直前インタビュー


第1日 10月17日

第2日 10月24日

第3日 10月31日

第4日 11月7日

最終日 11月14日

(全5日間20回戦)


10月17日。昨日までの雨は上がったが、その日は時折晴れ間が差すものの雲の多い不安定な空模様だった。
それはこれから始まる闘いに対する四者の様々な想いの入り混じったカオスを象徴するかのようだった。

最高位決定戦初日

試合前の牌チェックなどの準備を見て感じたのは
張は久しぶりの対局にやはり緊張しているように見え、
尾崎はとても冷静に勝負に臨んでいるように見え、
伊藤はここにいることを楽しんでいるように見え、
金子は流石の貫禄と独自のペースでこの場の空気をリードしているように見えた。

そして対局が始まった。

起家から伊藤、張、尾崎、金子の順。

東一局

金子が二巡目に早くもイーシャンテン

 ドラ

9巡目に發をポンして打2でテンパイ取らずとすると、
すぐ10巡目にを引き打としてテンパイ。

この時点で親の伊藤はドラ含み三色のイーシャンテン、
張はピンフイーペイコーのイーシャンテン。
最初から勝負手のぶつかり合いになるかと思えたが金子があっさり張からロン。

 ポン ロン

実は金子の捨て牌にはピンズはおろか字牌もまだ一枚も余っておらず、
張はまだテンパイしてないと思ったのではないか。
金子には絶好の、張には手痛いスタートとなる。

東二局

親の張が6巡目にリーチ

 ドラ

最高戦のルールはリーチが強いルールである。しかも親のリーチなら尚更だ。
もとより張もこのリーチはアガることよりも相手に対応させることが目的の戦略的なリーチだろう。
本手に勝負に来られることもあるからある意味ギャンブルとも言える。
結果は思惑通り流局一人テンパイとなる。
久しぶりの対局の緊張感のなか初っ端の満貫放銃のあとに躊躇なくこのリーチが打てる。
張の精神力の強さを垣間見た気がした。

同二本場

親の3巡目

 ツモ ドラ

あなたなら何を切るだろう?
私ならを切ると思う。
張が選んだのはならまだ考え付くがは凄いと思う。
並々ならぬ意思を感じる。
その後、ツモ打、伊藤のリーチが入るがものともせず、ツモ打ツモ初牌のを切って追っかけリーチ!
 ツモ ドラ 裏
4000は4200オール。まさに圧巻の一局であった。

東三局に金子はホンイツを仕掛けて満貫をツモると、
親番を迎えた東四局はリーチ後にカンをしてリンシャンからアガリ牌をたぐり寄せ4000オール。


同一本場
6巡目にしばし考えて下の形からリンシャンテン戻しの切り。
 ドラ
9巡目にリーチして12巡目にツモり2600は2700オール。
 ツモ ドラ 裏
まさに金子流炸裂。らしさを見せつけ三局連続のアガリで三万点近くを叩きだした。

南二局

尾崎が9巡目にリーチした時点で、親の張は下の手牌

 ポン ドラ

この手が尾崎のリーチに対応していくなかで満貫となってしまうのだから、麻雀とは恐ろしい。

 ポン ツモ ドラ

次局、伊藤のリーチを受け尾崎はドラ対子のイーシャンテンから一発で5200放銃。
ここまでツモられ続けながら一度の放銃も無く耐え続けてきた尾崎。
有名な表現を引用すれば、洗面器から顔をあげてしまったように若干見えた。
点箱には100点棒がポツンと一本残った。
そして迎えた南三局、尾崎の親番。

 ドラ

尾崎は5巡目に上の形からテンパイ取らずの切りとして、ツモ切り、ツモ切りで満を持して8巡目にリーチ。



周りは対応しているかに見えたが終盤、張が追っかけリーチして一発ツモ。

 ツモ ドラ 裏


鮮やかな決着に遥かな勢いの差を感じた一局だった。

オーラスを迎えた時点での点数状況
張    54700
金子(親) 48400
伊藤  23800
尾崎  −6900

金子は4巡目に下の形から切り。

 ドラ

この読みが鋭く7巡目にリーチして一発ツモ。
 ドラ 裏

満貫をツモりトップを逆転する。
同一本場は張がピンフのみをアガリ終了。三時間近くの決定戦開幕半荘が終わる。

一回戦結果
金子  60.4
張  32.0
伊藤 −21.5
尾崎 −70.9

起家から尾崎、張、伊藤、金子の順。

東場はたんたんと進み東4局。

12巡目に親の金子がのポンテンをとると、その鳴きによってドラが重なった張が頭を振り替えて次巡テンパイ即リーチ。

 ドラ

勝負手炸裂かと思われたが、すぐに金子の当たり牌をつかみ放銃。
 ポン ロン

同一本場、めげずに張が間チャンが両面に変わり先制リーチ。
 ドラ

11巡目に追いついた伊藤がアグレッシブな辺チャン追っかけリーチ。


今度は張に軍配が上がりツモって裏ドラも乗り満貫となる。

続く南一局、親の尾崎は3巡目に早々とドラを切り、中盤にのシャンポンのツモり三暗刻のリーチをかけるも3人とも受けに回り流局。
同一本場、2局連続トイツ系のゴツゴツした手牌の尾崎は8巡目に間をチーして片アガリでツモリ三暗刻のテンパイをとる。

 チー ドラ

ドラと役牌の所在がわからない為、周りは対応しているように見えたが終盤16巡目に伊藤がツモの発声とともに手牌を倒す。

 ツモ ドラ

尾崎は満貫の親かぶりとなってしまう。

ラス目の伊藤が満貫をツモり、点数が平たくなった所で南二局一本場。
終盤15巡目に伊藤がドラのを切り高め三色のタンピンでリーチすると金子がポンしてテンパイ。
局面は一気に風雲急を告げるが結局流局。
このように今節は開始前に自らが言って伊藤の攻める姿勢が随所に目立った。

そして南三局、伊藤は親番を迎えると攻める姿勢を崩さず14巡目にピンフドラドラをリーチ。

 ドラ

すると同巡、尾崎がツモ切り追っかけリーチ。


しかし今回も決着はつかず流局。
この時点で伊藤はこの半荘初のトップ目に立つと、次局は手堅くチートイをアガり供託を回収し差を広げる。

オーラスを迎えた時点での点数状況
伊藤    36300
尾崎    32000
張     28900
金子〔親〕 22800

金子が仕掛けて張から2900をアガりまた金子の怒涛の親番が始まるかと思えたが、
同一本場は配牌に恵まれた伊藤が5巡目に仕掛けてすぐに金子から1000は1300の出アガり、終局となる。

二回戦結果
伊藤   37.6
尾崎   12.0
張   −14.0
金子  −35.6

この時点で対局開始から4時間あまりが経過していたが観戦者は30人を超え会場もさらに熱気を帯びてきた。

起家から金子、張、伊藤、尾崎の順。

東一局、前の半荘の勢いそのままに伊藤がドラが暗刻で自風が対子の好配牌。
3巡目にイーシャンテンとなり8巡目に西をポンしてテンパイ。

 ポン 打 ドラ

ここに飛び込んでしまったのが張。
伊藤は2巡目にドラそばのを切っていてドラが固まってる可能性が高く、張の手はテンパイまでまだまだ遠かっただけに若干悔やまれる。

東三局、親の伊藤が13巡目にリーチすると、宣言牌の5を金子もポンしてテンパイ。

ドラ

伊藤 

金子  ポン

終局間際に金子ツモ、伊藤の捨て牌にピンズはリーチ前リーチ後のみ。
金子は切りとし裏ドラも乗り7700の放銃、しばし天を見上げていた。


同一本場、勢いに乗る伊藤が10巡目リーチ。

 ドラ

続いて張が14巡目に追っかけリーチ。



熱い戦いになるかと思いきや金子が静かにツモ。

 ツモ

伊藤の現物でしっかりと待ちかまえていた。

伊藤の勢いは南場に入っても衰えない。
南一局に6巡目リーチで金子から6400を出アガると、次局は中盤に隠れドラ暗刻のテンパイ。
ここは親の張がかわして手でさばいて事無きを得る。
次局、尾崎の5巡目リーチに対しても伊藤は攻める、12巡目に追いつき追っかけリーチ。
しかし、宣言牌が尾崎に捕まる。リーチのみかと思いきや裏が3枚、満貫放銃となる。

南三局、満貫を直撃し伊藤追撃の一番手に躍り出た尾崎は、親の伊藤の仕掛けにかぶせるように8巡目にリーチ。

 打 ドラ

この時点では初牌、は2枚切れだったが尾崎は間万待ちを選択する。
すると親の伊藤が一発目にをたたき切る。
尾崎傷心の間もなく次巡単騎の待ち変えをした伊藤のあたり牌をつかみ7700放銃。

 ポン ロン

尾崎が第一節でもっとも悔やんだ一打だった。

一方の伊藤は5万点代に復帰し連荘、3本場に金子に満貫をツモられるまで更に加点する。

オーラスを迎えた時点での点数状況
伊藤   51900
金子   27200
尾崎(親) 23000
張    17900

南四局、親の尾崎5巡目に下の形から暗カン



リンシャンからをツモるとを切りリャンシャンテン戻し。
最終的に14巡目にリーチして一発でツモり4000オール。

 暗カン ツモ ドラ カンドラ 裏 カン裏

一本場、尾崎は金子とのリーチ合戦でハイテイで出あがり3900、伊藤との差を6700まで詰め寄る。
同二本場、尾崎がドラのを対子にして俄然やる気が出るなか9巡目に張がリーチ。

 ドラ

尾崎10巡目に下の形



手に汗握る展開のなか14巡目、尾崎をツモり打で放銃。
張はツモまたは裏ドラ条件であったが、裏ドラをきっちり1枚乗せて3着浮上。


三回戦結果
伊藤   47.9
尾崎   15.4
張   −21.3
金子  −42.0

連続トップをとった伊藤、オーラスにねばりを見せた尾崎、最後にラス抜けの張、ラスに落ちた金子。
4者4様のまま勝負は最終半荘へ。

起家から尾崎、金子、張、伊藤の順

東一局、親の尾崎が11巡目に發暗刻のリーチを一発でツモって裏裏の6000オールでロケットスタート。
同一本場、尾崎の勢いは止まらない。

 ドラ

上の配牌にと連続で引き入れなんと4巡目でテンパイ、5巡目に満貫出アガり。

 ロン

このまさに交通事故に飛び込んだのは張、2局で18300失った胸中はいかばかりだろう。
そしてついに尾崎の大爆発、2局で3万点の荒稼ぎ。

同二本場、一気に局面はヒートアップ。12巡目に金子、張が相次いでリーチをするとすぐに尾崎も追いつき追っかけリーチ。

尾崎  ドラ

金子 

張   

この時点で山にいる上がり牌は、尾崎1枚、金子5枚、張3枚。
征したのは張、金子から2600をリーチ棒付きでゲット。

東三局、7巡目に親の張が3面チャンのピンフでリーチ、終盤ツモって1300オール。
同一本場、8巡目に張がダブ東を仕掛けると子3人は対応し張の一人テンパイ。
同二本場は尾崎が静かにピンフのみで流すがいつのまにやら張は2着に浮上。
さすがメンタルに定評のある張、交通事故のリハビリは終わったぞ・・・と言ったところか。

南一局、尾崎が3900を金子からアガり6万点オーバーとなると勝負は3人の2着争いがメインとなってきた。

同一本場、5巡目に金子が下の形からをポンして仕掛ける。

 ドラ

続々と有効牌を食い取り10巡目にテンパイ。

ポン

12巡目初牌の南単騎から2枚切れの単騎に変えて即座に満貫ツモ。
ラス目だった金子が満貫をツモった事により2着争いは更に激化、それぞれの親番がキーポイントとなる。

南二局、10巡目に張がチートイドラドラをテンパイすると同巡に伊藤がリーチ、すぐに親の金子も仕掛けてテンパイ。

ドラ
金子   チー

張    

伊藤  

張が金子のあたり牌を持ってきて待ち変え、息もつけぬような3者の攻めぎあい。
14巡目、アガったのは・・・なんと尾崎。

 ロン

この半荘の支配者は俺だと言わんばかりのアガりであった。


南三局、5巡目に早くも伊藤がリーチ、現在ラス目だが親番を前にアガってはずみをつけたいところ。

 ドラ
12巡目、尾崎がまだまだ稼ぐぞとドラ切り追っかけリーチ。
そのドラをポンしてテンパイした金子が打った牌は、5200放銃。

オーラスを迎えた時点での点数状況
尾崎    57400
張     25700
伊藤〔親〕 22800
金子    14100

2着をキープしたい張、連荘したい伊藤、ラス抜けしたい金子。
そして悠々自適の尾崎。
それぞれの思惑が絡み合うなか南四局、8巡目に金子がリーチ。
 ドラ
4巡後ドラのをツモ、裏ドラが1枚なら3着、2枚以上なら2着・・・。
乗らず1300,2600。
長かった一日が終わった。

四回戦結果
尾崎  56.1
張    4.4
伊藤 −19.8
金子 −40.7

一日目(4回戦終了時まで)のトータル
伊藤  44.2
尾崎  12.6
張    1.1
金子 −57.9

伊藤がトップ二回ラス無しで頭一つ抜け出し、金子がトップを取りながらも三ラスで頭一つ沈んだ。
しかし全体的に見れば平たい結果で勝負はまだまだ始まったばかり。
最高位戦の秋のクライマックス、目の離せない闘いの幕開けであった。

第一節を終えて一言

伊藤
「予定外の好成績を収められた。採譜の近藤選手がラッキガールだったのかな。」

尾崎
「三半荘目のラス前のリーチの間チャン選択でミスをしてしまったが、オーラスに落ち着きを取り戻すことが出来た。」


「疲れた。長時間テンションを維持していくのが大変だ。初日はプラマイゼロの目標は果たせた。」

金子
「三ラスで特に言うことは無い。」

文責 平賀聡彦