全5日間20回戦

第1日(坂本大志)

第2日(平賀聡彦)

第3日(風祭学)

第4日(須山いづみ)

最終日(佐藤崇)



〜第2日〜(平賀聡彦)


2006年10月25日
昨日まで降り続いた秋雨もやみ、爽やかな小春日和のこの日、
男たちはどのような思いを胸にここ東京神楽坂雀荘ばかんすにやってきたのか。
麻雀プロとして最高の技術と戦術を追い求める男達の戦いが始まる。


第31期最高位決定戦第2節

前節までのポイントは
村上 淳    +41.9
張 敏賢    +32.0 
古久根英孝 -17.4
尾崎 公太  -57.5
である。

今回の観戦記では選手たちをより身近にリアルに感じてもらうため、
四半荘を一半荘ごとにそれぞれの打ち手の視点から描いた。
(決定戦第一節終了時ポイント下位のものから順とした)
少しでも対局の空気を伝えることが出来たらと思う。


〓5回戦〓

尾崎 公太




前最高位。四人の中で最も感情を表に出さない打ち手。
サイボーグのように淡々とベストの打牌を重ねていく。
そんな男が二年前の最高位決定戦最終日、栄冠に輝いたとき流した涙。
今期創設された最高位戦クラシックでは決勝を終始リードし、
あらためて技術と対応力のある打ち手であることを証明した。
しかし、99%手中にしたかに見えたタイトルは、
オーラスのまさかの逆転劇によってするりと逃げていった。
最高位決定戦、返り咲きをかけた尾崎の戦いが始まる。


起家から順に、尾崎・古久根・張・村上の順

東一局 ドラ

起家でまずまずの好配牌、二巡目にをツモってを切って一向聴となるが
次巡ツモったところでを切ってリャンシャンテン戻し巡目が早い事もあり
タンヤオ形の柔軟な形に構える。七巡目に

の形になりを切ってリーチ。 一人テンパイとなるがリーチ後にをツモりの対子
落としと合わせて結果アガリ逃しとなる。

同一本場   
配牌タンピン三色まで見える形だったがつもがまったく伸びず
村上のリーチを受けたところでチーしてイーシャンテンにとると
同巡に張にピンフドラドラのイーペーコーの高めをツモられる。
厳しい立ち上がりとなる。

東二局一本場 ドラ

の形に十巡目に親の古久根からリーチ、を持ってきてノーチャンスの切り、
次巡を持ってきて切りダマ。古久根の捨牌にはあるがこの時点では4枚切れ。
すぐに古久根からが出て満貫となる。
 ロン

東三局一本場 ドラ

配牌はいまひとつであったがドラを2枚持ってきて一気にヒートアップ。
古久根のリーチ一発目に初牌のをつも切り二巡後追っかけリーチ。

一発目に持ってきた牌はドラ筋の、2600放銃となる。今だ流れに乗り切れない。

南一局 ドラ
東四局に村上に親のリーチチートイドラドラ3000,6000をツモられやや劣勢で迎えた親番。
持点は24400、ここでどうしても加点しておきたいところ。

まずまずの配牌、三巡目にして一向聴となりとりあえず先手をとりたいところだが、
ツモが噛み合わず場は重く捨牌は派手になっていく。
十二巡目に村上からドラ切りリーチ、結局追いつかず流局。親番を終える。

南二局、二回の親番も終わりあとは順位と持点を考慮しながらの戦いとなっていく。
そんな中、四巡目に対面・張のピンフのみに放銃。
点数よりも、スピードと状態の差を感じさせる厳しい一局だった。

南三局一本場 ドラ

それなりの配牌、ここをあがってオーラスの条件を楽にしたいところ。

六巡目となったところでが2枚切れのため切りのテンパイとらず、その刹那古久根のリーチ!
更に古久根の暗カン、親・張の仕掛けが入ったところで真っ向勝負の追っかけリーチ!

親の張がまわり流局。今だ実らず。

南四局二本場 供託2000点 ドラ
この時点で持点
尾崎  21100    
古久根 19800
張    37600
村上  39500

打点はないがスピードは早そうな配牌である。しかし六巡目にして親・村上のリーチ、
次巡現物のの対子落としにでると下家・古久根に1600放銃。
手痛いラススタートとなる。

一発大物手をものにした村上、アガリを重ね展開をリードした張、
きっちり三着をキープした古久根、ラスをひいた尾崎。
第一節スコアと同じような展開だったが尾崎は冷静に結果を受け止め、
次半荘へとのぞんでいった。

5回戦終了時スコア

村上 淳 +80.4
張  敏賢 +49.6
古久根英孝 -32.4
尾崎 公太 -98.6


〓6回戦〓

古久根 英孝


現最高位。四人のなかでは実績経験ともに一つ抜きん出た打ち手。
自ら研究会を開き若手の育成につとめ、
下位リーグに顔を出し若手との交流やさらに別団体の選手との交流に精力的に励みつつ、
自己研鑽を怠らない男。そんな古久根を尊敬し師と仰ぐ打ち手も少なくない。
そんな弟子たちを含む多くのギャラリーが見つめるなかどのような麻雀を見せていくのか。
最高位決定戦、連覇をかけた古久根の戦いが始まる。



起家から順に、尾崎、古久根、村上、張

東一局 ドラ

配牌ドラ対子で下の三色も見えスピードも早そう。
5巡目イーシャンテンとなるが8巡目村上リーチ、
11巡目親の尾崎リーチ、同巡村上ツモ1300,2600。
開始そうそうのチャンス手実らず。

東二局 ドラ

親番で仕掛けられそうではあるが月並みの配牌。
しかし、3巡目に中暗刻、4巡目に対子となりいっきに手牌が引き締まる。
8巡目をツモってイーシャンテンとなったところで
で七対子ツモ。今だ波は来ず。

南三局 ドラ

この時点で持点は19600。親もなく点棒状況的に満貫クラスが必要とされ、
三色を見据えての手牌進行となる。

10巡目にこのイーシャンテンの形になるが村上と張の仕掛けを受けて
ソウズが切りづらくと切っていく。
しかし、このあと持ってきたが重なった時点でイーシャンテンのまま
張に通っているを切り手変わりがあった村上に5800の放銃となる。
(対面・張はソウズの清一の待ちだった)
手変わりを見逃すという古久根らしからぬミスであった。

南三局一本場、スムーズに展開していた半荘のはじめての親の連荘が
自分の放銃とは皮肉なものである。 
そして皮肉な事にこの半荘はじめての古久根のテンパイもこの局であった。
リーチのみを一発でつもり1000,2000。あがった声は心なしか力無さげであった。

南四局 ドラ
この時点で持点
尾崎  30900
古久根 18100
村上   36300
張    34700



順位を上げるためにはハネ満ツモか、3着目からの満貫以上出アガリという厳しい条件。



6巡目に上の形になるが、ピンフイーペーコーと567の三色を見てテンパイとらずの切り。
8巡目村上リーチ、をつもりを切って追っかけリーチ。
一発で村上から高目のであがり満貫となる。

ロン

順位はラスのままであったがこの局の最善手を意思を持って掴みとり、
見る者に何かを感じさせ次半荘に向けて上昇の息吹を感じさせる一局であった。
そして、その声は前局の「ツモ」の声の何倍も力に満ち溢れていた。

6回戦終了時スコア

張  敏賢 +84.3
村上 淳 +67.7
古久根英孝 -65.3
尾崎 公太 -87.7


〓7回戦〓


張 敏賢


Aリーグ三年目にして初めて掴んだビッグチャンス。
今までタイトル戦の決勝には無縁で四人の中で知名度も一番低い。
だからこそ今回初タイトルとなれば張にとってその価値は計り知れないものとなるだろう。
初日を終えたあと本人に直接話を聞く機会があった。やはりかなり緊張したらしい。
しかし出だし調子が良かったので対局に集中することによって緊張も次第に薄れていったという。
最高位決定戦、初タイトルに向けて張の戦いが始まる。


起家から順に、張、村上、尾崎、古久根

東二局 ドラ

尾崎が1巡目、2巡目と役牌を仕掛けると張に一気にピンズの染め手のブームがやってくる。
尾崎はソウズの染め手模様。8巡目、強めのを切りテンパイ。

次巡、親・村上リーチ。ツモで現物の切って待ち変え。
尾崎テンパイからドラ切って村上に5800放銃。
張もあがりには至らなかったが形になっている。

東二局一本場に古久根がリーチツモチートイオモオモウラウラ4000、8000をあがり、
3人が原点割れで競った状態の中迎えた南二局二本場。
ラス目の張にとっては喉から手が出るほど欲しい供託の4000点。
しかし、4巡目親・村上が役牌を仕掛け、
まったく手になってない張は下家に対して絞りながら安全牌を抱える事になる。
結局、村上から尾崎へ2600横移動。当たり牌は張が前巡に切ったであった。
出遅れ感と寸前のかわしのラッキーが入り混じった複雑な心情の局となった。

南四局
この時点で持点
張    20500
村上  23700
尾崎  29600
古久根 46200

満貫ツモ2着だがトータルを考えると3着村上は是が否でもまくりたいところである。

しかし7巡目、親・古久根リーチ、数巡後ツモ1300オール。
古久根の怒涛の連荘のはじまりであった。

南四局二本場、前局村上は古久根に3900放銃したため望外の3着になった。
しかし、2巡目に当面の敵の村上が役牌を仕掛ける。
下家に対して絞りながら自分もアガリに向かう形となる。8巡目親・古久根リーチ、
スピードで追いついてない現状では古久根の村上からの出あがりが自分にとってのベストか?
結果、村上から古久根への3900横移動となる。

南四局三本場 ドラ五

長いオーラスは続くが3着争いでは優位に立った。
しかし、親・古久根の勢いに場の空気はだんだんと重くなっていく。

配牌から要所を引き入れ6巡目にピンフイーペーコーの一向聴になる。
満貫ツモ2着もうっすら見えてきたかにみえた。
しかし、そこからつもが噛み合わず13巡目、古久根リーチ、流局となる。

南四局四本場、なおも親・古久根の攻勢は続く。
満貫出アガリで2着となる状況にはなったが場は果てしなく重苦しく自らの手牌も重い。
6巡目、2着目の尾崎が仕掛ける、5200以上放銃でラスになるので慎重に対応する。
14巡目、村上リーチ、張にとって苦しい展開になる。まったく手になってない今望みは流局のみか?
結果、古久根ノーテンで流局。3着で終了となる。

当面の目標の3着確保はなったがオーラスの古久根の連荘の渦の中、
張の心中やいかに。淡々とその場を離れて行った。

7回戦終了時スコア

張  敏賢 61.0
村上 淳 20.9
古久根英孝 -6.0
尾崎 公太 -78.9

〓8回戦〓

村上 淳



最高位戦きってのデジタル派。同じ理論・考え方の他団体の選手との交流も深い。
最高位戦の理事も務めておりプロテストなどを通じ新人の教育に励みながら、
また納会や新人歓迎会の宴会部長の一面もある。
そんな内外に知名度が高い村上であるがビッグタイトルの獲得はまだ無い。
三十になり選手としても中堅クラス、ここらでそろそろ名実ともにアピールしたいところ。
最高位決定戦、初タイトルに向けて村上の戦いが始まる。

起家から順に、村上、張、古久根、尾崎。

この時点で観戦者は当初の十人程度から三十人以上となり、
会場全体の空気もかなり熱気を帯びてくる。


東一局、親番は全員ノーテンで流局。
東二局三局と先手を取られ受けながらの展開となるのだが、この対応が村上らしい。

東二局は張のリーチ、古久根の仕掛けを受けながら残りツモ二回というところで形式聴牌をとり
危険牌持ってきてノーテンで流局。
東三局は尾崎のリーチを受け聴牌取らずとするがその後チーしてハイテイずらし。
元々そのような戦術を取らないという者や、なかなかその場面になってみると出来な
いという者もいると思うが、
村上はデジタルという確固たる信念を持ってその場に対応していく。村上らしさを感
じた局だった。

東3局3本場 供託2000点 ドラ

なかなかの好配牌で上の三色もみえる。まだ誰にもあがりが出ず接戦状態、
積み棒供託を考えるとぜひともあがりたいところ。

この形から8巡目にを持ってきてN切り。
しかし次巡が三枚切れると他家の進行を見てか安全牌を抱え切り。
しかしその次のツモは、痛恨のテンパイのがし。初志貫徹でツモ切り。
その後、張のリーチを受けてからを引き最終的には待ちのフリテンで流局。
重い一局となる。

東四局4本場 ドラ 供託3000点

ピンフイーペイコウ含みの配牌、供託などを考えるとかなりのチャンス手である。

この形から8巡目古久根のポンでひいてきたのはドラの
ダマもあるかと思ったが捨て牌も強く、ここで決めにいった村上はを切って攻撃的にリーチ。
古久根もテンパイで押してくるが終盤をひいてきてまわり流局となる。

南1局5本場 供託4000点 ドラ

供託積み棒あわせてじつに5500点のボーナスである。
僅差のゲーム展開を考えるとここでアガ」った者がトップに近づくのは間違いない。

配牌はゴツゴツした感はあるが中の対子は親としてはラッキー、叩いてあがりに向か
いたいところ。
しかし、アガりたいのはみな同じアガらせたくないのもみな同じ、自ずと役牌のしぼりも普段よりきつくなる。
結局、は場に顔を見せることなく自身も役牌をしぼりながらノーテンで流局。
村上の親は二回とも全員ノーテンで流局の形となった。
そして場の重苦しさはますます比重を増してくこととなる。

南3局7本場 供託4000点
この時点の持ち点
村上  29500
張    27500
古久根 29500
尾崎  29500
重い、重苦しい。深海の底にいるかのようなプレッシャーの重圧が場を支配し、
観ているものにもひしひしと伝わってくる。痺れるような感覚の中、呼吸をするのも忘れてしまいそうだ。
ここまでなんとあがりは一度も出ず。場はテンパイノーテンのみで進んでいた。

そこで手にした配牌、重かった。ここでの放銃はラスへとかなり近づくこととなる。
苦しい戦いが始まる。
  ポン
を重ねて11巡目にポンした後、
この形から15巡目にを持ってくるがが打ちづらいとみたかをうちテンパイとらずとする。
ちなみにこの時の四人の牌姿は

村上     ポン
張   
古久根
尾崎  

であった。
結局この局は最後にテンパイした古久根が張から2000は4100の大きなアガリをものにした。

南4局
この時点で点数は
村上    28200
張     27800
古久根  35800
尾崎   28200

村上はツモが噛み合わずノーテンで流局、古久根尾崎の二人テンパイ。
実はこの時親の尾崎はハイテイ間際最後のツモでテンパイした。
ノーテンなら村上尾崎の同点二着でウマは+−ゼロになっていた。
このことが村上にとって吉と出るのか凶と出るのか。

南4局1本場 ドラウラ

タンヤオ系の配牌にツモもマッチして4巡目にイーシャンテン、7巡目にリーチ

前に出るしかない張からをアガり裏も乗り満貫で二着で終了となった。
終わったあと古久根が言った『しびれる半荘だったね』の一言がこの半荘を物語っていた。

8回戦終了時スコア

村上 淳 +35.9
古久根英孝 +31.3
張  敏賢 +19.0
尾崎 公太 -89.2


結局第二節は古久根一人がプラスするという形になり、
トータルは三人が競り合う中、尾崎一人が出遅れる形となった。
しかしまだ残りは三節あり、最高位戦ルールのウマを考えると誰が最高位となっててもおかしくない。

第三節、折り返し地点は天王山となるのか、熱い戦いは続く。

なお今回は選手を身近に感じてもらい選手の気持ちを感じて
最高位決定戦を楽しんでいただくことに主題をおいたので、
半荘で注目した以外の選手については物足りない方もいらっしゃるかもしれない。
そんな方には当協会発行予定の牌譜集に目を通していただきたい。
あなたの求める選手の己を賭けた闘牌が、そこにあるはず。

文責 平賀聡彦 ストレートAリーガー