第1節 3月11日(水)

第2節 3月25日(水)

第3節 4月8日(水)

第4節 4月22日(水)

第5節 5月13日(水)

第6節 6月3日(水)

第7節 6月24日(水)

第8節 7月15日(水)

第9節 8月5日(水)

 

 

「ほんとに呆れたやつです」

 

私 ( 鈴木 ) のその言葉に、前最高位の張が同意するような苦笑いを浮かべた。

 

1回戦終了後のやりとりである。

 

 

 

今年で34期を迎えた最高位戦。その第1節の卓組は以下の通り。

 

1卓

金子、張、冨澤、石橋

 

2卓

佐藤、水巻、伊藤、上野

 

3卓

平賀、尾崎、村上、大柳

 

1卓1回戦 ( 石橋、冨澤、金子、張 ) ※カッコ内は起家から順。

34期初アガリは金子。

東2局で以下のリーチを一発でツモり、4100オール。

 ツモ ( 一発 )

最高位奪還に向けて好発進。

 

金子に対するのは、やはり前最高位の張である。

手数の多さと鋭さが武器の張は、相手の手をかわすように細かいアガリを重ね、南3局のオヤ番を迎える。

まずは西家石橋からリーチがかかるが、張は何事もなかったかのように何枚も無スジをトバし、をポン。

すぐにドラのをツモって4000オール。

  ツモ

 

結局、この半荘は最高位獲得組2人がワンツーを決めた。

 

金子 42.6

張  17.9

冨澤△19.3

石橋△41.2

 

2年ぶりにリーグ戦出場の張は、おそらく2着スタートでほっとしたのではなかろうか。

傍目から見ても、普段の麻雀を打てている印象を受けた。

この辺の入り方は、さすがである。

 

その張が、他卓の結果を見るためにパソコンの前にやってくる。

集計を見た張の目が飛び出る。

もちろん実際に飛び出たわけではないが、10センチぐらいは飛び出たように見えた。

張、2秒ほどフリーズ。

その理由は1つに決まっている。

 

集計表の1番上に燦然と輝く数字――「79.9」。

 

これは、3万点持ち3万点返しで順位ウマが1万点・3万点という最高位戦ルールにおいて、79900点持ちの超特大トップを意味する。

そのバカげた数字の横に書かれている名前は「平賀聡彦」。

 

張に言う。「いやー、ほんとに呆れたやつです」。

 

張は、苦笑いを浮かべた。

 

この平賀というやつは、私 ( 鈴木 ) とは10歳離れた最高位戦の同期である。

年齢こそ10歳離れているものの、同期ということもあってか平賀とはよく話をした。

いまや、Aリーガーと末端会員となってしまったわけだが、今でも平賀とはよく話をする。

平賀はよく言う。

「オレは、星で勝ってきたから」

ちょっと言っていることが意味不明だが、翻訳すると「オレは勝っちゃう星の下に産まれちゃったんだよ。ただそれだけでAリーグまで来ちゃった」と、そういうことである。

実際にそれだけでAリーグまで来れるはずもないと思うが、平賀のアガリには「星」を思わせるものが多い。

 

例えば、こんなのがある。

 

3卓1回戦 ( 村上、尾崎、大柳、平賀 )

フラットな点数状況で迎えた東3局、ドラはである。

西家の平賀は、中盤に500・1000のツモアガリを果たす。いや、果したはずだった。

 ツモ

ここで平賀はリーチを宣言する。

あれ?見間違えたか?イーシャンテンだったんだっけ?

そう思い、もう1度目を落としてみる。

横に曲がったと合わせれば、確かにアガっている。私の見間違えではなかった。

平賀はフリテンリーチを敢行したのである。

そんな確認をしている間に、一発目のツモが卓に置かれていた。

 ツモ ( 一発 )  ウラ

500・1000がわずか1巡で8倍ですか。そうですか。

この4000・8000を皮切りに、3万点という土台の上に築いた平賀城は5万点。

2卓1回戦は、正に平賀劇場であった。

 

なるほど、「星」ねえ。

 

平賀 79.9

尾崎 21.9

村上△37.7

大柳△64.1

 

それにしても、やはり元最高位組は緒戦からさすがである。

1卓の金子・張に続いて、尾崎もプラススタート。

平賀があれだけの城を築いた動乱の時代に、これだけの尾崎城を建設しているとは。

 

2卓1回戦 ( 水巻、佐藤、上野、伊藤 )

実は、3卓では、1卓の金子とちょうど同じ時間帯に同じ待ちのリーチをツモって4000オールをアガっていた者がいた。

東2局、オヤを迎えた佐藤である。

 ツモ ウラ

表ドラこそなかったものの、すぐにツモってウラドラ1枚。

幸先の良いスタートである。

同じ待ちのタンヤオリーチが同時刻に成就するなんて。

何か縁がありそうだ。金子の例を見るに、この卓でも佐藤のトップであろうか。

 

東4局、上野が3000・6000で佐藤に肉薄する。

 ツモ ( 一発 )

これで、ほぼ上位2人の争いになった。

 

南1局でも、南家の佐藤が先制リーチを放つ。

 ドラ

これをアガって、佐藤が不動のトップになるのだろう。そう思った。

しかし、このリーチを受け、次巡にツモ切りリーチが入る。

追いかけリーチの主はオヤの水巻。

このときの佐藤の気持ちを代弁しよう。

「ああ、水巻に打ったら12000以上だ。打ちたくないよー。おねがいだから早くいてくれ!」

佐藤の願いも空しく、佐藤がを河に置くと、水巻からロンの声。

 ロン

ドラが頭に三色もついて18000。

納得したように小刻みに何度かうなずき、「はい」と点棒を渡す佐藤。これで、一気にラス落ち。

 

ツモ切りリーチには数種類かあるように思う。

例えば、手替わりを待っていたが、手替わり牌が少なくなったためにツモ切りリーチ。

愚形だからヤミテンにしていたが、他家の動きによってその愚形がアガリやすい待ちになったためにツモ切りリーチ。

そして、打点が十分でヤミテンにしていたが、他家にリーチが入り、相手の河に自分の待ち牌がないため、どうせ他家から出ないなら打点を上げるためにツモ切りリーチ。

このうち、最も怖いのは3つ目のいわば「本手のツモ切りリーチ」である。

水巻がツモ切りリーチをするとき、それは99%が3つ目であるだろう。

水巻渉とは、そういう打ち手である。

堅実に、対応できる限りは柔軟に対応する。

そういう打ち手が先制リーチを受けてツモ切りリーチをかけたとあれば、それは「リーチに対応する必要が一切ない」ということと同義である。

すなわち、打点十分・形十分の2つを満たしている。

佐藤もそれはわかっているから、水巻にリーチと言われた瞬間に「打ったら12000以上」を覚悟していたのである。

 

この半荘はこのままの着順で終わり、水巻が安定した麻雀で緒戦を制した。

 

水巻 46.3

上野 13.0

伊藤△18.1

佐藤△41.2

 

東2局に同じ形の4000オールで先制した金子と佐藤であるが、片やトップ片やラスと明暗が分かれる結果となった。

 

1卓2回戦 ( 金子、冨澤、張、石橋 )

しかし、前回トップ発進の金子も2回戦では苦戦を強いられていた。

 

東1局に冨澤が金子のオヤリーチと張のマンガン仕掛けを振り切ってアガったフリテンの1000・2000を皮切りに、若手2人が反撃に出る。

 ツモ ドラ

 

すると、今度は石橋が仕掛けて2000・4000。

    ツモ ドラ

続けてオヤである張の仕掛けに対応したヤミテンを高目でツモアガり、3000・6000。

 ツモ ドラ

 

南場に入ると、冨澤も負けじと2000・4000と3000・6000をアガリ切る。

 ツモ ドラ

     ツモ ドラ

これでトップ目に立つ。

 

しかし、オーラス、冨澤が1枚切れのをツモ切ると、オヤの石橋が手を倒す。

 ロン ドラ

18000。

これで冨澤は一気に3着に転落した。

 

逆にラッキーだったのは、2着に浮上した金子である。

2回戦終了後に「ラッキーだったなあ」とつぶやいた。

 

石橋 54.1

金子 10.4

冨澤△16.7

張 △47.8

 

やはり、金子をもってしても、そう易々と連勝スタートなどできるものではないのだなあと思う。

 

2卓2回戦 ( 伊藤、水巻、佐藤、上野 )

そんな感想を尻目に、隣卓で今まさに連勝を築き上げようとしていたのは水巻。

まずは東1局にこんな2000・4000をアガる。

  ツモ

 

東3局3本場には、ヤミテンでたまった本場を一掃する1000・2000は1300・2300。

 ツモ ドラ

これでトップを不動のものとすると、東4局には上野からヤミテンで4枚目のを捕えて8000。

 ロン

これで5万点ほどに達した水巻は、發王位の威光を振りかざし、悠々と連勝を飾った。

 

水巻 47.9

佐藤 15.8

上野△ 9.6

伊藤△54.1

 

3卓2回戦 ( 平賀、村上、大柳、尾崎 )

別卓では、平賀も連勝への礎を築いていた。

東3局に大柳のオヤリーチと尾崎のヤミテンをかわし、仕掛けて3900をアガると、次局には村上のリーチと尾崎の国士イーシャンテンをかわして2000・4000。

   ツモ ドラ

これで、トップ目に立って迎えた平賀のオヤ番。

またもや平賀のリーチが襲いかかる。

 ドラ

しかし、ここで尾崎が追いかけリーチと出る。

すると、平賀があっさりを掴んで尾崎に8000。

 

このマンガンが攻守交替の合図だった。

南2局には、トップ目に立った西家の尾崎が1枚切れの単騎をきっちりヤミテンにしていると、大柳からリーチがかかるも、大柳に1度もツモらせることなく尾崎のツモアガリ。

 ツモ

この800・1600できっちり局を潰した尾崎が、オーラスのオヤ番ではダメ押しの4000オール。

 ツモ ドラ

これで5万点オーバーの尾崎が平賀の連勝を阻止。

 

尾崎 54.7

平賀  6.4

大柳△16.9

村上△44.2

 

1卓3回戦 ( 石橋、冨澤、金子、張 )
東3局に冨澤がタンピンドラ1高目イーペーコーをヤミテンに構えると、これが大正解で、張からリーチが入り、張の現物で高目が石橋から出て8000。

 

東4局には、金子がをアンカンしてリーチをすると、またも石橋が一発で打ち上げ、リーチ一発ウラ1のテンパネで8000を献上する。

 

南2局
金子が張のドラ暗刻のヤミテンに放銃して8000。

オーラスは金子と張の2着争い。
金子が早々と仕掛け、ダントツの冨澤から1000。

 

冨澤 46.3

金子 14.9

張  △8.5

石橋△52.7

1卓4回戦 ( 張、冨澤、石橋、金子 )
東3局
金子から先制リーチが入るが、冨澤が追いつき金子からタンピンドラ2を直撃して8000。
この局は冨澤のタンヤオに移行する手筋が見事であった。

南2局 ドラ
金子から4巡目リーチ


同巡の張は、以下の牌姿であったが冷静に受けに回る。


ここまで冨澤と張のトップ争いではあるが、強気の冨澤とじっくりタイプの張とそれぞれの対応が異なる。

その後、石橋からもリーチ。
終盤、ツモ1回を残し冨澤がタンピンリャンペーコーのリーチをかけるが、最終ツモで4枚持ちののうちを掴んで金子に2000の放銃。

南3局 ドラ
金子 9巡目テンパイ 
ツモから打でヤミテン。
これは場にが1枚切れを見てのものだろう。
次巡、ツモで迷わずリーチ !!
金子の捨牌にはがある。

これによって助かったのは冨澤で、を処理してリーチ。

しかし、結果は流局。

南4局 ドラ
トップ目の冨澤を追う2着目の張が、6巡目に条件を満たすピンフのテンパイを入れるが、親番の金子のリーチに一発放銃で7700。

次局も張は金子に7700を放銃。
ドラ
このときの金子、から、まだ序盤であったが打
結果はピンズで1メンツを河に並べることになったため、をヤミテン。

このテンパイに張がを切っての7700であった。
張にはつらい展開となる。
次局はトップ目の冨澤の速攻で終了。

 

冨澤 44.0

金子 17.7
張 △18.0

石橋△43.7


2卓3回戦 ( 伊藤、水巻、佐藤、上野 )
東1局、水巻のリーチに上野が追いかけ、1300・2600。

 ツモ ドラ

 

南2局には上野がリーチで佐藤から8000。

 ロン ドラ ウラ

 

次局も上野がドラをポンするが、これはオヤの水巻がリーチでかわし、リーチ一発の3900で上野を止める。

 

南3局 ドラ
上野とオヤ番の佐藤のリーチがぶつかり、上野が安目ながらツモアガり、500・1000。
 ツモ 

南4局 ドラ
トップ目の上野を追う2着目の水巻が2枚切れのペンの役なしテンパイを組まざるを得ない状況ではあったが、冷静にヤミテン。
結局、上野の一人ノーテンで水巻がトップをもぎ取り、3連勝を決めた。

水巻 36.9

上野 16.5

佐藤△16.5

伊藤△36.9

2卓4回戦 ( 佐藤、水巻、上野、伊藤 )
東1局 ドラ
上野が魅せる。

9巡目にからカンを嫌い、ペンを残す。
この山読みがドンピシャリで、次巡をツモ打でリーチ。
流局ではあったが、見応えのある一局を作り出すベテラン上野の力はさすがである。

南1局 ドラ
またもや上野が山読みでのリーチ。

オヤ番の佐藤の仕掛けを見てからカラ切りでリーチ。
の3枚切れとが2枚、が1枚切れであることに加えて、佐藤の仕掛けが安く見えるだけにリーチなのだろう。
今度は無事にツモアガリで1000・2000。

南4局
2着目の上野はトップ目の佐藤を捲りに行くが、ここは佐藤がクイタンで逃げ切る。

佐藤 40.5

上野 16.8

伊藤△18.2

水巻△39.1

3卓3回戦 ( 平賀、尾崎、村上、大柳 )

南1局
平賀が4000オール、2000オールとツモりトップをほぼ不動にする。

南1局2本場
尾崎 6巡目の選択 
場にが3枚切れでが山にいそうな局面。
かといって、マンズも変化が期待できるだけに難しい選択である。
尾崎の選択は打
しかし、次巡に裏目のをツモってしまう。ここで尾崎はフリテンの3面待ちを残し、ソウズを払う。
その後にもツモるが、筆者 ( 三ヶ島 ) にはこの判断が尾崎らしいなと思え、むしろ尾崎は自分の麻雀を打ちきれているように映る。尾崎のハートはまったく揺れていないだろう。
結局、今局は大柳の300・500は500・700。

南4局
3着目の尾崎がまたもや選択を迫られる。
マンガンツモ条件でにツモで打
その後、ツモでテンパイになるが当然のヤミテン。
2着目の大柳からが出るが見逃し。
さらにツモでアガらずに高目のフリテンリーチを敢行。

結局、ラスオヤの大柳が撤退して流局で終了となるが、尾崎の強気な選択に十分「尾崎らしさ」を感じることができる局となった。

 

平賀 52.5

大柳 13.0

尾崎△15.4

村上△51.1

3卓4回戦 ( 平賀、大柳、尾崎、村上 )
東2局ドラ
オヤ番の大柳からリーチが入り、村上が苦しい状況になるが、なんとか凌ぎ切り流局。
次局は尾崎が自然に1300・2600のアガリとなる。

南3局
大柳のクイタンドラ2の仕掛けと村上のリーチがぶつかるが流局となる。

南4局 ドラ
ラス親の村上がトップ目で+6.8、大柳+1.9、尾崎+0.6で3者のトップ争い。
まずは村上が迷わずリーチ。


ここまでカンのリャンカンを嫌い、このテンパイに至った。
11巡目に大柳から追いかけリーチ、同巡尾崎もリーチを宣言。
尾崎の手牌は
ここにツモ、村上のリーチにマンズ待ちがあればの待ちが濃厚であるが、村上のリーチ後に無筋のなどを切り飛ばして攻める尾崎の選択は打である。
これは村上に放銃となったが、自身の打ち筋を貫いての結果だけに悔いはないのではないか。
その尾崎は次局、2フーロでツモか大柳直撃条件の1000点のテンパイを入れ、大柳を直撃して2着となる。

 

村上 41.1

尾崎  9.9

大柳△10.7

平賀△40.3

最後の半荘こそ4着をひいてしまったが、第1節を終えて平賀がトータルトップに立った。

次節以降も平賀らしい麻雀を期待したい。

 

もちろん平賀にも注目すべきであろうが、それ以上にインパクトがあったのは尾崎。

平賀の猛攻に耐え、気づけば+98.5の平賀と約25ポイント差の+71.1で4位につけた。

後半部分の記述からも、尾崎の充実ぶりがよくわかる。

 

また、常に劣勢だった印象のある2卓の佐藤も、マイナスをわずか1.4に抑え、7位につけた。

次節の佐藤にも注目である。

次節は3月25日 ( 水 ) 、神楽坂ばかんすにて。

観戦は無料ですので、ぜひ会場にお越しください。みなさんのご来場をお待ちしております。

 

文:鈴木聡一郎 ( 主に1,2回戦 ) ・三ヶ島幸助 ( 主に3,4回戦 )