。




対局終了後、最終節を控えた四人の選手の一言!

張「今日はちゃんと打てなかったので今度は頑張ります。」

村上「もう心臓が飛び出そうです。」

古久根「調子悪いからな・・・。我慢するの嫌だなあ・・・。でも来週最終局までもつれるだろうから結局また我慢しっぱなしになりそう(苦笑)」

尾崎「消化試合になるかと思ったけどなんとか形になったので精一杯頑張ります」


文責 須山いづみ